夢見町の史
Let’s どんまい!
2008
June 27
June 27
小料理屋のように落ち着ける雰囲気の居酒屋では、テレビがお笑い番組を流している。
互いの雑用を1日かけて手伝い合ってから、俺と悪友は何となくその液晶モニターを眺め、食事をしていた。
こいつとは、いい加減腐れ縁といっても構わないであろう。
悪友であるトメ。
彼は最近になって、自分の会社を興した。
空調設備などを扱う企業だ。
ズルいことに後輩に社長をやらせ、自分は平社員といった安心なポジションをキープしている。
俺はというと劇団のようなものを立ち上げている。
何気に色々な企画に手を出さなきゃいけないような空気になっているものだから、日々様々な方面との打ち合わせを重ねている。
とまあ、こんな風に書いたら俺とトメがやたら凄い人のように思われそうだから正直に打ち明ける。
俺たちは、ただのプーだ。
カースト制度でいえば、間違いなく1番下にいる人たちである。
「なあトメ、うちの劇団とお前の会社で、なんかコラボしねえ?」
「一体何やんだよ~。何の共通点もねえじゃねえかよ~!」
「ぎゃはははは!」
落ち着きのなさも完璧だ。
テレビでは、お笑い芸人さんがネタを披露している。
ちょっとした男心を詩吟に乗せて吟じるという形で、視聴者に笑いを提供しておいでだった。
それを見て、トメが不思議なことを口走る。
「めさよ~、オメーもみんなに内緒で何か吟じろよ~」
みんなに内緒の時点で意味が解らない。
誰にも見られずに詩吟を唄っていろということなのだろうか。
お隣さんに不審がられるだけである。
ついでに個人的に、もの凄く恥ずかしい。
「トメ、俺にどうしてほしいのか、もう1回言ってくれるか?」
「だからさあ、オメーも吟じろって。みんなには内緒で」
こいつが言う「みんな」とは、どの程度の範囲で「みんな」を差すのだろうか。
そして、俺は具体的には何を吟じれば良いのか。
軽くいい声を張って、「みんなに内緒で吟じている時ィ~、いいい~。家の玄関が勝手に開いたことも気づかずにィ~、友達が無言で俺を悲しい目で見つめていたらァ~、あああ~。なんだか生まれたことを後悔したくなるゥ~!」とかノリノリで吟じていれば良いのだろうか?
一体、何のために?
「トメお前、俺がもし本当に内緒で吟じてたら、お前もう俺と遊ばないだろ」
「それにしてもよ~、ジンの奴、電話に出ねえよ~」
「聞いてた? 俺の話」
「っつーかさあ、10年後とかは、会ってどんな話しているんだろうなあ、俺たちよ~」
「聞けっつーの、人の話! 話題の流れがおかしいだろ!」
「なんかよ~、10年経ったら俺もオメーも40代だろ~? どう見ても大人なのに今と変わってなさそうでスゲー怖えよ~」
「吟じるぞテメー! 俺の目を見ろォ!」
でもまあ、10年後も変わっていないんだろうなあ。
なんとなくだけど、俺はそう思った。
互いの雑用を1日かけて手伝い合ってから、俺と悪友は何となくその液晶モニターを眺め、食事をしていた。
こいつとは、いい加減腐れ縁といっても構わないであろう。
悪友であるトメ。
彼は最近になって、自分の会社を興した。
空調設備などを扱う企業だ。
ズルいことに後輩に社長をやらせ、自分は平社員といった安心なポジションをキープしている。
俺はというと劇団のようなものを立ち上げている。
何気に色々な企画に手を出さなきゃいけないような空気になっているものだから、日々様々な方面との打ち合わせを重ねている。
とまあ、こんな風に書いたら俺とトメがやたら凄い人のように思われそうだから正直に打ち明ける。
俺たちは、ただのプーだ。
カースト制度でいえば、間違いなく1番下にいる人たちである。
「なあトメ、うちの劇団とお前の会社で、なんかコラボしねえ?」
「一体何やんだよ~。何の共通点もねえじゃねえかよ~!」
「ぎゃはははは!」
落ち着きのなさも完璧だ。
テレビでは、お笑い芸人さんがネタを披露している。
ちょっとした男心を詩吟に乗せて吟じるという形で、視聴者に笑いを提供しておいでだった。
それを見て、トメが不思議なことを口走る。
「めさよ~、オメーもみんなに内緒で何か吟じろよ~」
みんなに内緒の時点で意味が解らない。
誰にも見られずに詩吟を唄っていろということなのだろうか。
お隣さんに不審がられるだけである。
ついでに個人的に、もの凄く恥ずかしい。
「トメ、俺にどうしてほしいのか、もう1回言ってくれるか?」
「だからさあ、オメーも吟じろって。みんなには内緒で」
こいつが言う「みんな」とは、どの程度の範囲で「みんな」を差すのだろうか。
そして、俺は具体的には何を吟じれば良いのか。
軽くいい声を張って、「みんなに内緒で吟じている時ィ~、いいい~。家の玄関が勝手に開いたことも気づかずにィ~、友達が無言で俺を悲しい目で見つめていたらァ~、あああ~。なんだか生まれたことを後悔したくなるゥ~!」とかノリノリで吟じていれば良いのだろうか?
一体、何のために?
「トメお前、俺がもし本当に内緒で吟じてたら、お前もう俺と遊ばないだろ」
「それにしてもよ~、ジンの奴、電話に出ねえよ~」
「聞いてた? 俺の話」
「っつーかさあ、10年後とかは、会ってどんな話しているんだろうなあ、俺たちよ~」
「聞けっつーの、人の話! 話題の流れがおかしいだろ!」
「なんかよ~、10年経ったら俺もオメーも40代だろ~? どう見ても大人なのに今と変わってなさそうでスゲー怖えよ~」
「吟じるぞテメー! 俺の目を見ろォ!」
でもまあ、10年後も変わっていないんだろうなあ。
なんとなくだけど、俺はそう思った。
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