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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2025
January 24
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2007
April 04

 思い返すは、以前使っていた洗濯機。
 ある友人から譲り受けた物だ。
 当時、友は離婚が成立したばかりで、引っ越しをする必要ができ、それで洗濯機が要らなくなっていた。

 洗濯機の商品名は「愛妻号」
 友人宅でそれを見た瞬間、俺は容赦なく床をのたうち回ったものだ。

「がーははははは! 愛妻号ー!? あんた、こっちの愛妻も手放すんですかー!? あーははは!」

 離婚したばかりの友人に対し、「俺には人の気持ちがありません」ばりの大笑い。
 そんなことで笑う俺が可笑しかったらしく、友人までもが大笑い。

「がはははは!」
「あはははは!」

 洗濯機を運び出す前に、笑い疲れた。

※良い子の皆さん、危険ですので決して真似をしないで下さい。
 友達が減ります。

 俺の部屋に来た愛妻号は、実に素晴らしかった。
 うちの蛇口が変な形だから専用のホースが付かず、わざわざ手に別のホースを持って入水をしなくてはならず、俺に余計な手間を取らせた。
 そんな困ったところがまた、逆に可愛い。

 いざ洗濯開始となると、そこからは愛妻号が「いい仕事するわよ」とばかりに本領を発揮。
 衣類を洗うとちゃんと水を排出し、再び俺の手によって水を入れられると、今度はすすいでくれて、やがてまた水を捨てる。
 彼女はそこで、黙って仕事を終えた。

 俺達、いい夫婦になれるかも知れない。

 ずぶ濡れのシャツを広げると、水がポタポタと落ちた。

 服とか、びしょ濡れのままなんですけど。
 なんで洗濯物を脱水してくれないのだ。
 なんで満足げに電源を落としているんだ。
 こいつう。

 指で軽く突ついて、俺は泣きながら洗濯物を素手で絞った。

 1度や2度じゃない。
 いつもいつも、彼女は絶対に途中で止まった。
 俺の衣類が毎回、必要以上に潤っている。
 友人を笑った罰が当たったのだろうか。

 そんな事情から、俺は洗濯する毎に、いっつも素手で1つ1つ丁寧に、洗濯物を絞る羽目に陥っていた。
 何時代のやり方なんだろうか。

 ってゆうか、ここまで半端な仕事をする洗濯機のどこが愛妻だ。
 そりゃ離婚されるわけだ。
 おかげで握力が強くなっちゃったじゃないか。
 なんかもう、倦怠期。

「めさ、なんでコインランドリーに通うようになったの? 洗濯機あるのに」

 人から不思議がられることも、少なくなかった。

「やっぱそう思う? でも、騙されちゃいけない」

 訊かれる度に、俺は同じことを説明する。

「愛妻号のここ見て。全自動って書いてあるだろ? 騙されちゃいけない。こいつ実は、半自動なんだ」
「何自動だって?」
「半自動。半だ半。いやもうホント、マジで半」

 サイコロの目が奇数だと確信したバクチ打ちみたいなセリフになっていた。

 さて。
 なんで今になって俺は、こんな話を思い出したのか。
 先日、うちに友達が遊びに来たからだ。

「めさ君、パソコン借りていい?」
「ああ、いいよ。ネット接続の仕方、ちょっと普通じゃないけど、解る?」
「解るよ。このアイコンをクリックすればいいんでしょ?」
「そうそう」

 モニター上にはウインドウが開き、回線の状態を示す。
 すぐに「インターネット接続、正常に接続されました」とOKサインが出た。
 友人がマウスを操作し、ホームページ閲覧を試みる。

「ちょっと待って! まだ早い!」

 急な大声だったから、友人はさぞかしびっくりしただろう。

「騙されるな!『正常に接続されました』って出たでしょ? それ、フェイントだから。実はまだ繋がってないから」
「どういうこと?」
「今サイトを開いても、『ページが表示されません』って出るだけだよ」
「なんで?」
「わかんない。でもまだなの。とにかく『正常に接続されました』ってのは嘘だから、もうちょっと待ってて。モニターめっちゃガン見しててね」

 しばらくすると、モニターは瞬きをするかのように、一瞬だけ点滅する。

「はい、OKだよ。もうネットやっても大丈夫」

 友人はやはり、腑に落ちないといった顔つきのままだ。
 仕方なしに、俺は補足をする。

「今、画面が瞬きみたいになったでしょ? それが合図なの。それを見逃すと、いつネットが繋がったのか、わかんない」
「でも、だって、さっき『正常に接続されました』って書いてあったのに?」
「だから騙されるなって言ったんだ。ちなみに、まだ繋がってない状態でネットを開くとね、もうね、台無し。パソコンを再起動して、そんでやり直すしかない」
「マジで? でも、そんな、ってゆうか、何故?」
「うんとね、わかんない。なんか奥が深いねー。全く、どうしたらいいんだか」

 買い換えろ俺。

拍手[6回]

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2007
April 01

 今まで使ったことのない嘘。
 ありそうでなさそう、でも有り得る嘘。
 できれば人とカブらない嘘のほうがいい。

 どんな嘘がいいだろうかと、そればかりを考えながら夜道を行く。
 仕事を終えての帰宅途中、家に帰るまでの間に、日記のネタとして嘘を考えなくてはならない。
 今日はエイプリルフールだというのに、俺はうっかりしていて、何も考えていなかったからだ。

 何がいいかな、何がいいかな。

 考え事に夢中になって歩き、十字路に差しかかる。
 上の空だったせいで、勢い良く飛び出してきた子供と見事にぶつかってしまった。
 地面にコンビニ弁当が3つ落ちた。
 どうやら彼の持ち物らしい。

「あ、ごめん!」

 地面に散らばった弁当を拾うと同時に、ふと思った。

 こんな夜分に、どうして小学生が?
 コンビニ弁当3つは、どうして袋に入っていなかったのだろう。
 拾った弁当は冷たい。
 温めてもらわなかったのだろうか。

 もしやと思い、見ていないフリをしながら、視界の狭間で少年を観察する。
 慌てて弁当を回収するせかせかとした態度、痩せ細った体、ボロボロになったトレーナー。

 まさかこのご時世に?
 と思ったのもつかの間、俺の想像は当たってしまったようだ。
 コンビニの制服を着た青年が、遠くからこちらを目指し、走ってきている。

「坊主、そこの自販機に隠れろ」

 拾った弁当を少年に渡しつつ、短く指示する。
 今から逃げてももう遅いと判断したのだろう。
 小学生は顔を真っ青にしながらも、俺の言う通りに、自動販売機の陰に身を潜めた。

「あの、すみません! 今!」

 息を切らせながら、コンビニの店員らしき青年が声をかけてくる。

「今、小学生ぐらいの子供が走ってきませんでした!? 汚いトレーナー着た」
「ああ、それなら」

 俺は背後に続く道を指差す。

「あっちに走っていきましたよ」

 店員は「ありがとうございます」と言いいながら、再び走り出した。
 青年の後ろ姿が見えなくなったことを確認し、自販機の陰に視線を投げる。

「もう大丈夫だぞ」

 声をかけると、恐る恐るといった態度で少年が顔を出した。
 うつむき加減で、彼はもじもじと口を動かす。

「あの、ありがとう、ございます」

 いや、いいんだ。
 君のおかげで、こっちも助かったよ。
 そう告げると少年は不思議そうな顔をした。
 その表情を見なかったことにして、構わず続ける。

「ありがとう。これはお礼だ」

 少年に千円札を握らせる。
 弁当が3つあったということは、彼には自分以外に誰か、飢えさせたくない人がいるのだろう。

「弁当だけじゃ喉が乾くだろ。ジュースでも買うといい」 

 少年は表情を「信じられない」と言いたげな色に変え、おろおろとした。
 俺は腰を下ろすと、目線を彼の高さに合わせる。

「店のお兄さんには悪いけど、今日はエイプリルフールだからな。どんな嘘をつこうか、ずっと悩んでたんだ。でも、おかげでいい嘘がつけた」

 少年はそれでもまだ戸惑っていたけれど、俺は早々にその場を立ち去る。
 早く家に帰って、今のことを日記を書かなくてはならない。

「あの、ありがとう、ございます」

 もう1度だけ、小さな声が聞こえた気がした。

 なーんちゃって。
 もちろん嘘ですよん。
 ホントすんません。
 渡したのは千円じゃなくて、1万円です。

拍手[14回]

2007
March 30

 名言というのは、心に残る。
 それが自分だけのオリジナルだったりしたら、尚更だ。

 思い返せば今まで、俺は数々の忘れられないセリフを放ってきた。
 せっかくだから、今日はそれらを書いておこう。

 上司にヨーロッパ地方の話を聞かされた時の一言。
「フランスとパリって、どっちが近いんですか?」

 フランスの首都がパリだ。

 友達ン家にあったマジックハンドで遊んでいた時の一言。
「マジックハンドが落ちた! あれを拾うには、マジックハンドが必要だ!」

 自力で拾え。

 上司に「ヤングのスペルを言ってみろ」と出題された時の解答。
「ワイ・エム・シー・エー」

 絶対に違うけど、気持ちは解る。

 朝まで飲んで酔いつぶれ、友達に「起きな! めささんのケータイ、アラーム鳴ってるよ!」とゆすられた時のリアクション。
「うう~ん。そのアラーム、フェイントだから大丈夫~」

 ご自分で設定なさったんですよね?

 酔っ払った妹にやたらしつこく「めさちゃーん!」と連呼された時の応答。
「おーう! 明日メールするー!」

 解りやすいスルーだ。

 アルプス山脈の写真を見た時の一言。
「地球って、思ってるほど丸くないよね」

 視野が狭いにもほどがある。

 待ち合わせ日時の取り決めにて。
「ヨウカとハツカの区別がつかないから、ローマ数字で日にちを言ってくれなきゃ、わかんない」

 とても成人しているとは思えない。

 待ち合わせ日時を1日ズレて覚えていたことが発覚した際の言い訳。
「7とか8とか、数字じゃわかんないよ。曜日で言ってよねー」

 何歳?

 洋画のDVDが流されていると必ず言う一言。
「この映画、何? トップガン?」

 外国人男性は全てトム・クルーズに見えるらしい。

 週に1度は言うセリフ。
「ビールはしゅわしゅわするから飲めません」

 ちなみにコーラも口が痛くて飲めません。

 談笑中、何かを聞き間違えて言ったセリフ。
「忍法マカデミアン募金って何?」

 それはこっちが訊ねたい。

 カプセルホテルに泊まる際、寝床を見て放った一言。
「ここまでカプセルだとは思わなかった…」

 失恋した乙女みたいに言うな。

 何を思ったのか突如、雪だるまに向かって猛烈な飛び蹴りを放ち、足が抜けなくなってしまった悪友を見た時のつぶやき。
「勇者だ…」

 憧れる要素がどこにある。

 魚に対する駄目出し。
「マグロとかいって、止まったら死ぬって有り得なくね?」

 仕方ないじゃん。

 お酒を飲む毎に、かなりの頻度で使う言葉。
「靴が履けなぁい」

 そもそもなんで脱いじゃったのか。

 何か物を落としたり、倒したり壊したりすると、必ず出る咄嗟の一言。
「俺じゃないですよ!」

 確実にお前です。

 いやしかし、こうして書き出してみると、なかなか芸術的なものだ。
 でも、たまには普通のことを喋れ俺。

拍手[5回]

2007
March 30

 空手道初段。
 なかなかカッコイイ響きだ。
 しかし、それがきっかけになって、恐ろしく恥ずかしいあだ名が俺についた。

「めさー! みんながさあ、めさが空手の段を取ったお祝いに、飲み会やろうって言ってんだけど」

 友人の進言は、俺をとても嬉しい気分にさせた。
 もう時効なので書くが、当時の俺は高校生だったにも関わらず、お酒が大好きだったからだ。

 飲み会当日になると、友人が住む団地の屋上には、既に空手道部員や他の運動部員の皆が集まってくれている。

「ごめん、お待たせー! さあ飲むぞー!」
「ああ、めさ! 待ってたよ! お! ダンディなシャツ着てんじゃん!」

 俺はこの時、古い地図の絵がプリントされている大人びたシャツを着用していた。

「あ、ホントだー。ダンディー!(シャツが)」
「ダンディですう!(シャツが)」

 後輩の女の子達も、少しホロ酔い口調で俺(のシャツ)を絶賛してくれる。

 ぶっちゃけ、いい気分だ。
 シャツのこととはいえ、ダンディだなんて言われたのは生まれて初めてで、ちょっぴり浮かれる。
 皆のお祝いをありがたく頂戴し、この日は楽しく、大いに飲んだ。

 数日後。
 後輩の女子達がいつものように、学校で挨拶をしてくれる。

「ダンディせんぱーい! おはようございまーす!」
「おはようございます、ダンディ先輩!」

 俺の笑顔が一瞬にして凍りつく。

 ダンディ先輩と聞こえた。
 誰だそれは。
 そんな変な先輩、ドコにもいねえ。

 ところが後輩達は、しっかりと俺の目を見ていらっしゃる。
 どうやら今が、ダンディ先輩誕生の瞬間らしい。

 俺の風貌、どこもダンディじゃないのに。
 どんな角度から眺めても、絶対にダンディには見えないはずなのに。

 色んな意味で新しいこのニックネームはつまり、俺を非常に困らせた。

(ダンディって、シャツのことじゃなかったのー!? 俺なのー!?)

 このあだ名、恥ずかしいなんてレベルじゃない。
 だって、ただの俺なのにダンディだもの。
 例えるなら、日本猿を陛下と呼ぶようなものだ。
 とにかく、すっごく寒くて痛い。
 だいたい、知らない人がこのあだ名を聞いたら、俺は反感を買うんじゃないだろうか。
 自称してるわけじゃないのに「どこがダンディだこの野郎」と、何故かムカつかれるに違いない。
 もしくは痛い子だと思われる。

 そんな困惑をよそに、女子達の目はマジだ。

「ダンディ先輩ってのもナンだからさー、『ダンディめさ』って呼ぼうよ!」
「あ! それいい!」

 どうして反対意見が出ないのか。
 だいたい「ダンディめさ」なんて誰かに聞かれたら、インチキな日系人を連想されるに違いない。
 もしくは、勝てなさそうなボクサーのリングネーム第1位。
 この夢見る少女達に言わなくちゃ。
 痛々しいニックネームだから封印してって頼まなくっちゃ。

「あ、あのさあ…」
「ね!? いいですよね、『ダンディめさ』って呼んでも!」
「え!? ああ、いい、ンじゃないかな…」

 自分の意思の弱さを呪った。
 後輩達の嬉しそうな目の輝きを、俺はどうしても奪う事が出来なかったのさ。
 と、自分に言い聞かせておく。

 こうして俺は、嫌なんだけど、一部の女の子から「ダンディめさ」と呼ばれるようになってしまった。
 月日が流れると、いつの間にか「ダンディめさ」は省略されて「ダンディ」となり、完全なあだ名として定着することになる。
 どうして俺は自殺を考えなかったのだろう。

 しかし、慣れとは怖いものだ。
 こんな赤面もののあだ名でも呼ばれていくうちに、俺の中でも習慣になってしまい、半年も経てば何とも思わなくなる。
 いつしか後輩達もだんだんと敬語を使わなくなり、友達と交わすような親しさで、朝の挨拶をしてくれるようになっていた。

「ダンディ、おはよー!」
「おー、おはよう」

 ホント慣れって怖い。

 当初は俺がダンディと呼ばれている瞬間を、クラスメートや男子生徒に見られないように気を張ってもいたのだけれど、だんだんとそんな気遣いもなくなっていった。

 そんなある日の昇降口。
 悪友と共に、靴を履き替える。
 そこに後輩が通りかかり、いつものように声をかけてくれた。

「ダンディー! おはよー!」
「おー! おはよー!」

 タタタッと駆け足で後輩がどっかに行くまで、友人は何故か無言のままだ。

「さて、行こうか」

 促すと、彼は真顔になっていて、俺の顔をめっちゃ見ている。

「お前さ、ダンディって呼ばれてんの?」
「あ」

 しまった、聞かれた!
 一瞬にして顔が青ざめる。
 悪友に不自然極まりないあだ名を、とっても自然に聞かれちゃった…!

 焦った俺は、大慌てでフォローを入れにかかる。

「いやコレは…! 違うんだよ、あの子達が勝手にさ…! な!? 俺は嫌だったんだけどさ! 仕方なかったんだ!」

 浮気がバレた亭主か俺は。

「シャツがダンディなのに半年すると慣れてしまうから!」

 明かに回想シーン編集を失敗している。

「だからダンディじゃないのにダンディでさ! 解るだろ!?」
「何もかも解らねえ。要するにお前、ダンディって呼ばれてんだよな?」
「いやあ、地図の柄の段取った時に、空手のシャツが…」
「みんなに言ってこよっ!」

 急に走り出そうとしやがった悪友の腕を咄嗟に掴み、俺は「待てよ!」と声を荒げる。
 彼は振り向き様に、大きな声を通した。

「離せよダンディ!」

 ちなみにアクセントは、しっかりと「ダンディ」の部分に置かれていた。

 反射的に手を離す俺。
 走り出す悪友。
 追っかける俺。

 あの野郎!
 一体誰に話しやがるつもりだ!

 気が気じゃなかった。

 昼休みになると、空手のライバルが俺の教室まで遊びにくる。

「おう、ダンディ!」

 やたら発音の良い、でっかい声だった。
 奴の後ろには、先ほど昇降口で一緒だった悪友の姿も見える。
 どこからどう情報が流れたのか、一目瞭然だ。

「お前まで! いいから黙ってろよ!」

 必死の訴えはしかし、2人によって簡単にシカトされる。

「なあ、6組に行こうぜ。あそこにも空手部の連中いるし」
「あ~、そうだなあ。じゃ、行くかあ」
「行くなあ!」

 2人の腕を強く掴む。
 すると、

「離せよダンディ!」
「うるせえよダンディ!」
「痛えよダンディ!」
「ムキになるなよダンディ!」

 のぉーい!
 素晴らしく息の合ったコンビネーションで交互にダンディって言うなあ!

 クラスのみんなが不審な目でこっちを見ている。
 ダンディな要素なんて少しもないダンディが見られてる。

「大声出すなよダンディ!」
「うるせえよダンディ!」
「ダンディダンディうるせえのはテメーらだ! 言わないでお願い!」
「知るかよダンディ!」

 教室で大騒ぎする3名は、全員がダンディダンディとカバティのように叫び続けた。

 これに慣れるのに、もう半年ほどかかりそうだ。

拍手[6回]

2007
March 29

 友人からの電話に出る。

「もしもし、めささん?」

 おーう、お疲れさん。

「こないだ電話くれたでしょ? なんだったの?」

 うむ。
 地元でCDを買おうと思ったの。
 でも、どこに売っているのか分からなくって、訊きたかったんだ。

「そうなんだ? あ、今めささん彼女と一緒でしょ? 電話、大丈夫?」

 ふええ!?
 え、あ、ああ!
 ま、まあね。
 一緒だけど、だだ大丈夫さ。

「見栄っ張り」

 だって。
 だってだって。

「オメーが彼女か」

 だって。
 ってゆうか、彼女かあ。
 たまには恋に落ちたいのう。
 目が合った瞬間、ドラマの主題歌が流れちゃう感じの。
 要所要所で画面下に「トゥー・ビー・コンテニュー」って英語のテロップが入る感じの。

「ベタベタじゃん」

 俺、そういうのが好きなんだよ。
 例えば、そうだなあ。




「遅刻遅刻!」

 食パンを口に咥え、走る。
 転校初日から寝坊しちゃうなんて、おっちょこちょいな自分に腹が立つ。
 急がなくっちゃ。

 猛ダッシュで学校を目指す。

「きゃ!」
「うわ!」

 曲がり角でぶつかった相手は、あたしと同い年ぐらいの男の子だった。

「いて!」
「いったぁ」

 2人とも尻餅をつき、腰をさする。

「ちょっとあんた、どこ見てんのよ!?」
「オメーこそ!」
「何よあんた、態度悪くない!?」
「そりゃお前だよ!」
「何よ!」
「なんだよ!」
「ふん!」

 ホームルームには、どうにか間に合った。
 担任教師がクラス全体を見渡す。

「え~、転校生を紹介する」
「あー!」
「ああ!」

 互いが互いに人差し指を向ける。
 今朝ぶつかったアイツだ。
 まさか同じクラスだったなんて。
 転校初日から、もう最悪。

「なんだお前ら、知り合いだったのか」

 先生が目を丸くする。

「ちょうどいい。君は彼の隣の席に座りなさい」

 ホント最悪。

「ちょっと、教科書見せなさいよ」

 授業が始まって、あたしは奴に声をかける。

「あたしまだ教科書ないの。見せなさいってば」
「知らねえよ。誰がお前なんかに」
「なにあんた、まだ今朝のこと気にしてるわけ? 小さい男ね」
「なんだと!?」
「何よ!」

 先生のメガネが、そこでキラリと光った。

「おーい、お前ら。うるさいぞ。2人とも、廊下に立ってなさい」




 ところが後日、女の子は見ちゃうわけだ。
 土砂降りの中、子猫を拾って帰る彼の背中をね。
 ふうん、アイツ、いいトコもあるんだ。
 みたいな!

「ねえ、めささん。もう電話切りたいんだけど」

 ごめん。
 もうちょっとだけ続けてもいい?

「いいけどさ」

 ところが彼は、クラスのマドンナ、麗子さんのことが好きでね?





「よう、聞いてくれよ!」
「何よ、急に」
「俺、とうとう麗子さんとデートすることになったんだよ!」

 …え…?

 まるで頭を殴られたような衝撃だった。

「あ、そ、そう!? よ、よかった、じゃん…」
「だろう!? でさ、俺、なんかプレゼント買っておこうと思うんだよ。でも何がいいか分からないからさ、お前、一緒に買い物に付き合ってくれねえ?」
「え、いや、あたしは」
「頼むよ。女の子が喜ぶような物、分からないんだ。何がいいんだろうなあ」

 結局断れなくて、アイツは「じゃあ日曜な!」と浮かれながら帰っていった。

 道に落ちていた空き缶を、あたしは蹴飛ばす。

「あーあ~。あたし、何やってんだろ…」

 カコーン。




「ねえねえ」

 なんだよ、これからって時に。

「その話、いつまで続くの?」

 いつまでも。
 取り合えず今日は、卒業式まで。
 あとほんの2時間だけ喋らせて。

「なげーよ! ってゆうかさ、めささんが恋をしたいって話だったんじゃん?」

 うん。

「なんで学生?」

 あ、いっけね。

「あと、めささん、女の子目線なのは何故?」

 あ、いっけね。
 でも、これからだぞ?
 夏休みになって、クラスのみんなと海辺の民宿に泊まりに行くってイベントが発生するんだけどね?

「壁に向かって喋ってて」

 はい。

「じゃあ、そういうことで、お疲れ様でーす」

 はい。
 お疲れ様でした。

 通話を終える。

「ちぇ」

 ここが道路で、もし空き缶があったら蹴飛ばしている。

「彼が夜中にこっそりと部屋を抜け出して、海辺で座ってセンチになるシーンだったのに。もうすぐ女子の名セリフ、『なーに黄昏てんのっ!』のシーンだったのに」

 カコーン。

拍手[4回]

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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
49
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
 それでもいいのならコチラをクリックするとメールが送れるぜい。

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 必要なものがあったら遠慮なく気軽に、どこにでも貼ってやって人類を堕落させるといい。
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