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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2024
May 21
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2008
March 24

 どうやら俺は日常的にケンタウロスを目撃していたらしい。

 ケンタウロスというのは半獣半人の、神話に登場する架空の生き物だ。
 体が馬で、本来なら首が生えている部分から人間の上半身が伸びている。
 弓を構えている絵が有名で、星座にもなっているから、知らない方は少ないだろう。

 チーム「りんく」の歌姫、ぴぃは、音楽と同時にエロを担当している。
 エロを担当するといっても、誰かに何かをしてしまうわけではないのだけれど、とにかく彼女はエロ担当だ。
 小柄で可愛らしい顔に似合わず、ぴぃは下ネタの王者なのである。
 おかげ様で、俺は何度も「ぴぃ、なんてこと言うのー!」などと赤面し、パーカーのフードを被ってちっちゃくならせていただいている。

 具体的に、ぴぃが何を口走ったのかというと、すみません。
 書けません。

 そんなぴぃから、俺は不思議な質問をされた。

「ねえ、めさ兄。ケータイに、あたしの名前、なんて登録してる?」

 うん?
 以前は「ぴぃさん」って登録してたけど、今は本名で登録してるよ。

「そんなのつまんない! あたしはみんなの名前、肩書きで登録してるのに」

 ほほう、なるほど!
 意味が解りません。

「あたしのことは、『肉欲の妖精』って名前で登録してほしい」

 そんな名前で登録しているのを人に見られたらどうするのだ。

 だいたい、肉欲の妖精って、あんた。
 官能小説のタイトルぐらいアグレッシブな登録名を、どうして自ら考案したのか。
 そんなの、ふさわしすぎるじゃないか。
 ちなみに俺は、日常会話で「肉欲」って初めて聞いた。 

 ってゆうかさ、ぴぃ。
 俺はじゃあ、なんて登録されてるの?

「めさ兄はね、あたしのケータイに『いやんピヨピヨ反応』って登録されてる」

 いやん。

「32歳ピヨピヨ反応にしようか、今検討中」

 なんでリアルな年齢を取り入れる?
 来年はどうするのさ。

「また変える」

 ああそう。

 とそこで、かづき君が起き出す。
 彼は役者と睡眠を担当している。
 爽やかな短髪で、お洒落な髭をたくわえており、中途半端な男前。 

「ねえ、ぴぃ。かづき君は、なんて登録されてるの?」
「かづ兄はね」

 俺はおそらく、次のフレーズを一生忘れない。

「かづ兄は、顔がケンタウロス」

 一瞬にして、俺の中で何かがはじけた。

「がはははは! 顔が、顔がケンタウロス! 確かにかづき君、ケンタウロスみたいな顔してる! ケンタウロスなんて見たことねえけど、似てる~! がはははは!」

 何度も何度も、俺の中で「顔がケンタウロス」という言葉がぐるぐる回る。
 呼吸ができない。
 顔だけケンタウロスって、要するにただの人である。

「ひー! ケンタウロス! あ~はははは! 顔だけて! ケンタウロスの特徴一切ねえ~! あはははは!」

 ケンタウロス本人はというと、どこか寂しそうな顔をしていた。

 ようやく笑い終えた俺も、ふと悲しくなる。
 想像してしまったのだ。

「皆さん、こんばんはー! 肉欲の妖精です!」
「いやんピヨピヨ反応です!」
「顔がケンタウロスです!」

 どう考えても、ケンタウロスが1番オイシイ。

 だいたい2人とも、妖精だのケンタウロスだのと。
 なんで俺だけ伝説の生き物っぽくないのさ。

 いやん。
 ピヨピヨ反応。

拍手[4回]

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2008
March 19
 歌を聴いた時から思っていたことだけど、彼女の前世は間違いなく日本人じゃない。

 部屋の内装も、手料理もエキゾチックだった。

 シンガーソングライターぴぃのお家で、俺たちはご飯をご馳走してもらうことになって、その美味さと飲み物の無さにちょっとした悲鳴を上げさせていただいた。

「美味い!」
「これ、金取れるよ!」
「水がないのは何故ですか?」

 部屋に流れている曲もまた、センスがある。
 歌詞からすると日本の曲なんだけど、俺もかづき君も、聞いたことのない曲調だ。

「これって、ジャンルは何になるの?」

 問うと、ぴぃは「ジャンルってゆうか、ミクスチャー?」と疑問系で応えてくれた。

「やっぱりね!」
「そうだと思った!」

 俺とかづき君は同時に笑顔を引きつらせる。

「さすがぴぃ! いいミクスチャーを知ってるね!」
「俺たち、ミクスチャーに目がなくってさあ!」

 こうなると、もう2度と「ミクスチャーって何ですか?」と素直に訊ねることができない。

 3度の飯よりミクスチャーが好きなどとよく解らないことを言いながら、俺とかづき君の知ったかぶりが続く。

「俺とめささん、ミクスチャーの話だけで朝まで語り合ってましたよね!」

 あー、あの夜ね!
 あの夜は熱く語ったねー!
 俺もまさか、かづき君がミクスチャー好きとは知らなかったから、かなりテンション上がったよ!
 周りの友達に、そこまで詳しい奴がいないからなあ。

「ミクスチャーの話題、普段からしたいんだけど、俺たちのレベルに周りが合わないんですよね」

 そうそう!
 簡単に説明してあげたくても、ついつい専門用語が出ちゃうんだよね。
 でも、かづき君だったら、なんて説明する?

「え!? いやあ、俺はねえ? ぴぃだったら、なんて言う? ああ、 『色んなものを混ぜた感じってゆうか?』 ふうん。まあ、そう言うしかないもんね」

 まあ、妥当な線だよね。

「ですねー。俺とめささんぐらいになると、逆に難しく言っちゃうもんね。それぐらい、俺たちミクスチャーがないと生きられないもん!」

 ホントだよね。
 もうミクスチャーって、俺たちにとって、何なんだろう?
 呼吸?

「むしろ俺とめささんがミクスチャー! ぐらいなもんだからね!」

 上手いこと言うなー!
 さすが!
 じゃあ、せっかくだから、ベテランからミクスチャーの解説をしてあげてよ。

「そこで裏切るんですか!?」

 あ!
 ちょっと待って!
 ここ!
 あ~。
 やっぱ今ンとこ、最高!

「あの、めささん。いつ、やめましょうか?」

 わかんない!

 謎と不思議がミクスチャー。

 色んな意味で、お腹いっぱいになりました。

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2008
March 08

 素晴らしい。
 見事なまでに協調性がない。
 ここまでバラバラなのって、かなり珍しいことだ。

 俺たち3人は、自分らのチームに「りんく」という名前をつけた。
 繋がり、という意味合いだ。

 シンガーの「ぴぃ」は音楽担当。
 彼女はかなりの感覚派だ。

 3人で鍋を囲もうという日、俺は玉子を用意しておいた。
 雑炊のとき、溶き玉子にする用だ。

 するとぴぃは、「ゆで卵を作ってみせる」などと錬金術師みたいなことを言い出し、買っておいた玉子を全て煮た。
 これでめでたく、溶き卵ができなくなった。

「この世の玉子は全て私の物」

 彼女の目は、そう語っていた。

 ちなみに男性陣は、いい感じのゆで卵の作り方を知らない。
 ぴぃに全てを委ねるしかないのだ。

「ねえ、ぴぃ。どれぐらい煮る予定?」
「だいたい4分」

 こうして待つこと15分間、ガスコンロの前で、ぴぃはずっと仁王立ちだった。

 俺の脚本が舞台になった暁には、かづき君が主役を勤めることになる。
 彼は役者を志望している好青年だ。

 毎週のように、俺たちは公演に向けての打ち合わせをしている。
 毎週のように、かづき君はご飯を食べたら満足げな笑顔で寝始める。
 彼は一体、ここに何をしに来ているのか。

「めささん、来週はお好み焼きを食べましょ!」

 お前は何のためにこの世に生まれてきたのだ。

「俺のケータイ見て! この女優さん、可愛いでしょ! 俺、この人といつか共演するのが夢なんですよ。だから、めささんもぴぃも、頑張ってね」

 よし。
 りんくは解散するか。

「おおー! 名作見っけ! めささん! このゲーム、借りてもいい!?」

 りんくって、3人のチーム名じゃないから。
 俺とぴぃのコンビ名だから。

「いや、ホント俺、このゲーム好きなんですよ。貸して~」

 仕方ないなあ。
 ちゃんと返すんですよ。

 すると、かづき君は大喜びで、ゲームソフトの箱だけを大切そうに持って帰った。
 ゲームその物はちなみに、うちのゲーム機本体に差してある。

 彼は自宅で、俺からの悪意を勝手に感じ取り、「関東人、怖い」とつぶやいたのだそうだ。

めさ「ってゆうかさ、俺ら、本当に気が合わないよね。目玉焼きにかけるのがソースか醤油かで揉めるタイプだ」

かづき「いえ? 目玉焼きには何もかけませんよ」

ぴぃ「えええ! 何言ってんの! なんで何もかけないの!」

かづき「かけないって!」

めさ「OK、お前ら! この3人で目玉焼きを食べるのは絶対にやめよう!」

 それでも、3人とも本気ではある。
 酒を飲み交わしながら熱く語り合い、打ち合わせは進行し、かづき君が幸せそうな笑顔で横になる。
 気がつけば、なんとも不思議なことに、空気はただの飲み会に。

 最終的な議題はというと、「来週は何を食べようか」である。
 一体何の集いなのだろうか。

 2人には内緒だが、これでも俺は今、猛烈に困っているのだ。

 来週は、カレーにするべきか、お好み焼きにするべきか。

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2008
February 29
<かづき君の視点>

 全く土俵の違う3人の表現者。
 役者志望の僕、作家志望のめささん、シンガーソングライターのぴぃちゃん。
 このメンバーで、何かできないだろうか。

 最初に言い出したのは、めささんだった。

「例えばさ、ぴぃちゃんの曲を聴いて、俺がそれをイメージした物語を書くとするじゃん。そうすれば、ぴぃちゃんの曲を主題歌にした、俺による脚本で、かづき君が主役の舞台なんて出来るかなあ、って。もし実現したら素敵じゃない?」

 それ以来、3人でちょくちょく集まっては打ち合わせと称した遊びが繰り広げられている。

 今日も、めささんからの着信があった。

「もしもし、かづき君? ハア、ハア」

 ちょっとした変態である。

 どうしたんですか、めささん。
 なんで息切れてはるんですか。

「今、チャリでさあ。後ろにでっかいテレビを積んで走ってるんだよね」

 それは一体、何故に?

「貰っちゃったの。しかも今、向かい風で大変苦しいことに」

 そんなタイミングで電話なんかしなきゃいいのに。
 で、どうしはったんです?

「いやあ、次回の打ち合わせなんだけどね? ぴぃちゃんの曲が本当に素晴らしいんだよ。そのCDをかけながら話をしたいからさ、俺ン家で飲みながら打ち合わせるってゆうのはどうよ? と、思ったわけ」

 ああ、なるほど。
 僕は全然OKですよ。

「おー、そっかー。って、ああッ!」

 どうしました、めささん!?

「テレビが! テレビが! あーッ! いや実はテレビ、自転車の後ろにくくりつけてるんだけどね? それでもテレビが重すぎて、今まさに落ちそうなんだ」

 大ピンチじゃないですか。

「しかも今から最大の上り坂だぜ? 俺は家までたどり着けるのでしょうか?」

 すみません、興味がありません。

「ま、いっか。じゃあ、次はぴぃちゃんに電話しておくよ」

 はーい、了解です。

 電話を切っためささんの吐息は、さっきよりも断然に激しい。



<ぴぃちゃんの視点>

 めささんからの電話を、あたしは取るべきじゃなかったのかも知れない。

「ハア、ハア。ぴ、ぴぃちゃん? 今、ハア、電話、ハア、ハア。電話、平気?」

 かなり興奮している様子が手に取るように解る。
 この人、そういうアレだったんだ。

「あのさ、次回、俺ン家で飲まない? ハア、ハア」

 嫌な予感、というか、いやらしい予感が確実にした。
 この男は息をハアハア切らせながら、あたしを部屋に連れ込もうとしている。

 どう返したらいいんだろうか。

「ハア、ハア、実はね? 今、ちょっと上ってて」

 テンションが?

「ああッ!」

 何をしていれば、そんなに切ない声が出せるのだろうか。
 というか、この人は今、何をしていたのだろうか。

「あ! あーッ!」

 もしかして、果てた?

「ハア、ハア。ぴぃちゃん、ごめん、俺、今、ピンチだから、というか、テレビがもう手遅れだから電話を切るね。ハア、ハア。あの、後でかけ直すから」

 結構です。

 なんというか、色々不安になった。

拍手[3回]

2008
February 16

 違うんです!
 悪魔王子の兄貴は、そんな人じゃないんです!
 そりゃ確かに兄貴はガラが悪いですよ。
 でも人相も悪いんです。

 そんなことをどっかで書いてから数年経った今でも、悪魔王子の兄貴とはちょくちょく連絡を取り合っている。

 兄貴を一言で表すならば、「食物連鎖の上のほうにいる人」だ。
 オーラだけで人を殺せそうな雰囲気をかもし出す男前である。
 情に厚くて意外に涙もろく、気さくで親しみやすいし、冗談も通じる。
 見た目だって怖い。

 悪魔王子という呼び名にしても、あだ名やハンドルネームなどではない。
 本名だ。

※うそです。

 で、そんな兄貴から届いた久々のメールがこれだった。

「めさ、ホッケって魚、知ってる?」

 1行。

 取り合えず、「知ってるっす」とこちらも淡白に返しておいた。

 以前、居酒屋さんで友達がおつまみとして注文したのを、味見させてもらったことがあるのだ。
 魚介類が苦手な俺でも美味しく頂けたので、印象に残っている。
 クセのない焼き魚だった。
 なかなか美味であったことを覚えている。

 再び、俺のケータイが鳴った。
 北海道から、兄貴がさらに返信してくれたのだ。

「横浜にもホッケあるんだ? そっちのホッケって美味い?」
「俺は美味いと思ったっすよ」

 それにしても、なんで兄貴は前触れなしにホッケのリサーチを俺にしてきているのだろうか。

「めさ、ホッケ焼ける?」
「やったことないっすけど、焼こうと思えば焼けそうな気がしないでもない感じがわずかにイケそうっす」
「よし。つべこべ言わず住所を教えなさい」

 なんだかホッケを送っていただけそうな雰囲気になってしまった。
 よく解らない展開だ。

 昔見た映画の、ある場面が脳裏に浮かぶ。
 どこかのマフィアが、殺人予告として、ターゲットの家に死んだ魚を送りつけていなかったか?

「お前をこの魚みたいにしてやるぜ!」

 そういったメッセージである。

 兄貴は一体、どいういうつもりで俺にホッケを?

 ホッケといえば大抵、開きになっているはずだ。
 ひい!

 ホッケを送る。
 開きになっている。
 さらに焼く。

 つまり、こういうことか!

「お前をこのホッケみたいに体かっさばいて、しかも焼いてやるぜ!」

 なんで俺がそんな目に!

 即行で兄貴にメールする。

「いやいや! そんな! とんでもない! 絶対にとんでもありません! いいっすよ兄貴! 俺、実はホッケなんて焼いたことないですし!」

 兄貴!
 お願いですから命だけは!

「駄目だ。焼けるって。自分を信じろ」

 よっ!
 この人殺し!

 覚悟を決め、俺は生命保険に加入していないことを後悔しつつ、泣きながら兄貴に住所をお教えした。

 数日後。

 俺は最高の笑顔で、ホッケを前にしている。

 あれから兄貴とメールを応酬し、ホッケの真意を知ったのだ。

 兄貴は経営者として優秀な人で、今度はホッケの通信販売を始めることにしたのだそうだ。
 最高級のホッケを商品として扱うので、それを食べた人たちから感想を集めているとのことだった。
 要するに、俺もホッケのモニターとして選んでもらえたわけだ。
 よかった、おマフィアなメッセージじゃなくて。

 そもそも、兄貴は信用できる男なのだ。
 それは、兄貴のハンドルネームにもよく表れている。
 本来なら「悪魔王子」ではなく、「悪魔大元帥」ぐらい名乗ってもいい実力者なのだ。
 それなのに兄貴は謙虚だから、「いやいや、俺が大魔王だなんてとんでもない。俺なんてせいぜい王子止まりですよ」とでも思ったのだろう。
 実に低姿勢である。

 それにしてもこのホッケ、身が厚い。
 焼く前から食欲をそそってくれる。
 嬉しすぎて死んじゃいそうだ。

 俺はチーフとスー君を自宅に招くことにした。

 チーフは料理人だし、スー君は食事が趣味。
 どちらも舌が肥えているから、人よりも正確に味の判定をしてくれるに違いない。
 俺は俺で、漫画「美味しんぼ」をたくさん読んでいるから、完璧だ。

 たった1枚の貴重なホッケ。
 グリルで簡単に焼くだけなのだが、念には念を入れ、調理はチーフにお願いをした。

 待つこと10数分間。







 焼きあがったホッケは、この世のものとは思えない出来栄えだった。
 まさに魔界のホッケだ。

「いただきます!」

 3人で同時に箸を伸ばす。

「ん! 美味い!」
「これはいい! 市販のホッケより全然いい!」
「嗚呼…」

 魚特有の変なクセや生臭さが一切ない。
 肉汁を彷彿させる油分がジューシーで、身が驚くほどしっかりと締まっている。
 ほどよく効いた塩分が絶妙で、さらにホッケの旨味を引き出している。
 チーフの焼き加減もいい塩梅で、とにかく美味かった。

 過去、食べ物で感動したことが3回あったが、今日ので4度目だ。
 スー君に至っては、美味しすぎて気を失いそうになっている。

 ただ1つだけ、困ったこともあった。
 こんなことを日記に書いたら、ただのグルメ日記になってしまうではないか。
 兄貴、やはり怖い人だ。

 3人とも夢中になって箸と口とを動かし続ける。
 あまりの幸福感に思わず、俺は卒業式の日に告白する乙女のようになってしまった。

「ホッケ、好き…」

 ライクじゃない。
 ラヴだラヴ。

 そうそう。
 せっかくなので、チーフとスー君にも、このホッケのありがたみを教えなくっちゃ。
 兄貴からの受け売りを、俺はまるで自分の知識のように話して聞かせた。

「ホッケの本場って北海道でしょ? でもね、これは北海道でも滅多に食べられない特上物なんだ。通常のホッケの開きって機械で干して加工するんだけどね、それだと肝心な油分がほとんど飛んじゃうし、身も伸びるんだよ。ところがこのホッケは天日干しっていってね、ちゃんと自然に干してあるんだ。しかも、このホッケの仕入れルートは日本で1ヶ所しかないの。そこと兄貴は提携したんだ。この俺の、兄貴がね!」

 俺と兄貴が実の兄弟みたいな嘘アピールも、ついでだからしておいた。

 どうよ?
 と得意げな顔で2人に目をやる。

「身がしっかりしてるよなあ」
「美味しいなあ」

 チーフとスー君は、ホッケに夢中で俺の話を全く聞いていなかった。

 兄貴、この2人にはマフィア的な意味で死んだ魚を送ってください。

 それにしても、俺が知っているホッケよりも数段美味であった。
 今後は自ら注文しようと兄貴に値段を訊いてみる。

「価格? 1枚につき2000円にしたよ。物が極上物だけに、さすがに普通よりちょっと値が張るけどね」

 身代金より安いじゃないですか兄貴。

 自分へのご褒美として注文したら、今度は誰も呼ばず、独り占めすることにした。

 それにしても本当に美味しかったものだから、オチに困る。
 とにかくホッケを発明した人は天才だ。

拍手[3回]

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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
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