夢見町の史
Let’s どんまい!
July 30
これから始まる3部作は、ぶっちゃけアップするのが怖いです。
何故なら空手のライバルでもある悪友トメと「将棋でも打とうぜ」的なノリでマジ決闘をしたといった内容だからです。
昔、サイトでアップしたことがあるのですが、賛否両論。
女性読者さんの多くはドン引きでした。
でも、友達が「アップしてくれ」ってたくさん言うからリメイクすることに。
内容がマジ決闘なだけに、血が出たりします。
痛々しい描写や暴力シーンのオンパレードです。
そういうのが苦手な方は、今回のお話は華麗にスルーしてください。
いやマジでお願いします。
ちょっと大丈夫であってもスルーしちゃっていいです。
初めてです。
読むなって書いたの。
でもホント痛々しいエピソードですから、今回はお控えください。
ああもう、ここまで言ってるのにまだ読みますか。
どうなっても知らないかんね!
そもそも悪友のトメと俺は高校時代、一緒に空手道部に所属していました。
現役だった当時は黄金期で、俺達の代からポツポツと大会で表彰されるなどし始め、中でもトメと俺は特に優秀な戦績を残すに至っていました。
最初から強かったトメ、コツを知って戦闘に目覚めた俺は、同期の主将を簡単に置き去りにし、他校の空手家からも一目置かれるようになっていたのです。
「おうトメ、組手やろうぜ」
「いいよ俺はよ~。だってお前とやると、本気出さねえといけねンだもんよ~」
※発言だけを見ると強そうですが、どっちも8対2の割合でMです。
そんなトメと俺は「殺すつもりでどつき合う」といった、他ではできないコミュニケーションを定期的に楽しんでいました。
やり合う度に引き分けるので、いい加減どっちが強いのか白黒つけたいといった物騒な願望もありました。
トメのパワーが勝つのか、俺のスピードが勝つのか――。
今回から3部に渡り、彼と俺との格闘の模様を嫌でもお届けしたいと思います。
※何度も言いますが、当シリーズには、グロテスクな描写や暴力シーンが含まれています。
あれは確か、俺達が20歳の頃でした。
「もしもし、めさ? ちょっとお願いがあるんだけど」
前触れなく、空手道部顧問のK先生が電話をくれました。
「はい、どうしたんすか?」
「実はもうすぐ文化祭で、また空手の演舞をやることになってんだけど、イマイチね、今の現役が物足りないのよ」
お!
と思いました。
また空手ができる!
普段はコーチという形で、たまに学校を訪れて練習に励んでいましたけれど、試合をするのは2年振りです。
「そこで悪いとは思うんだけど、めさちょっと、トメと一緒に文化祭に出てくれない? OBが特別参加するって、学校には言っとくから」
「ホントすか! マジモードでやってもいいんですか!?」
「遠慮なくやっちゃいなさい」
「やったー!」
組手とヌンチャクを披露してほしいと依頼された俺は、「トメには俺から電話しときますよ」と告げて、電話を切りました。
ちなみに空手とヌンチャクは関係ありません。
ヌンチャクは少林寺の武器です。
でも何故か、うちでは演舞させられます。
「卒業以来だなあ、お前とやるのは」
文化祭当日。
寝不足の目を擦りながら、俺は運転席のトメに言いました。
わくわくし過ぎて、一睡もできなかったのです。
正式な大会ではなく、演舞という形でしたが、俺もトメも考えることは一緒でした。
今日こそ息の根を止めてやる。
お互いのイメージの中では、相手がかなり可哀想なことになっています。
「ちっとコンビニ寄ってくわ~」
トメが車を停めました。
「おう。あ、そうだトメ! ついでに何か栄養ドリンク買ってきて! 眠気覚ましてえ」
俺はトメに1000円札を手渡しました。
「ほらよ。買ってきたぜ」
濃密で高価な栄養ドリンクが飲みたかったのに、トメは何故かタフマンを5本も買ってきやがりました。
「なんで質より量なんだよ! テメーも飲め!」
タフマンの1番安いやつを2人でガブ飲み。
「お! 効いてきた!」
気のせいを喜びながら、俺達はK高校に向かいました。
演舞は昼にやる予定でしたが、朝方にも出番があります。
朝礼代わりに、各出し物を紹介する時間が割り振られていたのです。
全校生徒の前で、トメと一緒に軽くヌンチャクを振り回して、その後軽く殴り合い――。
前座を頑張った後輩に対して、「私も突いてー!」とか「強そーう!」などとうるさかったギャルたちをオーラで黙らせました。
「いよいよ本番だなあ」
何故か後輩まで黙っていましたが、俺もトメも、もうわくわくです。
「おう。めさオメー、死ぬなよ?」
「それ、これから死ぬ奴のセリフじゃねえぞ」
後輩達が、どっかに行きました。
空手といっても流派がまちまちです。
俺達がやっていた空手は、高校生が部活動をするという名目もあって、寸止めが義務づけられていて、さらに事故を未然に防ぐための防具も着用しなければなりません。
俺とトメは、寸止めも防具も嫌いでした。
でももう卒業しちゃったし、大会に出ることもないから、怪我をしてもいいのだ。
「それでは、本日のメインイベントです。最後に、特別ゲストである卒業生に立ち会って頂きます!」
マイクを通してK先生が宣言し、俺とトメは舞台に立ち、観客達に頭を下げました。
「あれ? あんた達、防具は?」
ナレーションの立場を忘れた先生に、俺達が無言で首を横に振ると、
「血が出るかも知れません」
師は観客達にフォローを入れてくれました。
「勝負、初め!」
掛け声と同時に気合いの大声と、殺気を放出する両者。
俺の心の声は「殺してやるぜ!」
トメの心の声も「殺してやるぜ!」
何か恨みでもあるのでしょうか。
顔が鬼になったり、悪魔になったりしていました。
試合開始から数十秒後。
トメがおかしなことをしました。
バックステップを取り、2人の間合いを広げたのです。
なんだコイツ?
その距離は俺の間合いなのに、なんでわざわざ自分から?
そう思ったのもつかの間、恐ろしく強力な前蹴りが俺の腹部を突き刺し、全てがスローに見えました。
ゆっくりと、ふわりと自分の体が浮いて、俺は色んなことを同時に考えました。
奴のバックステップはこの攻撃のためだった。
トメの前蹴りは、100キロの巨漢もすっ飛ばす威力。
ってゆうか今、俺がすっ飛んどる。
たらふくタフマン飲んでたぷたぷしてる腹に、この攻撃はキツい。
おそらく約4メートルの飛距離を記録するであろう。
体勢的に、綺麗に着地することは無理。
倒れた俺が、トメのトドメをよけるのも無理。
だってトメ、トドメが上手なんだもん。
今どうにかしなきゃ、死ぬんじゃないでしょうか。
どうにかしなきゃ!
空中で、俺は自分の腹に突き刺さったままのトメの足を両手で掴んで持ちこたえ、事無きを得ました。
でも、この後どうしよう。
どうしよう、この掴んだ足。
着地した後、さっきとは違って、今度は何も考えらません。
関節技を知っていれば、手にした足は迷わず折りにかかるのですが、でもご存知ありません。
えい。
他にやりようが思いつかなかったので、取り合えず足は持ち主ごとぶん投げてみました。
今度はトメが空中にほおり出されます。
※CGは一切使用していません。
空中のトメにはさすがに隙ができたので、彼が着地をするより先に、今度は俺が回し蹴りを腹に入れます。
バーカって心の中で言いました。
タフマンをガブ飲みした後に腹を蹴られると効くんだバーカ!
トメの咄嗟のガードは、さすがに勢いづいた足の力には敵わなかったらしく、弾かれます。
「やめ! 赤、技有り!」
生まれて初めて、地面にいない相手から技有りを取りました。
でも、ポイントの有無は関係ありません。
俺は心の中で舌打ちをしていました。
やはりまた互角か。
どっちも腹部に40ポイント前後のダメージ。
※タフマンの功績も含まれています。
その後、先生が「やめ!」と言うまで、トメとの本気のどつき合いは続きました。
演舞が終わり、体育館から道場に戻った空手道部一同は、何故かこっちに近づいてきません。
俺は口に入っていた砂をぺッと吐き出し、
「いやあ、あの中段蹴りの応酬は良かったなあ」
「お~。なかなか面白かったよ~」
「ドラマチックだったしね!」
からからと笑い合いました。
そのとき、砂がもう1つぶ、口に入っていることに気づきます。
ってゆうか俺、校庭とか通ってないのに、おかしいな。
どこで砂が入ったんだ?
あ!
もしかして!
俺は口の中から、砂と思われるそれを慎重に取り出しました。
「おい見ろよトメ! 歯だよ歯! 奥歯が欠けてた! あっはっは!」
「マジ!? お、ホントに歯じゃねえかよ~」
「あの時だ、たぶん!」
俺は拳を頬につけ、トメからの突きを表現しました。
「ああ、あの時かー!」
と、どこか嬉しそうにトメ。
※従来のルールでは、顔を全力で殴っちゃいけません。
「あっはっは! 奥歯が欠けたの、初めてだー!」
「奥歯ってよ~、簡単に欠けるんだなあ」
後輩達が、さらに1歩下がりました。
その場には、俺達よりさらに上のT先輩がいらしていて、そんな現役達を整列させます。
「お前ら、トメとめさの試合の感想を言ってみろ」
皆は口々に、
「凄い迫力でした」
他に良かったところはないのでしょうか。
「だろう?」
とT先輩。
「技がどうとか、ポイントばっかじゃないってことだ。覚えとけ」
実は、それは俺もトメも、K先生も言いたいことでした。
先生も暗に、「わざわざOBに足を運んでもらったのは、あんた達に足りないものがあるからよ」と言いたかったのです。
朝、現役達に、ギャルから愉快ではない声援が贈られました。
でも悪いのは、何もギャル達だけではありません。
本番前、準備体操代わりに後輩と組手をやって、彼らを一蹴したトメはこう言いました。
「テクニック凄えなお前ら。殺気がねえけどよ~」
いくら鍛えて武装しても、実際に戦えないなら意味がないのです。
本物の戦闘は俺も経験がないけれど、おそらく命懸け。
審判もいないし、武器だって使うだろうし、スタートの合図だってないし、多勢に無勢ってことだって有り得えます。
それに比べたら俺達、まだまだ甘いんじゃないかな。
そんな話を後輩たちにしたような記憶があります。
防具やルールに甘えるクセをなくしたら、お前らもっと強くなっちゃうぜ。
ところでお前たち、トメはどうか知らないけど、俺が殺気とマジ攻撃を放つ相手はトメだけだから、そんなに引かないでください。
お願いだから、気さくに話しかけてください。
だいたいこの程度で引いてたら、ラウンド2なんて読めないぜ?
次回予告。
めさとトメによる、さらに大袈裟な戦闘シーンが嫌でもあなたの前に!
それで笑う人がいるのか心配だ!
あと、もっと本格的に格闘技をやっていらっしゃる方は、効率の良い足の折り方を教えてください!
俺の足が折れかけました!
理由は次回!
戦闘終了後に歩けなくなったトメVSめさ・ラウンド2「合宿のついでにいいじゃない」近日大公開!
このシリーズ、誰にも引かれませんように。
続く。