夢見町の史
Let’s どんまい!
2011
April 09
April 09
「騙される奴が悪いのさ」
よく耳にするフレーズだが、それが俺の口癖だ。
「人を騙すなんてよくないよ」
正論だが俺には関係ない。
詐欺師が人を騙してなにが悪いというのだ。
これからも様々な手口でボロ儲けしていってやる。
と、意気込んでみたはいいものの、正直、最近は不景気でパッとしない。
詐欺のアイデアがなかなか浮かんでこない。
だいたいの手が使い古されているせいか、どいつもこいつも用心深いし、やりづらい世の中だ。
そんな折り、電話が鳴る。
詐欺師仲間からだ。
「もしもし? ご無沙汰してます~。今って電話しちゃって大丈夫でした?」
大丈夫だ、どうした?
そう返すと先方は単刀直入に、俺の胸に突き刺さることを言った。
「いいカモ、見つけたんですよ。それもたくさん」
「ほう」
話によるとこの電話相手は、非常に素晴らしいリストを入手したのだという。
「僕は『いいカモリスト』って呼んでるんですけどね? これがホント凄いんですよ。今までにないリストです」
「どう今までにないんだ?」
「いいカモしか載ってないんですよ」
「ほう」
「チキンみたいな奴ばっかりでどいつもこいつも臆病だし、いざとなったら腕っ節一つで、僕でも勝てるような連中しか載せられてないから安心なんです」
「本当か?」
「ええ。高飛びされないようにだけ気をつければ、あとは煮るなり焼くなり好き放題ですよ」
「そりゃ助かるな。お前そのリスト今持ってるのか?」
「ええ、持ってます」
「おお! 俺にもくれよ」
「いやあ、こんな珍しいリストをタダでってわけには…」
「解った! じゃあ売ってくれ!」
相手はするとなかなか高い金額を口にしたが、背に腹は変えられない。
ただでさえ仕事が上手くいっていないのにこの出費は痛いが、あとでいくらでも取り戻せる。
「いいだろう。その金額で買おう」
「じゃあ、振り込まれたのを確認したら現物を送りますね」
「ああ、頼む」
「では、好きに料理しちゃってください」
電話を切って、俺は銀行へと足を向けた。
いいカモリストは数日後、宅配でうちに届けられる。
「確かにいいカモ揃えやがって!」
俺は全力で、リストを壁に投げつけた。
どのページを開いても、カモ、カモ、カモ。
カモ目カモ科の鳥類で、首があまり長くなく、雄と雌で色彩が異なるものをいう。
漢字では「鴨」と表記される。
いうまでもなく、鳥のカモである。
思い出されるのは、電話口での奴の言葉だ。
「いいカモ、見つけたんですよ。それもたくさん」
俺が見つけてえのはそっちのカモじゃねえよ!
「チキンみたいな奴ばっかりでどいつもこいつも臆病だし、いざとなったら腕っ節一つで、僕でも勝てるような連中しか載せられてないから安心なんです」
勝ち負けの前に、まず喧嘩にならねえよ!
「高飛びされないようにだけ気をつければ、あとは煮るなり焼くなり好き放題ですよ」
たっぷり料理しろってか!?
うるせえよ!
「好きに料理しちゃってください」
うるせえよ!
怒り奮闘に、俺は携帯電話を開いて奴に発信する。
「おや、怒ってますね。どうしました?」
「あのリストはなんなんだよ!?」
「だから言ったでしょう? いいカモのリストだって」
「誰がカルガモやアヒルやマガモの生息地を知りたがったよ!? ヒメハジロなんて種類の鳥、初めて知ったわ!」
「しっかり目を通したんですね」
「やかましい! 金返せ!」
「返せませんよ。だって僕、嘘は何も言っていませんもの」
「騙す気がなきゃ、あんなふざけたリスト大金で売りつけるわけねえだろうが!」
すると奴は聞き覚えのある言葉を口にする。
「騙される奴が悪いのさ」
思わず「人を騙すなんてよくないよ」と当たり前のことを返していた。
結局、奴に払った金は戻らない。
今、俺の手元にあるのは、一風変った鳥図鑑だ。
こんな妙なリスト、使い道なんて1つしかねえじゃねえか!
俺は再び電話を手にし、今度は別の詐欺師仲間に声をかけた。
「いいカモ見つけたぞ! それもたくさん!」
よく耳にするフレーズだが、それが俺の口癖だ。
「人を騙すなんてよくないよ」
正論だが俺には関係ない。
詐欺師が人を騙してなにが悪いというのだ。
これからも様々な手口でボロ儲けしていってやる。
と、意気込んでみたはいいものの、正直、最近は不景気でパッとしない。
詐欺のアイデアがなかなか浮かんでこない。
だいたいの手が使い古されているせいか、どいつもこいつも用心深いし、やりづらい世の中だ。
そんな折り、電話が鳴る。
詐欺師仲間からだ。
「もしもし? ご無沙汰してます~。今って電話しちゃって大丈夫でした?」
大丈夫だ、どうした?
そう返すと先方は単刀直入に、俺の胸に突き刺さることを言った。
「いいカモ、見つけたんですよ。それもたくさん」
「ほう」
話によるとこの電話相手は、非常に素晴らしいリストを入手したのだという。
「僕は『いいカモリスト』って呼んでるんですけどね? これがホント凄いんですよ。今までにないリストです」
「どう今までにないんだ?」
「いいカモしか載ってないんですよ」
「ほう」
「チキンみたいな奴ばっかりでどいつもこいつも臆病だし、いざとなったら腕っ節一つで、僕でも勝てるような連中しか載せられてないから安心なんです」
「本当か?」
「ええ。高飛びされないようにだけ気をつければ、あとは煮るなり焼くなり好き放題ですよ」
「そりゃ助かるな。お前そのリスト今持ってるのか?」
「ええ、持ってます」
「おお! 俺にもくれよ」
「いやあ、こんな珍しいリストをタダでってわけには…」
「解った! じゃあ売ってくれ!」
相手はするとなかなか高い金額を口にしたが、背に腹は変えられない。
ただでさえ仕事が上手くいっていないのにこの出費は痛いが、あとでいくらでも取り戻せる。
「いいだろう。その金額で買おう」
「じゃあ、振り込まれたのを確認したら現物を送りますね」
「ああ、頼む」
「では、好きに料理しちゃってください」
電話を切って、俺は銀行へと足を向けた。
いいカモリストは数日後、宅配でうちに届けられる。
「確かにいいカモ揃えやがって!」
俺は全力で、リストを壁に投げつけた。
どのページを開いても、カモ、カモ、カモ。
カモ目カモ科の鳥類で、首があまり長くなく、雄と雌で色彩が異なるものをいう。
漢字では「鴨」と表記される。
いうまでもなく、鳥のカモである。
思い出されるのは、電話口での奴の言葉だ。
「いいカモ、見つけたんですよ。それもたくさん」
俺が見つけてえのはそっちのカモじゃねえよ!
「チキンみたいな奴ばっかりでどいつもこいつも臆病だし、いざとなったら腕っ節一つで、僕でも勝てるような連中しか載せられてないから安心なんです」
勝ち負けの前に、まず喧嘩にならねえよ!
「高飛びされないようにだけ気をつければ、あとは煮るなり焼くなり好き放題ですよ」
たっぷり料理しろってか!?
うるせえよ!
「好きに料理しちゃってください」
うるせえよ!
怒り奮闘に、俺は携帯電話を開いて奴に発信する。
「おや、怒ってますね。どうしました?」
「あのリストはなんなんだよ!?」
「だから言ったでしょう? いいカモのリストだって」
「誰がカルガモやアヒルやマガモの生息地を知りたがったよ!? ヒメハジロなんて種類の鳥、初めて知ったわ!」
「しっかり目を通したんですね」
「やかましい! 金返せ!」
「返せませんよ。だって僕、嘘は何も言っていませんもの」
「騙す気がなきゃ、あんなふざけたリスト大金で売りつけるわけねえだろうが!」
すると奴は聞き覚えのある言葉を口にする。
「騙される奴が悪いのさ」
思わず「人を騙すなんてよくないよ」と当たり前のことを返していた。
結局、奴に払った金は戻らない。
今、俺の手元にあるのは、一風変った鳥図鑑だ。
こんな妙なリスト、使い道なんて1つしかねえじゃねえか!
俺は再び電話を手にし、今度は別の詐欺師仲間に声をかけた。
「いいカモ見つけたぞ! それもたくさん!」
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