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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2017
October 21
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2012
July 29
【第1話・出逢い編】
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/380/

【第2話・部活編】
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/381/

【第3話・肝試し編】
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/382/

【第4話・海編】
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/383/

【第5話・無人島編】
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/384/

【第6話・文化祭編】
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/385/

【第7話・恋のライバル編】
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/386/

【第8話・クリスマス編】
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/387/

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「春樹せんぱーい!」

 あの引退試合からというもの、美香ちゃんのアタックはさらに激しく熱烈になっている。
 3年生が、つまり春樹がサッカー部を引退してしまったからなのだろう。
 マネージャーという立場ではもう会えないから、美香ちゃんとしてはこうするしかない。

 彼女は、今日も春樹の後を追ってきた。

「ねえねえ、春樹先輩! 次の日曜って何してますか?」
「え!? つ、次の日曜…?」

 放課後の帰り道。
 あたしが一緒にいるというのに美香ちゃんときたらお構いなしだ。
「春樹せんぱぁ~い」などと甘い声を出している。

 なんだか腹が立ってしまって、あたしはわずかに頬を膨らませた。
 ついつい美香ちゃんの猛攻に聞き耳を立ててしまう。

「こないだオープンした桜ヶ丘メルヘンランドあるじゃないですか!?」
「え、あ、おう、あるな」
「あそこ行きましょうよ!」
「え? いや、えっと…」
「遊園地、嫌いですか?」
「いや、嫌いじゃねえけどよ…」
「じゃあ決定ー! 2人で遊びに行きましょ!」
「え、いや、その…。なあ?」

 春樹はおどおどとあたしの顔を盗み見した。

 もー!
 なにそのはっきりしない態度!
 なんできっぱり断らないわけ!?

 美香ちゃんはというと、悲しげな表情を浮かべてしゅんと顔を伏せる。

「あ…、もしかして春樹先輩、あたしとデートするの、嫌、なんですか…?」

 その上目遣いはなんなのよ!
 春樹さっさと断りなさいよ!
 もー!

「いや、嫌ってわけじゃ…、なあ?」

 さっきっからなにが「なあ?」なの!?
 そんな曖昧な態度だから美香ちゃんにつけ込まれるんでしょ!?

 春樹の「嫌ってわけじゃ」発言に対し、美香ちゃんがパッと明るく表情を輝かせる。

「よかったー! 嫌じゃないんですねっ! じゃあ決定! 次の日曜、デートしましょ!」
「え、いや、なあ?」
「楽しみにしてますねっ!」

 それはさすがに強引すぎるでしょ美香ちゃん!

 心の中にある不機嫌メーターがとうとう上限に達してしまい、あたしは思わず横槍を入れる。

「ちょっとごめんね美香ちゃん! 春樹は次の日曜、用事あるの!」
「え? 用事? なんでそんなこと佐伯先輩が言うんですか?」
「ぐ…!」

 美香ちゃんは次に春樹に顔を向けた。

「春樹先輩、用事があるって本当ですか? どんな用事なんですか?」

 追求される春樹は相変わらず「え!? いやその…」とはっきりしない態度だ。

「用事なんて、ないですよねー」

 美香ちゃんのこの挑発的な笑顔を前に、あたしはこの後すぐに、とんでもない発言をしてしまうことになる。

------------------------------

 なんつうか、帰りてえ。
 なんとかしてこの空気から脱出してえ。

 だいたいなんで佐伯と美香が険悪な雰囲気になってるんだ?
 誰のせいでこうなった。

「お、おいおい、ふ、2人とも、なあ…?」

 2人の間に割って入ろうと俺は片手でチョップのような形を作り、それを小刻みに上下に振った。
 佐伯がそれをやや乱暴に振り払う。

「春樹には用事あるんだったら! でしょ春樹!?」
「え!? いや、え?」

 あたふたとしていたら佐伯がさらに語気を強める。
 次のセリフに俺は万歳のポーズで驚いた。

「春樹はあたしとデートの約束があるの!」

 えええええーっ!?
 俺の知らねえ俺の予定がある!?

 美香が人差し指を口に付け、不思議そうに首を傾げた。

「デート? 春樹先輩と佐伯先輩が? なんでですか? まえに佐伯先輩、言ってましたよね? 春樹先輩のことどうも想ってないって」
「いや、あの…! あ、あれからね? その、色々あって…」
「色々あって?」
「い、今あたし、は、春樹と付き合ってるのっ!」

 んなッ、なんだってェ!?
 俺たちいつの間に付き合ってたんだ!?
 そういう大事なことはもっと早く教えてくれませんか佐伯さん。

「ふうん」

 美香は冷ややかな目になると、そっと腕を組む。

「本当ですか? 春樹先輩と本当に付き合ってるんですか?」
「も、もちろんほ、本当よ! 桜ヶ丘メルヘンランドには、あ、あたしが春樹と行くんだから」
「ふうん」

 美香が冷笑を浮かべる。

「だったら」

 この美香の言葉に、俺は再び万歳の格好をすることになる。

「本当にデートするのかどうか、あたし見に行っていいです?」

 佐伯があたふたと「ももも、もちろんよ!」と切り返した。

 なんでこうなる。

 っつーかこいつら、俺に次の日曜、別の用事がもしあったらどうすんだ…?

------------------------------

 天気は快晴。
 青空には飛行船やアドバルーンが色とりどりに浮いていて、時折ぱんぱんと小さな花火が白い煙を上げる。
 派手な衣装のピエロがひょうきんなポーズで道行く子供たちに手を振っていた。

「はあ」

 賑やかな雰囲気とは裏腹に、あたしの心は暗い。

 せっかくの遊園地なのに、なんでこんなシチュエーションなんだろう。
 そりゃあたしにも少し不用意なとこ、あったけどさ。

 美香ちゃんからの鋭い視線は相変わらずで、背後からそれをひしひしと感じる。
 ちらっと振り返ると案の定だ。
 数歩離れて着いてくる彼女はむっとした表情のままであたしたちの背中を睨んでいる。
 その目はまるで「少しでも怪しいところがあったら見逃すものか。2人が恋人じゃないことを絶対に見抜いてやる」とでも言いたげだ。

 少しはあたしもお洒落してきたつもりだし、春樹の服装もなんだかんだで様になっている。
 アイスクリームはストロベリーとチョコミントの2段重ねにしてもらった。
 ピエロからは風船だって貰ったのに…。

 もう1度ちらっと背後に目をやる。
 美香ちゃんの殺気は弱まる気配がなくて、あたしは再び溜め息をついた。

 普通にデート、したいなあ。
 
------------------------------

 俺は一体、何をするためにここにいるんだろうか。
 なんだか解らんが、とにかくこれだけは言える。
 落ち着かん。
 ジェットコースターに乗ってもメリーゴーランドに乗っても、気が気じゃねえ。

「ちょっと春樹」

 佐伯が小声を出し、俺の肘あたりの袖をちょんちょんと小さく引いた。

「あんた、もっと楽しそうにしなさいよ」

 佐伯と同じく、俺も声を小さくする。

「お、おう。でもどうすりゃいいんだよ」
「とにかく楽しそうにするの! あたしたちが付き合ってないって、美香ちゃんにバレていいの?」

 バレるも何も、俺からはそんな嘘一言もついていないんだが。

 佐伯がさらに声を潜めた。

「腕、組も」
「え!?」
「しっ! 声大きい! 恋人っぽくしなきゃダメでしょ?」
「え、あ、おう。そ、そうだな。ででででも、腕って…! どどど、どうやって組むんだ…?」
「もう」

 呆れたように息を吐くと、佐伯が俺の腕にすっと自分の腕を絡ませる。

「もっと寄って。肩が付くぐらい」
「は、はい。これぐらいでしょうか?」

 なんで敬語なんだ俺。

「うん。あと、ぎくしゃくしない」
「あ、はい、すみません…」 

 なんだかいい匂いがする…。
 これでぎくしゃくするなって言われても…。
 歩くときに首を振るなって命じられた鳩ってこんな気分なんだろう。

 デートらしくないデートは延々と続いていったが、何に乗ったんだかはあまり印象に残っていない。
 集中力を他に持っていかれていたからだ。

 日が傾く頃になって俺たちと美香は遊園地を後にする。

「これで解ったでしょ?」

 土手道で、佐伯が振り返って声を投げた。

「あたしと春樹、付き合ってるの」

 すると美香は冷めた目のまま首を傾げた。

「なんだか不自然なんですよねえ」
「ふ、不自然なんかじゃないわよ! ね、ねえ春樹?」
「あ、おおお、おう。ふふふ、不自然なとこなんて、いいい、一箇所もねえさ。ええ、ないですね」
「ふうん」

 美香が自分のあご先を指で摘んだ。

「本当に付き合ってるんですか?」
「つ、付き合ってるよ? ねえ春樹?」
「え、あ、はい。いつもお世話になってます」
「ふうん」

 美香の目が光ったように、俺には見えた。

「だったらキス、してみてくださいよ」
「えええ!?」

 これには俺も佐伯も同時にびっくりだ。
 今なんて言ったんだ美香!

「キスぐらいできますよね? 恋人同士なんだから」
「いや、ちょ、ででで、でも…!」

 佐伯が両手を激しくばたばたと振る。

「そそそ、それは人前ですることじゃ…! ね、ねえ? 春樹!?」
「そ、そそ、そうだぞ美香! け、け、け、けしからねえ!」
「いいですって、あたしは」

 今日初めて見る美香の笑顔だ。

「そういうのあたし、気にしませんから。やっちゃってください。いつもしてるんでしょう?」
「ぐ…!」

 佐伯が言葉に詰まる。

「で、で、でも…」
「お2人が今ここでキスしたら、あたし信じます。ああ、2人は本当に付き合ってるんだなあ、って」
「で、でもそれは…」
「できないんですかあ? じゃあやっぱり付き合ってるなんて嘘だったんだあ」
「は、は、は、春樹!」

 突然呼ばれ、俺はハッとなる。

「お、おう、なんだ?」
「す、するよ!」
「え!? な、なにをだ…?」
「き、キス! い、いつもするように、してっ!」

 いつもするようにって、いつもしてねえ場合はできなくね?

 佐伯がぎゅっと強く目をつぶり、俺に顔を向ける。
 こいつ歓迎体制を整えやがった!?

 美香は美香でどこか冷めた笑顔でそれを眺めている。
 どうせできないクセに、とその顔に書いてあった。

 これはもう、し、仕方ねえ…!

 油を差していないロボットのようにぎくしゃくと、俺は佐伯の肩、両方を掴む。
 触れた瞬間、佐伯はびくっと身体を震わせたが、目は閉じられたままだ。

 まさかこんな展開でファーストキスをすることになるとは。

「い、いくぞ」

 これは自分に言い聞かせた言葉だが、告げた瞬間佐伯は再び身体を震わせ、硬直した。

 俺も目をつぶり、まぶたに力を込める。
 唇を大きく突き出し、顔を徐々に近づける。

 鼻先に何かが当たった。
 俺たちの鼻同士が触れたのだ。

 あとすこし顔を前に出せば、あるいは顎を前に突き出せば、次に触れるのは唇だろう。
 あとほんの少し!
 い、いくぜ!

 ところが、

「やっぱりダメーッ!」
「ぐあ!」

 突然の衝撃。
 佐伯が俺を激しく突き飛ばしたのだ。

「やっぱり無理ー!」

 佐伯が顔を両手で覆いながら走り出す。
 猛ダッシュであっという間に去って行ってしまった。

 美香がふふんと笑い「やっぱり」と独り言をつぶやく。

------------------------------

 初めてのキスが人前でなんてどうしても嫌だった。
 とはいえ、あたしのせいで台無しだ。
 せっかくデートのフリまでしたのに、結局美香ちゃんにバレてしまった。

「はあ~」

 これでまた美香ちゃんのアタックは続くんだろうと思うと、あたしの溜め息は重くなる。

 土手に座って息を整え、あたしは頬杖をついた。

「佐伯先輩」

 突然の声に「え?」と振り返る。
 そこには美香ちゃんが不敵な笑みを浮かべていた。

「春樹先輩と付き合ってるなんて、やっぱり嘘だったんですね」
「う…。ご、ごめんなさい…」
「いえ。あたし、今日見てて1つ判ったことがあるんです。佐伯先輩のことで」
「え? あたし…?」

 なんだか嫌な予感がする。
 なんだろう。
 あたしなんか変な癖があるのかな。
 服装、おかしなとこがあったのかな。

 彼女を騙していた引け目もあって、あたしは上目遣いでおずおずと口を開く。

「ど、どんなこと、かな…?」

 美香ちゃんは笑顔のまま、挑戦的な目をあたしに向けた。

「佐伯先輩が、春樹先輩のことを大好きなんだってことが今日、よーく判りました」
「え!?」
「あたし、負けませんからね」

 美香ちゃんは宣言をすると、そのまま駆け足で背を向ける。

 あたしはその場を動けず、ただ口をぽかんと開けた。
 美香ちゃんにあたしの本当の気持ちを見抜かれてしまったからだ。

 第9話・バレンタイン編に続く。
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/388/

拍手[9回]

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恋愛小説には大事なスパイスですねw
美香ちゃん、ログインしましたね~。

本当に邪魔ものだけど
二人の距離を近づけるには
大事なスパイスですね~///

美香ちゃんは美香ちゃんなりに
精一杯頑張っているところは
可愛いなぁと思いました。
黒猫月(くろねこづき): 2012.08/03(Fri) 21:56 Edit
無題
『歩くときに首を振るなって命令された鳩はきっとこんな気分だろう』
この一文が、すごーく春樹君の心情を表していて好きです。

二人のラブラブにあてられない美香ちゃんのタフさに感服ですね。
それでも諦めない美香ちゃん、彼女にも何らかの形で幸せになってほしいですね。

執筆お疲れさまでした(●´∀`●)
こころ: 2012.08/25(Sat) 16:08 Edit
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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
41
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

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 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
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