夢見町の史
Let’s どんまい!
January 12
続・永遠の抱擁が始まる 1
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続・永遠の抱擁が始まる 2
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続・永遠の抱擁が始まる 3
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続・永遠の抱擁が始まる 4
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続・永遠の抱擁が始まる 5
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<阿修羅のように3>
木造で、いたるところにガタがきている小さな教会。
そこが私の第2の故郷であり、最も大切な場所だ。
私以外にもたくさんの孤児がいたから、今にして思えば毎日がトラブルの連続だった。
マザーはさぞかし苦労をしたことだろう。
私は、マザーから初めて叱ってもらった日の、あの言葉を忘れていない。
あれは私が教会の世話になってすぐのことで、当事は絶望の只中にいた。
右手と家族を失ったばかりで、自暴自棄になっていたのだ。
「片手だけじゃ生きていけないよ!」
何かの拍子に溜め込んでいた不満が爆発し、幼い私は泣き喚いていた。
他の子供たちにも血の繋がった家族などいないというのに、私は自分のことしか考えていなかったのだ。
「お母さんもお父さんも、妹も弟もいない! あたしは1人で死んじゃうんだ!」
すぐさま、マザーの平手が私の頬を打った。
「家族だったらここにいるでしょう!」
みんなが兄弟だ。
私だってあなたの家族なんだ。
マザーの涙が、そう語っていた。
「家族がいないなんて、もう言わないで」
私が商店から果物を盗んだと誤解をされたときも、マザーは詰め寄る商人たちの前に立ちはだかった。
「この子は絶対に盗みを働きません! 何かの間違いです!」
「でもね、シスター。見たって人がいるんですよ。その子が盗んだのをね」
「では見間違いです! その方に詳しい話を聞いてきてください!」
「いいから盗んだ物を返すか、料金を支払うかしなさいよ」
「ですから、この子は何も盗んでいません!」
「なんで赤の他人をそこまで信じるの?」
「私が信じないで、誰が信じるんですか!」
後日、私に濡れ衣を着せた大人が真犯人だったことが証明される。
いつしか、私はマザーのことを「ママ」と呼ぶようになっていた。
「どこか、掃除などしましょうか?」
クラーク君が小さい体をそわそわさせている。
相変わらず私に対する気遣いを忘れない子だ。
「ありがとう。じゃあ、お仕事お願いするね。お姉ちゃんと一緒に遊んできなさい。子供らしくね」
3人で暮らすようになって、もう半年ほどが過ぎただろうか。
誰の子なのか解らない2人と共に暮らすことに、不安や抵抗はなかった。
マザーが私にしてくれたように、身寄りのない子供がいたら可能な限り引き取って愛情を注ぐのが夢だったし、何よりこの兄弟は素直だ。
むしろ「素直すぎて不気味なぐらい」と表現しても過言ではないだろう。
2人とも、大はしゃぎして食器を割ることもないし、喧嘩をして泣き喚いたりもしない。
家事の手伝いなど、頼んでいなくとも率先して働いてくれる。
つくづく不思議な子供たちである。
「じゃあ公園行こう、クラちゃん!」
少女が手を引き、弟を外に連れ出す。
「馬車に気をつけるのよ」と、私は2人の背中に声をかけた。
玄関が閉まるのを確認し、深い溜め息をつく。
右手が蘇り、子供も2人できた。
ただそれが不穏な噂を呼んでいて、仕事の依頼が今は激減してしまっている。
「あの女は魔女だ。無かったはずの腕も生えたし、子供らしくない子供を匿っている。あの子らは悪魔の使いに違いない」
この噂が尾を引けば、最悪の場合、私たちは火あぶりにされてしまうかも知れない。
何よりも、そんな噂が子供たちの耳に入ることが怖い。
いくら大人びていても、6歳の女の子と3歳の男の子だ。
知れば、深く傷ついてしまうことだろう。
私自身、やはりご近所から様々なことを詮索された。
「ルイカさん、その腕は何故また?」
「よく出来ているでしょう? あるお医者さんから、最高級の義手を作っていただいたんです」
「あの子たちは?」
「親友の子供です。先日不幸があって、親友夫妻が子供を育てられなくなってしまって、引き取ることにしたんですよ。この義手も、医者をやっていたその親友がお礼として作ってくれたんです」
「2人とも、特に男の子、変わった子ですねえ」
「ええ、本当に。でもあの子たちの親は名の知れた天才ですからね。その血筋なのかも知れません」
どこまで誤魔化せたのか、正直自信がない。
私には医者の親友などいない。
かといって本当のことを話せば、2人がさらに追求されてしまうことになるだろう。
魔法のような力を出せと迫られ、たかられてしまうことにもなりかねない。
腕が生えたことは確かに不自然だし、2人の子供もあまり自分たちのことを話そうとはしない。
悪魔の使いだなんて噂に発展することも、解らないでもなかった。
それでも。
常に、マザーの微笑みは私のそばにある。
「私が信じないで、誰が信じるんですか!」
言葉を発し、立ち上がる。
引っ越しの準備をしよう。
お得意様も多いこの町を離れることは痛手だが、次の町でやり直せばいいだけの話だ。
新天地ならば、私の腕が本物であることを隠す必要もない。
子供たちは、私が産んだことにすれば良い。
「ただいま」
「ただいまー!」
玄関が開く。
2人がこれほど早く戻るとは思っていなかった。
クラーク少年が神妙な面持ちをしていることに、ふと嫌な予感を覚える。
彼はうつむき、ゆっくりと私の前まで来る。
「町で悪い噂を聞きました」
「え!?」
不安が的中すると、頭の中から何かが喪失してしまったような感覚に陥る。
たった今、私はそれを味わっている。
少年は「僕らのせいで、すみません」と深く頭を下げた。
「ちょっとなによ急に。何を聞いたっていうの?」
恐れていたことが現実になってしまった。
私にかかっている魔女疑惑。
2人の子供が悪魔の使いという噂。
この兄弟は誰から聞いたのか、知られたくない噂の内容を全て解ってしまった。
「僕らがいないほうがよければ、すぐにでも出ていく所存です」
「何を言い出すの!」
「もちろん噂はどうにかします。今まで、大変ご迷惑をおかけしました」
「ちょっと待ちなさい! 出ていってどうするのよ!」
「そこは心配なさらずに。生活面は大丈夫ですので」
クラーク少年の意志は固そうだ。
自分たちのせいで私の仕事に悪影響があったことを、彼は最も悔やんでいる。
悪魔の使い扱いをされていることには何も感じていないようだ。
そのことが様子から解るから、尚のこと私の心は痛む。
幼子は「役に立つために来たのに逆になってしまった」とか「先見の明がなかった」など、ぶつぶつとつぶやいている。
「もちろん、出ていくといっても2度と会えないわけではありません」
クラーク君は、蒼白な顔色になっていた。
よほど自分を責めているのだろう。
細かく震えてもいる。
「たまにこっそり遊びに来てもいいでしょうか?」
「いいから待ちなさい! 君は何も悪いことしてないでしょう! それに、ここを出て、どこで暮らすのよ!」
「どうにかします。元々僕らには家族もいませんし、身軽なもんです」
「家族だったらここにいるでしょう!」
いつからなのか、涙が止まらなくなっている。
泣きじゃくりながら、私はクラーク君を抱きしめていた。
「家族がいないなんて、もう言わないで」
「了解ー!」
この場にふさわしくない明るい声がした。
お姉ちゃんだ。
「じゃあ、今から全部何とかするね。だから、引っ越さなくても大丈夫だよ」
え?
私もクラーク君もポカンと少女を眺める。
彼女はただ、いつものように無邪気に微笑んでいた。
クラーク少年は確かに子供らしくない子供だ。
でも、本当に人間離れしているのは実は姉のほうだった。
続く。
http://yumemicyou.blog.shinobi.jp/Entry/192/
お祝いのコメントやメッセージを送ってくださった皆さん、本当にありがとうございます。
この場を借りてお礼を述べさせていただきますね。
1人1人に返事ができず、すみません。
お祝い、全て大切に読ませていただきました。
心の篭ったお言葉、本当にありがとうございます!
33歳になっても、子供らしく頑張りまーすよ。
さてさて。
それでは気分を変えて、今度はお祝いを言う側に回らせていただきますね。
1/10 マヨ、誕生日おめでとー!
1/10 ゆきさん、誕生日おめでとうございます!
1/10 つねちゃん、誕生日おめでとう!
1/11 ふみさん、誕生日おめでとうございます!
1/11 ビリーさん、誕生日おめでとうございます!
1/12 Orange Rockさん、誕生日おめでとうございます!
誕生日が俺と同じだったり近かったりで、勝手に親近感を覚えます。
お互い、新しい1年も最高の思い出をたくさん作っていきましょう。
皆さん、お誕生日、本当におめでとうございます!