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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2024
May 21
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2008
February 14
 前編はこちらからどうぞ。



 人生初の和凧は、人智を超えた動きを思う存分に見せつけてくれた。
 スピード感があって斬新で、なおかつ少しも飛ばなかった。

 チーフの手から離された瞬間に凧は、「自分、高所恐怖症ですから」といわんばかりに地球に突撃した。
 地下に潜ろうとしているのかと本気で思ったぐらいだ。
 チーフは一体、何のために足を取り付けたのだろうか。

 この凧を飛ばすぐらいなら、大仏を飛ばせたほうが手っ取り早そうに思える。
 犬の呪いかも知れない。

「いい風吹いてるんだけど、やっぱり和凧は難しいね。もう1回やろう」
「そうだな」

 チーフが再び凧を両手で持ち上げる。
 ヒモを持った俺が、「いっせーの、せっ!」と号令を発し、駆け出す。

 すると今度は、さっきよりも全然バッチリだった。
 さっきよりもバッチリ、素晴らしい速度で凧は落ちた。
 自然落下するよりも早い下降っぷりに驚愕の色が隠せない。

 まるで凧の叫びが聞こえてくるかのようだ。

「俺は大地と共に生きる!」

 見事に飛ぶ気配ゼロだった。

 装飾用の凧だからなのか、単に俺たちのテクニックが足りなかったのか、はたまた犬に呪われているのか。
 とにかくこの凧が宙を舞う様が想像できない。

 たった2回の挑戦だったが、俺たちは容易に結論に達することができた。

「この凧を飛ばすのは不可能だ」
「スー君が持ってきた普通の凧を上げよう」

 役立たずの和凧からヒモだけを回収し、スー君の凧糸にまずは連結をさせることに。
 いつしか凧を持ち上げる係と、凧糸を持って走る係と、地面に落ちている糸を巻いて回収する係とに分担されていた。

 糸の回収役であるスー君が、ここで意外な働きを見せてくれることになる。

「ああ! ああ! ああ! 絡まる~! 絡まる~!」

 冗談かと思って見るとスー君は本当に絡まっていて、何が原因でそうなったのか全く理解できなかった。
 ヒモを芯に巻きつけるだけの仕事なのだ。
 苦戦どころか、絡まる意味が解らない。

「ヒモが! ヒモが! ああ~!」
「どうしてそんなピンチに陥っちゃうのか、意味がわかんねえ!」

 見るに耐えないので、ヒモは俺が回収することに。
 俺がヒモを巻いている間、同時進行で凧揚げも再開することになった。

 チーフが走って、スー君が凧を離す。

 この時、俺的には全米が泣いた。

 なんと、凧が。
 信じられないことに、どういったわけか、凧が、何故か飛んだのだ。
 夢かCGじゃないのか?
 いや現実だ。
 凧が、なんでかよくわかんないけど、飛んでしもうた。

「うおおお!」
「飛んだー!」
「やったー! すげー!」

 重ね重ね言うが、全員30代だ。

 糸を引きながら凧を操って、チーフも満面の笑みを浮かべている。

「俺、今気づいたんだけど、凧揚げやると二日酔いが治る」

 ホントだ!
 と俺も大喜び。

「スー君もやってみるか?」
「やる!」

 今度はスー君が凧を体験する。

「ああ!」

 スー君が叫んだ。

「絡まる~! 絡まる~!」

 凧を上空にやりたかったのだろう。
 でも、何故それで糸と手が絡まって取れないことに?

「絡まるんだよう~」
「君、キング・オブ・不器用だな! 有り得ねえだろ! なんでそうなるんだよ、再びよ!」

 またまた俺はスー君から仕事を奪い取る。

 なんだか、負けた気分がしていた。
 本来なら、俺こそが最も何も出来ないポジションに位置する人のはずなのだ。
 それなのに、スー君のように、無条件で糸が絡まることはない。

 ただひたすら、悔しかった。
 俺以上に簡単なことさえ任せられない人がいるとは夢にも思わなかったからだ。
 完敗だ。
 凧揚げ自体は楽しいので、複雑な心境である。

「なんか、思ってた以上に楽しくないか?」

 チーフは満足気に、「意外とテクニックが要る」などと言って悦に入っている。
 彼の言う通りで、凧は何もしないと勝手に落ちてしまいそうで、ちょくちょく糸を引いたり場所を変えたりと、手間暇かけてやる必要があった。
 ある程度の楽しさは予想していたが、まさかここまで面白いとは思わなかった。

「この凧を持ってきてくれたスー君に感謝だな。俺の凧しかなかったら、もう2度と凧揚げに挑戦しなかった」

 これもチーフの言う通りだ。
 あの決して飛ばない和凧は、飾る専用に作られた物だからなのか、今になって思えば変なところから糸がやたら伸びていて、バランスが取れるとは到底思えなかった。
 和凧のみで挑んでいた場合、きっと俺たちは今頃、マスターを電話で呼び出していたことだろう。

「マスター! 凧が飛ばないの。公園まで来て」

 突然の呼び出しに、凧揚げマスターもさぞかし反応に困ることだろう。

「いや、俺はいいよ、寒いし。凧揚げ、諦めなよ」

 凧揚げのプロからのアドバイスが「諦めなよ」になってしまっては、こちらとしても諦めざるを得ない。 

 普通の、三角の凧を持ってきてくれたスー君は、もっと称えられるべきだろう。

 しかし俺たちは結局、スー君にお礼を言うことができなかった。
 スー君は先ほど、「ちょっと走ってくる」などと突拍子もないことを言い出し、800メートルのマラソンコースを回り始めたからだ。
 せっかく飛んだ凧も涙目だ。

 凧は、ぐんぐんと上昇していく。
 一応、画像にも収めてみた。







 謎の飛行物体みたいなことになっているが、凧だ。

「これさあ」

 チーフも俺と同じく、空を見上げている。

「またやろうぜ? 春ぐらいに」

 とてもさっきまで延期を訴えていた男の発言とは思えない。
 でも、その意見には大賛成だった。

 日が落ちてきたところで、凧をちょっとずつ下ろす。
 最後に凧はふわりと地面に落ちて、俺は「夢をありがとう」とつぶやいた。
 春になったら、また飛ばせてやっからな!

 なあ、スー君?
 と振り返ると、そこには誰もいない。

 スー君は「あー! わんこちゃん!」などと感激して、人様の犬を追い駆け回していた。
 よく走る人だ。

「思ってた以上に楽しかったねー」
「そうだなー」

 スー君がそのままどっかに迷子にならないよう見守りながら、チーフと俺は余韻に浸っていた。

 凧揚げはおそらく、定期的に続けられるに違いない。
 俺は、ちゃんとした凧糸を用意しておこうと心を決めた。

拍手[3回]

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2008
February 14

 凧揚げだったらやってもいい。
 最初にそう言い出したのはチーフだ。
 お正月に遊んでほしくて「構って構って」と駄々をこねたところ、返されたセリフがそれだった。

「たたた、凧揚げ!?」

 隣に座っていたスー君が驚いて、体をぶるぶると震わせた。
 絵に描いたかのようなびっくり具合だ。
 チーフは普段からクールな印象なので、まさか少年心満載に「凧揚げ」とくるとは思わなかったのだろう。
 だからってリアクションが大きすぎだ。

「この歳で凧揚げやったら、逆に面白いと思うんだよ」

 そんなチーフの意見に、俺は瞳を輝かせる。

「やろう! 正月は凧揚げだー!」

 で、何故か2月になった。
 二日酔いだったりテンションが上がらなかったりで、延期になりまくったのだ。

 一応、俺にもチーフにも、やる気だけはあった。
 それは一緒に行くことになったスー君にしても同様だった。

 スー君は姪っ子から凧を貰ってくれていたし、俺も繋ぎ足す用のヒモを大量に準備していた。
 特に、言いだしっぺのチーフが素晴らしかった。
 彼はわざわざ東急ハンズまで足を運び、凧の売り場を訪ねると、そんな物は販売されていないと思い知らされた。
 チーフは結局、壁などに飾る用の和凧を購入したのだそうだ。
 飛ぶのだろうか。

「俺が買った和凧には凧糸が付いてない。めさが用意したヒモと組み合わせて使おう」
「了解!」

 俺が用意したのは凧糸というより、断然に重い作業用の麻紐である。
 そのことだけは当日までの内緒だ。
 でないとまた怒られる。

 そうこうしているうちに、2月の13日。
 起きて俺はチーフに電話を入れた。

 前もって「今日こそは」と決めてあったのだ。
 どんなに二日酔いであろうと、何があっても絶対に、次回こそは凧を上げよう!
 例え風邪で熱が出てしまったとしても、必ず!
 でも雨が降ったら延期ね?

 男らしいのか軟弱なのかよく判らない意思表示も、前日からしてあった。

「もしもし、チーフ? 起きた?」
「なあ、めさ。相談なんだけど、今日はやめないか?」
「駄目! 絶対やるのー!」
「二日酔いが酷いよ」
「やだ! 絶対に凧上げる!」
「だいたい凧揚げって、企画からして良くないよ」
「チーフが言い出したんじゃん! とにかく公園に現地集合ね! 早く来てね!」

 かくして俺は何度も「早くに集合しよう」とチーフに念を押した。
 にもかかわらず、遅刻をしやがった。

 ちなみに、遅刻をしたのは俺とスー君だ。

 だだっ広い公園のベンチで、チーフが寒そうにタバコを吸っている。

「ごめんちょ。待った?」
「おう」

 チーフの足元には、予想より遥かに大きな四角い凧が横たわっていた。
 なんとなく、親愛なるバーの店主を思い出す。

 イージーバレルのマスターは何気に凧揚げの達人で、いつかチーフにアドバイスをしていた。

「和凧は宙でクルクル回っちゃうから、足を2本ぐらい付けておくといいよ」

 ここでいう「足」とは、帯状に切り取った紙のことだ。
 これが凧の下方に付いていると、とっても安定した飛びっぷりを見せてくれるのだという。

 チーフの凧に目をやる。
 アドバイスの通り、いい感じにバランスが取れそうな新聞紙の足が2本、しっかりと装着されていた。

「俺、二日酔いの状態で、起きて5分で工作したのは初めてだ」

 1人黙々と新聞紙にハサミを入れていた33歳。
 お疲れ様です。

 さて。
 公園の、さらに開けたエリアに俺たちは移動する。

「ここでいっか?」
「だねー」

 そこはたまたま、俺の思い出の場所だった。
 数年前に、空手のライバルと決着をつけようと派手に決闘をした場所だ。
 そんな昔話を、チーフに話す。

「こんな人目の多いとこでやったのか。聖戦だな」
「うん。なんかね? ハルマゲドン! って感じだった」

 RPGのような会話をしつつ、まずは和凧に糸、というか、ヒモを取り付ける作業に入る。

「めさ、それは凧糸じゃねえ」
「風の力を信じようよ。なんだかんだいっても、結局は飛ぶって。飛ぶ飛ぶ」
「飛んでんのはお前の頭だ」

 その瞬間、信じられない出来事が発生する。

 そばを歩いていた犬が、いきなり猛ダッシュで駆け寄ってきて、地面に置いていた凧を全力で踏みつけた。
 中型犬による、まさかのサプライズだ。

 犬はかなりのハイテンションで、無駄に絶好調だった。
 俊敏なフットワークで、凧にガンガン蹴りをくれている。
 俺たちに何か恨みでもあるのだろうか。

 犬に言葉が喋れたら、奴は間違いなくこう言っていたはずだ。

「ぜってー飛ばさせねーよ!? 上げるなっつーの! マーキングすっぞコラァ!」

 こんなに酷い仕打ちは初めてだ。

 やんわり撫でて、犬を凧じゃない土地に誘導しようと試みる。
 俺やスー君が手を伸ばすと、犬はそれを素早くよけた。
 どうやら犬は、構ってほしいのではなく、あくまで凧を攻撃したいだけらしい。

 一瞬だけ逃げた犬は、驚くべきスピードで再び凧に飛び乗った。

「どうしても凧を飛ばすというのなら、俺を殺してからにしろ!」

 とんでもない気迫の犬である。

「凧揚げだけは絶対に許さねえ! これでもか! これでもか! ひゃっほーう!」

 人の凧の上で、この犬は実に楽しそうだ。

「ぜってー阻止してやる! たとえこの命に代えてもな!」

 決死の覚悟をもった勇敢な中型犬。

「どかせるものなら、どかせてみな!」

 しかし犬は、飼い主さんに怒られ、どっかに連れ去られてしまった。

「と、とにかく、上げようか」
「そうだな」

 チーフにスー君に俺。
 誰もが30代だ。

 寒空の下、大の大人たちによる凧揚げが始まろうとしている。

「ヒモの取り付け、OK!」
「よし、めさ、走れ!」
「うい!」
「フランス語で返事をするな」

 チーフに凧を構えてもらい、俺はヒモを手に、一気に走り出す。

 後編に続く。

拍手[3回]

2008
January 27

 ったく、冗談じゃない。
 なんなんだ、あの映画は。
 ふざけんな!

 行きつけのアメリカンバー、イージーバレル。
 頼んでもいないのに、マスターがDVDを再生させた。

 邦画「恋空」は賛否両論あるようだが、俺は最初から興味を持っていなかった。
 原作も読んだことがない。
 それなのにマスターが、嗚呼マスターが。

「まあ、見てみてごらんよ」

 仕方ないから拝見させていただいたが、本当に何なんだ、あの映画は!
 文句を挙げたらキリがない。

 まず、キャラ設定に問題ありまくりだろ。
 数々の言動が優しくて恰好良くて、あんな男子がいたら男の俺でもうっかり惚れるわ!
 ばかが!
 同性をときめかせてんじゃねえよ!

 ヒロインもだ。
 切なさや思いやりがウゼーぐらいに素晴らしすぎて、心に染み込んできちまったじゃねえか!
 こんなにも優しい気分になれるとは夢にも思わなかったぜ。
 オメーみてえな女は、俺と結婚でもしてればいいさ!

 で、俳優が美男美女?
 ハァ!?
 ここまできたらもう正直に、あえて言葉を選ばずに言わせてもらうぜ?

 全然お似合いなんだよ!
 このベストカップルが!

 ホントぶっ飛ばしてえ。
 ぶっ飛ばしたくてたまらねえよ。

 テメーらみてえなカップルは、幸せにならねえとぶっ飛ばすって言ってんだよ!
 キュンキュンくるんだよ、胸によォ!

 だいたい、なんでなの?
 なんで何かトラブルがある毎に、俺を頼って来ねえ!?
 何よりもそこが許せねえ!

 いや、キャラだけじゃねえ。
 出演してる役者ども全員に対しても、説教したくてたまらねえよ!

 恥ずかしくねえのか?
 よくぞまあ、あんなにいい味を出せたもんだ。
 演技はまるで成ってないね。
 だって、ちっとも演技に見えなかったもんよ。
 はっきり言ってやる。
 所詮、お前らはただの天才だ!

 で、最高級に駄目だったのは、忘れもしねえ。
 ラストシーン、あれは見れたもんじゃねえ!
 涙で目が霞んで、ちっとも見れたもんじゃなかったよ!

 涙目のまま帰る客のことを、考えたことがありますか?

 っつーか全体的に、ホント駄目。
 理想的すぎて、なんか映画みたい。
 あんな彼氏は彼氏じゃねえ。
 英雄だ!

 ホントにもう、こんな熱い気持ちは久々だろうが!
 だから見たくなかったんだよ!
 ばかが!

拍手[4回]

2008
January 20

 俺はどうやら、王様ゲームというものをしてしまったらしい。
 どうして俺は、そんな人生の大ニュースを覚えていないのだろうか。

 現在、俺は1月から2月にかけて、オフ会を毎週開催させていただいている。
 聞くところによると、甘く切ないちょっぴりエッチなおゲームに興じたのは、新年オフ第1回目でのことだそうだ。

「めささん、王様ゲームやりましょう! やらなきゃ人質の命はない」
「人質って、誰?」
「めささん」

 主催者、絶対絶命の大ピンチである。

「王様ゲームだなんて、そんな! お前たちー! もっと自分を大切にするんだー!」

 甘く強引な誘いに対し、俺は嬉しそうに嫌がる。

「いいから、はい! 割り箸」
「あ、恐れ入ります」

 女性陣の謎の熱意に押されたらしく、結局は囚われの身となったようだ。
 まるで捕虜のような扱いだが、俺はちゃんといいリアクションを取れていただろうか。
 実に心配だ。

 いやん。
 でも、ちょっと待って!
 今はさ、誰もが酔っ払ってるから、王様になった人がとんでもない18禁な命令とか出すかも知れないじゃん?
 だから、どうしても断りたい場合は、ビール一気飲みすれば命令を回避できるようにしよ?

「了解ー。じゃあ、王様の人ー! 誰?」
「あたしだ。じゃあ、1番の人は、自力でピラミッドを作れ」

 お前は本物の王様ですか?
 1人で世界遺産なんて作れるものか。
 ビール飲むからスルーで!

「じゃあ次ね? 2番の人が、3番の人に、ほっぺたをくっつける」

 プリクラ?
 人前でそんなこと…!
 ビール飲むから許して!
 ばかッ!
 ってゆうか、処女か俺は。

「1番と2番が」

 ビールで!

 しゅわしゅわするから飲めないビールを無理矢理に飲み続けたものだから、ただでさえ失っている俺の記憶は、もはや数光年も彼方だ。

 俺としては「オフ会は女性にも安心して来られる飲み会です」と謳っているので、嫁入り前でも後でも、性別を意識させるような催しは、ねえ?
 やらせちゃいけないって思うわけ。
 たぶん、ビールという逃げ道を用意した理由も、女子のためだったと思うわけ。
 その逃げ道を、俺だけが多用するとは思わなかったけど。
 でもさ?
 初めて会った人とキスしろなんて言われたら、女子の人は困っちゃうでしょ?

 そんな折り、心は中2である俺には到底クリアできそうもない命令が発令された。

「1番と3番、キス」

 言ってるそばからキスである。
 間接キッスではなさそうだ。

「ビール!」
「ダメー! めささん、そればっかじゃん」
「だって俺たち、まだ会ったばっかりじゃないか!」
「ゲームなんだから、いいじゃん」
「ゲームだなんて、そんなヒドイ! 遊びだったのね!?」

 男女が逆だ。

 俺はなんか、べろんべろんに酔っているクセに素直じゃないらしい。
 隣にいた青年を捕まえた。

「分かった! 分かったよ! 俺、彼と2人で王様ゲームするよ! 彼とならキスする!」

 一体何が分かったのだろうか。

 ゲームに参加していないのに男から接吻を強いられた青年は、当然のことながら激しく嫌がる。

「なんで俺がめささんと!? 俺、王様ゲームやってないじゃないですか!」
「だって、俺が女の人とチューだぜ? 立場的にマズイでしょ!?」
「いいじゃないですか、してあげれば!」
「したらそんなこと、日記に書けないじゃん!」
「それだけ酔ってれば、どうせ覚えてないから書けませんよ!」
「ですよねー。じゃあ、目をつぶって?」
「嫌ですってば! じゃあって何ですか!」

 どちらもそれぞれの立場上、必死である。

「そんなに俺とチューするのを嫌がるならさあ!」

 俺はさらに妥協し、カウンターで働く店主に指を向けた。

「君とマスターがキスすればいいじゃん!」

 もはや王の命令、そっちのけだ。
 さり気なく自分だけが助かる道を選択してもいる。
 マスターも、いきなり指名されてさぞかしびっくりしたことだろう。

 こうして最終的に俺は全ての命令をビールに変え、王様ゲームの空気を台無しにし、満足して寝たのだそうだ。

 なんか、すっごく損した気分になるのは何故だろう。

※以下、追記。

 参加者の皆さん、いつも先に潰れちゃって、ホントすんません!
 それでも、何度も参加してくださる方もいてて、嬉しいです。
 是非また遊びにきてちょ。

拍手[3回]

2008
January 03

 明けましておめでとうございます。
 皆さんの年明けはいかがでしたでしょうか?

 俺は例年通り、行きつけのバーで年を越しました。
 イージーバレルには、見慣れた面々が楽しそうにお酒をたしなんでいます。

「去年の反省って意味でさ」

 マスターが皆の顔を見渡しました。

「2007年の自分に足りなかったものを、みんなで打ち明けていこうよ」

 昨年の自分に足りなかったもの?
 地位と名誉と富が、俺には全然足りていませんでした。
 足りてないどころか、欠片もありません。
 もはや夢も希望もありません。

「そういうんじゃなくてさ、もっとこう、精神的なもの」

 それで皆口々に、忍耐だとか余裕だとか集中だとか人としての心だとか、真摯に自分を受け止めた上での「自分に不足しているもの」を述べていきます。

「Yさんには、何が足りてなかったと思う?」

 常連の美女、Yさんも回答を迫られていました。
 彼女の声は店内の喧騒に負けてしまい、俺たちの耳には次のように入ってきます。

「私に足りないのは、そうだなあ。放尿かな?」

 確かに放尿って聞こえました。

 これは一大事です。
 嫁入り前の美人が言うに事欠いて、「2007年は放尿が足りなかった」と涼しい顔で公表しました。

 1年間、彼女の腎臓は一体何をしていたのでしょうか。
 ギネスもんです。

 全員、それはもうビックリしてしまい、誰もが「父さんはな、実は母さんなんだ」と言われたかのようなもの凄い形相になっていました。

「わ、Yさん? 放尿は日常的に行おうよ」
「ち、違う! 私そんなこと言ってない!」
「っつーかトイレか病院に行きなって」
「放尿なんて言ってないってば!」
「年単位か…。とんでもないな、それは」
「違うんだったらー!」

 俺は今でも、そばにいた友人が発した一言が忘れられません。

「めさ、『永遠の放尿が始まる』って短編でも書いてあげればいいじゃん」

 始まらねえよ、そんなもの。

 それにしても「放尿」なんてアグレッシブなキーワードだけで盛り上がるバーなんて初めてです。

「Yさん、大胆な告白ありがとう」
「ち、ちが、私は…!」
「じゃあ次の人」

 最後の最後まで、彼女1人だけが、本当は何が言いたかったのかを聞いてもらえていませんでした。

 俺は俺で既に、Yさんの排泄事情とは別のことに好奇心が起こっています。
 みんなに訊ねてみたい質問が思い浮かんでいました。

「ところでみんな、去年の抱負って覚えてる? それってちゃんとクリアできてた? せっかくだから聞きたいなあ」

 自分の中で、非常に興味がある事柄でした。

 Yさんはどうだった?
 去年は、どんな抱負を持っていた?
 話を振ると彼女は、

「私? えっとねえ」

 そこから先は、やはり喧騒にかき消されていて、俺たちにはこう聞こえました。

「去年の抱負は、カタカタいわないこと」

 一体どこの音なのでしょうか。
 彼女の何がカタカタ鳴っていたのでしょうか。

 今までの会話をまとめると、こうです。

「去年の自分に足りていなかったものは?」
「放尿」
「じゃあ去年の抱負は?」
「カタカタいわないこと」

 俺たちはアンドロイドと喋っているのでしょうか。

 またしても、彼女は全員からガン見されていました。

「Yさん、カタカタってそれ、何が鳴ってたの? どこの音?」
「だから、そんなこと言ってないってば!」
「大丈夫だよYさん。俺が知る限り、去年のYさんはカタカタいってなかったよ。大丈夫」
「違うって言ってるじゃん!」
「Yさん、油断するとまたカタカタ鳴るかも知れないから気をつけて」
「油断すると鳴るって何よー! 私は1度もカタカタなんていってない!」

 最終的にYさんは、涙目でした。

 Yさんって何?
 新手の天才?

 彼女が結局、何を言いたかったのかは最後まで解らずじまい。
 前触れなく出現した初謎に、俺たちは頭を悩ませたのでした。
 本人に訊いたらいいのに。

 さて、2008年。
 この1年も、皆さんの何かがカタカタいいませんように。
 そして、余すことなく笑いと幸福に包まれますように。

 この日記をもちまして、親愛なる皆様への新年のご挨拶と代えさせていただきますね。
 めさでした。

 本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

拍手[4回]

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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
 それでもいいのならコチラをクリックするとメールが送れるぜい。

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 必要なものがあったら遠慮なく気軽に、どこにでも貼ってやって人類を堕落させるといい。
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