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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2024
May 21
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2007
August 25

 よーし!
 怪我した!
 軽い重症だ!

 咄嗟に思ったことが、それだった。
 これはチャンス、と。

 仕事中、右手をがっつり負傷した。

 これをネタに日記が書けるぞ。
 血をダラダラ垂らしながら、小さくガッツポーズ。

 分厚いガラスの破片に右手をぶつけ、俺は手首に30のダメージを負っていた。
 重いガラスが俺の手首を切り裂き、ぶっ刺すと同時に、細胞を押し潰した。
 斬撃と打撃、両方の傷みが同時に発生する。

 ひゃっほーう。
 超痛そう。

 何故か他人事だ。

 なかなか血も出てるし、骨まで痛む。
 皮膚の薄い箇所にガンって当たったから、簡単に芯まで達したのだろう。
 骨に凹み程度の傷が付いていそうな感覚。

 尖ったガラスの先は骨に当たって止まったので、肉を貫通させるに至らなかった。
 したがって縫うほど傷は深くないし、ダメージの面積も小さい。
 筋や血管も無事だ。
 そこは安心。

 でも見た感じは、すっごい痛そう。
 これは日記に書かなきゃ駄目でしょう。

 さて。
 ではこの中途半端な重症ネタを、どう料理しようか。

 取り合えず、弟に見せびらかす。

「スヴェン見て。痛そじゃね?」
「うっわ! 痛そう!」

 実の弟による普通のリアクションにがっかりだ。

「どうしたの、それ!」
「ガラスが当たった」

 しまった。
 俺まで普通の返答をしてしまった。
 違うだろ俺。
 どうしたのって訊かれたら、そこは「君こそ怪我はないのかい?」とか意味わかんないこと言うべきだろ。

 ふと、弟が立ち去る。
 しばらくすると、彼はティッシュと消毒液を持って、無言でこちらを見つめていた。

「おう。ありがとスヴェン。でもいいよ。俺、怪我しても手当てしない派なんだ」

 ばかか俺は!
 違うだろ!
 弟が何も言わずこっちを見てたら、「なんだい? 仲間にしてほしいのかい?」だろうが!
 もしくは「1歩毎にHP回復するから大丈夫」とかでしょ。
 自分にもがっかりだ。

 っつーか痛くて仕事にならん。

「いてて。いて。おおう、おー! おう! いてー」

 アメリカのエッチなビデオみたいな声が出た。
 なかなかいい調子になってきたじゃないか俺。

 弟は素直に心配してくれる。

「マジで痛そうだー。自分、人の怪我を見るの駄目なんだよ~」
「あ、それ解る! だからよかったよ、怪我したのが俺で。こんな傷、他人がしてたら嫌になる。でもね、この傷、たぶんお前が思ってるほど痛くないよ」

 愚か者の人?
 だからなんでそこで普通トークなんだよ俺よォ!
 ばかですか!?
 空気読むなよ!

「人の怪我が痛そうだと、股間がきゅーってなるよね」
「なるなる!」

 どうだっていい。

「バンソウコウ、いる?」
「ん? いらない」
「手当てしなよー」
「しないよー」

 お前ら付き合ってんの?
 もう好きにしたらいい。
 せっかく軽い大怪我したのに、そうやって一般的なリアクションだけ取っていればいいさ。

 痛い損。
 怪我なんてするんもんじゃない。

拍手[4回]

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2007
August 25

 俺は今、猛烈に喜んでいる。
 プラトーンみたいなポーズで「うおおおおおー!」って叫びたい気分だ。

 俺は今夜、文明に追いついた。
 なんか最近みんな持ってるやつが、やっと利用できるようになったのだ。

 すっごいお金が無いのに、すっごい無理をしたのは4ヶ月前。
 どうしてもどうしても街中で音楽が聴きたくて、俺は歯を喰いしばりながら買い物をした。
 購入したのは、MP3とかいうメディアプレイヤーだ。

 これがまた凄い。
 パソコンに取り入れた曲を、その小さなボディに移植して、持ち歩き聴くことができるのだという。
 お店の人が言っていたのだから間違いない。

 わくわくしながら帰宅し、パソコンにMP3を接続する。
 インストールとかいう謎の儀式も無事終える。
 あとはパソコンに入っている音楽ファイルを、プレイヤーに移動させるだけだ。

「ふはは」

 あの画面を目にした時、なんで俺は笑っちゃったのだろうか。

 モニターに、何やら事務的な一文が表示されていた。

「この形式のファイルには対応していません」

 笑顔は一瞬にして凍りつく。
 何かの冗談ではないようだ。
 徐々に信じられないといわんばかりの顔をして、やがて俺は泣いた。

 なんでか知らんけど、「お前がパソコンに保存していた音楽ファイルは、わざわざお金出して買ったMP3に入りません」ということだ。

 このままじゃこの最新機器、ただの高いラジオじゃないか。

 説明書に目を通す。
 プレイヤーに曲を吸わせるには、どうしたらいいのだ。

「USBケーブルの小さいほうの端末をコンピュータのUSBポートに差し込み、大きいほうの端末を製品本体のドックコネクタポートに差し込みます」

 意味わかんねえ。
 かろうじて解るのは、ケーブルの両端は、それぞれ正解の穴に差し込むってことぐらいだ。
 それぐらい、既に勘で出来てるっつーの。

 だいたい、MP3って何の略なのかも解らん。
 マジックポイント残り3?
 なんで魔力に頼るのだ。

 だから説明書は嫌いなんだ。
 解らない人のための文章なのに、どうして専門用語を使うのか。
 理解させる気があるのだろうか。
 ばかが!

 パソコンの基礎知識が一切ない自分の無知さ加減は棚に上げておいた。

 駄目元で、もう1度トライしてみる。
 パソコンに収納されている音楽ファイルを、プレイヤー本体へ移動、と。

「この形式のファイルには対応していません」

 認めたくないっていうか、涙で文字が読めない。
 断腸の思いで、生活を切り詰めてまでして買ったのに。
 チャリでしゃしゃしゃ~って走りながら、音楽が聴きたいのに。

 いや、「この形式のファイルには対応していません」という血も涙もない一文は、ヒントと見るべきだ。
 この形式のファイルでは駄目、ということは、音楽ファイルを別の形式に変換してしまえば良い。

 そこからは戦いだった。
 色んなキーワードで検索をして、ファイル変換ソフトをダウンロードしたり、友達に相談したり。
 まだ持ち歩かないクセに、プレイヤーが壊れないようにと専用のケースまで用意していた。
 この時点で、なんか泣ける。

 これって俺、ドキュメント番組に出られるんじゃねえか?
 ってぐらい頑張った。
 おばかさんを超えて、可哀想である。

「この形式のファイルには対応していません」

 見慣れた文字。
 この形式に変えても駄目だったか。
 でも、負けないぞう。
 音楽を聴きながらチャリに乗れば、俺はテンション上がって気分もよろし。
 頑張るぞう。

 で、4ヶ月が経った。

 別のやり方を思いついて、試したら、簡単に出来ちった。
 シンプルすぎて逆に説明が難しいから、その方法については割愛するけども、ホントすっごい簡単だった。
 あれだけ一生懸命やっていたファイル形式の変換とかって、ぶっちゃけ関係なかった。
 変換、特に要らなかった。
 あれはただの深読みだった。

 またしても泣きそうになる。
 やっと曲が移植できたぞ、という感動。
 なんでもっと早くこの手を試さなかったのか、っていう情けなさ。
 4ヶ月もの間、俺は一体何を頑張っていたのだろうか。
 何、ファイル形式の変換って。
 そんなの最初からしなくていいのに。

 でも、改めて説明書を見てみると、やっぱりそんなこと書いてないから、俺は間違ってはいないのだと思う。

 俺は間違ってはいない。
 正解できなかっただけだ。

 いやしかし、とにかく嬉しい。
 これでやっと外でも音楽が聴ける。

 喜びの舞いを踊ろう。
 日記にも書こう。
 機械オンチ万歳。

 よかった。
 本当によかった。
 購入店に怒りに行かなくて、本当によかった。
 もし店を訪れていたら、「こんな簡単なこと出来なかったお客さんは、あなたが初めてですよ」ぐらい言われたに違いない。

 色んな意味で、ホントよかった。
 俺は頑張った。
 無駄に頑張ってた。

 これからは、機械オンチの人にも優しくしよう。
 そうしよう。

拍手[6回]

2007
August 21
 滅多にお目にかかれない珍品も、結構あるものだ。
 うちはリサイクルの会社だから、今日も続々と産業廃棄物が集まる。

 俺の背後では、分別作業を任せておいた後輩たちが、何やら騒ぎ始めていた。

「あはは」
「おい、やめろよー!」
「危ないって!」
「ははははは!」

 オメーら仕事中に何やっとんのじゃコラー!
 って叫ぼうと思って、振り返る。

「オメーら仕事中だけど、でもなんか楽しそうじゃん。それ、なあに?」

 後輩の1人が持っていたスプレー缶に興味をそそられ、怒るの断念。
 若き仕事仲間が得意げに笑んだ。

「これ、痴漢撃退スプレー」
「ばっきゃろう! 痴漢撃退スプレーだと!?」

 俺は後輩に歩み寄った。

「ちょっと俺に吹きつけてみ?」

 いいリアクションを取る自信があったし、何より自分自身の好奇心がうずく。
 痴漢はしていないけれど、1度ぐらいは撃退されてみたい。
 撃退されちゃう側が、どんな種類の苦痛を味わうのかを知っておきたい。

 さあ遠慮なく!
 と言うよりも早く、彼はスプレーを俺の顔に向けていた。

 のぉーい!
 少しは遠慮しろよ!
 いきなり目はキツいだろ!
 やめてやめて。

 必死の抵抗のおかげで、痴漢撃退用スプレーはばっちり発射された。

「ぎゃーす!」

 咄嗟にかわしたら、変な液は耳にかかった。
 あっぶね。

「マジかよお前ー! 耳だからよかったけど、目に入ったらどうすんだよう! このドSが! 元ヤン!」

 文句を言う。
 後輩たちは、くすくすと笑ったままだ。

「めささん、その液かかったら、すっげーヒリヒリするよ?」

 はん!
 お前たちとは鍛え方が違うんです。
 ちょっと貸してみ?

 後輩の何名かは既に撃退液の餌食になったらしく、腕やら顔を押さえながらひーひー言ってる。
 そんな軟弱者たちを尻目にスプレーを受け取ると、俺は自らの腕に吹きつけた。

「な? たいしたことないだろ? 皮膚からして俺は優秀なのおおおおおおォーい!」

 だんだんヒリヒリしてきた。
 なんだこの時間差は。
 どうして遅効性なのだ。
 痴漢の人がある程度活躍した後に効いたって駄目じゃないか。
 そりゃ廃棄にもなるわ!

 スプレーを作った人を呪った。

 耳と手が痛い。

「どう? 痛いでしょ?」
「そんな代物で目ェ狙うんじゃねえよーい!」
「しかも臭いが凄いでしょ?」

 言われて初めて気がつく。
 確かに、自分から喩えようのない異臭がしていた。

 全力で科学力を駆使し、極限まで臭くしました。
 って感じに酷い。
 香り1つ取ってもポイズンだ。

 こんなの痴漢の人じゃなく、痴漢の近くにいる人が撃退されてしまう。

 皮膚の痛みが、徐々に強まっていく。
 重度のヤケドを負ったかのような激痛だ。
 だからなんで後から来るんだ。
 本来の使い方をしていたら、被害者の人が手遅れになっちゃうじゃないか。

「しかも、めささん」

 後輩の1人が心配そうに口を開いた。

「水で洗おうとすると、余計に痛くなりますよ?」

 今日みたいな暑い日に汗をかいても、同じような効果が期待できるということか。
 だからなんで後々もっと痛いんだ。
 瞬間的にアレしろよ!
 痴漢の身にもなれ!
 いやいやいやいや、痴漢はいけません。
 大声出しますよ?

 もう傷みのせいで冷静でいられない。

「だいたい俺はなんで痴漢してないのに撃退スプレーやられてんだよ! どうせ撃退されるなら、誰かに痴漢しておけばよかったじゃん! ってゆうか、さっきよりヒリヒリするよう! 浴びたほうの耳が聞こえない!」

 そりゃそうだ。
 俺は生まれた時から片耳が聞こえない。
 でもせっかくだから、変な液のせいにしちゃおうっと。

 この時の俺は、その場をのた打ち回るばかりで、リアクションのことしか考えていなかった。

 家に帰ってシャワーを浴びると、撃退液が真価を発揮して、俺はとっても苦しむことになる。

「目にも来たーッ!」

 痴漢だけは絶対にしないと、したことないのに俺は誓った。

拍手[11回]

2007
August 15

「人数が多いから、1人1人自己紹介してたら、それだけで終電の時間になっちゃう」

 というわけで、自己紹介を割愛するといった異例のスタートを切る。

 今回のオフ会も、毎度お馴染みのバーに場所をお借りした。
 ありがたいことに参加者様が集まってくれたので、イージーバレルは超満員で、マスターが忙しそうだ。

 俺は主催者ということで、何かとうろちょろする。
 なるべく参加者様全員とお喋りしたかったからだ。

「みんな飲んでますか? ところで、この中でさ、『自分は遠くから来ました』って方、いらっしゃる?」
「僕、福岡から来ました」
「福岡って何県?」

 言葉に詰まらせるような質問を投げかける31歳。

「何県っていうか…。九州です。博多」
「そう言ってくれたら解る! ラーメン売ってる町でしょ?」

 ラーメンぐらいどこでも売ってる。

「地理でいえば、九州大陸の右上だよね?」
「ええ、そうです」

 九州を大陸扱いしたことはスルーされた。

「あの、めささん。スイカを用意してきたんですけど」

 その青年は、抜き手によるスイカ割りが見たいのだと言う。

「じゃあ割りますか。店内でやると床を汚しちゃうから、見たい方は表までご足労願いまーす」

 ところがどっこい、俺はこのスイカ割りを失敗させてしまった。
 スイカに刺さった指は、果肉を貫通させるまでには至らなかった。

「抜き手を失敗したの、初めて…」

 ショックの色が隠せない。
 すると他の参加者様が、俺のリベンジにと、わざわざ近所から新たにスイカを買ってきてくださったではないか。

「めささん、これ」
「わざわざ買ってきてくれたの!? ありがとう! じゃあ今度こそ割るよ! みんな、スイカ割りのリベンジしまーす! 見たい方は、もう1度表まで出てくーださい!」

 2度の失敗は許されない。
 ミスったら、すっごくカッコ悪いからだ。

 俺はスイカを地面に置き、指を伸ばして揃える。
 気を集中させ、野菜相手にマジになる。
 目をカッと見開き、割りますと宣言をした。

 ところがです。
 このスイカは、めっちゃ硬かったのです。
 思わず敬語で書いてしまうほど、バツが悪いことになりました。
 スイカは、どんな角度から見ても無傷でした。

「こんなの割れない! 無理!」

 とても武道の心得がある人のセリフとは思えない。

 とにかくスイカは、マジで硬かった。
 ガタイの良い友人に思いっきりチョップしてもらっても、ちょっぴりヒビが入っただけだ。
 間違いなく、浜辺でやる普通のスイカ割りでも割れないタイプのスイカであろう。
 この頑丈さなら、サッカーぐらいできるんじゃないか?

「まさか、スイカ相手にマジになる日がくるとはな」

 カッコイイんだか悪いんだか判らない言葉を口にする。
 俺は本気のレベルを「対野菜用」ではなく、「ライバルと組み手をするとき用」にまで引き上げて、結局は手刀で武道家泣かせなスイカを分断した。

 なんか、めっちゃやるせない気分だ。

 店内に戻ると、皆それぞれが会話に花を咲かせていて、大きな輪や小さな輪が完成されている。
 なかなかの盛り上がりだ。
 爆笑の声が何度か起きていた。

「お前たちー! 俺がいないのに、なんでみんな楽しそうにしてんの!? 誰のオフ会か言ってみろォー!」

 どこまでも器のちっちゃい主催者である。

「あの、めささん?」

 ん?

「めささんは、浴衣は着ないんですか?」

 それは、男性用の浴衣のことでしょうか。

「ううん。女の人用の浴衣。着てくださいよー」

 俺はもちろん、何度も嫌がりました。
 思わず敬語で書いてしまうほど、とっても恥ずかしいことじゃないですか。
 それなのにこの女子は、わざわざトイレで着替え、自分の浴衣を俺のために準備してくださったのです。
 頼んでもいないのに。

「着ないってば! だって脱ぐ頃になったら、きっと俺は酔ってるんだよ? 自分じゃ脱げなくなっちゃう」

 浴衣が脱げなぁい。
 なんてことになってしまう。

「いいから着てくださいよー」
「そうだそうだー」
「ゆーかーた! ゆーかーた!」

 なんか浴衣を着ろ派の人が増えてる。
 必死の抵抗もむなしいことになるに違いない。

 俺は腹を決めた。

「じゃあ、着るけどさ。脱ぐとき俺がホントに酔ってたら、脱がせて。帯を引っ張って俺をクルクル回して。殿みたいに脱がせて」

 今宵の俺も、絶好調に情けない。







 浴衣を着れば化粧をされる。
 俺がばっちり気持ち悪いことになった。

 そんな時に限って、奴は現れる。

 中学からの腐れ縁で空手のライバルでもある、トメだ。

「うおおー! 本物のトメさんだー!」
「マジ!? 本物!?」

 皆さん喜んでいらっしゃるが、俺としてはトメに女装した今の姿を見られたくない。

 トメは後輩と一緒だった。
 その後輩というのが、俺と同じ会社で、空手部時代からの後輩だったりする。
 やっぱり今の姿を見られたくない。

 俺は顔を伏せ、完璧に気配を殺した。
 俺クラスになると、一瞬にして存在感を消すことが可能なのである。

 トメが口を開いた。

「おいオメー、気持ち悪い格好すんなよ」

 気配を消してるそばから発見される。
 さすがは俺のライバル。
 察知能力がもの凄え。

 後輩は背後から、俺の肩を叩いた。

「もう先輩とは思いませんよ」

 なんでそう簡単に見つけるの?

 俺はお酒を飲むことにした。

 輪の1つに入り込む。

 至福の瞬間だ。
 私服の瞬間はいつくるのだろうか。
 しかし楽しいものだ。
 参加者様たちと、俺は様々な話をさせていただいた。

 トメと釣りに行くと何故かフグしか釣れない。
 そんなエピソードを語っていて、思いつく。
 せっかくトメ本人がいるのだから、これを利用しない手はない。

「おーい! トメー!」

 悪友を呼び寄せる。

お前が幽霊に蹴り入れたときの話、してくれよ」

 以前に書いた出来事だけど、それを読むのと体験者本人から語られるのとでは、また違いがあるであろう。

 なんというかトメは以前、金縛りを筋力で解いて、子供の幽霊に蹴りを入れ、壁まですっ飛ばしたことがあるのだ。
 その話を皆に聞かせてやりたかった。
 あんなに笑える霊体験、滅多にない。

 トメは意外にも、お喋りが上手だ。
 淡々と語り、何気に説明も細かく、つい聞き入ってしまう。
 この日もトメは、初めて聞く者にも解るように丁寧に状況を説明していた。

 俺に話してくれたときよりも、ずっと丁寧だ。
 なんでだ。
 そんな話、今まで知らなかった。
 なんて部分が多々あった。
 やるせません。

 ところで俺は、いつになったら浴衣を脱げるのだろうか。

 オフ会は朝方まで続く。
 まだまだ酒席はこれからだ。

拍手[4回]

2007
August 14
 メリケンサックが出てこない。
 そのことが俺たちを困らせている。

「拳に、こう装着する感じの武器、あるじゃん。鉄のやつ」
「ああ! あの、なんか、殴られたら痛い感じの!」

 俺もマスターも「メリケンサック」という名称を忘れ、オリジナルの手話みたいな様子のおかしい動作で誤魔化しながら会話を成立させている。

 イージーバレルはバーなのに、なんでメリケンサックなどという物騒な話題になったのか。
 よくわかんないけれど、とにかくもどかしい。
 メリケンサックという単語が、どうしても思い出せない。

 マスターも、俺と同じようなジレンマに陥っているようだ。

「確か、簡単な単語を2つ組み合わせたような名前だったよね?」

 ですね。
 何とかナックル、とかじゃなかったでしたっけ?

「ナックルかあ。そうそう、そんな感じだよね。メキシコナックル?」

 なんでメキシコ?

「だってメキシコ人が持っていそうじゃない」

 メキシコ人が持っていそうなのは、ちっちゃいギターですよ。

「そうかあ。メキシコじゃないかなあ。じゃあ、フレンチナックル?」

 軽くない。
 あんなの付けたら、むしろパンチ重くなりますって。

「確かに。う~ん」

 あ!

「ん?」

 思い出しました!
 メリケンサックだ!

「ああ、サックね!」

 知り合いの外人みたいに言わないでください。
 でもそう、メリケンサックだー。
 やっと思い出せた。

「ほら! やっぱりメキシコっぽいじゃん」

 えっと、どこがでしょう?
 ってゆうか、アレってそもそも、なんでメリケンサックっていうんでしょうね?
 メリケンって何だろ。

「メリケン粉のことを考えたら解りそうだね」

 ほう。

「メリケン粉って、アメリカ産の小麦粉でしょう? だから本当は『メリケン粉』じゃなくて『アメリカン粉』だったんだろうけど、当時の日本人が『アメリカン』を『メリケン』って聞き取っちゃったんだろうね。それで『メリケン粉』って呼ばれるようになったんじゃないかな」

 なるほどー!
 確かに発音良く『アメリカン』って言われたら、メリケンって聞こえる!

「でしょう?」

 じゃあ、メリケンサックも、本当はアメリカンサックなわけですね。

「だと思うよ」

 いよいよメキシコ関係ない。

「ちッ! 仕方ねえ。認めてやるよ」

 バーのマスターが、江戸っ子口調で上から目線なのは何故!?
 だいたい、メリケンのウンチクが言えるほどなのに、なんであれほど「メキシコに関係ある」みたいな顔してたのー!?

 今宵もイージーに笑い声がこだまする。

 明日やるオフ会の打ち合わせが目的だったのに、なんで武器の話題で盛り上がったんだ俺たち。

拍手[2回]

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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
 それでもいいのならコチラをクリックするとメールが送れるぜい。

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 必要なものがあったら遠慮なく気軽に、どこにでも貼ってやって人類を堕落させるといい。
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