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夢見町の史

Let’s どんまい!

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November 24
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2007
July 01
 ある音楽レーベルの企画に参加させていただくことになりました。
 ちょっとした創作活動です。

 今回は実験ということで、試しに「音楽」というお題で短文を書くことになりました。
 記念にここに載せておきますね。

 それではフィクションの短い物語、2つ続けてお楽しみください。



<せめて何か持て>



 スポットライトの光と熱気。
 逆光だからといって、ステージから客席が見えないなんてことはない。
 僕らの音楽は、今夜も大勢を奮い立たせている。

「ではここで!」

 エコーを絞ったマイクに、僕は声を通す。

「メンバー紹介をしたいと思います! まずはドラム! タカシ!」

 心臓に直接響いてきそうな打撃音が打ち鳴らされる。
 タカシのドラムソロはいつ聴いても熱く、激しい。

「続いてベース!」

 タカシのドラムに、心地よい低音がリズミカルに加わった。

「ユタカ!」

 小刻みなドラムと全く同じリズムで、ユタカは弦を弾く。
 言いたくはないけれど、さすがだ。

「続いて!」

 僕はヒロシをちらと見て、彼を手で示す。

「エアギター! ヒローシ!」

 ヒロシが、まるでそこにギターがあるかのように、何もない宙を強くかきむしる。
 素晴らしくスピーディで、心が込められている。
 最高に熱く、激動的で、ヒロシのそれは、まるで獅子が咆えるかのようだった。
 無音の雄たけびだ。

 ヒロシは鋭く頭を上下させ、やがて恍惚とした表情を浮かべると、力尽きたかのようにその場にしゃがみ込む。
 同時に、客席から歓声と拍手が盛大に起こった。

「サンキュー!」

 手ぶらのまま、ヒロシが叫んだ。
 再び盛大な拍手。

 なんで盛り上がるんだろう、うちのバンド。



<地球の名曲>



「人類最大の発明は何だと思う?」

 友からの唐突な問いかけに、僕は戸惑う。

「急に言われても…。えっと、なんだろう。お金かなあ」

 なんだか違うような気がするけれど、でも、正しいと思われる解答がなかなか思い浮かばない。
 なんだろうなんだろう。
 きっと身近な物に違いない。

「あ! 解った!」

 突然閃き、僕は確信を口にする。

「言葉だ!」

 自信のある答えだった。
 しかし友はというと、フンと鼻を鳴らせただけだ。

「言葉? 確かに言語は優れた発明だ。しかし、使いこなせる人間は少ない」

 彼女らしい、シビアな演説が始まる。

「相手に理解させるための説明ができる奴は極めて少ない。相手からの説明を理解できる奴など、さらに稀少だ。人類に言葉など、まだ早い。宝の持ち腐れだ」

 相変わらず手厳しい。
 では友は、何こそが人類最大の発明だと言うのだろうか。

「間違いなく、音楽こそが人類の宝だろうな」

 言い切るからには彼女のことだ。
 何かしらの根拠があるのだろう。

「生物学的には、生きることに音楽は必要ない。音楽が無いせいで滅ぶことなどないだろう。人が音楽に興じるということはつまり、生物として余裕があるということだ。他の生物だったら生きるだけで精一杯で、音楽どころじゃないだろうからな。音楽の発明は、人類が余裕のある生物であることを証明している」

 なんだか難しいけれど、なるほどなあ、と思う。
 でも同時に、そうかなあ、とも思う。
 音楽は、人類だけのものではないような気がしたのだ。

 僕らは例えば、恋愛をする。
 それは種族繁栄のためを思ってするのでは、当然ない。

 ある鳥は求愛のために鳴くとされているけれど、訊ねてみれば案外、「自分の声が好きでね。鳴きたいから鳴いているのさ」なんて、さらりとした答えが返ってくるかも知れない。

 僕は立ち上がり、窓に手を伸ばす。

「何をしている?」
「君に、聴いてもらいたい曲があってね」

 唄う当人たちにしてみれば、それは奏でることを楽しんでいるだけなのかも知れない。
 音を楽しんでいるのなら、それはもう立派な音楽だ。

 窓を開けると、秋の風が、鈴虫の音色を部屋に招き入れる。

「どうだい? 人間の他にも、優秀な音楽家がいるだろう?」
「ふむ、確かに」

 珍しく友は自説を曲げたようだ。

 僕らは長椅子に背を預け、ゆっくりと目を閉じる。

拍手[16回]

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裏話のコーナーですよ。
 ちなみに2つめの短編「地球の名曲」に登場する2人は、「永遠の抱擁が始まる2(http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/18/)」のエリーと教師だったりします。
 この会話、いつか書きたいなあって思ってたんです。
 書けたので満足。
めさ: URL 2007.07/01(Sun) 22:57 Edit
目に浮かぶ様です。
名曲の方のふたりが
窓際で話す様子、
虫達の声がまるで聞こえてくる様でした。
エアギターを上手く絡めて笑わせてくれるのも、さすがです(^□^)

いつもどこかに必ず笑いや涙のスパイスを利かせるめささんが、モノを創造する時の私にとっていつもお手本になってます(^_^)
紀伊: 2007.07/01(Sun) 23:06 Edit
一個目のが
めちゃくちゃ好きです。思わずその場面を想像してニヤリとしてしまいました。流石です!!
レモン: 2007.07/01(Sun) 23:09 Edit
はじめまして。
めさサンのファンです。

面白すぎです。

前から読ませて頂いてたんですけど書き込みはせず・・。
でも今回の「エアギター」には本当にやられたので書き込みました。

これからもすんごい楽しみにしてます!
ayako: URL 2007.07/01(Sun) 23:48 Edit
無題
02こめの
すごく良かったです(b'v`◇)

まさかまたあの02人が
でてくるなんて笑

好きな話しの続編って
かなり嬉しいもんですね
ひな改めぴの: URL 2007.07/01(Sun) 23:56 Edit
無題
自分の声が好きでね。鳴きたいから鳴いてるのさ。 めささんのこういうところ、とてもすきです。笑 エリーたちはこのときも、手をつなぎながら目を閉じるのかなあ。
ちよこ: 2007.07/02(Mon) 00:01 Edit
日記と関係なくてすみません
相性占いで,めささんとの相性100%でした…

どうしましょう。
カノコ: 2007.07/02(Mon) 00:42 Edit
地球の名曲
こういう、テンポの話、好きですね。
自説を曲げた友人さんのキャラも好きです。
睡蓮: 2007.07/02(Mon) 01:46 Edit
無題
エアギターの話。

朝っぱらから笑ってしまいました(笑)

二つ目の話はなんか納得しちゃいました!!

自分もお金かと思ってましたが…。

理屈も確かに通ってますしね。
ペムカ: URL 2007.07/02(Mon) 07:26 Edit
無題
エアギターで大爆笑。

そんなバンドのライブを見てみたい(笑)
ガボ三世: URL 2007.07/02(Mon) 16:18 Edit
やっぱりいいですね^^
めささんの書く文は
登場人物のキャラの味があって
洗練されてて
ぼそっと冷静なツッコミがあって^^
すごく楽しいです!

お話の中にグングン引き込まれてしまいました(^ω^)
: URL 2007.07/02(Mon) 17:40 Edit
タイトルの
オリエンタリカはバンド名か何かですか?

一つ目の話、ドラムとベースだけじゃあボーカルも大変だろうなぁ…まさか、ボーカルもエア?
sun: 2007.07/02(Mon) 18:44 Edit
無題
めささん流石です!!!!
こんな短い中にもしっかりとドラマがあって…思わずにやけてしまいました(笑)
ちなみにエアギターのヒロシってめささんですか???
モリタ: 2007.07/02(Mon) 20:36 Edit
無題
創作物が見たくて仕方なかったですめささんが作る物語は深い
面白い話も物語も頑張って下さい
けと: 2007.07/03(Tue) 00:36 Edit
動画から来ました。
めささんの動画から来ました。
最初は悪魔ぶって~の動画の内容とめささんの美声に興味を持って、HPがあると知り、永遠の抱擁が始まるを読んでみました。

このお話も素敵ですね!
まさかのエアギターww

鈴虫、見た目はグロいけど
とっても美しい音を奏でますよね、

名プレイヤーです。
黒猫月: 2012.06/10(Sun) 10:12 Edit
2007年の記事だったんですね
まさか、ボーカル以外全部エアのバンドが流行るときが来るなんてこの時は思わなかったなぁ…
sun: 2013.04/04(Thu) 21:50 Edit
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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
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 必要なものがあったら遠慮なく気軽に、どこにでも貼ってやって人類を堕落させるといい。
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