夢見町の史
Let’s どんまい!
February 16
違うんです!
悪魔王子の兄貴は、そんな人じゃないんです!
そりゃ確かに兄貴はガラが悪いですよ。
でも人相も悪いんです。
そんなことをどっかで書いてから数年経った今でも、悪魔王子の兄貴とはちょくちょく連絡を取り合っている。
兄貴を一言で表すならば、「食物連鎖の上のほうにいる人」だ。
オーラだけで人を殺せそうな雰囲気をかもし出す男前である。
情に厚くて意外に涙もろく、気さくで親しみやすいし、冗談も通じる。
見た目だって怖い。
悪魔王子という呼び名にしても、あだ名やハンドルネームなどではない。
本名だ。
※うそです。
で、そんな兄貴から届いた久々のメールがこれだった。
「めさ、ホッケって魚、知ってる?」
1行。
取り合えず、「知ってるっす」とこちらも淡白に返しておいた。
以前、居酒屋さんで友達がおつまみとして注文したのを、味見させてもらったことがあるのだ。
魚介類が苦手な俺でも美味しく頂けたので、印象に残っている。
クセのない焼き魚だった。
なかなか美味であったことを覚えている。
再び、俺のケータイが鳴った。
北海道から、兄貴がさらに返信してくれたのだ。
「横浜にもホッケあるんだ? そっちのホッケって美味い?」
「俺は美味いと思ったっすよ」
それにしても、なんで兄貴は前触れなしにホッケのリサーチを俺にしてきているのだろうか。
「めさ、ホッケ焼ける?」
「やったことないっすけど、焼こうと思えば焼けそうな気がしないでもない感じがわずかにイケそうっす」
「よし。つべこべ言わず住所を教えなさい」
なんだかホッケを送っていただけそうな雰囲気になってしまった。
よく解らない展開だ。
昔見た映画の、ある場面が脳裏に浮かぶ。
どこかのマフィアが、殺人予告として、ターゲットの家に死んだ魚を送りつけていなかったか?
「お前をこの魚みたいにしてやるぜ!」
そういったメッセージである。
兄貴は一体、どいういうつもりで俺にホッケを?
ホッケといえば大抵、開きになっているはずだ。
ひい!
ホッケを送る。
開きになっている。
さらに焼く。
つまり、こういうことか!
「お前をこのホッケみたいに体かっさばいて、しかも焼いてやるぜ!」
なんで俺がそんな目に!
即行で兄貴にメールする。
「いやいや! そんな! とんでもない! 絶対にとんでもありません! いいっすよ兄貴! 俺、実はホッケなんて焼いたことないですし!」
兄貴!
お願いですから命だけは!
「駄目だ。焼けるって。自分を信じろ」
よっ!
この人殺し!
覚悟を決め、俺は生命保険に加入していないことを後悔しつつ、泣きながら兄貴に住所をお教えした。
数日後。
俺は最高の笑顔で、ホッケを前にしている。
あれから兄貴とメールを応酬し、ホッケの真意を知ったのだ。
兄貴は経営者として優秀な人で、今度はホッケの通信販売を始めることにしたのだそうだ。
最高級のホッケを商品として扱うので、それを食べた人たちから感想を集めているとのことだった。
要するに、俺もホッケのモニターとして選んでもらえたわけだ。
よかった、おマフィアなメッセージじゃなくて。
そもそも、兄貴は信用できる男なのだ。
それは、兄貴のハンドルネームにもよく表れている。
本来なら「悪魔王子」ではなく、「悪魔大元帥」ぐらい名乗ってもいい実力者なのだ。
それなのに兄貴は謙虚だから、「いやいや、俺が大魔王だなんてとんでもない。俺なんてせいぜい王子止まりですよ」とでも思ったのだろう。
実に低姿勢である。
それにしてもこのホッケ、身が厚い。
焼く前から食欲をそそってくれる。
嬉しすぎて死んじゃいそうだ。
俺はチーフとスー君を自宅に招くことにした。
チーフは料理人だし、スー君は食事が趣味。
どちらも舌が肥えているから、人よりも正確に味の判定をしてくれるに違いない。
俺は俺で、漫画「美味しんぼ」をたくさん読んでいるから、完璧だ。
たった1枚の貴重なホッケ。
グリルで簡単に焼くだけなのだが、念には念を入れ、調理はチーフにお願いをした。
待つこと10数分間。
焼きあがったホッケは、この世のものとは思えない出来栄えだった。
まさに魔界のホッケだ。
「いただきます!」
3人で同時に箸を伸ばす。
「ん! 美味い!」
「これはいい! 市販のホッケより全然いい!」
「嗚呼…」
魚特有の変なクセや生臭さが一切ない。
肉汁を彷彿させる油分がジューシーで、身が驚くほどしっかりと締まっている。
ほどよく効いた塩分が絶妙で、さらにホッケの旨味を引き出している。
チーフの焼き加減もいい塩梅で、とにかく美味かった。
過去、食べ物で感動したことが3回あったが、今日ので4度目だ。
スー君に至っては、美味しすぎて気を失いそうになっている。
ただ1つだけ、困ったこともあった。
こんなことを日記に書いたら、ただのグルメ日記になってしまうではないか。
兄貴、やはり怖い人だ。
3人とも夢中になって箸と口とを動かし続ける。
あまりの幸福感に思わず、俺は卒業式の日に告白する乙女のようになってしまった。
「ホッケ、好き…」
ライクじゃない。
ラヴだラヴ。
そうそう。
せっかくなので、チーフとスー君にも、このホッケのありがたみを教えなくっちゃ。
兄貴からの受け売りを、俺はまるで自分の知識のように話して聞かせた。
「ホッケの本場って北海道でしょ? でもね、これは北海道でも滅多に食べられない特上物なんだ。通常のホッケの開きって機械で干して加工するんだけどね、それだと肝心な油分がほとんど飛んじゃうし、身も伸びるんだよ。ところがこのホッケは天日干しっていってね、ちゃんと自然に干してあるんだ。しかも、このホッケの仕入れルートは日本で1ヶ所しかないの。そこと兄貴は提携したんだ。この俺の、兄貴がね!」
俺と兄貴が実の兄弟みたいな嘘アピールも、ついでだからしておいた。
どうよ?
と得意げな顔で2人に目をやる。
「身がしっかりしてるよなあ」
「美味しいなあ」
チーフとスー君は、ホッケに夢中で俺の話を全く聞いていなかった。
兄貴、この2人にはマフィア的な意味で死んだ魚を送ってください。
それにしても、俺が知っているホッケよりも数段美味であった。
今後は自ら注文しようと兄貴に値段を訊いてみる。
「価格? 1枚につき2000円にしたよ。物が極上物だけに、さすがに普通よりちょっと値が張るけどね」
身代金より安いじゃないですか兄貴。
自分へのご褒美として注文したら、今度は誰も呼ばず、独り占めすることにした。
それにしても本当に美味しかったものだから、オチに困る。
とにかくホッケを発明した人は天才だ。
さぞかし美味しいであろうという期待を簡単に超えてくれた、本当に素晴らしいホッケでした。
なので、贅沢したいときやプレゼント用などに注文したいと思う方もおられるんじゃないかって、俺は予想したんですよ。
それで、兄貴にお願いしてみました。
「兄貴、もし俺の日記を読んだ方が『注文したい』ってなった場合、兄貴を紹介してもいいですか?」
「いいよー。ミクシィで俺にメッセージくれた人にも、お売りするよ」
許可が下りましたので、兄貴のページを紹介させていただきますね。
ミクシィをやっていらっしゃらない方は、本当にごめんなさい!
兄貴のミクシィIDは2094341になります。
PCユーザーの方は、コチラをクリックしてください。
日記で書いてあったような怖さは実際には全然ないので、お気軽にどうぞです。
とにかく食べてみて!
本当に美味しいんだから!
めっちゃ感動させていただきました。
兄貴、ご馳走様でした!
以上、宣伝日記でした。
ホッケと同じぐらい、大事に頂きます。
1人1人にお礼を言えなくて、すみません。
でもおかげ様で、冬をしのげそうですよ。
本当に大感謝!
ありがとうございます。
今年もさらにダンディさに磨きをかけ、輝ける1年になることをお祈りしていますよ。
いずれ、オフ会以外でもゆっくり飲みましょう。
誕生日、本当におめでとうございます!
ハッピーバースデイ!
時事ネタにも詳しいのですね。
それにしてもほっけ、美味しそうですね~。
海原めさも唸る程の味ですか(笑)
ほっけを食べるだけの事をここまで面白くできるめささんが羨ましいです。