夢見町の史
Let’s どんまい!
2009
August 26
August 26
俺が高校を卒業して数年の月日が流れる頃。
空手道部の顧問でいらっしゃるK先生が俺たちの母校から離任され、他の学校に移ってしまうことになりました。
当時高校生だった俺たちはK先生に幾度となく叱られ、また叱り以上の激励や教えを受けています。
照れくさい言葉になるけれど、K先生は恩師です。
俺たちは空手道部に所属していた卒業生たちをできるだけ呼び集め、皆でK先生の離任式に参加することにしました。
名付けて、K先生を泣かせよう大作戦。
みんなで道着を色紙代わりに寄せ書きをしたり、道場に飾り付けを施しました。
式の後、K先生を道場にお呼びして盛大に盛り上げてやるぜ!
離任式は母校で行われるのですが、聞いた話によると生徒以外、例えば俺たちのような卒業生でも参加できるとのことだったので、作戦その1実行です。
<ミッション1・「やっぱ基本は花だろ」>
みんなでK先生に花を贈ろうという計画です。
花束をまとめて1回で贈るのではなく、1人1人が花を1本だけ用意し、それぞれが自分の手で花を先生にお渡しすることに話はまとまりました。
離任式当日、空手道部のOB連中はそれぞれが花屋で買ったらしい1輪だけの花を手にしています。
しかしトメだけが、どっかの観葉植物から妙にでっかい葉っぱをもぎ取って来やがっており、1人だけ間違い探しの一部分みたいなことになっています。
トメ、お前が持ってきたそれは花じゃねえ。
葉っぱだ。
離任式が終わると、離任される先生方が体育館を後にします。
俺たち元空手道部のみんなはさっと花道を作り、1人1人がK先生に花を渡しました。
しかしトメだけが「バサッ」という効果音付きでデカい葉っぱを渡したので、K先生は「どうして葉っぱを?」と不思議そうな顔に。
俺は俺で、何故か全く知らない教員の方が俺から花を受け取ろうとしたので、思わず間違えて渡しそうになってしまいました。
さて、後は先生を道場に呼び出すだけです。
<ミッション2・「汗を流したあの場所で」>
俺たちは道場に入ると大急ぎで道着に着替えて整列をし、正座でK先生が来るのを待ちました。
間もなくK先生が到着。
背筋を伸ばし、ビシッと整列している俺たちを見て、恩師は少し照れたように笑いました。
感極まったのか、声を張り上げるK先生。
<ミッション3・「こりゃ計算外」>
「では、これより最終稽古を行います!」
K先生は有無を言わさず、そのように断言しやがりました。
稽古って、引退してからずっとダラダラし、体力の何もかもを失った俺たちが?
本来だったらこの後、1人1人が順々に贈る言葉を述べたりする予定だったのですが、何故か始まる空手の稽古。
みんな結構衰えているので、誰もがヒーヒー言っています。
「じゃあ次はバトルの体勢!」
生き生きした瞳で仕切るK先生。
ちなみにバトルとは「バトルロイヤル」の略です。
1つのコートに全員が入り、みんなで戦うのです。
自分以外の全員が敵なわけですね。
「1番早く負けた者は拳立て180本! その次に負けた者は170本! そういう形で早く負けた者にはぺナルティがつくからね!」
拳立てとは、拳でやる腕立て伏せのことを指します。
これは負けちゃいけません。
「で、優勝者には私からのキーッス!」
K先生は女性ですけれど、どんな方向から眺めても女性には見えない方。
これは勝っちゃいけません。
だいたい、どうして勝った奴が1番手厳しい扱いを受けなければならないのでしょうか。
先生が考えたルールだと、手を抜いても嫌な肉体労働が課せられます。
つまり、丁度良い瞬間に負けるのが丁度良いわけです。
よーし!
頑張って丁度良いところで負けるぞ!
こうしてバトルスタート。
試合用コートの中は修羅場と化しました。
いやしかし、いい空気だなぁ。
俺は組み手が大好きだ。
楽しくなってきた。
ふはは。
楽しくなってきたぜ!
てめェら全員、かかって来ォーい!
もっと全力でぶつかって来い!
以上、めさの心変わりの模様でした。
気がついたら頑張ってしまいました。
俺のバカ。
コートの中はいつの間にか俺と2人の後輩のみ。
片方の後輩は昔から今も道場に通う空手バカ。
もう一方が主将に任命された実力者。
相手に不足はありません。
戦闘シーンは省略しますけれど、俺は先輩の意地と元K高校最速の男としてのプライドで、何とかこの強敵2人に勝利することができました。
いい勝負だったぜ。
久し振りに本気を出したから体力も限界だ。
疲れたー!
K先生が悪魔のような笑みを浮かべます。
「じゃあ、めさが私とキスね」
忘れてたー!
頑張っちゃ駄目だった!
あ、そうだトメは!?
あいつ俺と互角のクセして、何やってんだ!?
瞬時にトメを探すと、彼は一生懸命拳立てに励んでおいででした。
後でトメから聞いた話によると、こいつはどうしても優勝したくなかったのでもの凄く手を抜き、その手の抜き方が思いの他もの凄かったのだそうで、思いの他もの凄い早さで負けてしまったのだそうです。
「拳立てがキツかったよ~」とトメ。
知るかッ!
K先生が俺につま先を向けます。
俺は正々堂々と逃走を試みました。
すると何故か追ってくる負け犬連中。
来るなバカども!
お前らの血は何色だ!
俺はそのまま捕獲され、床に大の字で押さえつけられると、めでたくK先生に唇を奪われてしまったのでした。
これにて俺とK先生の関係は、アルファベットで言うとAです。
教師と生徒の一線、越えちゃった…。
ぐったりと起き上がれない俺から満足気に去っていくK先生と部員達。
俺はその場で「お母さ~ん!」と泣いていました。
主役であるはずの先生ご自身の活躍により、K先生を泣かせよう大作戦は大失敗だったとさ。
俺が泣かされるとは思いませんでした。
空手道部の顧問でいらっしゃるK先生が俺たちの母校から離任され、他の学校に移ってしまうことになりました。
当時高校生だった俺たちはK先生に幾度となく叱られ、また叱り以上の激励や教えを受けています。
照れくさい言葉になるけれど、K先生は恩師です。
俺たちは空手道部に所属していた卒業生たちをできるだけ呼び集め、皆でK先生の離任式に参加することにしました。
名付けて、K先生を泣かせよう大作戦。
みんなで道着を色紙代わりに寄せ書きをしたり、道場に飾り付けを施しました。
式の後、K先生を道場にお呼びして盛大に盛り上げてやるぜ!
離任式は母校で行われるのですが、聞いた話によると生徒以外、例えば俺たちのような卒業生でも参加できるとのことだったので、作戦その1実行です。
<ミッション1・「やっぱ基本は花だろ」>
みんなでK先生に花を贈ろうという計画です。
花束をまとめて1回で贈るのではなく、1人1人が花を1本だけ用意し、それぞれが自分の手で花を先生にお渡しすることに話はまとまりました。
離任式当日、空手道部のOB連中はそれぞれが花屋で買ったらしい1輪だけの花を手にしています。
しかしトメだけが、どっかの観葉植物から妙にでっかい葉っぱをもぎ取って来やがっており、1人だけ間違い探しの一部分みたいなことになっています。
トメ、お前が持ってきたそれは花じゃねえ。
葉っぱだ。
離任式が終わると、離任される先生方が体育館を後にします。
俺たち元空手道部のみんなはさっと花道を作り、1人1人がK先生に花を渡しました。
しかしトメだけが「バサッ」という効果音付きでデカい葉っぱを渡したので、K先生は「どうして葉っぱを?」と不思議そうな顔に。
俺は俺で、何故か全く知らない教員の方が俺から花を受け取ろうとしたので、思わず間違えて渡しそうになってしまいました。
さて、後は先生を道場に呼び出すだけです。
<ミッション2・「汗を流したあの場所で」>
俺たちは道場に入ると大急ぎで道着に着替えて整列をし、正座でK先生が来るのを待ちました。
間もなくK先生が到着。
背筋を伸ばし、ビシッと整列している俺たちを見て、恩師は少し照れたように笑いました。
感極まったのか、声を張り上げるK先生。
<ミッション3・「こりゃ計算外」>
「では、これより最終稽古を行います!」
K先生は有無を言わさず、そのように断言しやがりました。
稽古って、引退してからずっとダラダラし、体力の何もかもを失った俺たちが?
本来だったらこの後、1人1人が順々に贈る言葉を述べたりする予定だったのですが、何故か始まる空手の稽古。
みんな結構衰えているので、誰もがヒーヒー言っています。
「じゃあ次はバトルの体勢!」
生き生きした瞳で仕切るK先生。
ちなみにバトルとは「バトルロイヤル」の略です。
1つのコートに全員が入り、みんなで戦うのです。
自分以外の全員が敵なわけですね。
「1番早く負けた者は拳立て180本! その次に負けた者は170本! そういう形で早く負けた者にはぺナルティがつくからね!」
拳立てとは、拳でやる腕立て伏せのことを指します。
これは負けちゃいけません。
「で、優勝者には私からのキーッス!」
K先生は女性ですけれど、どんな方向から眺めても女性には見えない方。
これは勝っちゃいけません。
だいたい、どうして勝った奴が1番手厳しい扱いを受けなければならないのでしょうか。
先生が考えたルールだと、手を抜いても嫌な肉体労働が課せられます。
つまり、丁度良い瞬間に負けるのが丁度良いわけです。
よーし!
頑張って丁度良いところで負けるぞ!
こうしてバトルスタート。
試合用コートの中は修羅場と化しました。
いやしかし、いい空気だなぁ。
俺は組み手が大好きだ。
楽しくなってきた。
ふはは。
楽しくなってきたぜ!
てめェら全員、かかって来ォーい!
もっと全力でぶつかって来い!
以上、めさの心変わりの模様でした。
気がついたら頑張ってしまいました。
俺のバカ。
コートの中はいつの間にか俺と2人の後輩のみ。
片方の後輩は昔から今も道場に通う空手バカ。
もう一方が主将に任命された実力者。
相手に不足はありません。
戦闘シーンは省略しますけれど、俺は先輩の意地と元K高校最速の男としてのプライドで、何とかこの強敵2人に勝利することができました。
いい勝負だったぜ。
久し振りに本気を出したから体力も限界だ。
疲れたー!
K先生が悪魔のような笑みを浮かべます。
「じゃあ、めさが私とキスね」
忘れてたー!
頑張っちゃ駄目だった!
あ、そうだトメは!?
あいつ俺と互角のクセして、何やってんだ!?
瞬時にトメを探すと、彼は一生懸命拳立てに励んでおいででした。
後でトメから聞いた話によると、こいつはどうしても優勝したくなかったのでもの凄く手を抜き、その手の抜き方が思いの他もの凄かったのだそうで、思いの他もの凄い早さで負けてしまったのだそうです。
「拳立てがキツかったよ~」とトメ。
知るかッ!
K先生が俺につま先を向けます。
俺は正々堂々と逃走を試みました。
すると何故か追ってくる負け犬連中。
来るなバカども!
お前らの血は何色だ!
俺はそのまま捕獲され、床に大の字で押さえつけられると、めでたくK先生に唇を奪われてしまったのでした。
これにて俺とK先生の関係は、アルファベットで言うとAです。
教師と生徒の一線、越えちゃった…。
ぐったりと起き上がれない俺から満足気に去っていくK先生と部員達。
俺はその場で「お母さ~ん!」と泣いていました。
主役であるはずの先生ご自身の活躍により、K先生を泣かせよう大作戦は大失敗だったとさ。
俺が泣かされるとは思いませんでした。
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