夢見町の史
Let’s どんまい!
2009
August 26
August 26
今回のキーワードは「座禅」です。
みなさんは経験ありますでしょうか?
あのあぐらの変形みたいな難解な座り方です。
お寺でよくお坊さんがやっているアレですね。
空手道部顧問の先生には夏合宿のときに「心を無にしろ」と意味の解らないことを言われました。
「心を無にする」だなんて今の俺にもできないようなことを、高校時代の俺にできるわけがありません。
おそらく他の部員達にとっても似たような心境だったことでしょう。
顧問のK先生だってお寺の和尚さんじゃないんだから、「心の乱れ」なんて見抜けないはずです。
にも関わらずK先生はスリッパ片手に暗い部屋の中をうろうろしていました。
姿勢が悪くなってくる部員の背を叩く役目なのです。
合宿時、座禅のために割り振られた時間は30分。
その間に姿勢の崩れない奴なんていませんでしたから、皆スリッパで背中を叩かれます。
不意に「パァーン!!」とでかい音が響くので、俺や他の部員はビックリして悲鳴を上げそうになっておりました。
しかし30分もの間、暗くした部屋にただ座って目を閉じているのは正直言って暇です。
そこで妄想開始。
当時は少年ジャンプで「ドラゴンボール」がまだ連載中で、俺は「サイヤ人がスーパーサイヤ人に変身すると金髪になるけど、ただの角刈りになっちゃたらカッコ悪いであろう」などと勝手に想像をし、笑いをこらえるためにプルプルと震え、先生にスリッパで叩かれました。
座禅終了後、俺は同期の悪友と話が盛り上がります。
「座禅の最中よ、笑いこらえンの大変じゃねえ?」
「おう。参っちゃうぜ~。サイヤ人を散髪したトコを想像してたらよ~、たまらず吹き出しそうになって、先生にスリッパで叩かれたよ~」
悪友までドラゴンボールの変な想像に励んでいたことが発覚。
この頃の俺たちにとって座禅とは、笑ってはいけないスリルを楽しむ場であったのです。
ところが卒業後になると立場は一転。
今度は俺たちOBが後輩たちを指導する「監督」という立場で合宿に参加するのです。
ある夏の合宿ではみんな暇だったのか俺も含め、かなりの卒業生が集結しました。
夜は例年通り、座禅タイムです。
今度は俺たちがスリッパ係。
誰かがプルプルしていたら、俺は目ざとく発見するぜ!
座禅の最中は部屋の明かりを全て消しています。
知らない人が窓の外からその光景を見ると、かなりの恐怖であるに違いありません。
ふと目がいった暗い部屋の中にはたくさんの人間が無言で座り、その内4、5人がどういうわけかスリッパ片手に無言のまま行ったり来たりしているんですから。
座禅の最中、外からの悲鳴が聞こえました。
「うわッ! 何かいる!」
「きゃあ!」
「おわ! 人か!?」
「ビックリしたあ、人間だよ人間」
「何かいる!」とか「人間だよ人間」などとコメントされたのは後にも先にもこのときだけです。
俺たち、勝手にビビられてる!
絶対に「こんな多人数で部屋に閉じこもり、電気まで消して何をしているの!? どうして無言なの!?」って思われてる!
恥ずかしい!
そして笑いたくてたまらん!
どうやらスリッパ係になっても座禅の間は笑いに耐えなくてはならないようです。
そんな中、卒業生の1人が後輩に聞こえないぐらいの小声で俺に声をかけてきます。
「めさ! ちょっと来て!」
「どうした?」
「Tの目が開いてる!」
「マジで!?」
おそるおそる後輩Tの顔を覗き込むと、俺はTとバッチリ目が合ってしまったので、フルスウィングでTをスリッパで引っ叩きました。
笑わすな!
それにしても、いつもと違ってスリッパ係が多い今、1人が不穏な動きを取ると、卒業生たちは飢えたピラニアの如くその後輩に襲いかかります。
以下、その時の効果音をどうぞ。
ピクッ!(←姿勢の悪い後輩に気付く卒業生たち)
スタタタタ!(←一斉に走り出す卒業生たち)
スパパパァン!(←気の毒なほど、後輩を皆で叩く卒業生たち)
パァン!(←遅れて来た卒業生のトドメの1発)
この後、後輩に言われました。
「先輩、酷いっすよ~。なんとか笑いをこらえてんのに、先輩たちの笑い声が耳に入っちゃって大変でしたよ~」
俺は、「うるせえ! 座禅の時は目を閉じとけ!」と逆ギレしておきました。
心を無にできるのはいつになることやら。
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みなさんは経験ありますでしょうか?
あのあぐらの変形みたいな難解な座り方です。
お寺でよくお坊さんがやっているアレですね。
空手道部顧問の先生には夏合宿のときに「心を無にしろ」と意味の解らないことを言われました。
「心を無にする」だなんて今の俺にもできないようなことを、高校時代の俺にできるわけがありません。
おそらく他の部員達にとっても似たような心境だったことでしょう。
顧問のK先生だってお寺の和尚さんじゃないんだから、「心の乱れ」なんて見抜けないはずです。
にも関わらずK先生はスリッパ片手に暗い部屋の中をうろうろしていました。
姿勢が悪くなってくる部員の背を叩く役目なのです。
合宿時、座禅のために割り振られた時間は30分。
その間に姿勢の崩れない奴なんていませんでしたから、皆スリッパで背中を叩かれます。
不意に「パァーン!!」とでかい音が響くので、俺や他の部員はビックリして悲鳴を上げそうになっておりました。
しかし30分もの間、暗くした部屋にただ座って目を閉じているのは正直言って暇です。
そこで妄想開始。
当時は少年ジャンプで「ドラゴンボール」がまだ連載中で、俺は「サイヤ人がスーパーサイヤ人に変身すると金髪になるけど、ただの角刈りになっちゃたらカッコ悪いであろう」などと勝手に想像をし、笑いをこらえるためにプルプルと震え、先生にスリッパで叩かれました。
座禅終了後、俺は同期の悪友と話が盛り上がります。
「座禅の最中よ、笑いこらえンの大変じゃねえ?」
「おう。参っちゃうぜ~。サイヤ人を散髪したトコを想像してたらよ~、たまらず吹き出しそうになって、先生にスリッパで叩かれたよ~」
悪友までドラゴンボールの変な想像に励んでいたことが発覚。
この頃の俺たちにとって座禅とは、笑ってはいけないスリルを楽しむ場であったのです。
ところが卒業後になると立場は一転。
今度は俺たちOBが後輩たちを指導する「監督」という立場で合宿に参加するのです。
ある夏の合宿ではみんな暇だったのか俺も含め、かなりの卒業生が集結しました。
夜は例年通り、座禅タイムです。
今度は俺たちがスリッパ係。
誰かがプルプルしていたら、俺は目ざとく発見するぜ!
座禅の最中は部屋の明かりを全て消しています。
知らない人が窓の外からその光景を見ると、かなりの恐怖であるに違いありません。
ふと目がいった暗い部屋の中にはたくさんの人間が無言で座り、その内4、5人がどういうわけかスリッパ片手に無言のまま行ったり来たりしているんですから。
座禅の最中、外からの悲鳴が聞こえました。
「うわッ! 何かいる!」
「きゃあ!」
「おわ! 人か!?」
「ビックリしたあ、人間だよ人間」
「何かいる!」とか「人間だよ人間」などとコメントされたのは後にも先にもこのときだけです。
俺たち、勝手にビビられてる!
絶対に「こんな多人数で部屋に閉じこもり、電気まで消して何をしているの!? どうして無言なの!?」って思われてる!
恥ずかしい!
そして笑いたくてたまらん!
どうやらスリッパ係になっても座禅の間は笑いに耐えなくてはならないようです。
そんな中、卒業生の1人が後輩に聞こえないぐらいの小声で俺に声をかけてきます。
「めさ! ちょっと来て!」
「どうした?」
「Tの目が開いてる!」
「マジで!?」
おそるおそる後輩Tの顔を覗き込むと、俺はTとバッチリ目が合ってしまったので、フルスウィングでTをスリッパで引っ叩きました。
笑わすな!
それにしても、いつもと違ってスリッパ係が多い今、1人が不穏な動きを取ると、卒業生たちは飢えたピラニアの如くその後輩に襲いかかります。
以下、その時の効果音をどうぞ。
ピクッ!(←姿勢の悪い後輩に気付く卒業生たち)
スタタタタ!(←一斉に走り出す卒業生たち)
スパパパァン!(←気の毒なほど、後輩を皆で叩く卒業生たち)
パァン!(←遅れて来た卒業生のトドメの1発)
この後、後輩に言われました。
「先輩、酷いっすよ~。なんとか笑いをこらえてんのに、先輩たちの笑い声が耳に入っちゃって大変でしたよ~」
俺は、「うるせえ! 座禅の時は目を閉じとけ!」と逆ギレしておきました。
心を無にできるのはいつになることやら。
2009
August 26
August 26
ある秋のこと、高校2年生になるめさは空手の早朝練習を終え、教室に向かっていた。
トメの野郎、昨日も練習サボった挙げ句、今日の朝練までバックレやがった。
そのようなことを考えつつ、めさは下駄箱に向かう。
前日、めさはトメの靴の裏に接着剤を塗り、その靴を下駄箱の中に固定して帰っていた。
まずはトメの下駄箱を開けて中を確認する。
悪友の靴がまだそこにあるのか、それとも見事に回収されてしまったのかが気になったのだ。
下駄箱の中には、靴底だけがベットリと貼り付けられていた。
「ふははははは! あの馬鹿力め! 靴を無理矢理剥がそうとして失敗してやんの! スッキリしたわ!」
めさは自分の仕事に満足していた。
続いて、めさは自分の下駄箱にも目をやる。
「なに!?」
思わず声が出る。
めさの下駄箱には南京錠がかかっていた。
もちろん、鍵はどこにも見当たらない。
「トメの野郎ォ!」
めさが犯人を割り出すのに要した時間は2秒で済んだ。
話はさかのぼり、前日の放課後。
何故か片足に壊れた靴を履いているトメは、ジンと共にめさの下駄箱に南京錠をかけた。
「よし! これでいいだろ~」
どこか嬉しそうにトメが言う。
「ジン~、この鍵どうするよ~」
めさに与える精神的苦痛を少しでも大きくしておきたい。
ジンは応じた。
「グランドにでも投げれば?」
「いいアイデアじゃねえかよ、オメーよ~」
トメは校庭まで足を運ぶと、力いっぱい鍵を投げた。
「飛んでけ、俺たちの青春!」といった感じだ。
これでめさの下駄箱にかけられた南京錠の鍵は誰にも見つけられない。
トメとジンは満足気にその場を去った。
話は戻り、めさの下駄箱の前。
いつものトラブル対策にと、めさが持ち歩いている多機能ナイフにはヤスリもある。
めさはこれを使って、一生懸命に南京錠を削っていた。
しかしこの南京錠、そう簡単に削れるものではなく、削っている間にめさは下級生や教師に声をかけられる。
「めさセンパーイ! おはようございまーす! 何してるんですかぁ?」
「いや、ちょっとね。いつものことだよ」
「お~い! めさー! もうホームルーム始まるぞー! お前、何やってんだ?」
「あ、おはようございます。何でもないです。すぐに行きます!」
めさは心中、「接着剤はまだあるな」と考えていた。
この件を境に、3人の間では地獄の様相を呈した報復合戦が始まることとなる。
めさはトメの靴の中にも接着剤を忍ばせたので、トメは靴も、靴下も脱げなくなっていた。
ジンはめさの弁当を無断で奪い、トメに渡す。
トメは受け取ったそれを全て胃に収めた。
友情って何だろうか。
トメの野郎、昨日も練習サボった挙げ句、今日の朝練までバックレやがった。
そのようなことを考えつつ、めさは下駄箱に向かう。
前日、めさはトメの靴の裏に接着剤を塗り、その靴を下駄箱の中に固定して帰っていた。
まずはトメの下駄箱を開けて中を確認する。
悪友の靴がまだそこにあるのか、それとも見事に回収されてしまったのかが気になったのだ。
下駄箱の中には、靴底だけがベットリと貼り付けられていた。
「ふははははは! あの馬鹿力め! 靴を無理矢理剥がそうとして失敗してやんの! スッキリしたわ!」
めさは自分の仕事に満足していた。
続いて、めさは自分の下駄箱にも目をやる。
「なに!?」
思わず声が出る。
めさの下駄箱には南京錠がかかっていた。
もちろん、鍵はどこにも見当たらない。
「トメの野郎ォ!」
めさが犯人を割り出すのに要した時間は2秒で済んだ。
話はさかのぼり、前日の放課後。
何故か片足に壊れた靴を履いているトメは、ジンと共にめさの下駄箱に南京錠をかけた。
「よし! これでいいだろ~」
どこか嬉しそうにトメが言う。
「ジン~、この鍵どうするよ~」
めさに与える精神的苦痛を少しでも大きくしておきたい。
ジンは応じた。
「グランドにでも投げれば?」
「いいアイデアじゃねえかよ、オメーよ~」
トメは校庭まで足を運ぶと、力いっぱい鍵を投げた。
「飛んでけ、俺たちの青春!」といった感じだ。
これでめさの下駄箱にかけられた南京錠の鍵は誰にも見つけられない。
トメとジンは満足気にその場を去った。
話は戻り、めさの下駄箱の前。
いつものトラブル対策にと、めさが持ち歩いている多機能ナイフにはヤスリもある。
めさはこれを使って、一生懸命に南京錠を削っていた。
しかしこの南京錠、そう簡単に削れるものではなく、削っている間にめさは下級生や教師に声をかけられる。
「めさセンパーイ! おはようございまーす! 何してるんですかぁ?」
「いや、ちょっとね。いつものことだよ」
「お~い! めさー! もうホームルーム始まるぞー! お前、何やってんだ?」
「あ、おはようございます。何でもないです。すぐに行きます!」
めさは心中、「接着剤はまだあるな」と考えていた。
この件を境に、3人の間では地獄の様相を呈した報復合戦が始まることとなる。
めさはトメの靴の中にも接着剤を忍ばせたので、トメは靴も、靴下も脱げなくなっていた。
ジンはめさの弁当を無断で奪い、トメに渡す。
トメは受け取ったそれを全て胃に収めた。
友情って何だろうか。
2009
August 26
August 26
「おいトメ。めさがなんか、下剤持って俺らの周りをウロチョロしてんぞ」
高2の秋によ~、ジンにそう教えられたんだあ。
今は昼休みなんだけどよ~、案の定めさが俺らの教室に遊びにきやがったぜ。
あいつ絶対に今も下剤を持っていやがるよー。
アホだよなあ、アイツ。
昨日ジンに下剤入りのラーメン喰わされたからって、なんで全く同じ仕返ししか思いつかねえんだろうな~。
しっかし苦労したぜ。
ジンの部屋で下剤を粉末状にした時は。
すり潰してる時から既に笑いが止まらなかったよ~。
しかし、めさも可哀想な野郎だぜ。
きっとあの下剤、昨日の帰りに薬局にでも寄って、わざわざ買って来たんだろうな~。
でも、俺やジンがお前ごときに隙を見せるわけねえだろ~?
めさの野郎、一生懸命こっちに声かけてきやがるよ~。
「なあ? お前ら何か飲まねえ?」
「いらねえよ」
「喉乾いてねえの? ジュース奢ってやるよ」
「ああ、解った解った。解ったからよ~、あっちに行ってろよ」
それにしてもめさ、気の毒なぐらいにわざとらしい奴だぜ。
きっと頭ン中必死で俺かジンの飲み物に下剤を盛ろうとしてンだろうな~。
ったく見え見えだぞ、お前よ~。
いいからどっかに行ってろよ。
お!
さあて授業も終わった事だし、今日は部活をサボってジンの家で晩飯でもご馳走になるかぁ。
んでよう俺、靴を履き替えに下駄箱ンとこに行ったんだあ。
でさあ、下駄箱開けて靴を取ろうとしたら、どうやっても靴が取れねえんだよ~。
思わずジンに叫んじまったよ~。
「めさの野郎!」
「どうしたんだトメ?」
「あの野郎! 俺の靴の裏に接着剤塗って、下駄箱ン中に固定していきやがった!」
「は?」
「買ったばっかなんだぜ、この靴よ~。しかもなんで片方だけくっ付けてあンだよ~」
「くうッ! わはははははは!」
「ちきしょうあの野郎ナメたマネしやがって! こんなモンは無理矢理引っぺがしてやるぜ!」
俺さあ、そン時はついつい熱くなってたんだけどよ~、はっきり言って力任せに取るべきじゃなかったよ~。
靴は確かに回収出来たんだけどさあ、靴底だけが下駄箱に残ったまんまだったよ~。
バリバリバリッ!
って凄い音がしてたもんなぁ。
みんなが俺を見てたぜ。
それにしてもめさの野郎!
なかなか面白いマネしてくれるじゃねえか!
この俺様を敵に回して、タダで済むと思ってんじゃねえだろうなァ!
あのヘナチョコ野郎が!
おニューの靴の仇はぜってぇに取るぜ。
取り合えず、俺もお前に味あわせてやるよ。
靴を履き替えられない切なさをな!
明日が楽しみだぜ~!
「3人の邪悪な決意」に続く。
高2の秋によ~、ジンにそう教えられたんだあ。
今は昼休みなんだけどよ~、案の定めさが俺らの教室に遊びにきやがったぜ。
あいつ絶対に今も下剤を持っていやがるよー。
アホだよなあ、アイツ。
昨日ジンに下剤入りのラーメン喰わされたからって、なんで全く同じ仕返ししか思いつかねえんだろうな~。
しっかし苦労したぜ。
ジンの部屋で下剤を粉末状にした時は。
すり潰してる時から既に笑いが止まらなかったよ~。
しかし、めさも可哀想な野郎だぜ。
きっとあの下剤、昨日の帰りに薬局にでも寄って、わざわざ買って来たんだろうな~。
でも、俺やジンがお前ごときに隙を見せるわけねえだろ~?
めさの野郎、一生懸命こっちに声かけてきやがるよ~。
「なあ? お前ら何か飲まねえ?」
「いらねえよ」
「喉乾いてねえの? ジュース奢ってやるよ」
「ああ、解った解った。解ったからよ~、あっちに行ってろよ」
それにしてもめさ、気の毒なぐらいにわざとらしい奴だぜ。
きっと頭ン中必死で俺かジンの飲み物に下剤を盛ろうとしてンだろうな~。
ったく見え見えだぞ、お前よ~。
いいからどっかに行ってろよ。
お!
さあて授業も終わった事だし、今日は部活をサボってジンの家で晩飯でもご馳走になるかぁ。
んでよう俺、靴を履き替えに下駄箱ンとこに行ったんだあ。
でさあ、下駄箱開けて靴を取ろうとしたら、どうやっても靴が取れねえんだよ~。
思わずジンに叫んじまったよ~。
「めさの野郎!」
「どうしたんだトメ?」
「あの野郎! 俺の靴の裏に接着剤塗って、下駄箱ン中に固定していきやがった!」
「は?」
「買ったばっかなんだぜ、この靴よ~。しかもなんで片方だけくっ付けてあンだよ~」
「くうッ! わはははははは!」
「ちきしょうあの野郎ナメたマネしやがって! こんなモンは無理矢理引っぺがしてやるぜ!」
俺さあ、そン時はついつい熱くなってたんだけどよ~、はっきり言って力任せに取るべきじゃなかったよ~。
靴は確かに回収出来たんだけどさあ、靴底だけが下駄箱に残ったまんまだったよ~。
バリバリバリッ!
って凄い音がしてたもんなぁ。
みんなが俺を見てたぜ。
それにしてもめさの野郎!
なかなか面白いマネしてくれるじゃねえか!
この俺様を敵に回して、タダで済むと思ってんじゃねえだろうなァ!
あのヘナチョコ野郎が!
おニューの靴の仇はぜってぇに取るぜ。
取り合えず、俺もお前に味あわせてやるよ。
靴を履き替えられない切なさをな!
明日が楽しみだぜ~!
「3人の邪悪な決意」に続く。
2009
August 26
August 26
「めさー、お前、腹減ってるー?」
高2の秋、悪友ジンが俺にそのように声をかけてきました。
俺は弁当を食べたばかりでしたが、あと3食分は余裕で胃に入ります。
なんかくれるのかな?
ウキウキしながらジンの元へ。
彼は食べかけのインスタントラーメンを手にしています。
「俺さ、さっきラーメン買ったんだけど、お腹いっぱいになっちゃったんだよ。お前コレ、100円で買わねえ?」
「ンだよ、金取んのかよ! 貧乏なんだぜ、俺」
「じゃ、50円でどうだ?」
「誰が喰いかけのラーメンなんか買うか! 自分で買うからいいよ」
「ちッ! しょうがねえなー。じゃタダでやるよ」
マジでー!?
というわけで、俺はジンから喰いかけのインスタントラーメンを入手しました。
まだ半分も残っています。
ジンはなんていい奴なのでしょうか。
それでは、いただきまーす!
妙に苦え。
まいっか!
麺のみを平らげ、俺はご満悦です。
なんか苦かったので、スープまで飲むのはやめておきました。
「ああ! めさ、そのスープ貰ってもいい?」
背後から声に振り向くと、そこには友人Hが物欲しそうな顔をしています。
彼はラーメンのスープに目がないんですね。
「ああスープ? (苦いから)あげるよ」
「おお! ありがとう!」
Hがスープを飲み始める頃、ジンが再び俺を呼びました。
「めさ、さっきのラーメン喰った?」
「ああ、喰ったけど?」
「ふふ。美味かったかよ?」
「いや、なんか苦かったけど」
「ククク。全部喰ったんだな?」
「貴様! 何か入れたな!?」
するとジンは信じられないことを。
「下剤だバーカ!」
なんだってェ!?
「夕べ、トメと2人ですり鉢ですって、粉末状にして持ってきた下剤が入ってたんだよ! さっきお前が喰ったラーメンにはな!」
お前!
そこまでするか!?
あ、いかん!
Hが危ない!
「Hがどうした?」
「Hにあげちゃった。スープくれって言うから残りのスープ、全部Hにあげちゃった」
「じゃあ、あいつも手遅れだ」
こいつ酷え!
Hはなんにも悪いことしてないのに!
俺は一応、Hのところに行って尋ねました。
「H、あのスープは!?」
「え? もうないよ?」
「全部飲んだの!?」
「え? うん、飲んじゃった。苦かったけど。あ! もしかして全部飲んじゃ駄目だった!?」
「ああ、お前がな」
Hは翌日、学校を休みました。
おのれジンの野郎!
よくもHを!
俺は幸いメンしか喰っていなかったから少しは無事で済んだものの。
Hの仇は必ず取るぜ!
無論トメの野郎も同罪だ!
明日が楽しみだぜ!
「トメの邪悪な決意」に続く。
高2の秋、悪友ジンが俺にそのように声をかけてきました。
俺は弁当を食べたばかりでしたが、あと3食分は余裕で胃に入ります。
なんかくれるのかな?
ウキウキしながらジンの元へ。
彼は食べかけのインスタントラーメンを手にしています。
「俺さ、さっきラーメン買ったんだけど、お腹いっぱいになっちゃったんだよ。お前コレ、100円で買わねえ?」
「ンだよ、金取んのかよ! 貧乏なんだぜ、俺」
「じゃ、50円でどうだ?」
「誰が喰いかけのラーメンなんか買うか! 自分で買うからいいよ」
「ちッ! しょうがねえなー。じゃタダでやるよ」
マジでー!?
というわけで、俺はジンから喰いかけのインスタントラーメンを入手しました。
まだ半分も残っています。
ジンはなんていい奴なのでしょうか。
それでは、いただきまーす!
妙に苦え。
まいっか!
麺のみを平らげ、俺はご満悦です。
なんか苦かったので、スープまで飲むのはやめておきました。
「ああ! めさ、そのスープ貰ってもいい?」
背後から声に振り向くと、そこには友人Hが物欲しそうな顔をしています。
彼はラーメンのスープに目がないんですね。
「ああスープ? (苦いから)あげるよ」
「おお! ありがとう!」
Hがスープを飲み始める頃、ジンが再び俺を呼びました。
「めさ、さっきのラーメン喰った?」
「ああ、喰ったけど?」
「ふふ。美味かったかよ?」
「いや、なんか苦かったけど」
「ククク。全部喰ったんだな?」
「貴様! 何か入れたな!?」
するとジンは信じられないことを。
「下剤だバーカ!」
なんだってェ!?
「夕べ、トメと2人ですり鉢ですって、粉末状にして持ってきた下剤が入ってたんだよ! さっきお前が喰ったラーメンにはな!」
お前!
そこまでするか!?
あ、いかん!
Hが危ない!
「Hがどうした?」
「Hにあげちゃった。スープくれって言うから残りのスープ、全部Hにあげちゃった」
「じゃあ、あいつも手遅れだ」
こいつ酷え!
Hはなんにも悪いことしてないのに!
俺は一応、Hのところに行って尋ねました。
「H、あのスープは!?」
「え? もうないよ?」
「全部飲んだの!?」
「え? うん、飲んじゃった。苦かったけど。あ! もしかして全部飲んじゃ駄目だった!?」
「ああ、お前がな」
Hは翌日、学校を休みました。
おのれジンの野郎!
よくもHを!
俺は幸いメンしか喰っていなかったから少しは無事で済んだものの。
Hの仇は必ず取るぜ!
無論トメの野郎も同罪だ!
明日が楽しみだぜ!
「トメの邪悪な決意」に続く。
2009
August 26
August 26
「ジンー、俺さ、凄えヌンチャクが上手くなったんだぜ!」
高2の秋、悪友が俺にそんなことを言い出した。
どうやら、めさは空手部の文化祭で披露するヌンチャクの練習していたらしい。
厳密に言うと、空手は「空の手」。
つまり素手が前提の武道であって、ヌンチャクは確か少林寺拳法の道具だったと思ったんだが、細かいことは置いておくか。
めさはどこか嬉しそうだ。
「ちょっと俺の上達ぶり、見てくんない?」
「ああ、別に構わないけど」
応じるとめさは、俺を空手部の部室に呼び込むとヌンチャクを手にした。
こんなに狭い部屋でヌンチャクなんかを振り回し、果たして俺に危険はないのだろうか?
いや、こいつのことだ。
相当自信があるに違いない。
「念の為、ちょっと離れてて」
俺はめさの進言通り、死にたくないので距離を取った。
「じゃ、いくぜ」
めさはヌンチャクを振りかざす。
凄まじいスピードだ!
風切り音がここまで聞こえる!
トメのヌンチャクの腕もかなりなものだが、こいつまで短期間でそんなレベルに達しやがったか!
普通の友達が欲しい。
正直、めさのヌンチャクは早過ぎて、俺の動体視力ではよく見えなかった。
だから俺は、偉いスピードでこちらに飛来してくるヌンチャクにも反応ができなかった。
擬音だけで表すなら、こんな感じだ。
ズガンッ!
ゴトン、カラカラカラン。
殺す気か!
めさが手を滑らせて放ったヌンチャクは、俺の顔面をかすめて右耳の後ろの壁を少し凹ませた。
「お! 悪ィ悪ィ!」
めさは何気なしに落としたヌンチャクを拾い、事もあろうか続きを振り回し始める。
めさは「悪ィ」以外の謝罪の言葉を言わなかった。
「うおおい!」
俺は叫んで立ち上がる。
「俺があと5センチ右に座ってたら、お前どうするつもりだよ! 危ねえだろ!」
「おう! 当たらなくて良かったな!」
「そうじゃなくて…! ったくこのクソガキ! もし当たっちゃったらどうすんだ! って聞いてんだよ!」
「もっと謝る」
こいつ最悪だ!
お前がそのつもりなら、こっちにだって考えがある。
家には確か下剤があったな。
ふふ。
明日が楽しみだ。
「めさの邪悪な決意」に続く。
高2の秋、悪友が俺にそんなことを言い出した。
どうやら、めさは空手部の文化祭で披露するヌンチャクの練習していたらしい。
厳密に言うと、空手は「空の手」。
つまり素手が前提の武道であって、ヌンチャクは確か少林寺拳法の道具だったと思ったんだが、細かいことは置いておくか。
めさはどこか嬉しそうだ。
「ちょっと俺の上達ぶり、見てくんない?」
「ああ、別に構わないけど」
応じるとめさは、俺を空手部の部室に呼び込むとヌンチャクを手にした。
こんなに狭い部屋でヌンチャクなんかを振り回し、果たして俺に危険はないのだろうか?
いや、こいつのことだ。
相当自信があるに違いない。
「念の為、ちょっと離れてて」
俺はめさの進言通り、死にたくないので距離を取った。
「じゃ、いくぜ」
めさはヌンチャクを振りかざす。
凄まじいスピードだ!
風切り音がここまで聞こえる!
トメのヌンチャクの腕もかなりなものだが、こいつまで短期間でそんなレベルに達しやがったか!
普通の友達が欲しい。
正直、めさのヌンチャクは早過ぎて、俺の動体視力ではよく見えなかった。
だから俺は、偉いスピードでこちらに飛来してくるヌンチャクにも反応ができなかった。
擬音だけで表すなら、こんな感じだ。
ズガンッ!
ゴトン、カラカラカラン。
殺す気か!
めさが手を滑らせて放ったヌンチャクは、俺の顔面をかすめて右耳の後ろの壁を少し凹ませた。
「お! 悪ィ悪ィ!」
めさは何気なしに落としたヌンチャクを拾い、事もあろうか続きを振り回し始める。
めさは「悪ィ」以外の謝罪の言葉を言わなかった。
「うおおい!」
俺は叫んで立ち上がる。
「俺があと5センチ右に座ってたら、お前どうするつもりだよ! 危ねえだろ!」
「おう! 当たらなくて良かったな!」
「そうじゃなくて…! ったくこのクソガキ! もし当たっちゃったらどうすんだ! って聞いてんだよ!」
「もっと謝る」
こいつ最悪だ!
お前がそのつもりなら、こっちにだって考えがある。
家には確か下剤があったな。
ふふ。
明日が楽しみだ。
「めさの邪悪な決意」に続く。