夢見町の史
Let’s どんまい!
March 08
素晴らしい。
見事なまでに協調性がない。
ここまでバラバラなのって、かなり珍しいことだ。
俺たち3人は、自分らのチームに「りんく」という名前をつけた。
繋がり、という意味合いだ。
シンガーの「ぴぃ」は音楽担当。
彼女はかなりの感覚派だ。
3人で鍋を囲もうという日、俺は玉子を用意しておいた。
雑炊のとき、溶き玉子にする用だ。
するとぴぃは、「ゆで卵を作ってみせる」などと錬金術師みたいなことを言い出し、買っておいた玉子を全て煮た。
これでめでたく、溶き卵ができなくなった。
「この世の玉子は全て私の物」
彼女の目は、そう語っていた。
ちなみに男性陣は、いい感じのゆで卵の作り方を知らない。
ぴぃに全てを委ねるしかないのだ。
「ねえ、ぴぃ。どれぐらい煮る予定?」
「だいたい4分」
こうして待つこと15分間、ガスコンロの前で、ぴぃはずっと仁王立ちだった。
俺の脚本が舞台になった暁には、かづき君が主役を勤めることになる。
彼は役者を志望している好青年だ。
毎週のように、俺たちは公演に向けての打ち合わせをしている。
毎週のように、かづき君はご飯を食べたら満足げな笑顔で寝始める。
彼は一体、ここに何をしに来ているのか。
「めささん、来週はお好み焼きを食べましょ!」
お前は何のためにこの世に生まれてきたのだ。
「俺のケータイ見て! この女優さん、可愛いでしょ! 俺、この人といつか共演するのが夢なんですよ。だから、めささんもぴぃも、頑張ってね」
よし。
りんくは解散するか。
「おおー! 名作見っけ! めささん! このゲーム、借りてもいい!?」
りんくって、3人のチーム名じゃないから。
俺とぴぃのコンビ名だから。
「いや、ホント俺、このゲーム好きなんですよ。貸して~」
仕方ないなあ。
ちゃんと返すんですよ。
すると、かづき君は大喜びで、ゲームソフトの箱だけを大切そうに持って帰った。
ゲームその物はちなみに、うちのゲーム機本体に差してある。
彼は自宅で、俺からの悪意を勝手に感じ取り、「関東人、怖い」とつぶやいたのだそうだ。
めさ「ってゆうかさ、俺ら、本当に気が合わないよね。目玉焼きにかけるのがソースか醤油かで揉めるタイプだ」
かづき「いえ? 目玉焼きには何もかけませんよ」
ぴぃ「えええ! 何言ってんの! なんで何もかけないの!」
かづき「かけないって!」
めさ「OK、お前ら! この3人で目玉焼きを食べるのは絶対にやめよう!」
それでも、3人とも本気ではある。
酒を飲み交わしながら熱く語り合い、打ち合わせは進行し、かづき君が幸せそうな笑顔で横になる。
気がつけば、なんとも不思議なことに、空気はただの飲み会に。
最終的な議題はというと、「来週は何を食べようか」である。
一体何の集いなのだろうか。
2人には内緒だが、これでも俺は今、猛烈に困っているのだ。
来週は、カレーにするべきか、お好み焼きにするべきか。
チームワークの悪さが素敵(・∀・)
舞台、楽しみにしてます♪
ちなみに目玉焼きには‥
塩胡椒です。
ケチャップ・醤油・マヨネーズ‥初めて聞きましたぁ(・□・´;)
美味しんぼにそう書いてあったのを試してみたところ…バカウマ!
以来目玉焼きはそうやって食べるようになりました(笑)
まんま食べる場合は塩のみでいただきます。卵が新鮮だとこれだけでもウマイです!