夢見町の史
Let’s どんまい!
August 20
でも、できない。
たまになんだけど、「バトン」なるものを回してもらうことがある。
様々な質問がリスト化されていて、回された者はそれに答え、別の誰かに同じ質問集をやってもらうというシステムだ。
お手軽である。
ネタに困ったときなんか最適だ。
なんだけど、なかなかできない。
時間がなかったりスペースがなかったりで、こういったバトンは必ずといっていいほどスルーしてしまう。
それに俺は、人と同じことをしたくない派だったりする。
なんて社会不適合者的。
でもなんか、たまに興味深いバトンもあるし、でも俺はオリジナルが好きで、でもなんか余興っていうか、たまにはバトンに手を出し、いやでもそれはポリシーに反するし。
でもみんなもやってるし、でもでも。
葛藤の果てに思いつく。
そうだ。
自分でバトンを作っちゃえばいいんじゃないか。
というわけで、俺が俺に回してくださいました。
題して、「何これバトン」です。
いきまーすよ。
Q1・心の目で何を見つめている?
A・いきなりの無茶振りにキーボードを叩く手がピタリと止まりました。
Q2・このバトンの作者をプロファイリングしてください。
A・まだ2問目なのにか。
でも真面目な話、このバトンの作者は知性と品格がとっても凄い感じが否めません。
いやマジで否めません。
否めませんとも。
さぞかし素晴らしい人に違いない感じです。
将来、お札になるんじゃないか?
自分大好きであることは間違いない。
Q3・お前は今、酩酊状態ですか?
A・なんでそう思われたのか、逆にこっちが問い正したい。
Q4・上記の質問で、「なんでそう思われたのか、逆にこっちが問い正したい」と答えた人は、ツッコミのセンスがありません。
A・ンな…!
Qとか付いてるクセに質問じゃないだと…!?
Q5・虹色の鏡を向けられた天秤は儚く散って天空の彼方までそびえ立つ花びらの光が朝日とともに降り注ぎ心の闇を果てしなく見積もりますか?
A・早口言葉?
なんで最後の最後で見積もるの?
Q6・質問しているのはこっちです。
A・すんません。
Q7・二兎を追えない程度で夢が追えるか?
A・え、あ、はい、気をつけます。
Q8・これを知られたら絶対に嫌われるといった秘密を3つ教えてください。
A・ホントすんませんでしたー!
Q9・今から「ときめきラブリーポエム・愛の一方通行」というタイトルで詩を書いてください。
A・そんなタイトルを考えた時点で恥ずかしい。
Q10・質問は以上ですか?
A・え!?
Q11・それではこのバトンを3名の方に回してしまっては迷惑なので、お前がもう1度最初からやってください。
A・再び一人相撲!?
Q12・キャッシュカードの暗証番号は?
A・バトン終ったんじゃなかったのかよ!?
これ、やってみたい方はご自由にどうぞですよ。
それにしてもホント「何これバトン」だったなー。
実にけしかりません。
作った奴の顔が見たい。
August 16
めさ君が、オフ会参加者様たちに俺の話をしている。
「まっこいさんはね? 俺より3つ年下なんだけど、顔が怖いから『さん付け』で呼んでるんだー」
何故それを誇らしげに言うのか。
白楽駅から会場のイージーバレルに向う道中、主催者から受けた依頼を回想する。
めさ君は俺に、「会場で受け付け係をやってほしい」と頼んできていた。
「見てアレ。みんな、まっこいさんを見て。なんかマフィアじゃね? マタギみたいなガタイしてからに」
言いたい放題だ。
なんでこんな奴の頼みを聞き入れてしまったのだろう。
イージーに到着すると、俺は一足先に入店をして、入口に設けられたテーブルへと向う。
めさ君の声が聞こえた。
「まっこいさんが門番だから、彼を倒した人だけ中に入ってねー!」
聞いてねえ。
何を言い出すのだ、この主催者は。
悪質な冗談を経て、一同はもちろん俺と戦うなんてこともなく、誰もが無傷で会場に収まる。
皆で乾杯をしてから、主催者が切り出した。
「人数が多いから、1人1人自己紹介してたら、それだけで終電の時間になっちゃう。誰か自己紹介の代わりになる自己紹介を考えてよ」
まさかの丸投げ。
自己紹介の代わりになる自己紹介?
自分が何を言っているのか解っているのだろうか。
めさ君は毎年のようにオフ会を開催しているクセに、果てしなく頼りない。
ある程度お酒が進むと、彼は胸を張ってこう主張した。
「みんな聞いて~! 俺に仕切れるのはここまでです」
びっくりして、俺の顔が怖くなっちゃった。
こんな駄目大人には任せておけない。
俺がしっかりしなくては。
多数いる参加者様に、どうにか楽しんでいただかなくては。
そこからはもう、めさ君シカトで色々と楽しんだ。
心理テストやモノマネをして、皆と心を1つにしてゆく。
熱気が高まる。
で、めさ君がキレた。
「お前たちー! 俺がいないのに、なんでみんな楽しそうにしてんの!?」
お前が何もしないからだ。
「誰のオフ会か言ってみろォー!」
もはや俺のオフ会になっている。
「俺さあ、もう何年もオフ会やってるけど、乗っ取られたのは初めて。…っこの、テロリストが!」
マタギだのテロリストだの怖い顔だの色々と好き放題言いやがって!
今みんなにクイズ出してるところなんだから、少しおとなしくしていろ!
「クイズ~? じゃあ、俺が出題するね?」
仲間に入りたいのか。
腐っても主催者だからな、しょうがない。
出題権、譲るよ。
「じゃあ今からクイズ出すけど~、俺は酔っ払ってるから、俺がどんなクイズを出すか当ててくぅ~ださい!」
斬新な問題すぎだろ。
超能力者でも求めているのか?
ってゆうか、めさ君。
そろそろ朝なんだし、お開きの時間じゃないの?
「じゃあ、送ってって~」
じゃあって何だよ!?
オメーん家、ここから徒歩3分じゃねえか!
福岡や大阪から足を運んでくださった方々に謝れ!
「ういういよ~」
意味わかんねえ。
ったく、仕方ないな。
足元ふらふらしてるし、危なっかしいから、送ってやるとするか。
オフ会の幕が下りようとしていた。
心優しい参加者の皆は、帰ろうとするめさ君なんかのために「お気をつけて」などと心配をしてくれている。
「なんで俺が気をつけるの~? 気をつけるのはお前たちでしょ~?」
自力で立てもしない男が、何を言い出すのか。
実に性根が腐っている。
ホントもう、参加してくださった皆さん、めさ君はもう駄目なんで、代わりに俺から挨拶させてください。
皆さん、本当にお疲れ様でした!
次回のオフ会にも、是非また来てやってください!
その日まで、ごきげんよう!
で、これって、誰のオフ会なんだったっけ?
August 15
「人数が多いから、1人1人自己紹介してたら、それだけで終電の時間になっちゃう」
というわけで、自己紹介を割愛するといった異例のスタートを切る。
今回のオフ会も、毎度お馴染みのバーに場所をお借りした。
ありがたいことに参加者様が集まってくれたので、イージーバレルは超満員で、マスターが忙しそうだ。
俺は主催者ということで、何かとうろちょろする。
なるべく参加者様全員とお喋りしたかったからだ。
「みんな飲んでますか? ところで、この中でさ、『自分は遠くから来ました』って方、いらっしゃる?」
「僕、福岡から来ました」
「福岡って何県?」
言葉に詰まらせるような質問を投げかける31歳。
「何県っていうか…。九州です。博多」
「そう言ってくれたら解る! ラーメン売ってる町でしょ?」
ラーメンぐらいどこでも売ってる。
「地理でいえば、九州大陸の右上だよね?」
「ええ、そうです」
九州を大陸扱いしたことはスルーされた。
「あの、めささん。スイカを用意してきたんですけど」
その青年は、抜き手によるスイカ割りが見たいのだと言う。
「じゃあ割りますか。店内でやると床を汚しちゃうから、見たい方は表までご足労願いまーす」
ところがどっこい、俺はこのスイカ割りを失敗させてしまった。
スイカに刺さった指は、果肉を貫通させるまでには至らなかった。
「抜き手を失敗したの、初めて…」
ショックの色が隠せない。
すると他の参加者様が、俺のリベンジにと、わざわざ近所から新たにスイカを買ってきてくださったではないか。
「めささん、これ」
「わざわざ買ってきてくれたの!? ありがとう! じゃあ今度こそ割るよ! みんな、スイカ割りのリベンジしまーす! 見たい方は、もう1度表まで出てくーださい!」
2度の失敗は許されない。
ミスったら、すっごくカッコ悪いからだ。
俺はスイカを地面に置き、指を伸ばして揃える。
気を集中させ、野菜相手にマジになる。
目をカッと見開き、割りますと宣言をした。
ところがです。
このスイカは、めっちゃ硬かったのです。
思わず敬語で書いてしまうほど、バツが悪いことになりました。
スイカは、どんな角度から見ても無傷でした。
「こんなの割れない! 無理!」
とても武道の心得がある人のセリフとは思えない。
とにかくスイカは、マジで硬かった。
ガタイの良い友人に思いっきりチョップしてもらっても、ちょっぴりヒビが入っただけだ。
間違いなく、浜辺でやる普通のスイカ割りでも割れないタイプのスイカであろう。
この頑丈さなら、サッカーぐらいできるんじゃないか?
「まさか、スイカ相手にマジになる日がくるとはな」
カッコイイんだか悪いんだか判らない言葉を口にする。
俺は本気のレベルを「対野菜用」ではなく、「ライバルと組み手をするとき用」にまで引き上げて、結局は手刀で武道家泣かせなスイカを分断した。
なんか、めっちゃやるせない気分だ。
店内に戻ると、皆それぞれが会話に花を咲かせていて、大きな輪や小さな輪が完成されている。
なかなかの盛り上がりだ。
爆笑の声が何度か起きていた。
「お前たちー! 俺がいないのに、なんでみんな楽しそうにしてんの!? 誰のオフ会か言ってみろォー!」
どこまでも器のちっちゃい主催者である。
「あの、めささん?」
ん?
「めささんは、浴衣は着ないんですか?」
それは、男性用の浴衣のことでしょうか。
「ううん。女の人用の浴衣。着てくださいよー」
俺はもちろん、何度も嫌がりました。
思わず敬語で書いてしまうほど、とっても恥ずかしいことじゃないですか。
それなのにこの女子は、わざわざトイレで着替え、自分の浴衣を俺のために準備してくださったのです。
頼んでもいないのに。
「着ないってば! だって脱ぐ頃になったら、きっと俺は酔ってるんだよ? 自分じゃ脱げなくなっちゃう」
浴衣が脱げなぁい。
なんてことになってしまう。
「いいから着てくださいよー」
「そうだそうだー」
「ゆーかーた! ゆーかーた!」
なんか浴衣を着ろ派の人が増えてる。
必死の抵抗もむなしいことになるに違いない。
俺は腹を決めた。
「じゃあ、着るけどさ。脱ぐとき俺がホントに酔ってたら、脱がせて。帯を引っ張って俺をクルクル回して。殿みたいに脱がせて」
今宵の俺も、絶好調に情けない。
浴衣を着れば化粧をされる。
俺がばっちり気持ち悪いことになった。
そんな時に限って、奴は現れる。
中学からの腐れ縁で空手のライバルでもある、トメだ。
「うおおー! 本物のトメさんだー!」
「マジ!? 本物!?」
皆さん喜んでいらっしゃるが、俺としてはトメに女装した今の姿を見られたくない。
トメは後輩と一緒だった。
その後輩というのが、俺と同じ会社で、空手部時代からの後輩だったりする。
やっぱり今の姿を見られたくない。
俺は顔を伏せ、完璧に気配を殺した。
俺クラスになると、一瞬にして存在感を消すことが可能なのである。
トメが口を開いた。
「おいオメー、気持ち悪い格好すんなよ」
気配を消してるそばから発見される。
さすがは俺のライバル。
察知能力がもの凄え。
後輩は背後から、俺の肩を叩いた。
「もう先輩とは思いませんよ」
なんでそう簡単に見つけるの?
俺はお酒を飲むことにした。
輪の1つに入り込む。
至福の瞬間だ。
私服の瞬間はいつくるのだろうか。
しかし楽しいものだ。
参加者様たちと、俺は様々な話をさせていただいた。
トメと釣りに行くと何故かフグしか釣れない。
そんなエピソードを語っていて、思いつく。
せっかくトメ本人がいるのだから、これを利用しない手はない。
「おーい! トメー!」
悪友を呼び寄せる。
「お前が幽霊に蹴り入れたときの話、してくれよ」
以前に書いた出来事だけど、それを読むのと体験者本人から語られるのとでは、また違いがあるであろう。
なんというかトメは以前、金縛りを筋力で解いて、子供の幽霊に蹴りを入れ、壁まですっ飛ばしたことがあるのだ。
その話を皆に聞かせてやりたかった。
あんなに笑える霊体験、滅多にない。
トメは意外にも、お喋りが上手だ。
淡々と語り、何気に説明も細かく、つい聞き入ってしまう。
この日もトメは、初めて聞く者にも解るように丁寧に状況を説明していた。
俺に話してくれたときよりも、ずっと丁寧だ。
なんでだ。
そんな話、今まで知らなかった。
なんて部分が多々あった。
やるせません。
ところで俺は、いつになったら浴衣を脱げるのだろうか。
オフ会は朝方まで続く。
まだまだ酒席はこれからだ。
August 14
そのことが俺たちを困らせている。
「拳に、こう装着する感じの武器、あるじゃん。鉄のやつ」
「ああ! あの、なんか、殴られたら痛い感じの!」
俺もマスターも「メリケンサック」という名称を忘れ、オリジナルの手話みたいな様子のおかしい動作で誤魔化しながら会話を成立させている。
イージーバレルはバーなのに、なんでメリケンサックなどという物騒な話題になったのか。
よくわかんないけれど、とにかくもどかしい。
メリケンサックという単語が、どうしても思い出せない。
マスターも、俺と同じようなジレンマに陥っているようだ。
「確か、簡単な単語を2つ組み合わせたような名前だったよね?」
ですね。
何とかナックル、とかじゃなかったでしたっけ?
「ナックルかあ。そうそう、そんな感じだよね。メキシコナックル?」
なんでメキシコ?
「だってメキシコ人が持っていそうじゃない」
メキシコ人が持っていそうなのは、ちっちゃいギターですよ。
「そうかあ。メキシコじゃないかなあ。じゃあ、フレンチナックル?」
軽くない。
あんなの付けたら、むしろパンチ重くなりますって。
「確かに。う~ん」
あ!
「ん?」
思い出しました!
メリケンサックだ!
「ああ、サックね!」
知り合いの外人みたいに言わないでください。
でもそう、メリケンサックだー。
やっと思い出せた。
「ほら! やっぱりメキシコっぽいじゃん」
えっと、どこがでしょう?
ってゆうか、アレってそもそも、なんでメリケンサックっていうんでしょうね?
メリケンって何だろ。
「メリケン粉のことを考えたら解りそうだね」
ほう。
「メリケン粉って、アメリカ産の小麦粉でしょう? だから本当は『メリケン粉』じゃなくて『アメリカン粉』だったんだろうけど、当時の日本人が『アメリカン』を『メリケン』って聞き取っちゃったんだろうね。それで『メリケン粉』って呼ばれるようになったんじゃないかな」
なるほどー!
確かに発音良く『アメリカン』って言われたら、メリケンって聞こえる!
「でしょう?」
じゃあ、メリケンサックも、本当はアメリカンサックなわけですね。
「だと思うよ」
いよいよメキシコ関係ない。
「ちッ! 仕方ねえ。認めてやるよ」
バーのマスターが、江戸っ子口調で上から目線なのは何故!?
だいたい、メリケンのウンチクが言えるほどなのに、なんであれほど「メキシコに関係ある」みたいな顔してたのー!?
今宵もイージーに笑い声がこだまする。
明日やるオフ会の打ち合わせが目的だったのに、なんで武器の話題で盛り上がったんだ俺たち。
August 13
誰かに辞退してもらうのは嫌だったので、全員をお招きする所存です。
明日は、いよいよ夏のオフ会だ!
そんなにたくさん椅子がないけど、まあ、どんまい。
立ち飲みを了承してくださった皆さん、ラヴです。
ってゆうか大丈夫か、俺。
ちゃんと全員とお喋りできるのか。
心配だからせめて、セリフの練習だけでもしておこう。
「え~、本日は平日にもかかわらず、お集まりいただき、誠にお前たちはやることがないんですか?」
集合をかけた奴に言われたくない。
「それでは皆さん、グラスを手にしてくぅーださい! あ、でもその前に自己紹介する? いや、先に乾杯を済ませて、飲みながらにしようか? あ、まずは会費を回収しなきゃだよね? どうだろ。皆の意見が聞きたい」
ぐでぐでになる練習をしてどうする。
「ねえ、酔ってもいい?」
お前はやる気満々で合コンに来た女子か。
「そこ! 私語はやめなさい!」
ホントに黙られて会場が静寂に包まれたら困るクセに。
「ぎゃーす! 指がー! 俺の…! 俺の指があーッ! 無理するからだ」
何があったのか解らん。
「大丈夫です! 今日の疲れは2日後に来ますから」
歳じゃねえか。
「はっはっは! 皆さんは幸せ者ですよ。僕と一緒に飲めるだなんちぇね」
噛んでる。
あと、何気取り?
「靴が履けなぁい」
だからなんで酔うとバーで靴を脱ぐんだ。
しかも当日は雪駄だろ。
それぐらい頑張って履け。
ってゆうか脱ぐな。
そもそも靴が履けないアピールの練習をするな。
ナチュラルな自分と冷静な自分の熾烈な争いには、もう慣れました。
めさでした。
明日の件で連絡がつかなかった参加予定者様もいらっしゃるので、俺からの電話がなかった方は、改めてメールをくださいな。
気合入れて、だらだら飲むぞう。