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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2024
April 25
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2008
June 12
 俺クラスのチキンにとっては、あの程度の怪現象ぐらいだったら普通に泣き出す。
 いや、泣くどころでは済まない。
 下手すれば軽く幽体離脱の域に達するだろう。

 劇団「りんく」のちょっとした打ち合わせの電話はその日、午前0時にまで及んでいた。

「ああ、うん。それじゃあ段取りとしては、先にそっちをやっちゃおうか」
「めささん」
「で、今後は長い目で見てさ、基本になるシステムを今のうちに考えておこうと思うのね?」
「めささん」

 俺は1人暮らしだ。
 なのに何故、所々で「めささん」と俺を呼ぶ声が聞こえるのだろうか。
 それも電話の向こうからではなく、部屋の中から!

 俺は生まれつき、片耳が聞こえない。
 したがって通話中は聞こえる側の耳が電話に占領されてしまって、外の物音はほとんど聞き取ることができなくなる。

「めささん」

 だからしばらくは、空耳の類だと思っていた。

「めささん」

 確かに聞こえる!
 確信と同時にフスマに目を走らせる。

 閉めておいたはずのフスマは開いていて、青白い顔をした男が、こちらを覗き込んでいた。

「ぎぃやああああ!」

 悲鳴と共に魂が口から飛び出そうになる。
 電話の相手も、俺による突然の悲鳴にはさぞかし驚いたことだろう。

 覗き込んでいた男は近所の大学生、ヨッシーだった。

「驚きすぎですよう、めささ~ん」
「アポなしかよ! ノックとかしろよ! もしもし、ごめんね? いきなりヨッシーが遊びに来た」
「ノック、しましたよう、めささ~ん」
「取り合えず切るね。じゃあね。はい、おやすみー。うおいヨッシー!」
「何度も声かけたのにい~」
「片耳が電話中でアレじゃんか! 殺す気か!」

 弱い犬ほどよく吠えるとは、本当によく言ったものだと思う。
 この日で最も俺がうるさい瞬間であった。

 この時の俺はちなみに、般若の柄をしたトランクス一丁だ。
 何か履いていて、本当によかった。

「あのね、めささん? 今イージーで飲んでたんですけどお」

 うるさい!
 何か着る物を取ってください!
 そこにあるジンベエを早く!
 意外と恥ずかしいから急いで!
 ばか!

 ヨッシーは一応うちの劇団員でもあって、裏方として快く手を貸してくれている。
 これにて彼の今日の仕事は、俺にジンベエを着させることとなった。

 ジンベエの袖を通しながら、何故この青年がこの部屋にいるのか、俺は必死に冷静になろうとしている。
 まるで襲撃のような今回の襲撃には、何か理由があるに違いなかった。

 で、一体どうしたのさ、ヨッシー。

「いやあの、今イージーで飲んでて、そしたら『めささんに会いたい』って人がいるから、連れて来たんですよう」

 うん?
 どなただろ?
 その人ってのは、今どこに?

「玄関前で待たせてます」

 そうか。
 よかったよ。
 パンツ一丁のところを見られなくて。

「会ってもらっていいですか?」

 ああ、良いよ。
 入ってもらえば?

 時間が時間だったので2人の来客者は遠慮がちではあったが、俺は構わず3人分のグラスを用意し、酒を注ぐ。
 ヨッシーが連れてきたのは、以前やったオフ会で1度だけ来てくださった、「カツオブシ」という残念なハンドルネームの娘さんだ。
 ちなみに俺が命名した。
 オフ会当時の彼女が「書き込みとかしないからハンドルネームがないんです」と困っていたからだ。
 彼女は、俺のブログの読者様であった。

 カツオブシさんは焼酎をロックでごくごく飲みながら、熱く語る。

「まだ酔ってないです!」

 酔うと、みんなそう言うんだよ。

「こないだのオフ会の時は、緊張しちゃってて、本当の自分が出せなかったんです! でも、今の私も私じゃない!」

 なんか哲学的だね。

「私、宇宙人なんです!」

 あのね?
 今はそんなカミングアウト要らないからね?

「めささ~ん。天然の定義って何なんですか?」

 天然かあ。
 定義づけるのは難しいけど、特定のパターンならあるよね。

「どんなです?」

 例えば、普通は会話してると、互いに「相手はこう言いたいんだな」って自分なりに要約しながら話したり聞いたりするでしょ?

「うんうん」

 でも天然の人は、たまに前触れなく要約から直訳にチェンジするんだ。
 例えば、「ほっぺが落ちるほど美味しい」とか言うと、天然の人は慌てて「ほっぺが落下! 早く病院!」とかって騒ぎ出す。

「あはは! 他は他は~?」

 他だと、話のメインテーマが片付いていないのに、平気で話題を横道に逸らす。

「ふうん。あ、シャボン玉吹いていいですか?」

 このように、天然の人は同じテーマの話を続けられないわけ。

「そうだ! めささんにお土産あるんです! 家から要らない物をたくさん持ってきたんですよー」

 気持ちからして迷惑なお土産って珍しいね。

「ハンガーと、フォークとシャーペン。あと、お菓子と日焼け止めのサンプルと、洗剤の計量カップ!」

 ヨッシー、助けてくれ。

「ねー! めささ~ん。シャボン玉吹いていい~?」

 外で?

「ここで」

 ヨッシーッ!

 結局、彼らは3時までうちにいました。

拍手[4回]

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無題
残念のひとことですワリャ
モエ: 2008.06/13(Fri) 00:34 Edit
無題
カツオブシさん(笑)


...りんくネタ大好きです。(笑)
みなみ: 2008.06/13(Fri) 08:14 Edit
天然モノ
残念なハンドルネームって(笑)
かつおぶしさんに同じニオイを感じてしまう。イイ出汁でてる・・・
かよちゅ: URL 2008.06/13(Fri) 17:35 Edit
天然モノ
残念なハンドルネームって(笑)
かつおぶしさんに同じニオイを感じてしまう。イイ出汁でてる・・・
かよちゅ: URL 2008.06/13(Fri) 17:51 Edit
いいなぁ+゚
めさサンの周りはいつも楽しそう‥その場にいたかったなぁ!

ちなみに私は室内しゃぼん玉、
やったことありますよ(゚∀゚)
さおり: 2008.06/14(Sat) 00:47 Edit
ぜひそれは
割れないシャボン玉でやっていただきたい
リュウ(レニア): 2008.06/15(Sun) 10:01 Edit
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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
 それでもいいのならコチラをクリックするとメールが送れるぜい。

 当ブログはリンクフリーだ。
 必要なものがあったら遠慮なく気軽に、どこにでも貼ってやって人類を堕落させるといい。
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