忍者ブログ

夢見町の史

Let’s どんまい!

  • « 2024.05.
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • »
2024
May 21
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2007
October 14

<羅生門・俺の記憶>



 夜中にお侍さんが歩いています。
 寝泊りする場所を探しているのでしょう。
 いつしかお寺の前で、彼は立ち止まりました。

 羅生門と呼ばれる大きな門をよじ登り、寺の境内へと忍び込みます。
 するとそこには、お墓を荒らす婆さんの姿が。

 夜中のお婆は超怖い。

 ところがこのお婆さん、亡霊でも幽霊でもなく、生きた人間の細胞で出来た老女のようです。
 墓を荒らしたのは、どうやら土葬された遺体から髪の毛を取っていたのでした。
 髪の毛はこの時代、売ることができたからです。

「とう!」

 意味は解りませんが、いきなりお婆に斬りかかるお侍さん。
 何が気に喰わなかったのでしょうか。
 とにかく老婆をやっつけました。

 お婆さんを斬り捨てると、お侍さんは寺から脱出。
 再び羅生門をよじ登って、闇夜に消えていきました。

 ってゆうか、お婆はどこからどうやって境内に忍び込んだのでしょうか。
 羅生門って、実は開いてたんじゃないのか?

 侍の動機も解らん。

 せっかく夜露をしのげる場所まで来たのに、なんでババアにキレる?
 斬ってどうする。

 謎は深まるばかりでございます。

 


 


<羅生門・悪友トメの記憶>



 見つけたのは黒髪の墓泥棒。
 このババア、叩き斬ってくれる!

 羅生門の上でバトル開始!

※なんでそんな不安定な場所で戦い始めたのかは不明です。

 くッ!
 この婆さん、なかなかやりやがる!
 手こずるぜ!

※刀を持った侍と、素手の老婆が何故か互角。

 仕方ねえ!
 こっちも援軍を呼ぶしかねえ!

 おーい!
 みんな来てくれー!

※侍としてのプライドはないのでしょうか。

 おらァー!
 うらァー!
 どっちきしょうがーッ!

 うお!
 この婆さん、俺たちに殺されかけた恐怖で、髪が一気に真っ白になっちまった!
 すげえ。

 何はともあれ、大勝利だぜ。

※果てしなく卑怯です。


 



めさ「そういう話だったっけ?」

トメ「おう。すげえインパクトだったぜ、白髪になるシーン」

めさ「シーンってお前、小説の話だよな? 芥川龍之介が書いた、羅生門の」

トメ「おう。羅生門だよ~」

めさ「羅生門って、アクション巨編だったっけ?」

トメ「知らねえけど、なんか戦ってたぜ?」

めさ「いや、そうかなあ? 俺の記憶だと、一方的にバッサリやっちゃってた気がするけどなあ。だって相手、お婆さんだぜ?」

トメ「じゃあなんであの侍、仲間なんて呼んだんだろうな~?」

めさ「それは最初から呼んでねえんじゃ? だいたいどうやって呼ばれたんだよ、侍軍団は? どこに待機してたんだ?」

トメ「詳しくは知らねえよ」

めさ「くっそう! こんなことなら、中学の時の教科書、ちゃんと読んでおけばよかった! 真相が気になる!」

 謎は深まるばかりでございます。

拍手[2回]

PR
2007
October 13

 ブリ大根という料理があるのだそうだ。
 31年間生きてきて、初めて知った。

 友人が電話で、こんなことを言い出した。

「今夜はブリ大根を作る」

 ブリ大根?

 思わず耳を疑った。

 ブリ大根を作るだって?
 どうやってだ?
 バイオテクノロジー?

 そもそも何だ、ブリ大根って。

「がはははは! 我輩はブリ大根! 全ての大根畑に海水をかけてやるブリー!」

 おのれブリ大根!
 地球を滅ぼすつもりかーッ!

 みたいな感じだろうか。
 どうして畑に海水をかけると地球が滅びるのだろうか。

 いや、職業主婦の友人が作るのだ。
 悪の怪人ではあるまい。

 では何だろう。

 ブリ大根。
 ブリ大根。
 ブリ大根?

 ブリと大根をどうしたいのだ。
 戦わせるのか?

「なかなかやるじゃねえか、大根よ」
「貴様もな、ブリ」
「次の技が受けられるかな?」
「何!?」
「喰らえ! エラ呼吸のワルツ!」
「ぐわあ!」

 何故ダメージを?
 地上で戦わないと、大根が不利ということか。

 いや、真面目に考えよう。

 ブリ大根。

 推理をすれば、それが料理なのだということは解る。
 しかし、なんでブリ大根?
 どうして素材名だけで料理名を完結させるのだ。

 サバの味噌煮だったら、サバをどうしたいのか解る。
 サバを味噌で煮る気満々だ。

 じゃあ、ブリ大根は?
 ブリと大根をどうしたいのだ。

 実は正式名称が「ブリと大根のミラノ風カプレーゼ」とかじゃないのか?
 それを略して「ブリ大根」なんじゃないのか?

 友人が、俺の問いに応じる。

「違うよ。ブリ大根はブリ大根だよ」

 こんなに難しい問題は初めてだ!
 まさかのミステリーにも程がある!

 ブリと大根だぞ!
 何の共通点もないじゃないか!
 そんなブリと大根を、お前らは一体どうするんだ!
 煮るのかよ!?

「煮るんだよ」

 煮るのかよ!?
 ブリ大根の一言から、どうすればそれが判明するんだよ!?
 調理法を端折るなよ!
 だいたい俺、ここまで「ブリ大根」って打つ日記は初めてだよ!

 ブリ大根の名づけの親の人!
 もうちょっと気合い入れて命名しろよォ!

 なんか納得いかない。

拍手[3回]

2007
October 11

※前半はコチラです。

 大人たちは公園で大はしゃぎだ。
 サイズの小さい子供用のアスレチックに2つの意味でハマったり、長い滑り台を本気で滑ったり、ブランコが空くのを待ったり、池にざぶざぶ入ったり。
 約1名、男なのに何故かメイクしている奴もいる。

※主催者(最年長)です。

 おっと、いけない。
 もうすぐ日が暮れてしまうではないか。
 いよいよ告白タイムだ!

 全員に集合してもらう。
 赤い名札チームには男女別に、1列に並んでいただいた。

 男子は1名ずつ、お好みの女子の前まで歩いていただき、告白をしてもらうわけだ。
 きゃー。

 見守るチームも俺も、なんかどっきどきである。

「めささん!」

 告白を待つ列から、女子の声。

「めささんに告白したら駄目なんですか?」

 まず、意味が解らなかった。

 今回の段取り的には、女子は告白をされる側である。
 あと、俺は司会みたいな役割であって、恋愛フリーチームの一員ではない。

「駄目なんじゃないかな。俺、告白なんてされたら、鼻の下伸ばして英語の教材を買わされちゃいそうだし」
「えー! あたし、めささんに告白する気で来てたのにー!」
「あたしも!」
「あたしも!」

 おいおい。
 フッ!
 マジかよ。
 そりゃ君たちの気持ちは嬉しいさ?
 ベイベー。
 でも見て、俺の瞳。
 マジでどうしたらいいのか解らない顔になってるだろ?
 英語の教材をそんなに売りたいのかい?
 俺は貧乏さ。

「そうじゃなくって、めささんに告白ー!」

 駄目だ!
 嬉しいから列に戻ってくれ!
 俺が正気を保っているうちに早く!
 早くしないと、俺が立場を利用して、彼女たちを作っちまう!
 教材は、買うとしたら、ローンって組めますかね?

 強引に女子たちを元の配置に戻し、いよいよ告白タイム開始である。

 1人目の男子が、女子の並びに向かってゆっくりと歩を進める。
 と思ったら、途中でコース変更してこっちに来た。
 俺の目の前で止まると、彼は「めささん、俺」と言った。

「ちょっと待ったァー!」

 数々の野太い声が響き渡る。
 なんと男子全員がまさかの「ちょっと待ったコール」だ。

 全員が敵を見つけた兵士みたいに、俺を目指して猛ダッシュしてくる。

 お前たち!?
 男だろ!?
 俺も男だ!
 このイベントのコンセプト、意味解ってる!?
 恋愛って文字を書いてみろォー!

「ちょっと待ったァー!」

 女子たちも、「その獲物は我が軍の物である!」といわんばかりに走り出す。

 左からは男子たちが。
 右からは女子たちが。
 アマゾン川に肉を落としたときみたいなことになっている。
 集団のピラニアが一気に、俺目がけて走ってくる。

 圧巻だ。
 ハルマゲドンってこういう感じなんだ。

 今までの人生の記憶が走馬灯のように駆け巡った。

「やかましいわァ!」

 俺は大声で駄々をこねた。

「なに男子、照れてんだよーう! しっかり女子ンとこ行けよー! 女子たちもよォー、俺は不参加だって書いてあったじゃねえかよー! 俺がやりたいのは、そういうことじゃないじゃんかよー! オイシイけどさー!」

 芝生の上で寝転がり、手足をばたばたさせる31歳。

「やーりーなーおーしー!」

※最年長です。

 最初の彼が歩き出すところからやり直し。
 彼はとぼとぼと歩きながら、俺の顔をちらちらと見ていた。
 目が合う度に「ダメッ!」とお姉さんみたいに叱っておいた。

「あ、あの、よかったら、お友達に、なってください」

 うつむきつつも、手を差し出す彼。

「…はい」

 彼女はそっと、手を取った。

「おおー!」

 歓声が沸く。

「ちょっと待ったー!」

 今度は俺からの「ちょっと待ったコール」だ。

「オメーら、最初からお友達じゃねえかよー!」

 なんで今さら友達契約を結んでいるのか。

「やっぱりあたし、めささんがいい!」
「あたしもー!」
「俺も!」

 なんで「俺も」って声が混じってんだよォー!
 おかしいだろ、性別がよォー!
 幻聴じゃないって解ってるから、余計にブルーだよォー!
 俺は本来、モテないネタを書いてる瞬間が最高に輝いているんだよォー!
 営業妨害だ!

 恋愛フリーチームに再度囲まれ、俺は再び地面に寝転がる。
 ぶつかったサッカー選手みたいにゴロゴロ転がりながら、「つーまーんーなーい~!」とジタバタしていた。

 次回やるときは、フリートークの段階からしっかりと緊張を解いてあげなくては。
 それはそうと、何故か恋愛見守るチームのメンバーまで、俺を囲んでいないか?

 これって遠目から見たら、ちょっとした集団リンチみたいなことになっているんじゃないだろうか。

「もういいよう。次回ちゃんとやるから、今日はそろそろ解散しようよう」

 立ち上がって服の埃を払う。

「告白タイムはまとまらなさそうだから、一旦中止にしようね」

 なんで俺が涙目なのか。

「めささん、あの…」

 どこか緊張しているような面持ちで、女子高生の参加者様が俺の前に来る。

「1つ真面目なお願いが」

 フッ。
 どうしたんだい?
 マジ告白かい?

「違います」

 ですよねー。

「あの、言いにくいんですけど」

 うん?

「あのエアコン、持って帰れません」

 ですよねー。

 泣きそうになりながら、エアコンを担ぐ。

 大人たちだけでやる2次会では居酒屋に入る。
 さすがに熱が上がってきたので寝入り、起きたらエアコンだけが置いてあった。

 どう考えても置いてきぼりだ。
 主催者、エアエアコンと同じ扱い。

 なんでだよォー!

拍手[4回]

2007
October 11

「ふぁーははははは! 超楽し」

 我ながら、オフ会の準備をしている主催者の独り言とは思えない。
 どうして若干悪だくみしている小学生みたいになっているのだろうか。

 いや、実際に悪だくみをしているのだから仕方ない。

 10月7日に開くオフ会には、特色がいくつかある。

 日曜の昼から開催し、ノンアルコール。
 読者様が未成年者様であってもお招きできる体制だ。

 恋愛バラエティみたいな感じで「恋しちゃってもOKよ」といった、秋なのに春めいたコンセプト。
 主催者は司会に徹しなきゃ駄目だし、名乗りを上げちゃったら立場的になんかズルいから、自分だけは我慢して見守ることに徹しなくてはならない。
 残念極まりないことである。
 誰も見ていないところで、めっちゃ歯ぎしりをした。

 嫌なプレゼントの交換といった、「地獄の刑ですか?」的なイベントも開催する予定だ。
 これの参加を希望する者には各自、「自分だったら絶対に持って帰りたくない嫌な物体」を持参していただき、みんなで取り替えっこをして、みんなで困ろうといった催しである。
 得する人がどこにもいない。

「がはははは!」

 鬼のお頭もびっくりな大笑い。
 31にもなって、俺はなんて大人げがないのだろう。
 ホントに手加減なしだ。
 壮絶に嫌がられるに違いない土産を、めっちゃ満ち足りた顔して用意しちゃっている。

 こんなの貰うぐらいなら、軽い放射能を浴びたほうがマシである。

 嫌プレゼント交換の希望者が1人もいなかったら、どうしようコレ。
 持って帰るのは本気で嫌だ。
 誰か助けて。
 これを受け取った人に嫌われるのも嫌だ。

 心なしか憂鬱になりつつも、当日を迎える。

 いつものように、会場はイージーバレルだ。
 ほぼ徹夜状態で、マスターが昼にも店を開けてくれた。
 アメリカンバーとはいえ、今日は未成年者様も大勢いらっしゃるのでソフトドリンクしか出ない。

 およそ30名の参加者様には、あらかじめ俺が作っておいた名札を手渡してある。
 自己紹介の割愛にもなるし、何かと便利だからだ。

「皆さん、最初に渡しておいた名札、胸に付けてー!」

 俺が名札に関する説明を始めたのは、乾杯の前だったか後だったか。

「みんな今、めっちゃ綺麗な字で書かれた名札を付けてますね?」

 実際はめっちゃ綺麗な象形文字といったところだ。

「そこには皆さんの名前と、カッコで年齢が記載されています。ただ成人している女性には配慮したので、そこだけは実年齢ではなくて、カッコ大人って書いておいた」

 例外としては、

 めさ(23)

 無理のあるサバ読み。

 参加表明のメールに「永遠の17歳です」と書いてあった女性参加者様には、

 まゆ♪(大人)(永遠の17歳)

 結局年齢不詳みたいな感じにしておいた。

「さらに、赤い名札の方がいらっしゃるでしょ?」

 何名かの名札は、淵が赤いペンによってなぞられている。

「その赤い名札の人が、恋愛フリーの人だー! だから赤い名札の人たちはこっちのテーブルに来て。で、仲良くなるがいい」

 いきなりの席替え。
 恋愛なしチームと、恋愛ありチームに分かれる。

「夕方ぐらいになったら、みんなで公園に行きます。そこで告白タイムだー。ふはは。男子は恋人になってだの友達になってだの、仲良くなりたい人に告るのだ。女子はそれに対して、照れながら『ごめんなさい』と言え」

 なんでだ。

「冗談冗談。女子はOKだったらメアドを教えてあげるが良いですよ。いい? じゃあみんな、ギラギラした目で異性を見て」

 俺は一体何をプロデュースしたいのだ。

「男子も女子も、最初が肝心ですよー。最初だけ優しいんだけど、後で正体を知ってがっかりしてねー」

 人生相談のテレビにでも出させる気だろうか。

「お! そこ! ちゃんと取り皿に料理を取ってあげるなんて、ポイント高い! 他のみんなも、もっといい人ぶって! コツは下心を隠す!」

 さっきから言わんでいい一言が多すぎる。

「それから俺、今ね? 熱あるからー!」

 今それを言って何になる。
 体調管理ぐらいしっかりやれ。

「よーし! いい感じだぞー!(俺の熱が) おっと! もうちょっと男女入り混じって座ってもらおうか」

 合コンだってそこまで分かりやすい気合いの入れ方をしない。

「じゃあ準備が整ったところで、みんな喋って」

 もう無茶苦茶である。

 いきなり知らない異性の隣に座らせられた挙句、主催者から数々の無理難題を押しつけられた恋愛フリーチーム。
 彼らは、「何を喋ればいいんだ」などといった不安げな表情で固まっている。

 なあに、時間が解決してくれるさ。

 さわやかな笑顔で丸投げした。

 俺は色んなところをうろちょろし、好き勝手に挨拶回りみたいなことをする。

「めささん、女装しないんですかー?」
「しませんよう」

「あ、めささん。今回、女装は?」
「しないってばー」

「メイクします? めささん」
「しないしない」

「女装して、めささーん」
「しないっつーの!」

「めささん、女…」
「うっせえ!」

 みんな俺を何だと思っているのだろうか。

 嫌な土産交換では、さすがに皆さん、凝った物を用意しておいでだ。
 交換はくじ引きによって行なわれた。

 見たこともない作家が書いた地味な小説。
 しかも下巻だけ。

 両方のレンズと、耳に架ける棒が1本取れているメガネ。
 もはやメガネじゃない。

 他にもまだまだハイセンスな駄目商品が目白押しだった。

 俺が受け取ったのは、自転車のサドル。
 ところがこのサドル、どこかシャープなデザインである。

「ねえねえ、このサドルって、普通のチャリのやつじゃなくて、なんか凝ったチャリのサドルだよね?」
「うん、そうだよー」
「やっぱり? 高かったんじゃない? いくらした?」
「そんなに高くないよー。5000円ぐらい」

 高えよ。
 サドル2つの値段と、俺のチャリ本体の値段が一致してるじゃねえかよ。

 家に帰ったらサドルを交換しておこう。
 それで俺のチャリの価格は1.5倍だ。
 そう心に決めた。

 俺からのプレゼントを受け取る羽目に陥ったのは、とある女子高生の参加者様だ。
 店の隅からでっかい塊を取り出し、渡す。

「はい、どうぞ」
「え!? これ、何ですか?」
「何に見える?」

 ルームエアコンだった。

 ただのエアコンじゃない。
 電気屋さんで陳列するための、偽のエアコンなのである。
 中身が無い。
 室外機が無いどころか、中身の機械すら入っていない。

「世界一、地球に優しいエアコンさ!」

 満面の笑みで説明をしたら、うら若き乙女はうつむいて、完璧に無言になった。

 ふふ。
 困ってる困ってる。
 そして俺は、やはり嫌われたか。

 俺まで無言になった。
 マジックペンでみんなで寄せ書きみたいにして、さらに捨てられない感じにしようと思っていたけれど、やっぱやめとこう。

「めささん! いいからメイク!」

 何故かキレられたので、俺は反射的に謝る。
 お化粧するぞ、いいから座れ。
 そういう意味らしい。

 また化粧されることになってしまった。

 右のギャルと左のギャルの人が、左右から同時に俺の顔に手を伸ばす。

 ごりごりごりごり。

 なんかアイラインを引く音が凄くないか?
 骨伝導?

 お名前は伏せるけども、右のギャルの人が超怖い。
 明らかに手が震えているのだ。
 1杯やる前だからだろうか。
 マナーモードみたいに震えてる。

「めささん目を開けて。うひゃあ、手が震える! 怖い! 怖い!」

 禁句のオンパレード。
 俺の眼球の運命やいかに。

 最初に触れられたときに「熱ッ!」と叫ばれたが、ストーブほどの熱は出ていない。

「危なっかしい! ちょっと貸して! 私がやる!」

 見かねて、メイク担当者が増えた。

「ここからは大丈夫だから! もう1回あたしにやらせて!」

 あの女が帰ってきた。
 地獄の底から帰ってきた。
 次の犠牲者は誰だ。
 また俺だ。
 悪魔の化粧、顔面の魔方陣――。
 カミングスーン。
 あなたは、この恐怖に耐えられるか…。

「ひゃあ駄目だ手が震える怖い~!」

 怖いのは俺のほうだ。

「これでもあたし、看護士学校に通ってるんですよー」

 衝撃の告白じゃないか。

「人に注射するのが苦手で…」

 言われなくても解る。

「めささん、入院します?」

 君が入院して震えをどうにかしてください!

 そんなこんなで、またしても俺はお化粧されてしまった。
 小奇麗な自分がやたら気持ち悪い。

 この後、公園まで歩かなきゃいけないのに。
 まだ明るいのに、そして地元なのに。

 どうか知ってる人に会いませんように!

 後半に続く。

拍手[4回]

2007
September 01

 うちの冷凍庫には、氷がたくさん収納されている。
 ってゆうか正確にいえば、氷しか入っていない。

 地球の表面約8割が海であるように、うちの冷凍庫の中身8割は氷である。

 友達とお酒を飲むとき、氷をたくさん使うから。
 麦茶を飲むとき、氷をたくさん使うから。

 飲み物を冷たくしたいというだけの理由で、うちの冷凍庫は雪祭りもびっくりの氷フィーバーだ。
 ブロックほど大きい容器に氷を入れ、空いたスペースにはコンビニで買ったロックアイスを袋ごと仕舞っている。

 そのことが、友人のツボを直撃した。

「ふぁーはははは! めさン家の冷凍庫、ははははは! めさン家の冷凍庫、氷しか入ってないー! ははははは!」

 氷だけが。
 氷しかない。
 氷が多い。
 氷の惑星。
 やたら大笑いされる。

「ははははは! しかも! しかもこの容器が! ははははは!」

 氷入れのこと?
 それがどうしたの?

 訊ねると、友は驚愕の事実を口にした。

「めさが氷入れに使ってる箱って、コミック本を入れるための容器だよ? はーははははは!」

 大魔王顔負けの高笑いだ。

 俺としては、ショックの色が隠せない。

 100均で、「こりゃいい氷入れだー」って若干喜びながら買ったのに。
 冷凍庫の中にピッタリと納まることを確認した時は、自分のことを天才だと思ったのに。

 氷入れじゃなかった。
 マンガ入れだった。
 ずっと冷やし続けてた。 

 なんだかやるせなくて、友人に何もかもを告白する。

「冷凍庫の中に元々あった正規の氷入れはね? 俺、実は、ちっちゃいからって即行で捨てたんだ。あれだと、あんまり氷が入らないから」
「がはははは! 氷溜める気満々!」
「ここ数年、俺は何も知らずに、本のために作られた入れ物に、氷をぶち込んでいたんだよ」
「はーははははは! 」
「俺、このこと、日記に書くね」
「うはははは! めさ! それは絶対に、氷入れのことを書いたほうがいいよ!」
「くうッ! ふは! 書く書く! あはは! コミック入れろっつーの俺! 氷入れてどうする! がはははは!」
「あはははは!」
「ははは! ばかだ! ばかだ俺! ふはは! あー」

 ホントばかだ俺。
 なんか涙出てきた。

拍手[5回]

[20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30]
プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
 それでもいいのならコチラをクリックするとメールが送れるぜい。

 当ブログはリンクフリーだ。
 必要なものがあったら遠慮なく気軽に、どこにでも貼ってやって人類を堕落させるといい。
リンク1

Powered by Ninja.blog * TemplateDesign by TMP


Hit

Yicha.jp急上昇キーワード[?]

忍者ブログ[PR]