夢見町の史
Let’s どんまい!
2007
March 08
March 08
すき焼きを食べてモヒカンになるか、すき焼きを我慢して普通のヘアスタイルを維持するか、悩む時間は意外と短かった。
すき焼きを食べよう。
でも、モヒカンは勘弁してもらおう。
具合が悪いから来ないでくれと言ってあったにもかかわらず、友人2名がうちにやって来ていた。
彼らは、俺が以前貸したゲームを忘れてきたのに、バリカンだけは持ってきている。
俺をモヒカンにする気満々だ。
「めささん、試しに1回だけ! リハーサルだけやってみましょうよ」
「そうですよ。気に入らなかったら本番はナシでいいですから」
よく解らない説得をされる。
これでもし俺がモヒカンになって職場復帰を果たしたら、変な髪型にされたせいで休んでいたと思われてしまうじゃないか。
「もー! 今チャットやってて気が散るから、話しかけないでよ!」
パソコンに向かい、ニート丸出しの拒み方で2人を遠ざけた。
「食材も買ってきましたよ」
ふん。
どうせそれも嫌がらせ効果を狙ってチョイスした食料なんでしょ。
節分の豆の残りとか、スープをどっかに失くしたラーメンとか。
「すき焼きですよ」
ほうら、やっぱり。
そんなこったろうと思っ、…え?
す、き、や、き…?
「そうですよ。ほら、すき焼きの具材」
目の錯覚…?
なんか、牛肉に見える…。
仕事に行けないせいで生活費もない状態だったので、この世に牛肉なる物が存在していたことをすっかり忘れてしまっていた。
確かに、それは牛肉だった。
ネギも豆腐もあるし、シラタキまであるじゃないか。
迷い込んだ砂漠でオアシスの幻を見ているようなものだと最初は本気で思ったが、これは本当にすき焼きセットだ。
「実は、不調が長引いた原因は、牛肉が足りなかったからなんだ…」
果てしなく可哀相な設定を咄嗟に設ける。
「土鍋、あります?」
さっそく調理か!
きゃっほう!
いきなり張り切ることにした。
土鍋はキッチンの下だ!
そのビニールにゴミを入れて!
違う!
カセットコンロはまだ早い!
前半はガスコンロを使うんだ!
包丁はそこ!
「いいからあっち行ってて下さい」
はーい。
おとなしくしてます。
キッチンからはやがて、「なんで醤油がないんだ、この家は!」と、困った時の声がした。
「ってゆうか、どうせすき焼き作ってくれるなら、俺がご飯食べる前に来てよねー」
「え!? めささん、もうご飯食べちゃったんですか?」
「うん。2人が来るちょっと前に」
「だったらなんであんた、食べるペースが俺らと変わんねえンですか」
すき焼きは、本当に美味かった。
久し振りの味だった。
前回のすき焼きがいつだったのかは、思い出せないぐらい遠い過去だ。
「さてと、じゃあやりますか」
片方が腰を上げ、片方がバリカンを準備する。
なんだこの段取り。
「俺、モヒにしないからね!」
「駄目ですよ」
「駄目ってなんだよ! そっちが駄目だ!」
「じゃあ何モヒならいいんです?」
「モヒって属性が既に嫌だ!」
以前彼にはサイト上で、モヒカンについての話題を強引に振ってしまったことがある。
それがきっかけで、友人は何故か俺をリアルでモヒカンにするという迷惑な使命に目覚めてしまっていた。
どこでそんな発想をしちゃったのだろう。
「めささんがモヒカンになったら、いい日記書けると思って」
絵に描いたようなありがた迷惑なんですけど。
「芸人として、もう限界なんですか?」
俺は普通の会社員だ!
「めささんトコの読者さんが、ガッカリしますよ?」
君らが勝手に立てた企画が潰れたぐらいで、ガッカリされてたまるか!
いや、されるね…。
えっと、じゃあ、読者様なんてガッカリすればいい!
「開き直ったー! すき焼きまで食べといて」
あのすき焼きはだって、アレでしょ?
俺に対する日頃の感謝の印とかじゃないの?
「あなたに何を感謝するんですか」
なんかこう、生まれてくれてありがとう的な…。
「だいぶ髪が長いから、中央だけ残して全部刈っても誤魔化せるよね」
「大丈夫でしょ、これなら」
話を聞いて。
今夜泊まってっていいから!
「そりゃ泊まりますよ。もう電車ないんだから」
ですよねー。
ってゆうか違うのー!
会社では奇抜な髪型になっちゃいけないのー!
というわけで、お腹いっぱいになったことだし、もう寝ます。
「その状態だと、半端なモヒになりますよ?」
パーカーのフードを被ります。
おやすみなさい。
早々とベットに横になり、毛布に潜り込む。
2人の目がマジだっただけに、本当に危なかった。
すき焼きを食べよう。
でも、モヒカンは勘弁してもらおう。
具合が悪いから来ないでくれと言ってあったにもかかわらず、友人2名がうちにやって来ていた。
彼らは、俺が以前貸したゲームを忘れてきたのに、バリカンだけは持ってきている。
俺をモヒカンにする気満々だ。
「めささん、試しに1回だけ! リハーサルだけやってみましょうよ」
「そうですよ。気に入らなかったら本番はナシでいいですから」
よく解らない説得をされる。
これでもし俺がモヒカンになって職場復帰を果たしたら、変な髪型にされたせいで休んでいたと思われてしまうじゃないか。
「もー! 今チャットやってて気が散るから、話しかけないでよ!」
パソコンに向かい、ニート丸出しの拒み方で2人を遠ざけた。
「食材も買ってきましたよ」
ふん。
どうせそれも嫌がらせ効果を狙ってチョイスした食料なんでしょ。
節分の豆の残りとか、スープをどっかに失くしたラーメンとか。
「すき焼きですよ」
ほうら、やっぱり。
そんなこったろうと思っ、…え?
す、き、や、き…?
「そうですよ。ほら、すき焼きの具材」
目の錯覚…?
なんか、牛肉に見える…。
仕事に行けないせいで生活費もない状態だったので、この世に牛肉なる物が存在していたことをすっかり忘れてしまっていた。
確かに、それは牛肉だった。
ネギも豆腐もあるし、シラタキまであるじゃないか。
迷い込んだ砂漠でオアシスの幻を見ているようなものだと最初は本気で思ったが、これは本当にすき焼きセットだ。
「実は、不調が長引いた原因は、牛肉が足りなかったからなんだ…」
果てしなく可哀相な設定を咄嗟に設ける。
「土鍋、あります?」
さっそく調理か!
きゃっほう!
いきなり張り切ることにした。
土鍋はキッチンの下だ!
そのビニールにゴミを入れて!
違う!
カセットコンロはまだ早い!
前半はガスコンロを使うんだ!
包丁はそこ!
「いいからあっち行ってて下さい」
はーい。
おとなしくしてます。
キッチンからはやがて、「なんで醤油がないんだ、この家は!」と、困った時の声がした。
「ってゆうか、どうせすき焼き作ってくれるなら、俺がご飯食べる前に来てよねー」
「え!? めささん、もうご飯食べちゃったんですか?」
「うん。2人が来るちょっと前に」
「だったらなんであんた、食べるペースが俺らと変わんねえンですか」
すき焼きは、本当に美味かった。
久し振りの味だった。
前回のすき焼きがいつだったのかは、思い出せないぐらい遠い過去だ。
「さてと、じゃあやりますか」
片方が腰を上げ、片方がバリカンを準備する。
なんだこの段取り。
「俺、モヒにしないからね!」
「駄目ですよ」
「駄目ってなんだよ! そっちが駄目だ!」
「じゃあ何モヒならいいんです?」
「モヒって属性が既に嫌だ!」
以前彼にはサイト上で、モヒカンについての話題を強引に振ってしまったことがある。
それがきっかけで、友人は何故か俺をリアルでモヒカンにするという迷惑な使命に目覚めてしまっていた。
どこでそんな発想をしちゃったのだろう。
「めささんがモヒカンになったら、いい日記書けると思って」
絵に描いたようなありがた迷惑なんですけど。
「芸人として、もう限界なんですか?」
俺は普通の会社員だ!
「めささんトコの読者さんが、ガッカリしますよ?」
君らが勝手に立てた企画が潰れたぐらいで、ガッカリされてたまるか!
いや、されるね…。
えっと、じゃあ、読者様なんてガッカリすればいい!
「開き直ったー! すき焼きまで食べといて」
あのすき焼きはだって、アレでしょ?
俺に対する日頃の感謝の印とかじゃないの?
「あなたに何を感謝するんですか」
なんかこう、生まれてくれてありがとう的な…。
「だいぶ髪が長いから、中央だけ残して全部刈っても誤魔化せるよね」
「大丈夫でしょ、これなら」
話を聞いて。
今夜泊まってっていいから!
「そりゃ泊まりますよ。もう電車ないんだから」
ですよねー。
ってゆうか違うのー!
会社では奇抜な髪型になっちゃいけないのー!
というわけで、お腹いっぱいになったことだし、もう寝ます。
「その状態だと、半端なモヒになりますよ?」
パーカーのフードを被ります。
おやすみなさい。
早々とベットに横になり、毛布に潜り込む。
2人の目がマジだっただけに、本当に危なかった。
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