夢見町の史
Let’s どんまい!
2012
May 27
May 27
お酒はポカリみたいにごくごく飲んではならない。
俺の弟のようになってしまうからだ。
弟はもういい大人なのに、それでもまだ酒を飲むペースがコントロールできない。
彼はいつも風呂上りの牛乳並みのペースで焼酎を飲むので、簡単にべろんべろんに酔っ払う。
酒は飲む前に飲まれろ!
って感じだ。
周りに絡んだり文句を言ったりする酔い方ではないからまだマシではあるものの、それでも店内やタクシーの車内、はたまた路上で眠ってしまうので困る
1度でもそうなるとまず起きてくれなくなるからだ。
先日、このようなことがあった。
俺は深夜のコンビニに立ち寄る。
地元の店なので店員さんとも顔馴染みだ。
「いらっしゃいませー。あ、こんばんは」
「どもー。こんばんは」
軽く挨拶を交わすと、カウンターの中でお兄さんが声を潜めた。
「今、弟さん来てますよ」
「え!?」
驚いて店内を見渡すが、夜中という時間帯のせいか人影はない。
弟どころかお客さんまでいないではないか。
不思議そうに首を傾げていると、店員さんが言いにくそうに顔を険しくした。
「その、実は弟さん、トイレから出てこないんです」
「マジですか!」
店員さんに両手を合わせ、詫びるジェスチャーをしながら俺は商品をカウンターに置く。
「すみません、ちょっとだけ待っててください。弟、起こしてきます」
「いえ、少しぐらいなら寝かせてあげといてもいいですよ。しばらくお客さん来ないでしょうし」
「そういうわけにはいきません。すご起こしますから!」
かくしてお手洗いへ。
ノブを回すと幸い鍵がかかっていなかった。
中には思った通りの人影が明日のジョーみたいにうなだれている。
「なにしてんだっつーの!」
ぺしっ!
と頭をひっぱたき、俺は顔を両手で挟んで上に向けさせる。
「起きろ!」
しかし俺はそっと顔の向きを元に戻し、
「失礼しました」
小声で言って外に出た。
知らない人だったからだ。
弟じゃなかった。
どっかの知らない青年だった。
初めてだ。
知らない人をひっぱたいたのは初めてだ。
物音一つ立てずにトイレのドアを閉めると、俺は暗殺者のように足音を殺してカウンターに戻る。
「どうでした?」
笑顔で訊いてくる店員さんに俺は小声になる必要なんてもうないのに、
「弟じゃないです」
と内緒話のように手で小さなメガホンを作っていた。
「えええ!? すみません!」
と店員さん。
「いえいえいえいえ!」
まだ動揺しているので慌てて首を左右に振る俺。
全く、だからお酒の飲み方には気をつけろと言ったのだ弟よ。
以後は充分に注意せよ。
分かったか。
ばか。
俺の弟のようになってしまうからだ。
弟はもういい大人なのに、それでもまだ酒を飲むペースがコントロールできない。
彼はいつも風呂上りの牛乳並みのペースで焼酎を飲むので、簡単にべろんべろんに酔っ払う。
酒は飲む前に飲まれろ!
って感じだ。
周りに絡んだり文句を言ったりする酔い方ではないからまだマシではあるものの、それでも店内やタクシーの車内、はたまた路上で眠ってしまうので困る
1度でもそうなるとまず起きてくれなくなるからだ。
先日、このようなことがあった。
俺は深夜のコンビニに立ち寄る。
地元の店なので店員さんとも顔馴染みだ。
「いらっしゃいませー。あ、こんばんは」
「どもー。こんばんは」
軽く挨拶を交わすと、カウンターの中でお兄さんが声を潜めた。
「今、弟さん来てますよ」
「え!?」
驚いて店内を見渡すが、夜中という時間帯のせいか人影はない。
弟どころかお客さんまでいないではないか。
不思議そうに首を傾げていると、店員さんが言いにくそうに顔を険しくした。
「その、実は弟さん、トイレから出てこないんです」
「マジですか!」
店員さんに両手を合わせ、詫びるジェスチャーをしながら俺は商品をカウンターに置く。
「すみません、ちょっとだけ待っててください。弟、起こしてきます」
「いえ、少しぐらいなら寝かせてあげといてもいいですよ。しばらくお客さん来ないでしょうし」
「そういうわけにはいきません。すご起こしますから!」
かくしてお手洗いへ。
ノブを回すと幸い鍵がかかっていなかった。
中には思った通りの人影が明日のジョーみたいにうなだれている。
「なにしてんだっつーの!」
ぺしっ!
と頭をひっぱたき、俺は顔を両手で挟んで上に向けさせる。
「起きろ!」
しかし俺はそっと顔の向きを元に戻し、
「失礼しました」
小声で言って外に出た。
知らない人だったからだ。
弟じゃなかった。
どっかの知らない青年だった。
初めてだ。
知らない人をひっぱたいたのは初めてだ。
物音一つ立てずにトイレのドアを閉めると、俺は暗殺者のように足音を殺してカウンターに戻る。
「どうでした?」
笑顔で訊いてくる店員さんに俺は小声になる必要なんてもうないのに、
「弟じゃないです」
と内緒話のように手で小さなメガホンを作っていた。
「えええ!? すみません!」
と店員さん。
「いえいえいえいえ!」
まだ動揺しているので慌てて首を左右に振る俺。
全く、だからお酒の飲み方には気をつけろと言ったのだ弟よ。
以後は充分に注意せよ。
分かったか。
ばか。
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