夢見町の史
Let’s どんまい!
April 19
クリエイトチーム「りんく」には、徐々に優秀な仲間たちが集まってきている。
音楽隊の若者2人は恋人同士で、このカップルに会うのは1ヶ月振りぐらいだろうか。
「めさ兄! 久し振りー!」
「お久し振りです、めさ兄」
久し振り。
2人とも、元気だった?
「いやあ、元気だったんですけど、俺たちこないだ大喧嘩しちゃって」
そうだったみたいだね。
なんでも、掴み合いにまで発展しちゃったんだって?
恋人同士なんだから、普通に言い争えばいいのに。
「だって彼女、本気で股間に蹴りを入れてくるんですよ。それも何度も」
「えへへ。だって、頭きたんだもん」
えへへじゃない。
なんで若干嬉しそうに言うのだ。
物理的な攻撃をするな。
「しかも、めさ兄」
何?
「めさ兄が知らないところで、とんでもない濡れ衣を、めさ兄が着せられていましたよ」
俺に濡れ衣?
どんな?
「彼女がエキサイトして『もう別れる!』みたいなことを言い出したんですよ」
うんうん。
「そんで、俺もあったまきて、『他に男がいるのかよ!』って返したんですね」
うん、それでそれで?
「そしたら彼女、『実はあたし、めさ兄とデキてるもん!』って、凄いショッキングなことを」
ちょっと待て。
本当にショッキングすぎて、びっくりしたよ。
なんでそんな大事な局面で、超関係ない俺の名前を出すんだ?
彼女の人よ。
それって一体、どういうことよ?
「だって、それぐらいリアルな嘘を言わないと、別れてくれなさそうだったんだもん。えへへ」
そこで照れる意味が全然解らないから!
だいたい、どうして俺を勝手に犠牲にするんだよ!
他にもメンバーいるのに、なんでピンポイントで俺なわけ!?
俺、彼氏に叱られちゃうどころのレベルじゃないぞ!?
「彼女、ホント凄いこと言ってましたよ。『めさ兄からはいつも言い寄られている』とか、『めさ兄とは初めて会った日にキスしてた』とか」
アメリカでもそこまで展開早くないんじゃね!?
自分で作っといて何だけど、りんくって本当、心の底から迷惑チームだな!
「俺もう、本当にショックでしたよ」
俺もだよ!
「俺、思わず『明日めさ兄に話つけてくる!』って飛び出しそうになりました」
事情を何も知らない無実の俺がめちゃめちゃ可哀想じゃねえか!
「何もやってない」って本当のことを言ったとしても、何故か嘘臭くなっちゃいそうだし!
「彼ね、最初に頭に浮かんだのが、金属バットだったんだって。ふふっ」
話し合う気ねえじゃねえか!
ってゆうか彼女の人!
君、俺を巻き込んでおいて、本当に嬉しそうな笑顔だな!
その表情も含めて、もう何もかも全体的に怖えよ!
「まさか、めさ兄と彼女が、俺の知らないところでそんなことになっていただなんて、信じられなかったですよ」
俺なんか今現在、何も信じられねえし!
もういいよ!
日記に書いてやるよ!
ホントありがとうございました!
話をつけるためにどうして金属バットが必要だったのかは知りたくないので、訊ねませんでした。
なんて怖い子たちだ。