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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2017
December 14
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2011
August 22
 ボランティア員は、不思議と再会の挨拶や約束をしねえ。
 ボランティア員同士でも「ではまた!」とは言い合わねえし、ましてや依頼者さんに「またね」とはほとんどが、自然と口にしねえもんだ。
 例外もあるかも知れねえが、俺が見てきた限りだと、自分も含め、誰もがそうだった。

 俺たちボランティア員は、災害があったからこそ集まった集団だ。
 もし今回の震災がなかったら、顔を合わせることはなかった。
 出逢うことになるとしても、それは別の形で出逢っていることだろう。

 みんな心のどこかに、「ボランティア員として再会してしまうとき。それはまた何かしらの災害が起きてしまったときだ」と考えているのだと思う。
「また会いましょう」は、ここでは縁起でもないことなのだ。

 早朝に起き、自分の分のお弁当を作ってテントをたたむ。
 ささやかな我が家、撤収だ。

 めちゃめちゃ早起きをしていたので、昼食のお弁当を作ってから俺は、受け付け開始の1時間前にボランティアセンターに到着していた。
 まだ誰も来ていなかったが、今回も第1陣で出発したかったので、早くも列が出来ると思われる場所に荷物を下ろす。

 そうしていると、佐賀県からボランティア人員をたくさん乗せたバスが到着したり、ボランティア員が個々、ちらほらと集まってきたり、職員さんが出勤されたり、徐々に人が集まってきやがる。

 飽きもせず、今日もぴよぴよと群れてきやがって。
 これでも喰らいやがれ!
 挨拶代わりだ!

「おはようございまーす!」
「おはようございますー!」

 挨拶代わりってゆうか、本当にただの挨拶だが、まあ今日は許しておいてやろう。

「おはようございます」

 俺に近づいてきやがったのは1人のご老人。
 日に焼けているところを見ると、俺とは違ってもう何日も滞在しているボランティアのベテランと見た。
 彼も並びたいのだろう。
 俺のすぐそばに来た。
 自然と、雑談が始まる。

「僕ぁね、もう色んなところボランティアして、もう何週間かなあ。いわき市を手伝ってからは、もう1週間ぐらいになるんですけどね?」

 予想通り、このご老人はボランティア経験が豊富のようだ。
 彼はところどころ抜けて隙間が開いている前歯をニカッと見せる。

「色んなとこお手伝いさせてもらったけどね、みんないい表情してるんだ。このボランティアってさ、いわゆる3Kってやつじゃない。危険、キツい、えっと…」
「汚い、ですか?」
「そうそう! 危険、キツい、汚いの3K! なのにね、作業内容に文句言ってる人なんて1人も見たことないんだなあ。それどころかね、みんな休憩しようとしないの。リーダーに『そろそろ休み取りましょうよ』って誰も言い出さないんだなあ」
「そうですね。僕、そんなこと言ってる人、見ませんでしたね」

 でもまあ、ボランティア員だって健康を維持せねばならない。
 気持ちは解るが、休憩だけはしっかりと入れてほしいところだ。
 1人が「自分は休憩要りません」などと言って勝手に作業を続けられては、他の人が休みにくい心境になっちまうしな。
 休憩は無理にでも取るようにな!

 おじいちゃんは続ける。

「もうね、お家の人がね、心から『ありがとう』って言ってくれてね。中には涙流す人までいてね。そこまで感謝されるとさ、正直感動するよ」

 確かに、素直になるとそう思えてしまう。
 だが俺は悪魔なので素直じゃねえし!
 だから感動とかしてねえし!
 フンだ!

「ボランティアの人たちね、みんない~い表情してんだ」

 と、おじいちゃん。

 ばかが!
 オメー人のこと言えねえし!
 あんたの笑顔だって充分に爽やかなんだよ!

 笑顔が爽やかという理由で怒ったのは初めてだ。

 さて。
 今日の現場なんだが、「ヘドロの除去」という作業を最初のほうで紹介されたので、これを選んだ。
 4人で必要な備品をボランティアセンターにて借り、車に乗り込む。
 場所についてはわかんないが、なんかこう、北上したんだったと思う。
 ドライバーとナビ係の男性に全てを託したので、地図を見る機会がなかったのだ。
 どんまい!

 到着したそこは田んぼの真ん中で、ちらほらと一軒家が立ち並んでいる。
 見たところ洪水の被害とは無縁に思えたのだが、それはただここが海辺の見えないという景色だからなのであって、実際は海の爪はここまで届いていた。
 そのことを、俺たちはすぐに知ることになる。

 ボランティア員4名を出迎えてくれたのは、おじいちゃんおばあちゃんの老夫婦。
 こちらのお家は土台がわずかに歪み、少しだけ玄関などの立て付けが悪くなっているようだが、充分に住める状態みてえだ。
 家の前の地面はアスファルトで、そこが地震のせいで盛り上がっていた。

 おじいちゃんに、現場を見せてもらう。
 そこは家のすぐ裏だった。
 田んぼと家の間に小道が伸びていて、ヘドロが溜まったのはどうやらこの小道みてえだ。
 家と小道の間にはブロック塀が立っていやがるから、ヘドロはここで塞き止められている。

 洪水は田んぼを越え、海のヘドロをここまで運んできたというわけか。
 ってことは、海水に撫でられちまったこの広い田んぼも、しばらく使えないんじゃねえだろうか。
 そう考えるとブルーになった。
 デビルブルーだ。

 ヘドロはというと、一見黒いので土のように見えなくもないが、ブロック塀の根元に溜まっていやがる。
 こいつらを一網打尽にすることが、今回の作業だ。
 各自がスコップ片手に、ブロック塀に向かって腰を下ろした。

 今回も土嚢袋(どのうぶくろ)という、工事なんかでよく使う頑丈な袋をたくさん用意してきていた。
 スコップでヘドロをすくい、袋に詰めてゆく。

 土嚢袋いっぱいまで中身を入れてしまうと、その重さは50キロにも達しちまうだろう。
 リーダーの男性が「袋を運ぶとき腰を痛めないように、土嚢袋に半分ぐらいヘドロ入れたら次の袋使っちゃってくださいねー」と的確な指示を口にしていた。

 手分けをしていたので4人のボランティア員は離れ離れに距離を置きながら作業をしている。
 各自、その背後には土嚢袋が積まれていった。
 やがて全てのヘドロが袋詰めになる。
 4人の内、1人が女の人だったので、俺は彼女に「袋の口を縛る係をお願いしていいですか?」と頼み、その間、俺は袋を運んで1箇所にまとめることにした。

 最後に、消臭と消毒を兼ね、リーダーが石膏(せっこう)と呼ばれる粉を撒く。
 さっきまで黒いヘドロが積もっていた場所は、この石膏によって真っ白になった。


1137065_1151749589_164large.jpg







 この画像、右側に白い粉が撒かれているだろう?
 さっきまで、そこにヘドロが積もっていたというわけだ。
 左側に積んであるのがヘドロを詰め込んだ土嚢袋。
 ふはははは!
 片付けてやったぞ!
 いい汗をかいた。

 時計を見ると、まだ午前中。
 家主さんに挨拶をし、車で昼食を済ませる。

 今回のリーダーは関西からお越しの感じのいいお兄さんだ。
 今まで俺が知る中で、彼が最もリーダーに相応しい人材であると思える。
 明るくはつらつとしており、聡明。
 行動力も充分に見受けられた。
 加えて家主さんやボランティア員への配慮を怠らず、非常にいい具合でコミュニケーションを取り合ってくれる。
 俺様が心の中で勝手に100ポイント進呈したことを、彼は知るまい。
 めさポイントは何点貯めても何にもならんが、まあ気持ちだ。
 取っとけ!

 そんな優秀なリーダーが言う。

「まだ時間あるんで、もう1発近くに現場がないか訊いてみていいですか?」

 言って彼はボランティアセンターに電話をかけた。

 今俺たちがいるここの現場から1度ボランティアセンターに帰り、次の準備をする時間はさすがにねえ。

 現状のまま、直接手伝いに行ける現場があればいいのだが…。
 せっかく1日長く滞在したのだ。
 これで終いにしたくねえ。

 案じていると、リーダーは電話をポケットに仕舞いながら、ニカッと白い歯を見せる。

「ここからちょっと行った先に、住宅の瓦礫撤去の作業があるそうです。キツそうですけど、皆さん行けますか?」

 この言葉に、誰もが反射的に深く何度も頷いた。

 こうしてやってきた最後の現場なんだが、ここが最も酷かった。
 あまりに面喰ったので写メは撮らなかったが、そうだな…。
 被害の度合いとしては、福島県内で最も酷いとされる久之浜と同じぐらい酷い。
 久之浜の状況はだいたいこんな感じだったわけだが…。


1137065_1151749622_18large.jpg







1137065_1151749627_228large.jpg







 ここも似たようなもんだった。

 瓦礫の撤去っつったって、どのゴミをどこに運んだらいいんだ?
 ゴミをかき混ぜるだけと同じなんじゃねえか?

 パッと見、そうとしか思えないほど現場はしっちゃかめっちゃかに散らかっている。

 復興するまで、何年かかるんだ…?
 心の底から疑問が沸いた。

 遠くを見るとシャベルカーが何かしらしている。
 風が少し吹くだけで粉塵が舞い、目に入った。
 どこかで2ヶ月前の食材が腐っているのか、悪臭も鼻につく。
 悪い想像だが、もしかしたら地面の下にいるペットや人間の腐敗臭が混じっているのかも知れない。

 大きく見渡してみる。

 これで死人が出なかったわけがない。
 その確信が自分を悲しくさせた。

 俺は帽子を深く被り、マスクで口を覆った。

 リーダーたちが車を止めている間、俺は家主さんや、既に活動をしていたボランティア員に声をかけ、挨拶をする。

 だだっ広くなった土地に、ポツンとその家は残っていたが、それはもはや家ではなかった。
 家の形をした木片だ。
 そう思えるほど、ご自宅はボロボロにされてしまっていた。

 説明を聞くと、ここでの目的はご自宅の周りに流されてきた瓦礫を撤去するとのこと。
 木材はあっちへ。
 瓦や石、ブロックのかけらはあそこへ。
 鉄類はそこに。
 そんな具合で一応、簡易的なゴミ置き場は設定されているようだ。

 やがてここに来るはずのリーダーたちに、俺から説明できるよう、家主さんにお訊ねする。

「僕ら4人、増援って形で応援に来たんですけど、先に作業していらしたボランティアさんたちと同じことをすればいいんですかね?」

 すると日に焼けた中年男性は目を大きく見開いた。

「男の子だったの!? 女の子だと思ってた」

 これには俺も大きく目を見開いた。

 あたしのどこに女の子に見える要素があるってゆうのよう!
 男の子って歳でもないしね!?
 俺は悪魔なんだっつうのー!

 全身はレインコートだし、帽子を目深に被り、マスクで顔を覆っているから、俺の顔は見えなかったんであろう。
 どんまい俺!

 俺は悪魔だから泣かないのだ。

 作業は、なかなかはかどらなかった。
 ゴミの山を見れば、あれだけの量を運び出すことに成功したのだと思える。
 なのだが、ご自宅に目を向けると、ちっとも片付けられた気にならない。
 いくらやっても、瓦礫が減らねえんだ。

「っせーのッ!」

 何度目かの掛け声がかかる。
 ずりずりと、巨大な木片が動いた。
 俺のウエスト以上に太いその木は、家の柱だった物だろう。
 このご自宅の柱なのか、流されてきた物なのかは解らない。
 木にはロープが巻かれ、それを大勢で引っ張ることで動かす。
 こんなことを幾度となく繰り返した。

 巨木を動かせないときは、細々とした瓦礫を手でかき出し、どけてゆく。
 木はあっちへ、石や瓦はそっちへ、鉄類はそこへ。
 人に当たらぬよう、片っ端から放り投げた。
 それを別のボランティア員が、あるいは運び、あるいは土嚢袋に詰め込んでいく。

 町だったここは、本当に酷い有様だった。

 早くも悪臭に慣れてしまった自分がいる。
 炎天下の中だったので素肌の上にレインコートを着てしまったことは本当に失敗だったが、夢中だったので気にならない。
 汚れてもいいTシャツなどは、次回のボランティアのときに用意すればいいと思った。
 誰もが夢中で作業に明け暮れた。

 どういう感情からなのか、泣き出してしまいたくなっている。
 その涙をぐっとこらえた。

 俺は悪魔だから泣かないのだ。

 被災してしまった方の前では絶対に泣くべきではないと、俺は個人的に思う。
 横浜で平和に過ごせる俺が、大変な目に遭ってしまった方の前で涙を見せるなんてちゃんちゃらおかしいことだ。
 俺はなんとなく、そう思っていた。

「あ」

 俺様のデビルアイが、瓦礫の中から金目の物を発見!
 旧千円札だ!

 俺はいそいそと家主さんに駆け寄る。

「少ないけど、お金ありました」
「ああ、ありがとう」

 無口でぶっきらぼうな印象だった中年男性は、静かに頭を下げ、大切そうにお金を受け取り、懐に仕舞うと、悲しそうな目で遠くに視線を泳がせた。

 途中、休憩を入れることになった。

 家主さんは、俺たちのためにお茶を箱買いして用意してくれていた。
 それらのお茶や心遣いを無駄にしたくない一心で、皆「いただきます」と口を揃える。

 ここで勝手にボランティアを代表し、悪魔であるこの俺様から、依頼主さんたちに文句がある。
 あくまで俺個人のお願いなので聞かなくてもいいんだが、家主さんどもよ!

 茶の1つも用意しねえで自分ン家の片付けを手伝ってもらうのは気が引けるであろう。
 せめて飲み物ぐらい、って気持ちも解る。
 だけどな!
 俺たちボランティアに報酬なんて要らねえんだよ!
 飲み物だって各自、自分で用意してあるんだ!
 だから、余計なお金、遣うなよ!
 俺ァな!
 さっき千円札を見つけたとき、ポケットのないレインコートを着てたから財布なんて持ってなかった。
 だからできなかったんだが、もし財布が手元にあれば、こっそり手持ちの金足して「これ落ちてました」って多く渡したかったんだ。
 手伝ってもらうことで感謝の気持ちも、申し訳ねえ気持ちもあるだろうが、頼むからボランティア員のために金を遣わねえでくれ!
 そのお金は自分のために遣いやがれ!
 代わりに、関東が被災したら、そのときはよろしく頼むぜ。

 たいした作業もできないまま、やがて解散時刻が訪れる。

 ボランティア員たちは家主さんに一礼をし、それぞれの車に乗り込んだ。
 このとき、14名もボランティア員がいたが、やはり誰も「いずれまた」などの再会の挨拶をしなかった。

 ボランティアセンターに戻り、リーダーは「今日のことを忘れたくないから」と写真撮影を提案してくれた。
 4人で写っているその画像は、魔界に大切に保管しておくとしよう。

 女性ボランティアの方はここ福島出身の方で、「町が直ったら同窓会をしましょう。再会はそのときに」と言ってくれた。
 しかし、彼女も俺も、誰もが連絡先の交換を申し出ない。
 やはりなんとなく、「また逢おう」は縁起でもない気がするのだろう。

 リーダーが報告書を提出するため、建物へと入ってゆく。
 今日結成されたばかりの4人のチームは、これにて解散だ。

 俺はリュックを背負った。

 ボランティアセンターの職員さんは、この3日で俺の顔を覚えてくれたみたいだ。

「お疲れ様です!」

 めちゃめちゃいい笑顔で見送ってくれた。

 俺は人間ぶって、深く頭を下げる。

「僕は今日がラストだったんで、もう帰ります。町が復興したあと、今度は遊びに来ますんで」

 口にした瞬間、突発的に涙があふれ、語尾まできちんと発音できなかった。
 帽子のツバで目を隠し、おじぎするかのように顔を伏せ、そそくさとその場を立ち去る。

 職員さんたちは穏やかに笑いながら、手を振ってくれていた。

 なんで涙がこみあげてきたのか、自分でも解らなかった。
 でも、俺は悪魔だから泣かないのだ。

 いわき市のバス乗り場。
 帰りの高速バスが来るまで時間を作っていたので、お土産屋さんに入る。

 近所の人や職場の仲間に、いや違う。
 魔界に住まう極悪な魔物どものために福島の土産を強奪せねば。
 嫌がる売り子に無理矢理お金を渡し、数少ない物資を強引にこう…、もういい。
 普通にお買い物をしてやろう。

 これくーださい。

「ありがとうございます。あの、ボランティアの方ですか?」

 まるで旅人のような俺の荷物を見たからだろう。
 売店のおばちゃんがそう訊ねてきたので、俺は「ええまあ、そうです」と恥ずかしながらも返す。

「それはそれは…。どちらいらしたんですか?」
「魔界です」
「横浜から…。それはまた遠くから…。夜は眠れましたか?」

 ばっきゃろう!
 オメーそれを俺に訊くってことで、自分たちが眠れぬ夜を経験したってことが浮き彫りになってんじゃねえか!
 眠れなかったのかよ!?
 それなのに被災してねえ俺を気遣うのかよ!?

「はい、僕は大丈夫です。あの、僕また、福島の野菜とかお酒取り寄せますんで、売り上げとか大変だと思うんですけど、えっと、また遊びに来ますんで、うんと…」

 コメントが固まってねえのに喋るとこうなるという見本をお前らに見せつけてやったわけだが、ここでも涙が溢れてくる。
 でも、俺は悪魔だから泣かないのだ。

 再び帽子のツバを深く下げた。

 おばちゃんが、小さなお菓子をいくつか手渡してくれる。

「これ、帰りに召し上がってください」

 お菓子を両手で受け取り、店を後にした。

 魔界に着いて、俺は世話になったYと、そのおふくろさんに電話で礼を言い、疲れた体を横にして深く眠る。
 できれば、もっと滞在したかった。
 俺にお金と時間がたくさんあればよかったのに。
 くそ。

 さて。
 いわき市にいる間、ずっと考えていた疑問がある。
 それは「募金するのとボランティアに行くの、どっちが有効なのだろう」ということだ。

 俺は今回、3日間お手伝いをさせてもらった。
 例えばこの3日間、被災地に行かずに普通に働いて稼いだとしよう。
 プラス、往復するための足代も使った。
 そういったお金を計算すると、だいたい3~4万円といったところか。
 俺はボランティアに行くためにこの3~4万を費やしたという言い方ができるわけだ。

 ボランティアとして拘束される時間は、なんだかんだで6~7時間。
 時給1000円と仮定すれば、1日あたり6000~7000円の労働をしたと言い換えられる。
 3日でつまり、俺は最大で21000円の仕事をしたと喩えることができるってこった。

 だったらわざわざボランティア行かねえで3~4万ポンと募金したれや。
 と、俺は自分に対して思ってしまったわけだ。

 だが、それでも俺はボランティアに行ったほうがいいのだと結論を出した。

 自分の人生勉強になるし、その体験を人に伝えることもできるから。
 というのはもちろんのこと、俺にはまた別のところに考えがある。

 地震が来て、津波の被害に遭ってしまって、「家がこんなことになってしまった」と肩を落とし、途方に暮れている人間がいるとしよう。
「これを直すための工事を頼んだら、一体何十万の費用がかかるだろう」と悲観している人間がいて、そんなとき、大勢が助けに来てくれたと思ってみてほしい。

「報酬は要りません。一緒に立て直しましょう」

 この言葉と行動によって生じる感情は、決して募金だけでは得られまい。

 いやらしくお金の話をしてもいいか?
 依頼主さんからすれば、工事費の何十万が浮いてしまうのだ。

 だから、偽善でもカッコつけでも、1日だけでもいい。
 可能な奴はボランティアに参加してみてほしい。

 中には感謝されることを目的としているせいで、人に「ボランティアめっちゃ楽しいです!」と表情を輝かせてしまう者も少なからずいるみてえだが、まあそれでも構わねえ。
 行ける奴は、ぜひ行ってみてほしい。

 また、「自分はボランティアにも行けないし募金もしていない」って奴、気を落とすな。
 そういったことは、お金がある奴、時間がある奴に任せておけばいいんだ。
 募金した奴は偉い、ボランティアに行った奴は偉いなんてことは一切ねえ!
 逆に、募金しなかった奴は非情、ボランティアに行ってねえ奴は非情なんてことも一切ねえ! 

 そのことで人を責める奴は弱えだけだ。
 いつ自分に災害が降りかかるか解らねえしな。
 そんなときのために蓄えておけ。

 あなた募金してないの?
 ボランティア、自分は行ったけど君は行ってないの?

 そう訊いてくる奴は自分の善行に酔ってるだけだ。
 気にすんな!

 最期に、俺は悪魔だからな。
 冒頭でも「縁起でもねえからボランティア員は再会の挨拶や約束をしねえ」と書いたが、俺様は違うぜ。
 ふはは。

 めちゃめちゃ悪い顔をしながら、再会のメッセージを刻んできてやった。
 ボランティアセンターの掲示板に刻んだ悪魔の爪痕を見るがいい!


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 書きながら泣いたなんてこたぁ、もちろんねえ。
 俺は悪魔だから泣かないのだ。

「次は遊びに来るから、早く復興してな! めさ」

 ――了――



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2011
August 06
 東北の奴らはおめでてえ奴が多くって眩暈(めまい)がしたぜ!

  朝、早起きをして野外調理セットを準備し、仲間と自分のお弁当を作っていたら、テントのそばを犬の散歩をしている初老の人間が通りがかりやがった。
  政府の犬に「そこの川辺で勝手にテント張ってる不審な悪魔がいます」なんてチクられたら厄介だからな。
  俺様自ら牽制し、呪いの声をかけてやった。

「おはようございまーす!」

  すると犬の飼い主、いい笑顔で「おはようございます」と返してきやがる。
  じいさんは俺たちの川付き一戸建て、要するにテントに目を走らせた。

「避難されて来たんですか?」
「いえ、ボランティアで来ました」
「へえ! どちらから!?」
「横浜です」
「へえ!」

  一瞬にしてじいさんの目が丸くなる。

「うち、すぐそこだから! なんか足りない物あったら言ってください! 家、すぐそこだから! なんか必要な物ありませんか?」

  オメーはばかか!
  手助けしに来たのに、逆に助けられたらカッコ悪いだろ!?
  いや俺は悪魔だから助けに来たんじゃなくて、えっと、ゴミどもを片付けに来ただけだけどな!
  だいたい、俺がボランティアを語った泥棒とかだったらどうする!?
  少しは悪魔を疑え!

  そんな説教を、俺は遠慮なくじいさんにかましてやったぞ。
  こんな具合にな!

「いえいえ、お気遣いありがとうございます。必要な物はあらかじめ用意してあるんで、大丈夫ですよ。ありがとうございます、ホントに」

  ふふん。
  少々言いすぎちまったが、まあいいだろう。

  それにしても、現地の民Yも、そのおふくろさんもお人好しすぎて心配になる。
  Yのおふくろさんは「テント張る場所が見つからなかったときのために」と俺たち3人分の布団を用意してくれていたそうだし、夜は風呂を貸してくれ、ケータイまで充電させてくれた。
  何度も言うが、ボランティアを語る悪者だって少なからずいるのだ。
  俺にいたっては悪者どころか悪魔だし、少しはアレだ。
  自分がいい奴だからって、他人もそうだと思って油断すんなよな!
  ばかー!

  さて、朝っぱらから悪魔の怒りを爆発させたところで、出発の時間だ。
  仲間たちにお弁当を持たせ、テントを後にする。

  ボランティアセンターの受け付け開始時刻は朝の9時からだったが、俺たちは8時30分に到着するようにした。
  受け付け開始と同時に手続きを済ませ、第一陣でさっさと出発すれば、それだけ現地で作業をたくさんできると踏んだのだ。
  この判断はまさに大正解で、俺たちは速攻で現場に急行できることができた。
  受け付けを待つ列の、最前列に並べたからだ。

  仲間の1人は、昨日訪れた本間夫妻のご自宅に、今日も行くのだそうだ。

  現地の方々は「ここもあんまり報道されてなくってねえ。こんなに酷のにねえ」と嘆いておられたので、少しでも広めるべく俺も書く。
  久之浜の被害も相当だ。

  そんな久之浜にある本間邸に行くための手続きを、仲間は昨日のうちからボランティアセンターで済ませてあった。
  ボランティア員が希望を出せば、連日同じ現場でお手伝いすることができる仕組みができているのだ。

  また、もう1人の仲間は他の被害も目に焼きつけたいらしく、昨日とはまた別の現場を望むとのこと。

  俺はといえば、昨日の本間さん家でもいいし、他の現場でもよかった。
  どうせ俺は男だし悪魔なので、昨日と同じく、なるべくキツそうな作業をチョイスすることにする。

  こうして俺は、本間さんに「また来ました。今日もよろしくお願いします」と頭を下げることになる。
  1番最初に「こんな現場がありますよ」と過酷そうな作業が案内されて、挙手したらたまたま本間夫妻のご自宅だったのだ。
  これも何かのご縁だろう。

  かつて知ったるお家だ。
  俺は他のボランティア員の皆さんに、「1階部分の畳をはがすと足場がなくなるので要注意です」とか「水道は使っても大丈夫だそうです」など、情報を周知する。

  さて。
  俺は昨日、家の中でしっちゃかめっちゃかになっていた家具やら家電やらをあらかた運び出してしまっていたので、今回は庭でゴミの仕分けを担当することにした。
  一時は産業廃棄物を扱う会社でお世話になったこともあるので、その経験は今回、大いに役立つであろう。

  土嚢袋(どのうぶくろ)と呼ばれる頑丈な袋に、それぞれガラスを入れ、あるいは陶器を入れ、他の袋には細かい木片を入れ、区分けして置いてゆく。
  電化製品、鉄類、プラスチック、全て分けた。
  この辺りの処理場の事情が解らないので、仕分けは細かくするに限る。

  家のご主人が軽トラックをお持ちだったので、その荷台にゴミを乗せ、他のボランティア員と共に降ろし場まで運んでいただく。
  ところがこの日は近所の回収場がお休みのため、遠くの収集場まで行かなくてはならないらしく、運び出しは難儀した。
  なので、俺はなるべくスペース確保を心がけ、物が溢れないようゴミの置き方を工夫することに。

  ここで、俺の経験が少し役に立った。
  悪魔の破壊能力だ。

  運び出された家具をそのままトラックに載せると、荷台はあっという間にいっぱいになる。
  したがってこれは解体するのが望ましい。
  しかし、バールなどを用いて家具を壊すとなると、かなりの体力を消耗してしまう。

  一生懸命にバールを振るい、テレビ台を壊しているおっちゃんに俺は声をかけた。

「こうすると楽ちんですよ」

  ふはははは!
  見よ!
  これが悪魔の力だ!

  俺はテレビ台を持ち上げると、角の部分がアスファルトに激突するよう、地面に叩きつける。
  だいたいの家具はたったこれだけで、一瞬にしてバラバラにすることができるのだ。

  ハンマーでガラスを叩き、少しずつ割っているおっちゃんも手伝った。

「そうやって割ると時間がかかるし、何より破片が目に入っちゃって危ないですよ。なので、僕はこうやってます」

  ガラスの上に布をかぶせ、その上からかかとで踏みつける。
  薄い靴でそれをやるのは危険だが、ブーツとか安全靴とか登山靴ならば余裕だ。
  大きなガラスはあっという間に細かくなった。

  手が空いたときは家の中に入り、手伝えることがないかを探す。
  中年男性のボランティア員が、「押入れの中にスノコが斜めに入ってて、それが引っかかってどうしても取れない」と困っていた。

  そういう荒っぽい仕事は悪魔に任せよ!

  俺は器用な軌道の小さな蹴りを押入れの中に放ち、スノコだけを割って引きずり出す。
  つま先までしっかり保護されている登山靴を履いていて、本当によかった。

  しかし、個人的な特殊能力を最も役立てたのは俺ではなく、ある青年だった。
  彼は一眼レフを持参しており、休憩中は破壊された町並みを撮影するなどしていたのだが、今時珍しくカメラはデジタルではなく、フィルムを使うといったこだわりよう。
  聞けば昔から趣味で写真を撮っているのだそうだ。
  この青年が間違いなく、本日のベストいい仕事賞ナンバー1に輝いたと思う。

  洪水でしっちゃかめっちゃかになった家の中には、海水に濡れたアルバムも何点かあった。
  開けばそこには本間夫妻やそのご家族の思い出がたくさんつまっている。

  青年は写真の1枚1枚を丁寧に取り出し、まるで現像するかのように水で洗って、干してゆく。

「応急処置にしかなりませんけどね」

  そうはにかむ彼の目は真剣だ。

  写真は洗濯物を干すかのように洗濯ばさみで吊るされてゆくのだが、画が写っている面同士を触れさせてしまうとくっついてしまうようだ。
  彼は、写真同士が触れる場合は裏面と裏面が触れるよう、裏表を意識していた。
  写真の中には大昔の白黒の物もあって、ある国で撮ったのだと本間さんは言う。
  文化的に重要度が高いと判断した青年は、「これ僕1度持ち帰ってもいいですか? 完璧に復元して、また持ってきますから」と実に頼もしい。

  これ以降、ゴミの中からクリップや洗濯ばさみなど、写真を干すのに役立ちそうな物を見つけたら青年に渡してゆくことにする。

  ご自宅の中から出てくるのは、当たり前だが写真だけではない。
  泥だらけではあるが、非常に綺麗な食器も多かった。
  この食器が、ちょっとだけ困った事態に発展するきっかけとなる。

  本間家のご夫人が、女性ボランティア員に「もしよろしければ差し上げます」とおっしゃった。
  そのボランティア員が「いいんですか?」と喜んでいる傍ら、別の男性ボランティア員が未確認情報を口にしてしまったのだ。

「そういう食器とかって、ボランティアセンターに持ち帰ると、仮設住宅に住んでる人たちに届けてくれるらしいよ」

  どう考えてもガセネタだ!
  人手不足すぎてそんなルートが確立しているとは、とても思えねえ!
  現実的に考えれば解るだろう。
  どうして届けられる物が食器だけなのだ。
  仮設住宅へ品物が届けられるというのなら、必要な物は食器だけでなく、あれもこれもとリストアップされているのが当たり前じゃねえか?
  だいたい、初回で受けた職員さんからの説明の中に「ご自宅の方が要らないとおっしゃる物がありましたら、仮設住宅にお届けしますのでボランティアセンターまでお持ち帰りください」の一言がなかったことも、流通ルートなどないことを証明していやがる。
  だいたい、もし仮設住宅に食器が届けられるとするならば、その食器は運ばれる前にボランティアセンターで洗浄せねばなるまい。
  その仕事を、誰がやるというのだ。
  そんな人員いたように見えたか?

  手短にそう指摘すると、女性ボランティア員は、

「じゃあ私が洗います」

  そうじゃなくて!
  だいたいボランティア員が「現地で洗っておきました」と告げたところで、ボランティアセンターでは「じゃあこっちでは洗わないまま運送しますね」ってわけにもいかないじゃんか!
  そもそも被災者さんの食器が再利用されるって情報、未確認なままだしね!?

  たくさんの食器を持ち帰って、「え!? これどうしたらいいんですか!?」と困惑するボランティアセンター職員さんの表情を想像してほしいもんである。

  俺は一応、「洗うまえにボランティアセンターに確認取っておいたほうがいいですよ」と助言を残し、自分の作業へと戻る。

  しばらくの時が流れた。
  相変わらずせっせと食器を洗う女性ボランティア員の背中が視界に入り、俺様の動きがピタリと止まる。

「あの、ボランティアセンターには確認取れました?」
「まだです」

  うっそ。
  大量の食器が洗われてしまっているが、これ全部無駄な仕事になるかも知れないぞよ?
  我ながら「ぞよ」って久々に聞いたな。

  それにしてもこの女性、何か考えでもあるのか、どうやら情報の真偽を確認するつもりはないらしい。

  俺はチームリーダーの男性に書面を借りて、ボランティアセンターの電話番号を見る。
  携帯電話のボタンをプッシュした。

「もしもし? いま久之浜で作業させてもらっている者なんですが、依頼主さんが食器をくださると申し出てくださいまして、そういった物を仮設住宅で使う、なんて話はあったりしますかねえ?」
「そういうのはないですねー」

  ですよねー。

  世話の焼ける話である。

「僕が今ボランティアセンターに電話したんですけど、仮設住宅に何か運ばれるなんてことはないそうですよ」
「了解でーす」

  了解でーす。
  じゃねえ!
  物を大事にしてえ気持ちは解らんでもねえが、時間を無駄にしてどうする。

  結果、庭と家の間、ちょうどど真ん中に畳が敷かれ、その上を多くの食器が占領することになる。
  やたら綺麗になっちゃっているので、誰もがそれをゴミとして処分できない。
  なのにその食器たちは、誰にも持って帰られないのである。

  男性ボランティア員の1人が「邪魔だなあ」と顔をしかめた。

  やはり情報は大切である。

「あのう」

  声に振り向くと、ご婦人がおずおずとメモ帳と鉛筆を持っている。
  本間さんだ。

「これに、住所とお名前を書いていただけませんか?」

  瓦礫の中から見つけたのだろう。
  メモ用紙も鉛筆も、汚れていてボロボロだ。
  それらを大切そうに、ご婦人は両手で持っている。

「これだけの縁にしたくないんです。せめてハガキぐらいは出させてください」

  ボランティア員は、依頼者さんから金銭を受け取ることを禁止されている。
  お金を貰ったらそれはボランティアではなくなってしまうし、ただでさえ被害に遭ってしまった方からさらにお金を出させたら負担を増やしてしまうといった観点からだろう。
  しかし、礼状まで断ってしまったら奥様の気持ちが報われない。

  俺は悪魔だから字の汚さも悪魔的だが、なるべく丁寧に住所氏名を書き記させていただいた。
  中には「俺そんなつもりで来たんじゃないからいいよう」と断るボランティア員もいらしたが、結局は奥様の熱意に折れ、全員が住所指名を書き込んだ。

  ボランティア活動から2ヶ月後、ご婦人から1通の手紙が魔界に届くことになる。
  そこには震災によって大きな絶望感を抱いていたこと、そんな中ボランティア員が来てくれたことを非常に嬉しく想ったことなどが詳細に、丁寧に書かれてあった。

  俺は悪魔だからちっともマジで少しも泣いてなんてねえからな!
  むしろ笑ったわ!
  笑いすぎて涙が出たほどだ!
  要するに泣いた。

  この日も時間をちょっぴり誤魔化して、多めに作業をし、ボランティアセンターへと引き上げる。

  仲間は当初の予定通りこのまま関東へと帰るので、今夜からはソロ活動だ。

  俺は急遽予定を変更し、1日多く滞在することにしてある。
  したがって明日行く現場は、本来なら行くことのなかった場所ということになる。

  俺は翌日「1日延長してよかった」としみじみ想うことになる。
  その現場は壊滅的で、本間邸よりもさらに酷い有り様だった。

  最終日編に続く。



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2011
July 18
 ふはははは!
  たっぷり料理してくれる!

  って感じで俺様は早起きをし、登山用の小型コンロで3人分のお弁当と朝ごはんを作った。
  玉子と鳥そぼろ弁当。
  朝食には昨日のハヤシライスの残りを利用してコンソメスープを作り、それに合うようにトマトケチャップと塩コショウで味付けをしながら、シーチキン入りの洋風チャーハンを作った。

  朝ごはんだけならまだしも、どうしてお弁当が必要なのか?
  これは、現場付近でお食事処がない場合が想定されるからだ。
  一部の地域ではコンビニやスーパーが機能しているが、まだまだ営業どころじゃない店だってたくさんあるそうだからな。
  昼食はボランティア各自で用意しておいたほうがいいわけだ。

  3人で同じ現場に行くかどうかも未定なので、作ったお弁当は1人1人に持ってもらい、いよいよボランティアセンターへ。

  と、ここで少し困ったことが。
  我々悪魔一行が、迷子になってしまったのだ。

  現地の協力者であるYが言うには「ボランティアセンターの場所は現地の人には知れ渡ってないです」と言っていたが、これがマジその通りだったのである。

  ボランティアセンター最寄のバス亭で降り、バス停留所にあった地図に従ったところ、この地図がなんと現在地から見て上下が逆で、見事なまでの初見殺しでいやがった!
  あの道を右に曲がって真っ直ぐいったら川があると見せかけて、線路があったりしたのだ。
  街中だからデビルウイングで飛んだら目立ってしまって政府の犬に狩られるし、これはそこら辺の下界の民を捕まえて拷問をし、道を聞き出すしかねえ。

  さっそく軽自動車になんか積んで作業しているおっさんを捕獲し、悪魔の尋問を無理矢理に開始する。

「お忙しいところすみません。あの、この『いわき市社会福祉協議会』ってところに行きたいんですけど、ここからですと、どう行ったらいいんでしょうか?」
「え!? ここから!?」

  なんだそのハワイの波みてえに大きなリアクションは。

「ここからだとかなり距離あるよ!」

  うそん。
  だって現地のYちゃんって人が、この近くだって言ってたもん。

「3人とも車乗りな! 送ってくから!」

  お人好しか!

  それにしても困った。
  おっさんとYの持つ情報が明らかに噛み合っていやがらねえ。

  考慮した結果、おっさんは明らかにお仕事中だったし、Yがしてくれたであろう下調べのほうを信じることで、お車に乗せてもらうことを辞退し、さっきのバス亭へ。
  そこで地図を見直した結果、先にあった「進行方向に対して地図の上下が逆であること」に気がついたというわけだ。
  おっさんの車に乗せてもらっていたら果たしてどこまで連れていかれてしまうのか気にはなるが、改めてボランティアセンターを目指す。

  ここで悪魔からの提案だ。
  観光地ではないので普段は地図の表記がいい加減でも滅多に困る者などいないであろうが、今しばらくは非常時だ。
  俺様のようにボランティアと見せかけて、ボランティアに来る者がうじゃうじゃいやがる。
  現地の者にボランティアセンターがどこなのかといった周知をしてもらったり、初見殺しの地図をやめるなどしてもらえたら、色んな人が助かるであろう。
  なのでなのでそうしてくれるが良い!

  あ、しまった。
  これ現地の職員さんに直接伝えとけばよかった。
  失敗失敗。

  そうこうしていてボランティアセンターに到着だ。
  迷子になってしまったので受け付け開始の9時から15分が経過していた。

  まず「来てくれて…ありがとう!」の手書きの文字が目に入ったが、俺は悪魔なので心の篭ったメッセージにちっとも心が動かなかった!

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  したがって決して涙目などにはなってねえ。
  既に並んでいる善意だらけの長蛇の列にもちっとも感動しませんでしたっ!
  ぐすん。

  ボランティアセンター建物の前には、大きく分けて2つの列があった。
  1つは2回目以降の人用。
  これはすぐに現場に直行できる列であろう。
  もう1つが俺たちが並ぶべき、初めての人用の列だ。

  これに並ぶと様々な説明を受けることができるし、無料でボランティア保険に加入もできる。

  当初の読み通り、ボランティア保険はわざわざネット上から申し込んだりしないでいい。
  保険への加入が任意だろうと絶対条件であったとしても、現地でボランティア員として登録をする際、必ず申し込む機会があるからな。
  期間は1年の保険で、無料。
  日本全国どこでも有効なので、初めての奴は入っておくがいいだろう。
  作業中に怪我したり具合が悪くなったとき、金銭的な面で役立つぞ。

  ここでは左腕にシールを貼ってくれる。
  ボランティアを語って悪さをする奴が、過去にいたからなのかも知れない。
  このシールがなければボランティア員じゃありませんよ、といった印にもなっているのだろう。
  他、資格を持っている人間にはガムテープに「消防士」だとか「外科医」などと書いて、シールと一緒に貼る。
  俺は免許を持っているので一応、「フォークリフト」と書いてもらった。
  現地にフォークリフトがあるとは思えないが、まあ念のためだ。

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  登録が済むと、今度は建物の中に通される。
  ここで、必要な心構えなどをレクチャーしてもらえるというわけだ。

  職員の人間どもは、誰もが皆に感謝をしているらしく、穏やかかつ素晴らしい笑顔を常に浮かべている。

「皆さん、今日は来てくださって、本当にありがとうございます!」

  優しいながらも力強い声に、ボランティア初心者たち全員は椅子にかけた状態でありつつも、深々と頭を下げる。
  その中には海外から来た人間も、高齢者も、家族連れもいやがる。
  現地の者も、遠方から足を運んだ者もいやがる。
  朝っぱらなのにざっと見渡して30人以上いやがる。

  職員のお姉さんは、もう何十回、何百回もしたであろう説明を一生懸命、心を込めて口にする。

「ご自宅の方は気が滅入ってしまっている方も大勢いらっしゃいます。はしゃいでいるように見られないよう、『なんでもします!』と張り切るのではなく『大変でしたね。一緒に頑張りましょう』とコミュニケーションを取りながら作業なさってください。また、稀にボランティア員へのお礼として現金を用意しておられる方もいらっしゃるようですが、そういったお金はどうか受け取らないよう、お願いいたします。また、壊れてしまった自分の家にカメラを向けられますと失礼に感じられてしまうこともありますので、記録を残したい方は一言、現地の方に許可を得てから撮影していただけるよう、お願いします」

  お姉さんの一言一言に真剣な眼差しを向け、何度も何度も「うん! うん!」とうなずき、何事かを強く決意しているように感じさせるおじいちゃんが印象的だった。
  俺は帽子のつばで目を隠したが、決して涙目になったわけじゃねえからな!

  説明を受けたあと、仲間が言った。

「あのお姉さん、震災があってすぐの頃はたぶん、集まってくれた人たちに感動して、説明中なのに涙が止まらなくなったことがあったと思う」

  俺が受けた印象も同じだ。

  ミーティングが終わるといよいよ現場に向かうわけだが、ここで1つボランティアセンターでの段取りや仕組みを記載しておこう。

  流れとしてはまず、被災してしまった方がボランティアセンターに「どこで何を何人ぐらいでしに来てほしい」といった依頼をする。
  それを受けたボランティアセンターでは依頼が早かった順に依頼主に電話をかけ、「これから伺ってもいいですか?」と確認を取るわけだ。
  確認が取れ次第、職員は待機するボランティア員たちに、「どこそこで、何々の作業です」と声を張り上げる。
  車で来ているボランティア員が優先だ。
  数人を乗せて現地まで運転してくれる人をまず確保しねえといけねえからな。
  俺のようなデビルウイングは禁止であろう。
  協力してくれるドライバーが決まったら、今度は車を持たないボランティア員の中から残りの数名を選出する。
  作業内容に応じて「男性のみ何名」と指定される場合もあるし、「男性何名、女性何名」とか「性別は問いません」と性別にこだわらない作業もあるようだ。
  ここでもし「はい、それ行きます!」と挙手をしなかった場合、いつまで経ってもその場に座り続けることになるから気をつけろ。
  行く奴は行く奴で、自分に合った作業をしっかり見極めて挙手するようにな。

  俺様の場合は悪魔だからな。
  がっつりキツそうな作業でなければ物足りん。
  商品の水洗いと錆び落としといった作業は高齢なる人間に任せ、俺は「まだ手付かずのご自宅の瓦礫と電化製品の撤去」という現場を選んだ。
  ボランティア作業は初めてだったので一応、悪魔の連れ2人にも手を挙げてもらい、同行してもらうことにする。
  バラバラの現場にそれぞれが行って、はぐれたまま後になっても会えなかったら困ってしまうからな。

  車2台に8名が乗り込み、海沿いの6号線を北へ。

  車窓からの景色を見て、話に聞いていた通りじゃねえかと実感をする。
  被害のある場所と、ない場所の差が激しいのだ。
  ところどころ地面が盛り上がったりしているものの、左を見れば普通の町並み。
  右を見れば瓦礫で覆われた地面。
  この瓦礫の1つ1つが、3月11日より前は人が住む家だったのだ。
  津波で流された家には当然台所があり、冷蔵庫なども流されていることだろう。
  その中部には数ヶ月前の食材が腐っているため、窓を開けると異臭がする。

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  テレビで見る光景と一緒だったが、ブラウン管にはない臨場感に誰もが溜め息をついた。

  本日の現場である本間(仮名)さんのご自宅に到着。
  ここはかろうじて家の形を保っていたが、1階部分が壊滅的だった。

  本間さんご夫婦は老齢で、地震があってからの今までずっと九州の娘さんのご自宅で避難していたのだそうだ。
  2ヶ月後、戻って来てみたら自分たちの家がこの有り様。
  さぞかし気を落とされたに違いない。

  奥様は勇者を見るかのような目で、俺たち8人に深々と頭を下げた。

「大変でしたね」

  静かにそれだけ言うと、奥様は来てくれたことに何度も何度もお礼を言いながら、

「どちらからいらしたんですか?」
「僕は横浜からです」

  答えた瞬間、奥様は口元を手で多い、うつむき、泣いた。

「そんな遠くから、わざわざ」

  震える声が小さく聞こえた。
  この涙に、俺は1つの決意をする。

  作業は主に、家の中から瓦礫を運び出す係と、それを庭にまとめる係、大量のゴミをご主人のトラックに積んで処分場に運ぶ係に分担された。

  本間さんの話によると、もう住めなくなったこの家は取り壊してしまうらしい。
  家電や家具などを一掃してから、取り壊し業者を頼むのだと言う。

  ご自宅に入り、片っ端から重たい家電や大きな家具を庭に運び出す作業を、俺は引き受けた。
  俺は悪魔なので非常に目ざとく、お写真や貴重品などがあればすぐに確保し、すぐに奥様に渡すことができそうだからという判断だ。
  玄関や縁側から物を出すため、スペース確保のためにも居間の片付けから取り掛かる。
  ある程度広くなったら、俺は家の全体像を確認するため、改めて家内を歩いて回った。

  どうしてこうなったのか解らない。

  台所の出入り口を巨大な冷蔵庫が斜めに塞ぎ、その上に大きなテーブルが乗っている。
  廊下の頭上、俺の頭より高い位置にタンスが引っかかっているということは、津波は1階部分全てを覆ったと考えるべきか。
  巨人が家を手に持ち、めちゃくちゃにシェイクしなければここまで酷くはならないのではないか?
  そんなことを真面目に考えてしまう。

  気づけば埃まみれになり、腕に貼ったボランティア員用のシールは剥がれ、どこかにいってしまっていた。

  ボランティア員は現地に行くまえにリーダーを決めている。
  リーダーの仕事は色々とあるが、しっかりと皆に休憩させたり、昼食のタイミングを指示することも重要だ。
  年配の男性が、「そろそろお昼にしましょう」と言った。

  お弁当を食べ、午後。
  誰もがせっせと作業に夢中になっている。

  時折、奥様とお喋りをするボランティア員もいるけれど、これだって運動を伴っていないだけで必要なケアだ。
  出てきたアルバムを一緒に眺めて「いいですね~」と、ボランティア員の1人が微笑んでいた。

  作業は一応15時までと決められているが、この日は何かと誤魔化して30分ほど多く作業をし、ボランティアセンターへと帰還。
  本間夫妻は何度も頭を下げて見送ってくれた。

  俺は本来、明日もう1日作業をしてからテントをたたんで帰る予定だった。
  帰りの高速バスもしたがって、その日程で予約している。

  が、しかし、俺は仲間にさっきした決心を告げたし、仕事の日程も問題ない。
  高速バスセンターにも予約変更の連絡を入れた。

  俺は悪魔だからな。
  嫌がらせが大好きだ。
  俺なんぞに居着かれて、いわき市もさぞかし迷惑であろう。
  さらなる嫌がらせとして、もう1日長く滞在してやろう!
  ざまを見よ!

  奥様が流された涙を見たとき、俺は自然と決意したのだ。

  明日だけでなく、明後日もゴミどもを一網打尽にしてくれる!
  覚悟しやがれ!

  2日目編に続く。

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2011
June 23
 いわき駅で高速バスを降りて、俺ァ思わず目を疑っちまった。
  来る場所を間違えたか?
  そこは普通の繁華街で、普通に機能していやがる。
  ただの都会だ。
  とても被災地だとは思えねえ。

  俺は悪魔だからボランティアと見せかけて、ボロボロになった町のゴミどもを片付けるボランティアをやりに来たんだが、こんなに綺麗だとは。

  仲間に待機してもらい、俺はぶらりと街の視察に出る。
  東京駅から4時間かかる予定だった高速バスは、道路が空いていたおかげで30分早く到着できた。
  ここ福島県いわき市に住まう悪魔の下僕、Yとの待ち合わせ時刻まで、まだ時間があったので街並みを観察したかったのだ。

  歩き始めて1分。
  大勢の警察官を目撃!
  政府の犬だ!
  何事だ!?
  なんで20人ぐらいいるんだ!?
  悪魔でも狩る気か!?

  俺は反射的に気配を消し、わざとらしく街の看板などを指差して「あー、あれがそうか」などと意味の解らない納得をして、事なきを得た。
  なんだか単身で職員室に入った小学生のような心境だ。

  政府の犬どもは、悪魔がちょっと不審にしているだなのに、すぐ職質してきやがるから苦手だ。

  あとで聞いたところによると、この付近で原発反対デモがあったのだそうだ。
  警察官たちはそれで、大きな事件などが起きないよう駆り出されていたらしい。
  別に俺を職質するために集結したわけじゃなかった。
  ホッとした。

  よくよく考えてみれば街を見ても街しか見られないので、仲間の元に戻ることにする。

  やがて現地の協力者、Yと合流。
  彼女に最初に願ったことは、ボランティアセンターの場所の確認ではなく、いくつかチョイスしてもらった空き地への案内だ。

  空き地付近の住民に「迷惑はかけませんので、あそこでテントを張らせてもらっていいですか?」と挨拶をしなければならない。
  仮に「お前悪魔だからやだ」とか言われたら、泣きながら次の空き地に移動するといった段取りだ。
  これに時間がかかる場合があり得るので、寝床確保を最優先したというわけだ。

  Yはいくつか空き地を見つけてくれていて、満場一致で決まったのは川辺。
  大きな橋の下ならテントも目立たないし、何より近所に住宅がないので挨拶周りをするまでもない。
  コンビニやスーパーも遠くないし、ボランティアセンターに行くためのバス亭も近い。
  理想的な場所でいやがる。

  ここを悪魔の巣窟としてやろう。



  テントを張る係と、公園の水道から水を汲んでくる係に分担。
  それらが済んだら、さっそく夕食のために材料の買出しだ。

  せっかくなので、悪魔に魂を売ったYの分もたっぷり料理してくれる。
  今日のメニューはハヤシライス!

  明日から本格的なボランティア活動になる。
  さぞかしキツい作業になるであろう。
  今のうち、キャンプ気分で自分たちを癒し、明日の糧にしてくれる!

  初めて作ったハヤシライスには隠し味にコンソメスープの素とケチャップを入れ、素晴らしく美味く出来上がった。
  登山用の小型コンロでも充分に調理ができる。

  せっかくなので、ここでご飯の炊き方を細かく書いておいてやろう。
  いざというときや、キャンプのときなどに参考にするがいい。

  まず、米は水に浸し、10分ぐらい放置する。
  何故かは知りません。
  米に対してどれぐらいの水が要るのかは、俺はいつも目分量なんだが、そうだな。
  米が1合だった場合なら、水はその倍の体積でいいじゃねえだろうか。
  10分経ったら火にかける。

  人によっては「沸騰するまで強火で、その後に弱火!」とか「いやそれだと焦げつくから最初から最後まで弱火のままがいいだろ!」とか妙なこだわりをやたら強く主張する奴がいるが、俺から言わせればそんなのどっちでもいい。
  どうやっても最終的には美味く炊ける。
「途中で蓋を開けるな」とも言うが、それだって別にこだわる必要はねえ。
  むしろ初心者はこまめに蓋を開けて中を確認したほうが失敗しなくていいだろう。

  というわけで、俺は最初から最後まで弱火を貫く派だ。
  火がまんべんなく回るよう、米の入った鉄の容器の下には一応、メッシュ状の鉄の網を敷き、コンロにかけている。
  蓋には石などで重しをし、放置。
  しばらくするとグツグツと音が鳴って、蓋の隙間からわずかに白くなった水が吹きこぼれる。
  その吹きこぼれがなくなってきたら炊き上がりだ。
  いつ炊けたのかは容器の外から判断できないから、さっきも言った通り、不安な奴は蓋を開けて中を見ても大丈夫だからな。

  炊き上がったらタオルなどで容器を包む。
  そうやって保温をし、10分ほど放置してやって蒸らせば完成だ!
  がつがつ食すがよい。

  こうして、ハヤシライスを4人分作成することに成功。
  洗い物をする手間を省くべく、皿にサランラップを巻いてからよそってやった。
  サイドメニューは、キノコのホイル焼きだ。

  これも簡単に作れるから手順を書いておいてやろう。

  蓋付きであれば油を塗ったフライパンや小型の鍋でも作れるが、野外ならばアルミホイルがいいだろう。
  広げたアルミホイルの上には適当に刻んだ玉ねぎを敷き詰める。
  玉ねぎから出る水分によって、焦げ付きがなくなる。
  次に手で裂いたエノキやしめじを盛る。
  もしあればベーコンも追加するがよい。
  気が済んだら塩コショウで味付けをし、最後にバターを一塊乗せる。
  それら食材どもをアルミホイルでくるんだら、弱火にかけて10分ほど蒸し焼きの刑に処せ。
  めっちゃ美味いぞ。
  仲間たちから「おかわり!」と、また作らさせられたほどだ。
  余ったら余ったでコンソメスープやカルボナーラの具として再利用できるから便利だ。

  気が付けば日は落ち、月が出ている。
  翌日に残らない程度に寝酒も飲んでいるから、すこぶる優雅な気分になっている。

  この気持ちが明日のボランティアでどう変化するのか。
  被害の大きい地域では、さぞかし過酷な作業が待ち受けているであろう。
  いや、過酷っぽい現場を優先するつもりだ。
  俺は悪魔。
  ゴミどもを片付けてくれるわ!

  美味い食事でエネルギーも蓄えたことだし、早めに就寝することにする。

  初日編に続く。



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2011
May 29
 よう、人間ども。
  俺様は悪魔。
  要するに、めさだ。

  人間どもを堕落させたり嫌な気分にさせるのが大好きなこの俺様は、東日本大震災で被害にあった人間どもをさらなる地獄に陥れるため、2泊3日でボランティアに出かけることにした。
  ざまを見よ。

  酷い目に遭ってしまった人間どもよ。
  この俺がボランティアを装い、できる限り多くのゴミどもを片付けてくれる。
  覚悟しておくがいい。

  さて。
  ボランティアに行くに当たって、1番最初に必要なのは現金でも装備でも道具でもねえ。
  情報だ。
  何1つ知らないまま現地に行っちまったら、間違いなく邪魔になる。
  そんな考えなしでは今後、人類を堕落させるどころじゃねえぞ。

  持ち物を用意するにも、情報を得てからのほうが望ましい。
  先に荷物をまとめちまうと、後になって「これは向こうにあるからリュックから出さなきゃ」だの「あれが必要なのにもう鞄がいっぱいで入りません」などと、愚かで面倒なことになりかねねえからな。
  被災地で過ごすには何が必要で何が要らないのか、よおくリサーチしておくがいい。

  下調べとは、真っ先にやるべき最も重要なことなのだ。

  では具体的に、何を調べるべきで、何を調べなくてもいいのか?
  そういった判断をするためにも、以下の体験談を参考にするがいい。

  2011年。
  俺の予定では5月15日の日曜から17日の火曜日まで被災地で活動することになっている。
  行くのは俺1人でも構わないのだが、せっかくだ。
「平日だけどその期間なら休み取れるし、せっかくの機会だから一緒に行こうかなあ」なんて考えている悪魔崇拝者をネットで募集してやった。

  最初にスケジュールが決められているので、それに添うことができる同行者を募集。
  1人でも複数でも、人数が決定したら目的地をどこにするかを決め、改めて計画を練る。
  そんな段取りだ。

  多かったのが、学生の参加希望者だった。

「その日は学校をサボって一緒に行きます!」

  そうかそうか!
  ふはははは!
  ばかめ!
  学校サボったら駄目でしょ!?

「めさと一緒に行くこと」を目的にするのではなく、「ボランティアに行くこと」を目的としていただきてえものだ。
  俺は悪魔なので容赦なく「どうしても行きたいなら夏休みに行くんですよ。学校あるなら来ちゃ駄目ですよ。でも、お前の気持ちは俺が被災地まで持って行くからな」とバッサリ却下しておいてやった。
  ざまを見よ。

  他の声だと、こんなのもあった。

「めささん、被災地で具体的に何をやるのか明記しておいたほうがいいのでは?」

  そんなん俺だって知らんし、どうでもいい。
  あの作業なら行く、この作業なら行かない、じゃねえ。
  自分にできる作業を現地で見つけますよ、でいい。
  要は行きたい気持ちがあって、尚且つ現実的に出発が可能かどうかだけだ。

「あたし女の子だから、力ないし…」

  なんて考えている乙女も、行きたい気持ちがある者は黙々と「女子にもできるボランティア活動」をネットなどで調べ、その上で参加しているというわけだ。
  そういった行動力と「情報収集をする」という発想はどんな仕事でも役に立つんじゃねえか?
  堕落のさせ甲斐がある人間が多くて俺は実に大変だ。

  さァて。
  募集の結果、「めささんの日程で参加が可能なので一緒に行きたいです」と申し出てきやがった人間どもは、奇しくも直接の友人知人2人であった。
  こいつらはめでたく、これにて悪魔の手下だ。

  襲撃者は人間2人と悪魔1匹。
  人数も決定したので、次に向かうべき被災地を選出する。

  細まめな電話連絡をつけることができる現地の住人がいてくれたら最高に助かる。

「銭湯はあっちです」
「このバスに乗ったら近道ですよ」
「めささん、好きです」
「めささん、婚姻届けならあそこで提出できます」

  などなど、地元の者しか知らない情報があるのとないのとでは大違いだからな。
  現地に住まう協力者もネットで募集してくれよう。
  お前らみんな悪魔に魂を売り渡せ!

  被災地の状況は刻一刻と変化するとも耳にしていたので、数週間前から募集をかけてしまうと、いざ当日になって「こっちはもう人手が足りてるよ」なんて言われそうで怖い。
  こっちが堕落してしまいそうだ。
  したがって俺様はすぐに声をかけるのではなく、なるべくギリギリまで待ってツイッターにて募集をかけた。

「被災地の民よ! 悪魔に来てほしいか!? よかろう! 召還されてやる!」

  実際はもっと普通の文で募集をかけた。

  集まった民の中から、最も関東に近い場所に住んでいる奴を選んでやろう。
  運賃が安く済むからな。

  俺は悪魔。
  人間界の通貨は持ち合わせていないのだ。

  というわけで、さあ集え!
  なるべく近場の下界の民どもよ!

  こうして、俺の元には数々のメールが1通も来なかった。

  なんでみんな遠慮するのよー。

  まあ、さすがに悪魔にとどめを刺されたら嫌だろうからな。
  その気持ちは解らんでもねえ。
  それだけ、俺という悪魔が恐れられているのであろう。
  ふはは!

  それにしても計算外だ。
  応募がない原因が「うちより酷いところもあるだろうから、自分から申し出るのは抵抗がある」なんて遠慮がひしひしと伝わってきやがる。
  ここへきて、まさかの譲り合い精神。
  お前らがバレーボールをやったら、間違いなく固まったお前らの間にストンとボールが落ちる。

  俺としては、報道されないせいで人手が足りていない土地に行くことを考慮したかった。
  報道されていない土地の情報は、現地の者から直接聞くに限る。
  しかしその現地の者が現れねえ。

  仕方ないので色々と諦め、俺は段取りを変えることにした。

  ホテルを取るとまたお金がかかるので、テント泊ができる、なるべく近い被災地を襲撃してくれる!
  人手が足りているかどうかは、誰に聞いたらいいのかわかんないのでこの際置いておこう。

  2011年5月。
  調べてみると茨城県でもボランティアを募集していやがった。
  内容は、耳の不自由なお年寄りとのコミュニケーションだとか、子供たちに絵本を朗読してあげるとか、だ。
  そんなこと、めちゃめちゃいい笑顔でやったらまるで俺が悪魔じゃないみてえじゃねえか!
  それはそれで被災地からの求人なので無視してはよろしくないが、俺は悪魔だからな。
  もっと切羽詰った、大ピンチな現場を襲撃してえ。

  情け容赦ない悪魔のテレパシーを、俺は茨城県に送りつける。

「また別の機会に行くからな。ごめんな。今回は勘弁な。実はもっと悲惨なところがあるのに、俺が見つけてやれないだけだったとしたら、ホントごめんな。…いや、じゃなかった! えっと、俺は悪魔だからな! えっと、えっと、ざ、ざまを見よ! ばかっ!」

  何故か赤面しつつ、続けて福島県の情報をモニターに呼び出す。

  瓦礫や土砂の撤去を中心とした求人が目立つ。
  これは候補の1つに数えておこう。

  この福島県には、テントや寝袋を持参する必要があるのかどうかも調べたい。
  テレビで見た話だと、ボランティアの人が「次の人が泊まれるように」とテントや寝袋を置いて帰るケースも少なくねえからな。
  そういった物が借りられると解れば、荷物を減らせるので非常に助かる。

  ところが、モニターにはこんな文字が。

「福島県ではテント泊を認めていません」

  俺より血も涙もなくってどうする。

  これじゃあ仕方ねえ。
  ビジネスホテルに2泊というのはかなりの散財になるのでお財布的にめっちゃキツい。
  こうなったら「テント泊が可能である」という点も、行き先選びの条件に入れちまおう。
  日本には8ゴールドで泊まれる宿屋なんてねえしな。

  しかしそうなると、テントで寝泊りできる被災地は岩手や宮城など、なかなかの遠方ばかり。
  行き帰りにかなりの運賃がかかる。
  結局貧乏。
  どうしてそうなる。
  福島でホテルに泊まるのと、どっちが高いのか考えるのも面倒臭え。

  ボランティアってのは金持ちしか行っちゃいけねえのか!?

  もしかしたら「ボランティアの人は運賃無料!」なんて運動があったのかも知れねえ。
  この文章を綴っている今は、東京と東北を繋ぐ無料の送迎バスがあることも教えてもらってある。
  しかしこの日、調べた限りではそういった情報が一切見当たらなかったことは事実だ。

  何故に準備編の文章がこんなにも長いのか。
  それは、俺が最も苦労したのがこの時点だからだ。
  友人らも一緒になって情報収集をしてくれたのだが、ネット上の調査を得意とする者まで苦戦を強いられていた。

  基本的に、ボランティア希望者が行き先を決めるには、数あるボランティアセンターのホームページを1つ1つ見て回ることから始まるんじゃねえだろうか。
  もっと効率のいいリサーチの仕方もありそうなもんだが、俺が不器用なのか、まだまだ利便性が追いついていないからなのか、色々と試した結果、「片っ端から虱潰しに調べる」ことしかないようだった。
  そういったサイトの多くは、初見の者や事情が解らない者、ネット初心者にとって解りにくいレイアウトが目立つ。

  この「知りたいことが調べにくい」という不便さはボランティア希望者の気力を削ぎ、「なんも調べられんから意味わからん。やっぱ行くのやーめた」と心を折ってしまいかねん。
  是非にでも解消してほしい不便だと思う。

  例えば、ボランティアに行きてえ奴が「ボランティアを考えている方へ」と書かれたボタンをクリックする。
  すると出てくるのは「ボランティアをするに当たってどのような心構えが必要か」という内容。
  それはそれで大事なことだが、「以上の点を踏まえ、ボランティアをしてくれる方はこちらへどうぞ」などといった、次のステップへの誘導が一切見当たらねえ。
  説明されていたのは、現地でも聞くことができる心構えのみで、次に取るべき具体的なアクションが提示されねえじゃねえか。

  ボランティアセンターには何も告げず、予約なしでいきなり行ってもいいのか?
  食材は最初から用意すべき?
  何が売っていて、何が売ってねえんだ?

  中には「何が解らないのか解らない者」も少なくないであろうに、詳しい案内が見当たらねえ。

  ボランティア員は、どんな道具を用意すべきかも記してあった。
  では、道具の用意が済んだあと、どうしたらいいんだ?

  車なしで行けるのか?
  寝泊りはどこで?

  もしかしたら、俺が見落としていただけで丁寧に案内がされていたのかも知れねえ。
  しかし、どこをクリックすれば何が見られるのか、見た目から判断しにくい。
  片っ端からクリックすれば、100に1つは求めていた情報に行き着くかも解らぬ。
  しかし100に99は無駄になると考えると、もっと有効な情報収集の仕方がありそうに思えて仕方ねえ。
  次に見るべきボランティアセンターのサイトだってたくさんあるんだから、簡略化できるところは端折っていきてえもんだ。

  ボランティア保険なるものがあることも、そういえば友人の誰かが言っていた。
  これは、作業中に体調を崩したボランティア員のために作られた保険なのだそうだ。

  この保険に入るのは絶対的な義務なのか?
  有料なのだろうか?
  全国共通なの?
  それともボランティアセンター特有の保険?

  解消される疑問より、出てくる疑問のほうが多くて困った。

  行き先が既に決まっているのなら、その場所に合った準備をすれば問題なかろう。
  しかし、自分の都合が先にあって、その条件に合った被災地を選ぶのは非常に困難だった。

  運賃などの予算は合計いくらぐらいで、関東から出発する予定。
  車を持っていないので電車かバスで行ける場所を希望。
  テントや寝袋があり、自炊ができる。
  何月何日から何名で行ける被災地。
  以上の条件を持つ者にとって好都合な場所をピックアップ!
  なんて検索は、かけることができねえんだ。

  そういったボランティア希望者専用の絞り込みができる検索エンジンがあったら便利なんだが、俺にはそれを見つけることができなかったし、作る技術もねえ。
「ぐるぐるぐる、どーん! 便利サイトが誕生してしまえー!」で完成しねえもんじゃろか。

  アンケート形式や「イエス」「ノー」で進むフロチャート式のサイトなんてあったら実に便利であろう。

  あなたの住所はどこ?
  車は持ってる?
  テントで寝たい?
  予算の上限を入力してちょ。
  あなたに合った被災地はここと、ここと、ここでーす!
  もう復興して動いてる銭湯やスーパー、コンビニや食堂の場所は地図に書いてあるからね!

  そんなサイトを作った奴はもう、キスしてやる!
  いや、キスどころじゃねえ。
  抱いてやる!

  すまん、冗談だ。
  だから作ってくれ誰か。

  また、既にそういった被災地選びを助けてくれるサイトがあるのなら、是非教えてほしいもんだ。

  知識と技術と時間があったらこの俺様が魔力とかを色々アレして作るのに!
  きい。

  ええい、もう面倒臭い。
  条件の絞り込みができない以上、俺は1つ1つボランティアセンターに電話で問い合わせをし、「電車は通っていますか?」だの「テントで泊まれますか?」などと訊ねまくった。

  結果、安く行ける近場だとテントを張る場所が用意されていないので宿泊費がかかり、ホテル代をケチりたいのなら運賃をかけて遠くに行かねばならぬことが判明した。

  笑止!

  ボランティアに行った人間どもを集め、どうやって金を工面したのか、どうやって行き先をチョイスしたのか、大真面目にインタビューしたいと歯ぎしりが止まらぬわ!

  笑止の使い方がいまいち解らんが、そこはまあいいだろう。
  とにかく困ったことになった。
  ボランティアに行くのを断念しようかと、真剣な考えも浮かぶ始末だ。

  しかし、ここで思い出したことが。

  俺、福島県に友達いるじゃねえか!

  その女子は俺が人間ぶって飲み屋で働いているときも、ちょくちょく飲みに来てくれる、いわき市在中の、人間の細胞で構成された乙女である。

「もしもし、Yちゃん? 久しぶりー」
「お久しぶりです」
「今、電話いい?」
「はい、大丈夫ですよ」

  おっと、俺は悪魔だから、こっちが実際の話し方だ。
  やり直し。

「ふはははは! 下賎な下々の民よ! 久しぶりだな!」
「お久しぶりです」
「今から悪魔であるこの俺の、様々な質問に答える栄光を貴様に与えてやろうではないか! いい?」
「はい、大丈夫ですよ」

  いわき市はテント泊を認めておらず、ビジネスホテルの利用を勧めている。
  それは、言い方を変えれば「ボランティア参加者のためにテント用のスペースを用意していない」だけではないだろうか。

「ふはははは! Yよ! この俺様が下僕を2人連れ、貴様の町を襲撃してくれる! テントを張っても怒られないような空き地を探せるか!? ボランティアセンターから遠くない場所がいいなあ」
「たくさんありますよ」
「そうかそうか! ふはははは! では、その空き地が誰かの土地のようなら、管理者や近所の者に事情を話し、テントを張らせてもらうとしよう! 断られるかも知れんから、空き地はいくつか目をつけておくがいい!」
「解りました」
「では、よろしくお願いします」

  続けて、今度はいわき市のボランティアセンターに電話。

「はい。いわき市社会福祉協議会です」
「はっはっは! 愚かな人間よ! 俺様は悪魔だ!」

  ガチャン、ツー、ツー、ツー。

  なんてことにもなりかねん。
  ここは相手を油断させるために、人間のフリをして通話してやろう。

「もしもし? 恐れ入ります。そちらではテント泊を認めていないと聞いたのですけれど」
「ええ、そうなんですよ。すみません」
「いえいえ。ただ僕、現地の友人に空き地を見つけてもらっているんですよ。周囲の住民の方にも許可を得ます。そういった形でも、寝泊りしたら問題になりますかね?」
「いえ、それなら大丈夫と思いますよ」
「ホントですかー。じゃあ、『市の条例でテント泊は絶対に禁止!』っていうニュアンスではないんですね?」
「ああ、ええ。そういうのではないですよ」

  かくして、行き先がようやく決定!
  目指すは福島県、いわき市だ!

「Yよ! 喜ぶがいい! ボランティアを装って貴様の町行き、ボランティアと見せかけてボランティアをすることが正式に決まったぞ!」

  報告をしつつ、脳内で次の段取りを組み始める。

  食材は何を持って行こう。
  タマネギ、ジャガイモなら冷蔵せんでも大丈夫だから持参しよう。
  いや、2泊しかしないから、他の野菜もイケるかな?
  シーチキンやコンビーフも使い勝手がいいから多めに持って行くとするか。
  昼はキツい作業で大変だろうから、せめて夜はキャンプみたいな雰囲気で食事をし、自分たちをケアしてやろう。
  初日はカレーがいいけど、仲間たちは俺が甘口のカレーを勝手に作ったら怒るだろうか。
  辛いのは辛くて食べられないのだが。

「え? めささん、今なんて?」
「いや、ごめん。独り言。…じゃなかった! ふはははは! 俺様の獲物をどう料理するかを考えておったのだ! タマネギいくつぐらい持ってこうかなあ」
「こっち普通にスーパーありますよ?」
「ですよねー」

  やはり情報は大切である。

  食材は現地で調達し、経済的にも現地を支援…、もとい。
  食材は現地で調達し、俺様の荷物を少しでも軽くしてやろう。

  そんな折り、一緒に行く予定の仲間から連絡が。

「めささん、大変!」
「どうした!?」
「テント泊してたボランティアが警察に捕まったって!」
「え、なんで?」
「わかんない。友達から聞いた」

  要するに未確認情報じゃねえか。

  仲間は慌てたように続ける。

「せっかくボランティアに行ったのに、警察に捕まったせいで、何もできなかったら嫌だ!」

  それはそうだが、それを人に伝える前に情報の真偽や詳細を確かめるのが先じゃねえか。
  もし俺まで、たいした確認もせずにその情報を鵜呑みにしたとしよう。

「なんだって!? そりゃ大問題だ! 今すぐテント泊の段取りを白紙にし、計画を根底から練り直す!」

  そんな展開のあとで、「実はボランティア員がテント泊しただけで警察に捕まるとかってガセネタでした」って知ったら最悪な気持ちになるじゃねえか。
  勘違い情報ではなかったとしたら、今度は「テント泊をしていただけでどうしてボランティア員が警察の世話になったのか」といった理由が重要だ。
  人の敷地に勝手に入ったから?
  夜中に騒いで通報されたから?

「友達から聞いただけだから、解らないって言ったじゃん!」

  解ってから連絡してきやがれ。

  だいたい地震発生当時も、色んな偽情報が飛び交ってたじゃねえか。
  だから俺がツイッターで情報拡散するときは、個人サイト以外のホームページのURLを情報源として張ってから広め、見た奴が真偽確認を取りやすくした。
  逆に、ソースの提示がないつぶやきは「誤った情報かも知れねえぞ」と考えるようにしている。

  こういった考え方をしていると、なかなか便利だ。
  お前ら人間どもも癖として身につけておくと、俺みたいな悪魔に惑わされないで済むので、俺的には非常に困る。
  つまり、お前ら的には助かる。

  だから、えっと、つまりね?
  お前らばかだから、何か聞いても、すぐに信じるなよな!
  言う側も言う側で「親戚のおじさんが言ってたもん」とか「友達が言ってたもん」とか「学校の先生が言ってたもん」はたいして当てにならねえ。
  そいつらが勘違いしてるだけかも知れねえじゃねえか。
  だから、マジ情報扱いしてむやみに広めんな!
  芸能人なんかの噂もそうだからな!
  ばかちん!

  …なんで照れたんだ俺は。

  さて。
  仲間の口ぶりからすると、脳内では「テント泊=逮捕」みたいな図式が完成しているようだが、それが事実であるという根拠がまるでねえ。
  そこで、改めてツイッターで情報源を募る。
  ネットで調べても、何もヒットしなかったからだ。

「被災地で、ボランティアの人がテントで泊まってたら、お巡りさんに捕まっちゃったなんて噂が。誰かそんなニュース記事知ってる? ソース求む」

  お前らはおばかさんだから、一応教えておいてやろう。
  ここで言ったソースというのは、調味料のことじゃねえ。
  情報源という意味だ。
  解ったか。

  情報を募ると同時に、いわき中央警察署の電話番号を調べ、問い合わせる。
  ここでも俺は人間ぶって口調を変えた。

「恐れ入ります。ボランティア希望の者なんですけど、いわき市ではテント泊を禁止していますよね?」
「え? そうなんですか?」

  え?
  そうなんですか?

  このお巡りさんのリアクションには、なかなかびっくりさせられた。

  そういえば、ボランティアセンターへの問い合わせでも俺はしっかり「空き地でテント泊してもいいかどうか」を訊ねていたではないか。
  悪魔のうっかり者。

「えっとですね、まだ噂の段階なので確認したくてお電話させていただいたんですけども、ボランティア人員がテントで泊まっていたところをお巡りさんに捕まっちゃった、なんて事例は報告がありますか?」
「私は聞いてないですねー」
「ですよねー」

  やはり情報は重要である。

  念のため、「地域の住民にきちんと挨拶をし、許可を得た上で友人が見つけてくれた空き地にテントを張る」との旨を伝える。
  警察からの回答は「問題ありません」とのことだった。

  いざ捕まったときに「オッケーって言われたもん!」と言い逃れができるよう、この電話のやり取りを録音しておこうかとも思ったが、あまりにも馬鹿馬鹿しいので思い留まる。

  かなり、いや。
  めちゃめちゃ疲れたが、これで一通りの論理武装は整った。

  今回の俺様のように、行くべき場所が決定しておらず、自分のスタンスが先にある者はさぞかし困るであろう。
  目的地の決める際は、俺と同じ苦労を避けるが良い。

  俺は自分のささやかな知名度を利用し、現地に住まう協力者を募集したりもしたが、それはあまりに一般的な手段じゃねえ。
  地元の人間に情報提供を望むなら、まず先に行き先を決め、宿泊方法を決め、その上で「Yahoo智恵袋」や「教えて! goo」などで、どこの何が知りたいのか詳しく書いて現地の情報を得るのも手じゃねえか?

  あとは物質的な準備だ。

  テントや寝袋、登山などで使う調理器具などは俺が持っている。
  持ってない奴は誰かから借りるか、ホテルを手配するしかねえ。

  着替えやタオル、歯ブラシなどのお泊りセット、トイレットペーパー、ウェットティッシュ、キッチンペーパー、ビニール袋、ゴミ袋はもちろん必要だ。
  ペットボトルが代わりになるので水筒はなくっても良かったが、昼は食料が買い込めない場所で作業していることも少なくねえ。
弁当箱がなかったら、予めどこかで昼食を買っておくがいい。
  でも、俺はお金ないからお弁当箱を持ってった。

  保険証のコピーと懐中電灯、代えの電池は念のため、あったほうがいいだろう。

  他に、「これがあってよかったー!」と思ったのが、携帯電話の充電器。
  思わぬところで「コンセント」という名の充電のチャンスがあるもんだ。
  電池で充電できる小型の充電器もコンビニなどで売ってはいるが、あれらはそこまでフルパワーになるまで充電できる物じゃねえからな。
  俺は気休め程度に持っている。

  俺が行ったボランティアセンターでは軍手を無料で配布していやがったが、他でも同じように配っているかどうかは解らねえ。
  軍手も、汚れるのでたくさん持って行くがいい。
  腐った食料など、不衛生な物に触れることだってある。
  厚めのゴム手袋も合わせて必要だ。

  作業中は暑くてたまらんかも知れんが、そこはぐっと我慢をし、Tシャツやタンクトップではなく、長袖のロングTシャツやトレーナーの着用を勧めておこう。
  お前らは俺の獲物なんだから、尖った木片や突き出た釘、割れたガラスごときに傷つけられることは許さん。
  腕もしっかりと覆っておけ。
  汗でびしょびしょになるし、泥だらけ、埃だらけにもなる。
  作業用の服はたくさんあったほうがいいからな。

  俺は現地で何度も洗えるよう、上下に分かれたレインコートを持参したが、こいつァ普通に失敗だった。
  下半身だけならまだしも、上半身までこれを着ていた。
  1人ビニールハウスだ。
  個人サウナだ。
  通気性がまるでなく、さすがの悪魔も地獄の業火に焼かれるようで辛かった。
  ばかか俺は。

  現地はめちゃめちゃ埃っぽい場所だって少なくはねえ。
  目を保護するためのゴーグルも用意するべきだ。
  俺は「天空の城ラピュタ」の主人公「パズー」がつけていたような、バイク用のゴーグルを持っていった。
  仲間は何故かくすくす笑いながら「それじゃ駄目だ」と意味の解らんムカつく笑みを浮かべていたが、普通に使えたわ!
  ざまを見よ。
  要は視界を塞がずに目を守れれば問題ねえってこった。
  なんなら水泳用のゴーグルだっていいんじゃねえか?
  アリだと思うぜ。

  持参して最も助かったと思えるアイテムが、登山靴だ。
  割れたガラスや釘の上を平気で歩けるし、水も通さねえ。
  安全靴と長靴を兼ね揃えた、実に便利な靴だった。
  もう登山靴素敵すぎだ。
  結婚しても構わねえ。

  これらの必要な物を鞄に詰め込んでいくわけだが、リュックを使う奴は覚えておくがいい。
  知ってる奴には釈迦に説法になっちまうが、解説させてもらおうか。

  肩にかかるベルトは極限まで短くしておくと、背負い続けていても疲れにくいぞ。
  また、衣類やタオルなど、軽い物ほど下に。
  水や食材など、重たい物ほど上に収納するのも、楽に背負うための工夫だ。

「はい。はい。では、よろしくお願いしますー。…じゃなかった! ふはははは! この俺様の到着を、待ちわびているがいい!」

  ようし。
  高速バスの予約も人数分済ませたし、これで準備完了だ!

  それにしても、福島県よ。
  ただでさえ地震や津波の被害に遭ったってのに、さらにこの悪魔様から襲撃を受けることになるとはな。
  くっくっく。
  なんとも気の毒なことだ。

  ここ最近、福島の野菜をたくさん注文し、それらを使ってたっぷり料理をしてやった。
  何度ウェブ上の生放送でその様子を配信してやったことか。
  様々な野菜を八つ裂きに切り刻み、火あぶりにしたり、釜茹での刑にしたりと、じっくり味わってやったわ。

  あんな野菜、食べるんじゃなかった!
  おかげで、もう99ショップの野菜が喰えぬではないか!
  美味すぎだ!
  ばかちん!

  そんな野菜どもを送りつけてきやがった、いわき市。
  何かと縁があることよ。
  こいつはお礼だ!
  ゴミどもめ!
  片付けてくれる!
  ふはははは!
  待っているがいい!

  前日編に続く。




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プロフィール
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めさ
年齢:
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性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
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