夢見町の史
Let’s どんまい!
January 08
続・永遠の抱擁が始まる 1
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続・永遠の抱擁が始まる 2
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続・永遠の抱擁が始まる 3
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続・永遠の抱擁が始まる 4
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小出しに運ばれてくるいくつもの料理に舌鼓を打つ。
キャンドルに灯った小さな炎がわずかになびき、それがあたしには喜びに震えているように見えた。
このような錯覚を起こすあたり、自分は単純なのだろう。
「展開からしてさ」
テーブルの上に指を組んで、あたしはそこに顎を乗せる。
「まだ続くんでしょ? その話」
ワインで少し頬を赤くしながら、彼は頷く。
「もちろん」
キャンドルの炎が、また小さく揺れる。
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<エンジェルコール3>
裁判官のおじちゃんは、懺悔すると宣言しておきながら、なかなか最初の一言を切り出そうとしない。
お客様が話しやすくするために、僕からフォローを入れなきゃ駄目みたいだ。
僕は微笑みかけるように問う。
「お客様のようなお仕事の場合、一般的には珍しいケースに遭遇することもおありではございませんか?」
「ああ、まあ、そうかも知れないな」
何でもいいから喋らせれば、人間はいつの間にか饒舌になってゆく。
僕はその習性を利用するために、わざとどうでもいい話題を口にさせる。
「例えば、どのような?」
「ロウ君は、私のことを見守っていたのではないのかね?」
「見守るといっても期間がございましたし、お客様のプライバシーに関わりそうなことには触れぬよう注意しておりました」
「そうか」
「ですので、お客様がどのような体験をなさったのか、全てを知っているわけではないんですね」
「まあ、そうだろうな。すまん」
「いえいえ、とんでもございません」
僕は再びモニターに向かって頭を下げた。
裁判官のおじちゃん曰く、ほとんどの公判は「どちらか一方が悪い」っていう事件は少ないらしい。
だいたいは揉めてる両方に何かしら、それぞれの非があるんだって。
なんだけど例外もたまにあって、おじちゃんの印象に残っているのは、ある小学校の土地の権利を争った裁判だって言ってた。
「あれは楽だったな」
「と、申しますと?」
「被告も原告も、どちらも嘘を言わないんだ」
「ほう。それはまた何故でございましょう?」
「解らん。学校を守るための訴えを起こした教師側が正直なのは解るが、何故だか不正行為を犯していた土地貸しまで嘘を言わない。嘘をついたとしても、自ら『嘘だけど』と口を滑らせてしまうんだな。もちろん学校側の大勝利で幕を閉じた」
「それは審議が楽でございましたでしょうね」
「皆、ああだったらいいんだがな」
おじちゃんは少し苦笑した。
いつも苦労してるんだろう。
僕は再び、優しげな声を出す。
「懺悔の内容というのも、やはりお仕事に関することでございますか?」
「関係なくはないが、話はもっと前まで遡る」
「さようでございますか」
「ああ。私が妻と死別しているのは知っているかね?」
ええ、存じております。
って応えたら、おじちゃんは声のトーンを暗くした。
「妻は、重い病にかかっていた」
あえて相槌を打たず、僕は黙って続きを待つ。
「脳にまで影響があったんだろうな。末期になると、実際には無い記憶を持つようになっていった。錯乱状態というべきか」
「実際には無い記憶、といいますと?」
「自分の鼻の穴は10個以上あったはずだとか、まえからあった家よりも巨大な剣士の像が無くなっているとか、それはまあ色々と騒いでいたよ」
「それはご苦労なさったことでしょう」
「いやなに。ただ、最も厄介だったのが『幼い娘がいる』という記憶だった」
「お嬢様が?」
「いや、うちは子宝に恵まれなくてな。娘なんて最初から居ないんだ」
「ええ、さようでございますよね」
「その記憶だけはなかなか消えてくれない」
「と、なりますと」
「ああ。毎日のように妻は『娘はどこだ』と探し出そうとするんだ。最初から存在していない娘をな」
そんな折り、おじちゃん夫妻は病院で、栗毛の綺麗な女の子と出逢ったんだって。
女の子は予防接種か何かで病院にいたみたい。
奥さんは、その女の子を「私の子だ」って思い込んじゃって、大変だったらしい。
「よその子に、妻は泣きながら抱きつくんだ。自分で名付けたであろう架空の娘の名前を叫んでな」
あれは奇跡のような子供だったって、おじちゃんは言う。
「その子は妻の様子と、慌てている私の顔を見て、何かを察してくれたんだと思う」
女の子は、おじちゃんの奥さんに「心配かけてごめんね、お母さん」って、確かに言ったんだって。
「賢いのか、妻の迫力のような気配に流されたのかは解らないが、まだ小さな女の子が、妻に対して『お母さん』と」
それがどれだけ私と妻を救ったのか計り知れない。
って、半分泣き声でおじちゃんは言った。
「女の子がしてくれたのは、それだけじゃない」
「ほほう」
「既に入院状態だった妻に、毎日逢いに来てくれた。妻は嬉しそうに、その子に本を読んで聞かせていたよ」
「それはまた、心が洗われるようなお子様でございますね」
「全くだ。結局その子は、妻を看取ってまでくれた。私と一緒に涙まで流してくれたよ」
で、それから数年後。
つまり最近のことだ。
ある事故が起きちゃったらしい。
どっかの大富豪が乗っていた大型の馬車が暴走して、通行人に突っ込んでしまったんだって。
「大通りでのことだったから、被害者は大勢いてね。裁判は長引くことが予想された。なんせ大事故だ。富豪は腕のいい弁護士を雇い、慰謝料を抑えようとする。『不可抗力の事故』として処理しようとするわけだ。被害を受けた側は、仕方なかったでは納得できない」
「そういうものでございましょうね」
「被害者のリストを見て、私は愕然としたよ」
「あ、まさか」
「ああ。妻が娘と信じた、あの子の名があった」
あの子は両親も兄弟も、右腕も失っていたよ。
おじちゃんは沈んだ調子で、そう言った。
「その裁判は、まだ続いているのでございますか?」
「いや、先日、終えた」
「結果は…」
「私は、法を守る立場にある。いかなる理由があろうとも、個人的な判断による判決は出せない」
事故の原因になったお金持ちは結局、慰謝料を最低限に抑えることに成功しちゃったみたい。
「女の子は、もう10歳になっていた」
「お逢いには、なられたんですか?」
「1度だけ、本人確認の意味もあって見舞いにな。確かにあの子だった。最も昏睡状態で話は出来なかったが」
そこで突然、変な音が耳元で鳴った。
ヘッドフォンが壊れたのか、通信障害でも起きたのかって思っちゃったけど、それはおじちゃんの泣き声だったんだ。
「私と妻の心を救った恩人に、私は何もしてやれなかった!」
猛獣が吠えるみたいな大泣きだ。
ここまで涙を流す成体なんて、初めて。
「ロウ君、お願いだ。あの子を救ってほしい」
「かしこまりました。わたくしにお任せください」
よーし、魂ゲットのチャンスだ。
ここは精一杯恩を売るぞ。
僕は内心、両拳を天に突き立てる。
「今後のためにお客様のポイントを最小限に抑えつつ、その子が救われるような手はずを整えましょう」
「あの子の家族は、生き返らせられないんだったな」
「はい、残念ながら。腕の再生に関しましても、凄まじいエネルギーを必要とします。とても1000ポイントでは足りません」
「ではせめて、あの子から苦痛を取り除いてやってくれないか?」
「かしこまりました。ただ精神的な苦痛を取り除いてしまいますと、今後少女が冷たい人間に育ってしまう可能性がございます。ですので今回は、一時的に肉体的な痛みのみを取り除きましょう」
「しかし彼女はまだ10歳だぞ? 家族を失った精神的ダメージに耐えられないのではないか?」
「そこもお任せください。傷が完治した後、少女はすぐに施設に送られると思うのですが」
「ああ、そうなるだろうな。私が引き取っても構わないんだが、家族愛で癒してやることが私1人では難しいと思うんだ。正直、どこで暮らすことが少女にとって幸せなのか、悩んでいる」
「さようでございますよね。では、こうしてはいかがでしょう? わたくしがすぐ、少女が暮らすに適した環境を捜索致します。基準は、『少女の将来性を高めること』と『少女が幸福感を得られること』を前提と致します」
「うむ」
「もちろん、お客様のご自宅も選択肢の中に含んだ上で、彼女にとっての1番を探させていただきますのでご安心ください」
「そうか、すまん」
「とんでもございません。ただですね? お客様のご自宅が選考から漏れてしまった場合は」
「解っている。了承しよう」
「ありがとうございます」
それではすぐに理想的な施設を探し出し、そこに入れるよう手配させていただきます。
おじちゃんにそう伝えると、彼はまた泣いた。
もう大人なのに、よく泣く人だなあ。
でも、なんかいい人だな。
「ありがとう、ロウ君。本当にありがとう」
「いえ、そんな、とんでもございません!」
見えてないのに、慌てておじぎをして返す。
ありがとうってたくさん言われちゃった。
いいことすると、なんか気持ちいいなあ。
僕はちょっとだけ、ほっこりした気分になった。
おじちゃんはというと、懺悔も済んでスッキリしたんだろうね。
さっきとは全く逆で、ご機嫌な声色になっている。
「ロウ君。次の願いなんだが、今決めたよ」
「今、でございますか? 慎重になったほうがよろしいですよ?」
「ああ。慎重だし、冷静だとも」
続けておじちゃんは願い事を言う。
それを聞いて、僕は思わず「ええ!?」って大きな声を出しちゃっていた。
ヘッドフォンをしたまま、改めて広大なオフィスを見渡す。
数え切れないぐらい、もの凄い数の悪魔たちがお仕事してる。
周りの仕事仲間たちに聞こえないよう、おじちゃんには忠告を何度も残した。
でも、意思は固いみたい。
僕はペコペコとおじぎをしながら回線を切る。
これだけいるオペレーターの中でも、きっと僕が初めてだろう。
当コールセンター史上初の願い事を、おじちゃんは次に叶えようとしている。
続く。
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/191/
めさです。
皆さん、おはようございます。
さて、いつものように、遅れがちではありますがお祝いさせていただきますよー!
1/4 ジン、誕生日おめでとう!
1/4 じゅんさん、誕生日おめでとうございます!
1/4 チャリンコ三郎さん
1/6 なほみさん、誕生日おめでとうございます!
1/6 てぃてぃさん、誕生日おめでとうございます!
1/7 ゆうぞうさん、誕生日おめでとうございます!
明けましてめでたく、誕生日もおめでたい。
良いことはたくさん続いたほうが良いですね。
この1年も、素晴らしい思い出がたくさんできますように。
皆さん、お誕生日、本当におめでとうございます!
占い師さんによると運気は今年から回復するんだとか。
マジかスゲー!
やったー!
生きる希望が簡単に湧き上がる、めさでした。
年始で起こった悪い出来事は、今年分の不幸を全て凝縮したものだと思いましょう(笑)
これからは良い運が巡ってきますように☆
そしてめささんにとって
素敵な1年になることを祈ってます。
小説楽しみにしてますね!
めささんは、私の価値観を変えてくれた尊敬すべき方です(´ω`*)
そんなめささんにとって今年も素晴らしい一年になりますように(-人-*)