夢見町の史
Let’s どんまい!
July 12
<きあらさんの視点>
店内はそれなりに込み合い、雑然としている。
とあるハンバーガーショップ。
めささんが私のちょっとした大荷物を、カウンター席の下に収納した。
出来る範疇でのことならば、大抵の仕事を引き受けます。
めささんの日記にそう書いてあったものだから、私は彼に荷物持ちを依頼していた。
わざわざ都内まで足を運ぶからには、大量に買い溜めをするつもりだった。
めさ?
全て持て。
そして運びなさい。
古代エジプトの女王みたいな心境である。
「お待たせ致しました」
「どうも」
ショップの店員さんが、私たちの前にトレイを置いた。
いただきます。
と口を揃え、注文したハンバーガーと、ドリンクのストローをそれぞれ自分のペースで口に運ぶ。
「きあらさん、あのね?」
めささんは悪戯っ子のような表情だ。
「ちょっとお行儀悪いんだけど、氷食べてもいい?」
見ればめささんのドリンクは全て飲み干されていて、カップの底にはクラッシュアイスだけが「我らはどうせ溶ける運命です」といわんばかりに冷たくたたずんでいた。
めささんがカップを軽く振ると、氷たちはジャラジャラと音を立てる。
「俺、氷食べるの好きなんだ。でもさ、氷って噛み砕くとバリバリって凄い音するじゃない。だから前もって断ってから食べないとね、びっくりさせちゃうから」
「あ。それ、解ります」
私は思わず同意していた。
実は私も、氷を食べるのが大好きなのだ。
「へえ、きあらさんも?」
頷き、私はカップの蓋を外した。
クラッシュアイスの1つぶを、口に流し込む。
噛むと氷は砕けて、大袈裟な破壊音が頭蓋骨に響いた。
バリバリ!
大きな音は隣からも聞こえる。
めささんは1つぶではなく、数個いっぺんに噛み砕く派なのだろう。
戦国武将の酒席を彷彿させる豪快さだ。
「がーっはっはっは! 今宵は宴じゃー!」
「氷が足りぬわ! これ! もっと氷を持って来ぬか!」
「さあ、どんどん噛め!」
「この世の氷は全て噛み尽くしてくれるわ!」
「隊長! 自分はお腹が冷えたであります!」
なんかそんな感じだ。
「ほう」
氷を飲み込んだめささんが、感嘆の声を上げる。
「なかなかいい氷だね」
確かに。
気泡の具合といい硬度といい、これは質が良い。
いい店を選んだものだ。
「歯ごたえがあるのに、決して硬くない。いや、むしろ柔らかいぐらいだね」
そうですね。
溶けにくい工夫が施されて、このような質感になったんでしょうね。
「それはあり得るなあ。とにかく普通の製氷機で作られた氷じゃないよ。このお店、なかなかいい仕事をする」
バリバリ。
バリバリと。
私たちは次々と氷を堪能していく。
<店員の視点>
バリバリうるさい。
めっちゃ氷喰って、なんなんだ、あの客は。
氷のことばっか褒めやがって。
一部の方、申し訳ないです。
タイミングは逃しましたが、いつものように心からお祝いさせていただきますね。
7/9 くるみさん、誕生日おめでとうございます!
7/11 SiNさん、誕生日おめでとうございます!
7/12 アーク師匠さん、誕生日おめでとうございます!
7/12 カヂワラさん、誕生日おめでとうございます!
ますますの健康と発展、もちろん幸福もお祈りして、声高々に申し上げます。
お誕生日、本当におめでとうございます!