夢見町の史
Let’s どんまい!
2009
September 28
September 28
※怪談話で笑いが取れるのかどうか試してみたくて思わず挑戦。
さっきアップした怖い話と内容は一緒なんだけど、なるべく怖がらせない書き方をします。
でも一応、閲覧注意。
俺と同僚のAちゃんが仕事後に談笑してたときの話なんだけど、アレはマジ嫌だった。
朝の4時ぐらいで、まだ外が全然明るくない時間帯でね。
スナックでの仕事が終わったから、俺とAちゃんだけ酔った勢いで語り合ってたわけよ。
いつもならちょっと一服したらぼちぼち帰るんだけど、その日は俺もAちゃんも大酔っ払いでねー。
そりゃいい感じに酔ってる奴が2人も揃えば話も弾みますよ。
時間を忘れて雑談に夢中になってたのね。
ああもー、アレはホントやばかった。
マジでアレはナシだ。
いやね、Aちゃんがさ、俺の話を遮って「めさ! 今の聞こえた!?」とか言い出すんだよ。
「え?」
「今あたしの横から女の声が聞こえた! めさ、聞こえてなかった!?」
もうね、真面目な話、この時点で俺は自分の心臓の弱さを知った。
女の声が聞こえたってなんだよ。
マジ無理。
Aちゃんめっちゃシリアスな顔になってるし、そういう冗談言う子じゃないし。
しかもAちゃんの表情がマジすぎて般若みたいになっててさー、そっちもおっかねえ。
でさ、俺としてはAちゃんの耳にどんなセリフが入ったのか、内容が気になるわけよ。
いくら声が聞こえたって言っても単語1つだけだったとかならさ、Aちゃんの錯覚って可能性も出てくるじゃん。
いや、100歩譲って霊でもいい。
霊ってどこにでもいるもん。
通行人と一緒。
よく「この場所には霊がいます!」とか言い出す奴いるけど、霊がいない場所のほうが少ないっつーの。
だから問題は、その霊が何者なのかって点なのよ。
ただいるだけなら当たり前だし問題ない。
だからAちゃんに聞こえたって声が「あー、たまには牛丼喰いてえー!」とか個人的な独り言だったらさ、そんな霊もう成仏しなくっていいよ。
むしろあえて牛丼与えない。
成仏させない。
一緒に暮らせる。
うちの店で雇う。
逆にさ、「お前らを呪い殺してやる」って声だったら、これはアウト。
呪われるのも殺されるのも単発でやられたって嫌なのに。
優しい声で「タバコは体に悪いよ」とかでもアウト。
俺に意を向けている時点で超怖えもの。
だいたいさ、俺ぐらいチキンになると、この「声だけ」って現象が1番キツいのよ。
姿が見えてたほうがまだマシ。
だって見えてさえいればこっちから襲いかかれるじゃん。
そこはオメー、相手が霊だったら女子供でも俺は鬼になる。
人生初DVになるけど構わない。
決着つけてやンよォ!
とかマジ声で怒鳴って殴りかかる。
でも声だけだとねー。
そうもいかないよねー。
奴ら霊たち、そういうこっちの事情、解ってやってんのかなー。
ホント卑怯な連中だよ。
いやね、Aちゃんが聞いた声がね、俺的にはアウト、オブ、アウトな内容だったのよ。
アウト、オブ、アウト?
アウトの中のアウトって言いたいんだけど、英語苦手だからそこは許して。
もうね、アレはナシだわ。
Aちゃんが聞いた声ってのが、
「いつまで喋ってるの?」
無理だろこれはー。
明らかにこっちに意識が向けられてるじゃん。
しかも聞き間違えじゃなさそうな適度な長さ。
あのさ、アメリカのコンサート会場みたいなとこ想像してもらっていい?
めちゃめちゃ大きな会場で感動的な演奏とか始まるとさ、アメリカの人ってもの凄いテンションになって拍手しながら全員立つじゃん。
ああいう感じで、俺の鳥肌が立った。
だって「いつまで喋ってるの?」だよ?
聞いた瞬間、俺もよせばいいのに眠らせてた霊感を呼び起こすわけよ。
さすがに緊急事態だからね。
シックスセンスを目覚めさせた。
場合によっては俺の中のビーストも目覚めさせる。
で、同時に霊のプロファイリングも始めちゃってるわけよ。
確かに女の気配!
じゃあこの女の目的は!?
なんかその霊、明らかにAちゃんに対して「いつまで喋ってるの?」って言った節があってさ。
自分でこういうこと言うの感じ悪いけど、俺が嫉妬されてるって考えちゃうじゃん。
なんか、俺とAちゃんが仲良く喋ってるから霊がムッとして、「この女むかつくわ!」とかなって、嫌味が出たのかなあって。
男って勘違いする生き物だから、俺のも勘違いであってほしい。
俺は生身の人に好かれたい。
あ、そうだ。
今のこの記事、霊の人も見てるかも知れないから、一応書いておこう。
俺は霊に対してDVだ。
最初だけ優しいんだけど、すぐ逆ギレして暴力に走る。
いや、もっと酷い。
最初も優しくない。
最初からキレる。
だって怖いのがいけないんじゃん!
ったく、ばかが。
おっと、話が逸れた。
えっとね、俺は一応、霊がいそうな場所に「いつまでいようがテメーにゃ関係ねえだろ!」って男らしく怒鳴っといた。
で、長居してやってもいいんだけど、本当に怖かったから「そろそろ行きますかー」って感じで自然な態度で、Aちゃんを店に置いて男らしく帰った。
帰りも着いて来られてそうな気配を感じたから、いきなり振り返って既に死んでる相手に対して「ぶっ殺すぞ」って男らしく凄んどいた。
ってゆうかさ、俺が霊に好かれてるって説が実は的を得ていたとするじゃん?
でさ、俺が実は霊フェチだったら2人の関係はどうなるんだろ?
俺が気配を感じたとき、「俺もお前が好きだー!」とか言ったら付き合えるのか?
それはちょっと凄いな。
前代未聞じゃねえか。
いや俺は細胞とか生身が大好きだからやらないけど、そういう感じでさ、付き合ってるときに死に別れるんじゃなくて、片方が死んでるときに出逢って付き合うってぶっちゃけどうなの?
可能なの?
誰かやってみてください。
俺には無理です。
ってゆうか、ああ、もー!
これから店が終わったあと、俺はどこで一服したらいいんだよー!
もー!
ばかが。
さっきアップした怖い話と内容は一緒なんだけど、なるべく怖がらせない書き方をします。
でも一応、閲覧注意。
俺と同僚のAちゃんが仕事後に談笑してたときの話なんだけど、アレはマジ嫌だった。
朝の4時ぐらいで、まだ外が全然明るくない時間帯でね。
スナックでの仕事が終わったから、俺とAちゃんだけ酔った勢いで語り合ってたわけよ。
いつもならちょっと一服したらぼちぼち帰るんだけど、その日は俺もAちゃんも大酔っ払いでねー。
そりゃいい感じに酔ってる奴が2人も揃えば話も弾みますよ。
時間を忘れて雑談に夢中になってたのね。
ああもー、アレはホントやばかった。
マジでアレはナシだ。
いやね、Aちゃんがさ、俺の話を遮って「めさ! 今の聞こえた!?」とか言い出すんだよ。
「え?」
「今あたしの横から女の声が聞こえた! めさ、聞こえてなかった!?」
もうね、真面目な話、この時点で俺は自分の心臓の弱さを知った。
女の声が聞こえたってなんだよ。
マジ無理。
Aちゃんめっちゃシリアスな顔になってるし、そういう冗談言う子じゃないし。
しかもAちゃんの表情がマジすぎて般若みたいになっててさー、そっちもおっかねえ。
でさ、俺としてはAちゃんの耳にどんなセリフが入ったのか、内容が気になるわけよ。
いくら声が聞こえたって言っても単語1つだけだったとかならさ、Aちゃんの錯覚って可能性も出てくるじゃん。
いや、100歩譲って霊でもいい。
霊ってどこにでもいるもん。
通行人と一緒。
よく「この場所には霊がいます!」とか言い出す奴いるけど、霊がいない場所のほうが少ないっつーの。
だから問題は、その霊が何者なのかって点なのよ。
ただいるだけなら当たり前だし問題ない。
だからAちゃんに聞こえたって声が「あー、たまには牛丼喰いてえー!」とか個人的な独り言だったらさ、そんな霊もう成仏しなくっていいよ。
むしろあえて牛丼与えない。
成仏させない。
一緒に暮らせる。
うちの店で雇う。
逆にさ、「お前らを呪い殺してやる」って声だったら、これはアウト。
呪われるのも殺されるのも単発でやられたって嫌なのに。
優しい声で「タバコは体に悪いよ」とかでもアウト。
俺に意を向けている時点で超怖えもの。
だいたいさ、俺ぐらいチキンになると、この「声だけ」って現象が1番キツいのよ。
姿が見えてたほうがまだマシ。
だって見えてさえいればこっちから襲いかかれるじゃん。
そこはオメー、相手が霊だったら女子供でも俺は鬼になる。
人生初DVになるけど構わない。
決着つけてやンよォ!
とかマジ声で怒鳴って殴りかかる。
でも声だけだとねー。
そうもいかないよねー。
奴ら霊たち、そういうこっちの事情、解ってやってんのかなー。
ホント卑怯な連中だよ。
いやね、Aちゃんが聞いた声がね、俺的にはアウト、オブ、アウトな内容だったのよ。
アウト、オブ、アウト?
アウトの中のアウトって言いたいんだけど、英語苦手だからそこは許して。
もうね、アレはナシだわ。
Aちゃんが聞いた声ってのが、
「いつまで喋ってるの?」
無理だろこれはー。
明らかにこっちに意識が向けられてるじゃん。
しかも聞き間違えじゃなさそうな適度な長さ。
あのさ、アメリカのコンサート会場みたいなとこ想像してもらっていい?
めちゃめちゃ大きな会場で感動的な演奏とか始まるとさ、アメリカの人ってもの凄いテンションになって拍手しながら全員立つじゃん。
ああいう感じで、俺の鳥肌が立った。
だって「いつまで喋ってるの?」だよ?
聞いた瞬間、俺もよせばいいのに眠らせてた霊感を呼び起こすわけよ。
さすがに緊急事態だからね。
シックスセンスを目覚めさせた。
場合によっては俺の中のビーストも目覚めさせる。
で、同時に霊のプロファイリングも始めちゃってるわけよ。
確かに女の気配!
じゃあこの女の目的は!?
なんかその霊、明らかにAちゃんに対して「いつまで喋ってるの?」って言った節があってさ。
自分でこういうこと言うの感じ悪いけど、俺が嫉妬されてるって考えちゃうじゃん。
なんか、俺とAちゃんが仲良く喋ってるから霊がムッとして、「この女むかつくわ!」とかなって、嫌味が出たのかなあって。
男って勘違いする生き物だから、俺のも勘違いであってほしい。
俺は生身の人に好かれたい。
あ、そうだ。
今のこの記事、霊の人も見てるかも知れないから、一応書いておこう。
俺は霊に対してDVだ。
最初だけ優しいんだけど、すぐ逆ギレして暴力に走る。
いや、もっと酷い。
最初も優しくない。
最初からキレる。
だって怖いのがいけないんじゃん!
ったく、ばかが。
おっと、話が逸れた。
えっとね、俺は一応、霊がいそうな場所に「いつまでいようがテメーにゃ関係ねえだろ!」って男らしく怒鳴っといた。
で、長居してやってもいいんだけど、本当に怖かったから「そろそろ行きますかー」って感じで自然な態度で、Aちゃんを店に置いて男らしく帰った。
帰りも着いて来られてそうな気配を感じたから、いきなり振り返って既に死んでる相手に対して「ぶっ殺すぞ」って男らしく凄んどいた。
ってゆうかさ、俺が霊に好かれてるって説が実は的を得ていたとするじゃん?
でさ、俺が実は霊フェチだったら2人の関係はどうなるんだろ?
俺が気配を感じたとき、「俺もお前が好きだー!」とか言ったら付き合えるのか?
それはちょっと凄いな。
前代未聞じゃねえか。
いや俺は細胞とか生身が大好きだからやらないけど、そういう感じでさ、付き合ってるときに死に別れるんじゃなくて、片方が死んでるときに出逢って付き合うってぶっちゃけどうなの?
可能なの?
誰かやってみてください。
俺には無理です。
ってゆうか、ああ、もー!
これから店が終わったあと、俺はどこで一服したらいいんだよー!
もー!
ばかが。
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2009
September 28
September 28
※怪談話につき閲覧注意。
久しぶりの、それは霊現象だった。
職場のスナックが深夜4時を過ぎる頃、お客さんたちは全員お帰りになられている。
ボスや他のフロアレディたちはタクシーを待たせてあったので、やはり早々に店を後にしていた。
照明を落とし、わずかに薄暗くしてある店内にはしたがって、俺とフロアレディのAちゃんだけが残っている。
帰宅前のわずかな一時。
タバコに火を着けると、俺はカウンター席に腰を下ろした。
Aちゃんに「お疲れさーん」と労うと、彼女はふらふらとした足取りで「もー疲れたよー!」みたいなことを言い、近くの椅子に座った。
仕事後の雑談タイムというやつだ。
Aちゃんも自分の近くに灰皿を寄せ、タバコを咥えている。
このときは俺もAちゃんもなかなか飲まされており、かなり酔いが回っていた。
酔っ払いが2人も揃えば、他愛のない雑談にも熱が入る。
タバコはいつの間にか3本目に達していた。
すっかり夢中で話し込んでしまったのだ。
俺が何かしらを喋っている、その最中。
Aちゃんが急に真面目な顔をして俺の話を遮った。
「めさ! 今の聞こえた!?」
え?
「今あたしの横から女の声が聞こえた! めさ、聞こえてなかった!?」
いや、俺は別に。
「気のせい!? いや、絶対聞こえた! はっきり聞こえた!」
なんて聞こえたの?
問うとAちゃんは「聞こえたんだけど、おかしいなー」と首を傾げる。
完全にシラフに戻っているようなAちゃんの表情を見るところ、冗談ではなさそうだ。
一体何が聞こえたのか?
という質問を何度しても、Aちゃんは何故かなかなか答えてくれなかった。
「いいからAちゃん、答えてってば! 何が聞こえたの!?」
するとAちゃんは真っ直ぐと俺の目を見つめ、その声を再現する。
「いつまで喋ってるの?」
朝と呼ぶにはまだまだ闇の深い、深夜での話だ。
久しぶりの、それは霊現象だった。
職場のスナックが深夜4時を過ぎる頃、お客さんたちは全員お帰りになられている。
ボスや他のフロアレディたちはタクシーを待たせてあったので、やはり早々に店を後にしていた。
照明を落とし、わずかに薄暗くしてある店内にはしたがって、俺とフロアレディのAちゃんだけが残っている。
帰宅前のわずかな一時。
タバコに火を着けると、俺はカウンター席に腰を下ろした。
Aちゃんに「お疲れさーん」と労うと、彼女はふらふらとした足取りで「もー疲れたよー!」みたいなことを言い、近くの椅子に座った。
仕事後の雑談タイムというやつだ。
Aちゃんも自分の近くに灰皿を寄せ、タバコを咥えている。
このときは俺もAちゃんもなかなか飲まされており、かなり酔いが回っていた。
酔っ払いが2人も揃えば、他愛のない雑談にも熱が入る。
タバコはいつの間にか3本目に達していた。
すっかり夢中で話し込んでしまったのだ。
俺が何かしらを喋っている、その最中。
Aちゃんが急に真面目な顔をして俺の話を遮った。
「めさ! 今の聞こえた!?」
え?
「今あたしの横から女の声が聞こえた! めさ、聞こえてなかった!?」
いや、俺は別に。
「気のせい!? いや、絶対聞こえた! はっきり聞こえた!」
なんて聞こえたの?
問うとAちゃんは「聞こえたんだけど、おかしいなー」と首を傾げる。
完全にシラフに戻っているようなAちゃんの表情を見るところ、冗談ではなさそうだ。
一体何が聞こえたのか?
という質問を何度しても、Aちゃんは何故かなかなか答えてくれなかった。
「いいからAちゃん、答えてってば! 何が聞こえたの!?」
するとAちゃんは真っ直ぐと俺の目を見つめ、その声を再現する。
「いつまで喋ってるの?」
朝と呼ぶにはまだまだ闇の深い、深夜での話だ。
2009
September 16
September 16
安い定食屋さんでご飯をたくさん食べるよりも、おかわり自由のトンカツ屋さんで満腹になったほうが結果的には安上がりだ。
何故ならば、少年漫画の主人公ぐらい俺はたくさん食べるから。
しょうが焼き定食大盛りとチャーハンを頼むより、1180円のトンカツ定食を注文してご飯を3杯いただいたほうが断然にお得である。
今日も馴染みのトンカツ屋に、俺は足を向ける。
もういい歳とはいえ、まだまだ魚より肉のほうが好きだ。
なんか豚喰いたい。
おや?
改めてメニューを見ると、俺は今まで見逃していたことに気がつく。
1180円のトンカツ定食よりも安い品目があるじゃないか!
チキンカツ定食880円だと!?
なんてリバーシブル!
相変わらずリーズナブルが出てこないことはさて置き。
豚が好きだけど鳥も好きな俺ははやる気持ちを抑え、さっそくこのチキンカツ定食を注文することにした。
オーダーを取ってくれたのは見慣れない女の子だ。
おそらく新人のアルバイトなのだろう。
どこかおどおどしていて、頼りなさそうに見える。
俺が「チキンカツ定食お願いします」と注文すると、新人の女の子はか細い声で「はい、ヒレカツ定食ですね?」と返事をした。
ちょっと待て。
おかしくないか?
どうやったらチキンカツがヒレカツと聞こえるのだ。
ちょっと回想してみよう。
「チキンカツ定食お願いします」
「はい、ヒレカツですね?」
この子にとって会話ってなんなんじゃろか。
いや待て俺。
俺は耳が悪いし、この子の声は小さい。
聞き間違えたのは俺のほうかも知れないじゃないか。
そうであった場合、俺こそがチキンカツをヒレカツと捉えたことになり、「どうやったらチキンカツがヒレカツと聞こえるのだ」という心のツッコミは自分自身に当てはまることになってしまい、とても恥ずかしい。
しかもこの子、自信がなさすぎて「はい、ヒレカツですね?」の言葉を明らかに俺に向けていない。
ちょっぴり激しい独り言か、もしくは予行演習みたいに見える。
と、考えているそばからバイトの彼女は調理場の人に「ヒレカツ1つお願いしまーす」などと口走った。
ような気がする。
そのヒレカツはまあ、俺のじゃなくて、他のお客さんのオーダーなのかも知れないし、俺の聞き間違いである可能性もある。
黙って料理を待とうじゃないか。
なんだかんだでチキンカツが作られるに違いない。
結果オーライだ。
こうして、俺の前にはヒレカツが届いた。
いやいや、これをヒレカツと決めつけるのはまだ早い。
衣で包まれているので、豚肉なのか鶏肉なのか、見た目での判断は難しい。
俺が知っているチキンカツとは形が違って見えるけど、この店オリジナルのチキンカツである可能性を無視することはできない。
食べてみよう。
よし、間違いない。
これはヒレカツだ。
店にクレームをつけるべきだろうか。
いやしかし、俺の今までの常識が間違っていた場合だってある。
味覚だけでこれをヒレカツと思ってしまったが、限りなく豚に近い鳥を使っていた場合、この店のチキンカツはこんな味になるのかも知れない。
「これはヒレカツじゃないか」と文句を言っても、「はあ? 何言ってんですか。それチキンカツですよ?」と返されては心が折れる。
傷つくぐらいじゃ済まないだろう。
さて、どうしたものか。
ヒレカツは1280円。
大打撃だ。
たまに自分へのご褒美で注文するメニューだ。
いつも頼むトンカツ定食よりもさらに高い。
この店はそんな商売の仕方をするのか。
実にあざとい。
取り合えず、ご飯をおかわりしておこう。
ふと見上げると、レジでは店長らしき男性とさっきの新人の子が一緒になって「申し訳ございません」とお客さんに何度も頭を下げている。
きっとオーダーを取り間違えて、ヒレカツか何かを出したのだろう。
これで俺は完全に苦情を言うタイミングを失ってしまった。
俺までが「注文と違う」と文句を言ったら、あの子はさらに気まずくなり、店長からも必要以上に怒られてしまうに違いない。
チキンカツじゃないと文句を言えない俺がチキンだ。
そもそも俺はご飯をおかわりしてしまっている。
そこまでヒレカツを食べておきながら「オーダーが間違っている」では人として間違っている。
最初の一口で苦言を呈するべきだった。
後悔してももう遅い。
仕方ない。
ご飯をもう1杯貰っておこう。
ついでに味噌汁もおかわりだ。
ヒレカツめちゃめちゃ美味しい。
幸せだ。
これが880円のチキンカツとはとても信じられない。
ご馳走様でした。
レジで会計を済ませ、店を出る。
俺の財布の中からは、何故か1280円が消えていた。
世の中、不思議なことばっかりだ。
何故ならば、少年漫画の主人公ぐらい俺はたくさん食べるから。
しょうが焼き定食大盛りとチャーハンを頼むより、1180円のトンカツ定食を注文してご飯を3杯いただいたほうが断然にお得である。
今日も馴染みのトンカツ屋に、俺は足を向ける。
もういい歳とはいえ、まだまだ魚より肉のほうが好きだ。
なんか豚喰いたい。
おや?
改めてメニューを見ると、俺は今まで見逃していたことに気がつく。
1180円のトンカツ定食よりも安い品目があるじゃないか!
チキンカツ定食880円だと!?
なんてリバーシブル!
相変わらずリーズナブルが出てこないことはさて置き。
豚が好きだけど鳥も好きな俺ははやる気持ちを抑え、さっそくこのチキンカツ定食を注文することにした。
オーダーを取ってくれたのは見慣れない女の子だ。
おそらく新人のアルバイトなのだろう。
どこかおどおどしていて、頼りなさそうに見える。
俺が「チキンカツ定食お願いします」と注文すると、新人の女の子はか細い声で「はい、ヒレカツ定食ですね?」と返事をした。
ちょっと待て。
おかしくないか?
どうやったらチキンカツがヒレカツと聞こえるのだ。
ちょっと回想してみよう。
「チキンカツ定食お願いします」
「はい、ヒレカツですね?」
この子にとって会話ってなんなんじゃろか。
いや待て俺。
俺は耳が悪いし、この子の声は小さい。
聞き間違えたのは俺のほうかも知れないじゃないか。
そうであった場合、俺こそがチキンカツをヒレカツと捉えたことになり、「どうやったらチキンカツがヒレカツと聞こえるのだ」という心のツッコミは自分自身に当てはまることになってしまい、とても恥ずかしい。
しかもこの子、自信がなさすぎて「はい、ヒレカツですね?」の言葉を明らかに俺に向けていない。
ちょっぴり激しい独り言か、もしくは予行演習みたいに見える。
と、考えているそばからバイトの彼女は調理場の人に「ヒレカツ1つお願いしまーす」などと口走った。
ような気がする。
そのヒレカツはまあ、俺のじゃなくて、他のお客さんのオーダーなのかも知れないし、俺の聞き間違いである可能性もある。
黙って料理を待とうじゃないか。
なんだかんだでチキンカツが作られるに違いない。
結果オーライだ。
こうして、俺の前にはヒレカツが届いた。
いやいや、これをヒレカツと決めつけるのはまだ早い。
衣で包まれているので、豚肉なのか鶏肉なのか、見た目での判断は難しい。
俺が知っているチキンカツとは形が違って見えるけど、この店オリジナルのチキンカツである可能性を無視することはできない。
食べてみよう。
よし、間違いない。
これはヒレカツだ。
店にクレームをつけるべきだろうか。
いやしかし、俺の今までの常識が間違っていた場合だってある。
味覚だけでこれをヒレカツと思ってしまったが、限りなく豚に近い鳥を使っていた場合、この店のチキンカツはこんな味になるのかも知れない。
「これはヒレカツじゃないか」と文句を言っても、「はあ? 何言ってんですか。それチキンカツですよ?」と返されては心が折れる。
傷つくぐらいじゃ済まないだろう。
さて、どうしたものか。
ヒレカツは1280円。
大打撃だ。
たまに自分へのご褒美で注文するメニューだ。
いつも頼むトンカツ定食よりもさらに高い。
この店はそんな商売の仕方をするのか。
実にあざとい。
取り合えず、ご飯をおかわりしておこう。
ふと見上げると、レジでは店長らしき男性とさっきの新人の子が一緒になって「申し訳ございません」とお客さんに何度も頭を下げている。
きっとオーダーを取り間違えて、ヒレカツか何かを出したのだろう。
これで俺は完全に苦情を言うタイミングを失ってしまった。
俺までが「注文と違う」と文句を言ったら、あの子はさらに気まずくなり、店長からも必要以上に怒られてしまうに違いない。
チキンカツじゃないと文句を言えない俺がチキンだ。
そもそも俺はご飯をおかわりしてしまっている。
そこまでヒレカツを食べておきながら「オーダーが間違っている」では人として間違っている。
最初の一口で苦言を呈するべきだった。
後悔してももう遅い。
仕方ない。
ご飯をもう1杯貰っておこう。
ついでに味噌汁もおかわりだ。
ヒレカツめちゃめちゃ美味しい。
幸せだ。
これが880円のチキンカツとはとても信じられない。
ご馳走様でした。
レジで会計を済ませ、店を出る。
俺の財布の中からは、何故か1280円が消えていた。
世の中、不思議なことばっかりだ。
2009
September 14
September 14
なるべく本名で呼び合おうと意識してはいるんだけれども、ついついハンドルネームがそのまま呼び名になってしまっている。
オフ会などで知り合って仲良しになった若者たちが、みんなで職場のスナックに飲みに来てくれた。
彼らとは友達になるぐらい一緒に遊んでいるから、もはや顔馴染みだ。
「いらっしゃい。席、用意しといたよ」
ボックス席に案内し、お酒を作って乾杯を済ませる。
誰かが「Hちゃんと話してみたい」と口にした。
「あ、俺もHさんと話してみたい!」
「あたしもー!」
Hちゃん、大人気だ。
さすが俺の日記でちょいちょいネタにされるだけのことはある。
幸い今日はHちゃんの出勤日だ。
せっかくなので、俺はHちゃんに声をかけた。
「Hちゃーん! こっちの席に着いてもらっていい? みんなHちゃんと話したいって」
やがてテーブル席に1名加わって、皆で乾杯を改める。
ただ、みんながHちゃんのことを知っていても、Hちゃんはみんなのことを知らない。
そこで、ちょっとした自己紹介が始まった。
みんなが名乗るのは自分の本名ではなく、呼ばれ慣れたハンドルネームだ。
「かずきです」
「さおりです」
奇遇にも全員、本名と思われてもおかしくないハンドルネームで、聞いていて恥ずかしくない。
しかし、最後に名乗った女の子だけは例外だった。
彼女は名を、わし子と名乗った。
「わし子です」
「ぐぷッ!」
変な声で吹き出すHちゃん。
何1つ前情報のないHちゃんは、まさか「わし子」がハンドルネームとは思うまい。
しかしHちゃん、初対面であろうとなかろうと、人の名前で笑ってはいけないと本気で思っているようで、咳き込んで真顔を保とうと必死になっている。
Hちゃんはマジで笑いをこらえている様子だ。
本気で、全力で笑いをこらえながら、Hちゃんが「わし子」の部分に耳を疑う。
「ぐッ! ごほ! えっと、ごめんなさい、今、なんて?」
「わし子です」
「がふッ!」
仕留められた猛獣みたいな声を、俺は確かに耳にした。
はたから見てて気の毒なほどに、Hちゃんは必死で笑うまいと我慢をしている。
きっとHちゃんの中では次のような葛藤があったに違いない。
「笑うな、あたし! 人様の名前で笑ったら絶対に失礼!」
「わし子って、親は何を考えた!? わし子って、字は鷲子? どんだけ凶暴な子だよ!」
しかし、そこは礼儀を重んじるHちゃん。
表情から察するに、「絶対に笑わん」と自分の中の意見はまとまっているようだ。
そんな最中、スナック「スマイル」のボスであるKちゃんが出勤してきて、こちらに目を向けた。
「おう、わし子! 来たか!」
「ぶぷッ!」
Hちゃんは唐突に、背後からトドメを刺されていた。
あれは本当に苦しそうだった。
ぼんちゅう君が来ていたら、どうなっていたんだろう。
オフ会などで知り合って仲良しになった若者たちが、みんなで職場のスナックに飲みに来てくれた。
彼らとは友達になるぐらい一緒に遊んでいるから、もはや顔馴染みだ。
「いらっしゃい。席、用意しといたよ」
ボックス席に案内し、お酒を作って乾杯を済ませる。
誰かが「Hちゃんと話してみたい」と口にした。
「あ、俺もHさんと話してみたい!」
「あたしもー!」
Hちゃん、大人気だ。
さすが俺の日記でちょいちょいネタにされるだけのことはある。
幸い今日はHちゃんの出勤日だ。
せっかくなので、俺はHちゃんに声をかけた。
「Hちゃーん! こっちの席に着いてもらっていい? みんなHちゃんと話したいって」
やがてテーブル席に1名加わって、皆で乾杯を改める。
ただ、みんながHちゃんのことを知っていても、Hちゃんはみんなのことを知らない。
そこで、ちょっとした自己紹介が始まった。
みんなが名乗るのは自分の本名ではなく、呼ばれ慣れたハンドルネームだ。
「かずきです」
「さおりです」
奇遇にも全員、本名と思われてもおかしくないハンドルネームで、聞いていて恥ずかしくない。
しかし、最後に名乗った女の子だけは例外だった。
彼女は名を、わし子と名乗った。
「わし子です」
「ぐぷッ!」
変な声で吹き出すHちゃん。
何1つ前情報のないHちゃんは、まさか「わし子」がハンドルネームとは思うまい。
しかしHちゃん、初対面であろうとなかろうと、人の名前で笑ってはいけないと本気で思っているようで、咳き込んで真顔を保とうと必死になっている。
Hちゃんはマジで笑いをこらえている様子だ。
本気で、全力で笑いをこらえながら、Hちゃんが「わし子」の部分に耳を疑う。
「ぐッ! ごほ! えっと、ごめんなさい、今、なんて?」
「わし子です」
「がふッ!」
仕留められた猛獣みたいな声を、俺は確かに耳にした。
はたから見てて気の毒なほどに、Hちゃんは必死で笑うまいと我慢をしている。
きっとHちゃんの中では次のような葛藤があったに違いない。
「笑うな、あたし! 人様の名前で笑ったら絶対に失礼!」
「わし子って、親は何を考えた!? わし子って、字は鷲子? どんだけ凶暴な子だよ!」
しかし、そこは礼儀を重んじるHちゃん。
表情から察するに、「絶対に笑わん」と自分の中の意見はまとまっているようだ。
そんな最中、スナック「スマイル」のボスであるKちゃんが出勤してきて、こちらに目を向けた。
「おう、わし子! 来たか!」
「ぶぷッ!」
Hちゃんは唐突に、背後からトドメを刺されていた。
あれは本当に苦しそうだった。
ぼんちゅう君が来ていたら、どうなっていたんだろう。
2009
July 22
July 22
女子プロレスラーの豊田魔波といえば、テレビなどでも多く出ているのでご存知の方も多いかと思う。
旧リングネームの豊田真奈美のほうが通じるのではないだろうか。
この豊田魔波さんなんだけれど、今後は一緒に働くことになった。
ウィキペディアやユーチューブにも名前が載っているような有名人と何故か同僚になってしまったのだ。
今や彼女は職場、スナック「スマイル」の大事なスタッフである。
店のママ、Kちゃんに惚れ込んだらしく、魔波さんはフロアレディとして出勤してくれることになった。
店に来た常連さんが目を丸くする。
「あれ? 新しい女の子入ったんだ?」
魔波さんは礼儀正しく自己紹介をした。
「豊田魔波です」
すると常連さんは大喜びだ。
「似てる!」
本人だから当たり前である。
ママの旦那さんは家で「めさ君より頼りになる」と安心していたとのことだが、俺だって同感だ。
何かあったら俺を守ってもらう気満々だ。
先日は一緒に開店準備をした。
魔波さんはご自身の知名度を鼻にかけることなく、「色々と教えてください」と律儀な態度を見せた。
俺は先輩風を吹かせる。
豊田魔波に威張るなど、そうそうできることではあるまい。
「このお店で最も大事なことは、俺に技をかけるときは手加減をするってことです」
すると魔波さん。
「それは約束できないですね」
守ってもらおうと思ってたのに。
スマイルは基本カースト制度で、1番下はやっぱり俺だ。
このポジションは譲れない。