夢見町の史
Let’s どんまい!
April 08
俺たちにしか作れない舞台を作り上げよう!
そんな熱い想いを胸に結成された表現チーム「りんく」は、メンバーが顔を合わせる度に解散の危機に瀕している。
誰のせいだとか、あえて名前は書かないが、かづき君の功績だ。
集合し、食事を済ませ、いざ計画の話し合いという大事な場面で、彼はごろりと横になりやがる。
「だって、ご飯食べたら、眠くなっちゃったんやもん。はは」
母じゃない。
わがままキャラまで先を越され、毎回非常に歯がゆい思いをさせられる。
この関西人は目黒出身だ。
などと有ること無いこと言いふらし、地味に好感度を下げるも、かづき君は気持ちよさそうに寝息を立てている。
舞台についてリアルな知識を持っている者は、役者である彼しかいないのだ。
それが先に寝てどうする。
お前は砂漠の蜃気楼か!
喩え失敗して、ごめんね。
とにかく起きろ。
「みんな、俺に構わず先に進んで進んで。仕方ないやんかー。ご飯食べたら、眠くなってしもうたんやもん」
思わず、俺まで畳の上で寝転る。
ごろごろ転がりながら、「解~散!」と伸びをした。
先日やったお花見にしても、そうだ。
彼は人を怒らせる天才だった。
ホームシックにかかり始めたのだと、かづき君は言う。
「あ~あ~。京都に帰ろうかなあ」
「へえ。かづき君って、京都出身だったんだ?」
「いえ? 大阪ですよ?」
目の黒い部分を触ってやりたくなった。
みんなで仲間の家に遊びに行った時もだ。
俺たちは、酒の買い出しに誰が行くかで揉めていた。
若手の協力者が立ち上がる。
「あ、自分が行きますよ」
いやいや、年下の君に行かせたら、なんか自分が威張ってるみたいになっちゃうでしょ?
だから、行かなくていいよ。
ここはかづき君が行ってくれるって。
「めささん、俺もめっちゃ年下です」
結局は俺とかづき君とでジャンケンをし、パシリ役を決めることになった。
初戦は、チョキとチョキで、あいこだ。
最初にチョキを出したということは、彼は次にもっと強いグーを出すか?
いや、そう見せかけて同じチョキでくる可能性も捨てきれない。
と、俺が考えていると読んでいるんだろ?
ふふん、この毛の生えたハゲめ。
浅い浅い。
なんてことを真剣に考えていた。
さあ、俺の手は決まったぜ?
勝負の続きだ。
と、思ったところを、かづき君の野郎、邪魔をしやがった。
「めささん、俺、次はグーを出しますよ。だからめささん、パーで勝ってください。やっぱ俺、めささんに面倒かけられまへん」
俺は、ここまでいやらしい人間を見たことがない。
とっても胡散臭い笑顔である。
人のことはいえないが、こいつ、本気で勝ちにきていやがる。
人のために酒を買いに行くのがそんなに嫌か?
俺は嫌だ!
「そ、そう? かづき君は、ホントいい奴だなあ」
などと笑顔を引きつらせ、俺が出したのは、もちろん馬鹿正直にパーではない。
奴も、グーを出すと言ったそばから違う手を出している。
そんなことだろうと思ったぜ。
結果、俺が買い出し係だ。
俺は「信じられない」といわんばかりの表情を浮かべ、無言でかづき君の顔と手を交互に見つめる。
怒り、悲しみ、人生の苦痛。
俺の全てを込めた視線を、かづき君はもの凄く綺麗にシカトした。
彼はタバコを取り出し、火を点けると、俺とは目を合わせずに煙を吐く。
「めささん、負けたんだから、早く行ってくださいよ。ジャンケンで決まったことなんやから、しゃあない、しゃあない」
血の涙を流しながら絶叫できなかった自分がもどかしい。
しかし最近、待ちに待った復讐の好機がついに訪れた。
夜分遅く、仕事帰りに電話が鳴ったのだ。
出ると、かづき君の野郎だ。
「めささん、今日、暇~?」
悪いが死ぬほど忙しい。
朝から晩まで仕事をこなす毎日だ。
貴様のその悩みのない声は一体何だ。
「俺ね? 2連休で、めっちゃ暇なんですよ~」
おんどりゃあァ~ッ!
うんぎゃーす!
すまん。
むかつき過ぎて声にならない。
「今から遊びに行っていい?」
今からって、今から!?
合流するの、12時回っちゃうぞ!?
俺は明日も朝から仕事なのに!
「でも俺、めちゃめちゃ暇やってん。遊びに行かんと、も~暇過ぎて暇過ぎて」
産まれてこなきゃいいじゃない!
分かったよ!
来たきゃ来いよ!
家、空けとくよ!
気をつけて死ね!
普段なら絶対に口にしないレベルの呪詛と共に電話を切る。
コンビニには今後、デイリーストアーにしか入れなくなる呪いとかかけたい。
お前のような奴は、深爪してしまえ!
いや、待て俺。
これはチャンスだ。
奴に、これからって時に寝られる切ない側に立たせる絶好の機会じゃないか。
家路を急ぎながら、俺は脳をフル回転させた。
まず、メシを与えないことにしよう。
奴は何故か、喰わせると寝るからな。
眠気覚ましのドリンクも用意しておいてやるか。
そうしておいて、俺が先に横になってくれる。
おやすみの挨拶も考えておかないと。
「いらっしゃい。そして、グッナイ!」
そんな感じで、速攻決めてくれる!
超楽し。
ふはははは!
あーっはっはっは!
最高の夜でーす。
夜空に向け、心の中で高笑いしていると、メールが届く。
かづき君からだ。
件名は、「中止です」
「駅で飯食ったら強烈に眠たなったから行かへん」
のぉーうぉーりゃあーっくすッ!
うぃがー!
やっぱり声になりませんでした。
4/7 トイさん、誕生日おめでとうございます!
日付が変わってしまいましたが、まだ起きていて、ここをご覧になられているといいなあと思い、綴りました。
今年ももっと愛され、素敵な1年になりますように。
誕生日、本当におめでとうございます!
めささんのかづきさんに対する憎しみがヒシヒシと伝わってきます(笑)
あと、自分…6月1日が誕生日です。
めささんに祝ってもらえたら最高の誕生日になると思うので、お願いします。
うんぎゃーす!!(笑)
あとめっちゃ自分のことなんですが、浪人することになってしまったので心の隅で応援してて下さい(笑)
春は色んな道に分かれますね~
めささんも頑張ってる下さいね~( ´∀`)
ではっ