夢見町の史
Let’s どんまい!
2008
June 28
June 28
まず、最初のやり取りからして彼女らしかった。
「もしもし? めさ?」
「うん~? ミカか~」
「ちょっとキモい! 何その声! 寝起き!?」
「ういうん? 違うよ?」
「本当に気持ち悪いからやめて!」
なんだか、一生分「気持ち悪い」と言われたような感覚だ。
「ねえミカ。なんで俺、いきなり切なくさせられてるの?」
「その甘ったれた感じもキモいから!」
「っつーか、もー! なんなんだよ、この電話は~! どうして俺、一方的に傷つけられてるわけ!? 用件は何!」
「あんた今どうせ暇でしょ? それで、遊んであげようかと思って」
絶妙な角度から放たれる高圧的な上から目線。
どうせ暇だといった失礼な決めつけが、俺の涙腺をさらに緩ませる。
俺がドMで本当によかった。
それにしても、とてもじゃないが久々の電話とは思えない。
ミカとの付き合いは、思えばかなり長い。
彼女が未成年者だった頃からになる。
コンビニで買ったシャボン玉を、ミカは何を思ったのかその場で開封し、店内で吹き始めようとした事件が懐かしい。
そんなおてんば娘も、今は立派な母親だ。
出産当時、俺はいそいそと産婦人科まで行き、ミカが産んだ娘をビデオカメラに収めたことも懐かしい。
あれからもう6、7年は経っているか。
互いに近状報告をし合いながら公園まで歩く。
ミカの娘は補助輪のない自転車を自由自在に乗り回し、ちょっとした暴走族みたいなことになっている。
それでもやはり、子供というのは可愛いものだ。
友人の娘はテンション高く、澄んだ瞳を俺に向ける。
「ねえねえ、ワニって遊び、知ってる?」
そのような怖い爬虫類で遊んではいけません。
「違うよう! あのね? 鬼だとするでしょ? で、1歩だったら、いーち! 歩いて、登ってもいいの」
ほうほう。
「で、下に落ちたら鬼ね? 2歩だったら、いーち、にー、って進んでもいいの」
なるほどね。
「タッチしても鬼なの。わかった?」
おう。
さっぱり解らねえ。
「いいからやるよ!」
なんだか全体的に意味不明だし、ワニって名称も気になるが、まあいいだろう。
じゃあ、俺が鬼ね?
鬼のように追い回し、トラウマにしてくれる!
「きゃー! ははははは!」
待ーて~!
「あ、そっちから近づいたら駄目。反則」
何故だ。
やって初めて解ったんだけど、鬼って1段分しか高いところに登れないんじゃないか?
だとしたら、捕まえやすいところから手を伸ばしてタッチするしかないじゃないか。
「でも駄目!」
そうですか。
「ってゆうか、早くー!」
おのれ小娘が。
俺を鬼にしたことを一生後悔させてやるぜ。
「あ、そこから手を出すのも駄目!」
なるほど、この遊びの意味がやっと解ったぞ!
鬼は逃げる人をそこそこ手加減して追い詰め、決してタッチしてはいけないルールなんだな!?
逃げる側は絶対に捕まらないという安全な立場から、それなりにスリルを楽しめればいいわけだ!
ズルいじゃないか!
「じゃあ次はドッヂボールね!」
3人でか!
そんなの絶対に面白くないぞ!
なあ、ミカもそう思うだろ!?
「あ。あたしちょっとジュース買ってくる」
おーし、めでたくさらに人数が減った!
2人だけでドッヂボール開始だ!
「もういい。飽きた」
そうでございますか。
「じゃあ次は、ブランコに乗ってる人にボールを当てたら勝ち!」
無茶言うな。
「ねえねえ、あたしの自転車に乗って、漕いで」
サイズに無理がある。
「もう1回ワニやろう!」
むしろお前がワニだよ!
さっきから何なんだ君、その無尽蔵なスタミナは!
ジュースを買って帰ってきたミカに、もう大変だと告げる。
お前たち、間違いなく親子だ。
ったく、絶対また遊んでもらうからな!
「もしもし? めさ?」
「うん~? ミカか~」
「ちょっとキモい! 何その声! 寝起き!?」
「ういうん? 違うよ?」
「本当に気持ち悪いからやめて!」
なんだか、一生分「気持ち悪い」と言われたような感覚だ。
「ねえミカ。なんで俺、いきなり切なくさせられてるの?」
「その甘ったれた感じもキモいから!」
「っつーか、もー! なんなんだよ、この電話は~! どうして俺、一方的に傷つけられてるわけ!? 用件は何!」
「あんた今どうせ暇でしょ? それで、遊んであげようかと思って」
絶妙な角度から放たれる高圧的な上から目線。
どうせ暇だといった失礼な決めつけが、俺の涙腺をさらに緩ませる。
俺がドMで本当によかった。
それにしても、とてもじゃないが久々の電話とは思えない。
ミカとの付き合いは、思えばかなり長い。
彼女が未成年者だった頃からになる。
コンビニで買ったシャボン玉を、ミカは何を思ったのかその場で開封し、店内で吹き始めようとした事件が懐かしい。
そんなおてんば娘も、今は立派な母親だ。
出産当時、俺はいそいそと産婦人科まで行き、ミカが産んだ娘をビデオカメラに収めたことも懐かしい。
あれからもう6、7年は経っているか。
互いに近状報告をし合いながら公園まで歩く。
ミカの娘は補助輪のない自転車を自由自在に乗り回し、ちょっとした暴走族みたいなことになっている。
それでもやはり、子供というのは可愛いものだ。
友人の娘はテンション高く、澄んだ瞳を俺に向ける。
「ねえねえ、ワニって遊び、知ってる?」
そのような怖い爬虫類で遊んではいけません。
「違うよう! あのね? 鬼だとするでしょ? で、1歩だったら、いーち! 歩いて、登ってもいいの」
ほうほう。
「で、下に落ちたら鬼ね? 2歩だったら、いーち、にー、って進んでもいいの」
なるほどね。
「タッチしても鬼なの。わかった?」
おう。
さっぱり解らねえ。
「いいからやるよ!」
なんだか全体的に意味不明だし、ワニって名称も気になるが、まあいいだろう。
じゃあ、俺が鬼ね?
鬼のように追い回し、トラウマにしてくれる!
「きゃー! ははははは!」
待ーて~!
「あ、そっちから近づいたら駄目。反則」
何故だ。
やって初めて解ったんだけど、鬼って1段分しか高いところに登れないんじゃないか?
だとしたら、捕まえやすいところから手を伸ばしてタッチするしかないじゃないか。
「でも駄目!」
そうですか。
「ってゆうか、早くー!」
おのれ小娘が。
俺を鬼にしたことを一生後悔させてやるぜ。
「あ、そこから手を出すのも駄目!」
なるほど、この遊びの意味がやっと解ったぞ!
鬼は逃げる人をそこそこ手加減して追い詰め、決してタッチしてはいけないルールなんだな!?
逃げる側は絶対に捕まらないという安全な立場から、それなりにスリルを楽しめればいいわけだ!
ズルいじゃないか!
「じゃあ次はドッヂボールね!」
3人でか!
そんなの絶対に面白くないぞ!
なあ、ミカもそう思うだろ!?
「あ。あたしちょっとジュース買ってくる」
おーし、めでたくさらに人数が減った!
2人だけでドッヂボール開始だ!
「もういい。飽きた」
そうでございますか。
「じゃあ次は、ブランコに乗ってる人にボールを当てたら勝ち!」
無茶言うな。
「ねえねえ、あたしの自転車に乗って、漕いで」
サイズに無理がある。
「もう1回ワニやろう!」
むしろお前がワニだよ!
さっきから何なんだ君、その無尽蔵なスタミナは!
ジュースを買って帰ってきたミカに、もう大変だと告げる。
お前たち、間違いなく親子だ。
ったく、絶対また遊んでもらうからな!
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