夢見町の史
Let’s どんまい!
May 18
3対2で派手に戦っていらっしゃる。
うちのお店の前でそういうのはやめてほしい。
きっかけはというと、3名の若者がうちのスナックに入るかどうかで迷っているところを、俺から声をかけさせていただいた。
だいたいの料金を説明すると彼らは「じゃあここにしようか」と店内に足を踏み入れようとする。
このとき、この3人は既に揉め事を起こした後だったのだろう。
遠くから2名のお兄さんが追ってきた。
3人組は「追ってきたぜ? どうする?」などと余裕を見せている。
「ンだよ、殴っちゃえばいいじゃん」
「あんなのほっといて飲もうぜ」
なんか、この人たちに声をかけたのは失敗だったっぽい。
タチが悪くていらっしゃる。
3人組も追っ手の2人も、大学生よりは少し年上といった風で、どこか怖そうなファッションだ。
追いついた側がいきなり相手の胸ぐらを乱暴に掴み、「テメーこっち来いよ!」と怒鳴った。
で、乱闘騒ぎだ。
超怖い。
俺だったら危なすぎて相手の胸ぐらなんて掴めない。
そんなことして手首をコキャっとやられたら痛いではないか。
その無防備さがまず不気味だ。
もの凄い勇気だ。
幸い近くをお巡りさんが徘徊している時間帯だから、彼らが怒られるのは時間の問題だ。
でも、さすがに5人がここまでエキサイトしていると、俺1人では止められない。
とここで、見ていた俺は度肝を抜かれることになる。
怖そうなお兄さんたちは合計5人もいてそれぞれが頑張って戦っていらっしゃる。
なんてこった。
強い人が1人もいない。
ある程度飲んでいるのだろうけども、本気のグルグルパンチを見るのは初めてだ。
この人たち、なんでめちゃくちゃ弱いのに喧嘩っ早いのだろうか。
大人の馬力で本気のグルグルパンチ。
怖がるべきか笑うべきか判断に迷う。
ズシャア!
そのような音がして目をやると、1人がすっ飛んで地面にスライディングを決めていた。
なんでそうなる。
「オラァ!」
「ンざけんじゃねえ!」
声だけ聞けば立派なところが逆に哀愁を感じさせた。
俺がこの怒鳴り声を翻訳すれば、次のようになる。
「オラァ! グルグルパンチ! グルグルパンチ!」
「ンざけんじゃねえ! 両手パンチ! 両手パンチ!」
実は仲良しなのだろうか。
「ッってんじゃねえぞコラー!」
叫んでいるだけで一切戦っていない人も1人いる。
余っちゃったのだ。
ってゆうかこれ、決着がつく日は来るのだろうか。
あと俺、何も見なかったことにして店に戻っていいですか?
幸い武器も持っていないみたいだし、ここは放置で良さそうに思える。
とここで盗難自転車についてパトロールをしていたお巡りさんたち登場。
「やめろやめろ!」
ナイスタイミングだ。
今度こそ安心して俺は店に引き返す。
「表の彼ら、なんだったの?」
飲みに来ていた常連さんも一部始終を見ていたらしい。
店のドアが開いていたから、カウンター席からも外が望めたのだろう。
「なんかね、喧嘩してた。お店に入った後じゃなくて良かったよ」
と手短に説明する。
「喧嘩だったのか。俺てっきり、大はしゃぎしてるのかと思ったよ。キスでもしようとしてるのかと」
「まあ、そんなようなもんだよ」
ある意味平和を感じた1日でした。
May 18
will【概要&目次】
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/207/
<そこはもう街ではなく・3>
「涼! 下がってろ!」
叫ぶと同時に大地は木刀を小さく振り下ろし、女友達の右手首を打つ。
そうでもしなければ自分が刺されてしまうからだ。
彼女は手首の痛みを感じたらしく顔を歪めたものの、それでもひるまずに大地にナイフを向けようと身構える。
瞬間、大地は木刀を大きく振りかぶると、目で殺気を演出した。
反射的に頭部をかばう彼女に対し、大地は木刀を構えたまま下から蹴りを放ち、再び友人の手首に打撃を与える。
ようやく相手の手からナイフが離れた。
数歩下がって間合いを広げると、大地は落ちた刃物を後方へと蹴り去る。
固い物がフローリングの廊下を滑る音がして、ナイフが戦闘の圏外に行ったことを耳で確認した。
大地の目線の先には、見慣れた顔が手首をさすっている。
「どういうつもりだ、サヨ」
木刀を構えたまま、大地は訊ねた。
サヨというのはいわゆるニックネームで、正確には小夜子が本名だ。
涼と同じく、彼女も中学時代からの友人である。
仲間内では最もおとなしく、たまに勘違いをしておかしな発言をする、いわゆる天然ボケタイプというやつだ。
以前から吹奏楽部に所属するなどし音楽を愛し、今は音大に通っている。
普段のファッションはおっとりした顔つきに合ったものが多く、派手さはない。
この日も白のコートに茶色いブーツを履いていた。
大地が再び小夜子に問う。
「サヨ、お前、何があったんだ?」
彼女が問答無用で刃物を、おそらく殺すつもりで大地に向けてきた理由がどうしても解らなかった。
小夜子は手首をさすることをやめ、静かに両手を胸の前まで持ち上げる。
手首は痛むであろうが、彼女の骨に異常がないことは大地がよく解っていた。
木刀を振るった際もしっかりと手加減をしていたからだ。
小夜子が取った構えは、戦いのためのであることが一目瞭然だった。
肩まで伸びた黒髪を耳にかけ、小夜子はにやりと口の端を歪ませる。
大地は内心「くそ」と毒づいた。
車1台が通れるぐらいの小道の途中に、小夜子が住む一軒屋はある。
その玄関を最初にノックしたのは涼だった。
「こんにちはー! 誰かいませんかー!」
街に電気が供給されていない今、インターホンは意味を成さないのだ。
普段だったら小夜子本人であったり、彼女の兄であったり、または両親などがドアから出てくるところなのだが、さて今日はどうだろうか。
「サヨー! いないかー!? いないみたいだな」
中からの反応を感じ取れなかった涼は扉を叩くことをやめ、ドアノブを掴んで回す。
すると何の抵抗もなく玄関は開いた。
鍵がかかっていなかったのだ。
「サヨの奴、無用心だな」
涼がそうつぶやいていた。
もちろんこれは「小夜子が消えていなかったら」の話で、街の住人と同じく彼女が姿を見せないことは充分に有り得る。
小夜子の家に2人で入り、大地は行儀良く並べられた靴に目をやる。
家族の物と思われる靴の中に、年頃の女性が履くようなものはなかったが、念のため涼に訊ねる。
「こん中にサヨの靴、ある?」
すると涼は「ない」と断言をした。
大地は「そうか」とわずかに首を傾げる。
涼は大地と違って戦いには向かない反面、観察力と記憶力が凄まじい。
ニュース番組を1度見ただけでも内容やデータの全てを記憶し、細々とした場面で役に立ってきていた。
他人の生年月日や年齢は聞いただけですぐに記憶するし、ほんの少し髪を切っただとか指輪を変えたとか、細かいことにもすぐに気がつく。
その涼が「小夜子の靴がない」と言うからには、小夜子もまた大地たちと同じく消えなどおらず、外出してしまった可能性を示唆していた。
「ん?」
と涼が視線を下に下げる。
並べられた靴のすぐ先はフローリングの廊下が伸びていて、居間とダイニングに続いているはずだ。
靴を脱いだ者がスリッパを履くまでの間、足を冷やさぬようにと玄関先には白い小さな絨毯が引かれている。
その絨毯に、靴のまま上がり込んだかのような足跡が薄っすらと見受けられた。
男のそれよりは小さな足跡に思えたが、何者かが侵入したことは間違いなさそうだ。
「俺が先行くよ」
有事の際があった場合、足元が靴下では滑ってしまって踏ん張りが利かなくなる。
そこで大地は侵入者に習い、ブーツのまま上がり込み、絨毯を踏んだ。
小夜子の家に刻まれた足跡は極めて薄いものだった。
今日び土の上を歩くことがほとんどないためなのだろう。
やや小振りな足跡は3歩ほどで途切れていて、右手の階段を上ったのか居間に向かったのかがはっきりしない。
小夜子はこのとき、既に息を殺して大型のナイフを構えていたに違いなかった。
大地がダイニングに続くドアをくぐった瞬間、胸を目がけて刃が直進してきたのだ。
大地がこれを直撃させることなく対応できたのは、木刀の中心部を持って警戒をしていたからに他ならない。
もし柄の部分を握ったままだったら、狭い廊下で木刀は邪魔にしかならなかったはずだ。
反射的にナイフを木刀で受け流すと同時に、大地は信じられないものを見た。
相手が小夜子だと判明したのはこの瞬間である。
人違いで襲われた可能性を考慮し、大地はわずかに後退し、小夜子の反応を伺う。
「俺だよ、サヨ」
しかし小夜子は口元に笑みを浮かべると左半身を前にし、ナイフを右手にしたまま向かってくる。
背後にいるはずの涼に対し、大地が怒鳴ったのはこのときだ。
「涼! 下がってろ!」
その後の小競り合いで小夜子の武器を取り除けはしたものの、大地は様々な疑問を頭に描いていた。
小夜子は自宅内であるにもかかわらず薄茶色のブーツを履いていて、玄関にあった足跡の持ち主を限定させている。
つまり小夜子はわざわざ玄関で靴を履いてから自宅に潜伏していたことになる。
さらに、小夜子の取る戦闘体勢にも府に落ちないものがあった。
まるで隙がないのだ。
一朝一夕でできる構えではなく、明らかに訓練を受けた者の体勢だ。
例えば小夜子が催眠術などで操られていたとしても、こうはならない。
本人に戦闘経験がないためだ。
瞬発力や筋力が増強することはあっても、構えが玄人に匹敵するわけがない。
大地は自然と、以前通っていた道場のことを思い返していた。
ある程度、腕が熟達すれば道着の着こなし方を見るだけで相手の力量を知ることができる。
構えを見るということは、それに似ていた。
今目の前にいる小夜子は間違いなく実力者だ。
中学から楽器の演奏ばかりしていた友人がこの雰囲気を出すことは年単位の稽古が必要で、大地が知る限り小夜子にはそのようなことに時間を費やすことがなかったはずだ。
ライバルの和也と一緒になって小夜子に護身術を教えたときも、彼女は不器用を極めたかのように奇妙な動きを繰り返すだけだった過去は印象深い。
大地は木刀の真ん中を握りつつ腰を落とし、目で小夜子を威圧をする。
小夜子からすればこれにより、素手で襲い掛かれば返り討ちに遭うことが明白になっているはずだ。
同時に彼女の逃走を未然に防ぐ効果もある。
そうして相手の動きを封じておき、大地は確信を口にする。
「お前、サヨじゃないな? 誰だ?」
「なに!?」
背後から涼の慌てたような声色が届く。
「サヨじゃない!?」
「ああ」
大地は小夜子に似た女から目を逸らさずに告げる。
「もしこいつがサヨだったら、ここまで隙のない構えは取れない」
「大地君、勘がいいのねえ」
小夜子と全く同じ声だ。
いや、それよりもこいつは俺の名前を知っている。
そのことのほうが重要だ。
大地はさらに考えを巡らせた。
姿形が小夜子と同じこいつは、俺のことを知っている。
その上で襲いかかってきたわけか。
攻撃の1つ1つは、こちらが抵抗しなかったらまず間違いなく致命傷を負わされていた。
つまり殺す気で向かってきたということになる。
「目的はなんだ? お前は誰だ」
街から住人が消えたことと無関係ではあるまい。
心の中で、大地はそう直感していた。
小夜子そっくりの女は「内緒よう」と、再び静かな微笑みを浮かべている。
<万能の銀は1つだけ・3>に続く。
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/243/
May 07
終電間際の駅で切符を購入したところ、声をかけられたのだ。
相手の表情を見た瞬間、俺は用件を悟る。
先方の顔にはこう書いてあった。
「お金くれ」
急がなきゃ終電を逃しちゃうではないか。
問答している時間はない。
お金をあげたくない貧乏な俺は、このピンチをどう凌ぐか、早くも計算を始めている。
しかし俺に声をかけてきた相手は、ことカツアゲに関しては無敵のキャラクターだった。
チンピラでも不良でもない。
所々歯の抜けた、ホームレス風のおばあさん。
気弱そうな顔つきだ。
この時点で冷たくなんてできない。
この人、自分の風貌を解ってやっているのだろうか。
なんてズルい大人なんだ。
「友達がファミレスで待ってて、すぐにお金を持っていかなくちゃいけないんです」
嘘だ。
直感でそう思った。
どう見ても彼女はファミレスで食事って感じでも、友達がいる風にも見えない。
まだ「電車賃がない」のほうが説得力あるのに。
俺はいざとなれば冷酷だ。
おばあさんの存在なんて、宇宙から見れば微生物の1匹なのだ。
そんなちっぽけな者の言うことに俺が耳を貸すと思うか?
「お金持って、すぐに行かなきゃいけないんです」
「うんうん、そうなんですかー」
耳、貸しちゃった。
ごく自然にシカト失敗。
俺には向いてなかった。
宇宙から見れば、俺だって微生物だからだ。
しかし、お金だけは絶対にあげない。
働いて稼いだ金だからだ。
「少しだけでもいいんです」
額の多い少ないの問題ではない。
お金をあげるという行為そのものを、俺は絶対にしない。
絶対にしないぞ。
あげるとしても、せいぜい500円までだ。
「お願いします。ちょっとだけでも」
ふふん、甘い!
切符を買ったばかりで財布を開いている状態で声をかけてきた点は賢いが、あんたは俺を知らなすぎる。
見ろ。
ちょうど財布に500円玉が入っているではないか。
「お願いします、お願いします」
くどい!
もうすぐ電車が出てしまうのだ!
悪いが他を当たってくれ。
これをやるから許してください。
手早く500円をあげて、俺は手を振る。
「じゃあ、気をつけてー!」
電車に間に合うためであって、俺は決して負けたわけではなくて、そもそもおばあさんが「ファミレスに友達を迎えに行く」って言うもんだから、いやそれは嘘かも知れないけれど、でも少なくとも目上の方がお金に困っているのは事実なわけで、いやもちろん俺ぐらいのレベルになれば簡単に冷徹になれるんだけど、たまには遊んでやろうと思って、つまり魔が差した的なアレなだけで、俺は決して、
もういい。
April 28
褒められて嬉しくなかった一言。
「お前はなんで金にならない才能ばっかり凄いんだ?」
皆さん、おはようございます。
以前、ミクシィで作ったコミュニティが書籍化されるとお伝えしたことがあるのですが、皆さん記憶にございますでしょうか?
コミュニティ参加者様17万人から寝言を投稿していただき、その中から特に素晴らしい作品を選出しました。
1つ1つにコメントを綴りながら、その完成度の高い寝言リストに笑ってしまって作業がはかどらないこといったら。
印税の寄贈先をみんなで相談して、メイク・ウィッシュというボランティア団体に全額を寄付することになってテンションが上がったことも。
この団体は難病の子供たちの夢を叶えるといった活動を行っているんですね。
色んなことを、コミュ参加者様たちと一緒に、ずいぶん長らく頑張ってきました。
大変ながらも今となっては良い思い出だらけです。
そんな期待が込められた寝言本「この、リンス泥棒! ――変な寝言が忘れられない」がいよいよ発売されることとなりました。
発売日は6月10日を予定しています。
さらに嬉しいことに、アマゾンでの予約が本日よりスタートしました。
PCからの予約アドレス。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4880961787/mixi02-22/
携帯電話からの予約はこちらです。
http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d.html/ref=mp_s_a_1/378-7220146-7676864?qid=1240893809&a=4880961787&sr=8-1
寝言って、普通に耳にしただけで充分に面白いじゃないですか。
そんな寝言たちの、さらに素晴らしい言葉だけを選出させていただき、本にまとめました。
例としては、こんな感じです。
大勢の夢から出た寝言が、難病の子供たちの夢を叶える。
なんと素晴らしい夢の連鎖でしょうか。
それこそ夢にも思いませんでした。
あとがきにも書いたのですが、メイク・ウィッシュに携わる全ての子供たちへ。
いい夢見ろよ!
というわけでですね、是非この傑作集を皆さんもご覧いただきたく、あざとくも宣伝させていただきます。
印税は全額寄贈されますので、ボランティアの一環として、または親しい方へのギフトとして、もちろんあなたご自身が笑うため。
完成度の高さは保障しますので、是非お求めになってやってください。
色んな人が助けられます。
ここでちょっとしたQ&Aです。
今までいただいたお問い合わせに回答させていただきます。
Q・書店で予約はできますか?
A・書店でも展開する予定だそうですが、今はまだ書店に書籍の販売情報が回っていないのだそうです。
現状ではネットを通じ、アマゾンで予約する方法しかありません。
また、いやらしい話なんですけれど、アマゾンで多数の予約が入りますとランキングが上がって注目されますので、是非利用してあげてください。
それでも、どうしても書店で予約がしたいという方はもう少しだけ時期を置いてから予約してみてくださいませ。
Q・日記で宣伝してもいいですか?
A・最高です。
結婚してください。
※冗談です。
すみません。
悪いものではありませんので是非是非、多くの方に広めてあげてください。
可能な限りお礼をコメントしに参ります。
もちろん、俺まで予約してしまいましたよ。
出版社に言えばそれぐらい分けてもらえるだろうに。
何故か自腹。
もちろん、俺まで予約してしまいましたよ。
出版社に言えばそれぐらい分けてもらえるだろうに。
何故か自腹。
それでは20万人が笑った実績を、どうぞお楽しみください。
予約アドレス(PC用)。
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予約アドレス(モバイル用)。
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ここで紹介する以外にも本を売り込むためのアイデア求みます。
めさでした。
笑顔は広がるほうが良い。
April 27
純粋に神秘的な話題だから、熱も自然と篭った。
「宇宙ステーションってあるじゃないですか!」
職場のスナックでは俺やお客さんと同様、フロアレディのHちゃんも目を輝かせている。
「そこで住んでる人の話なんスけどね!」
へえ、もう宇宙空間で暮らせるんだね。
「そうなんスよ! 凄くないスか!」
Hちゃんが放つ次の言葉に、俺は耳を疑うことになる。
「で、その人が地球を見ようとして、窓開けたんスよ!」
窓、開けちゃったのー!?
本当にびっくりだ。
宇宙ステーションの窓がどうして開くように設計されているのだ。
Hちゃんはカウンターに突っ伏しながら「違ーう!」と悶えている。
何が違うのさ。
「窓っていっても、外側の窓なんスよー! 内側の窓は開けてないッス!」
内側の窓?
網戸!?
びっくりしすぎて眼球がこぼれるかと思った。
宇宙空間に蚊がいるのー!?
「違う! もー! あー! もう! 違う!」
さらに顔を赤くし、身悶えるHちゃん。
どうして彼女は「外壁のシャッターを開けた」と言わなかったのだろうか。