夢見町の史
Let’s どんまい!
2010
April 09
April 09
彼女はちょくちょく名言を残す。
うちの職場で1番の若手は、フロアレディのHちゃんだ。
俺はHちゃんの言葉を忘れぬよう毎回メモを取り、「日記に書いてもいい?」と彼女に許可を求め、めでたく殴られる。
先日Hちゃんは胸を張って「飛ぶ鳥跡を濁さず」を言い間違えた。
「飛ぶ鳥後を絶たず」と、パニック映画のキャッチコピーみたいなことを口走っていた。
文字的にはもしかしたら「飛ぶ鳥あとを発たず」なのかも知れないけれど、それならそれで、その鳥はもはや飛べてない。
「じゃあなんて言えばいいんスか!? 飛ぶ鳥あとを発つ?」
「なにその普通の現象」
このような調子で俺は毎回、Hちゃんをからかうことでスナックでの仕事を間違った方向で楽しんでしまっている。
そんなHちゃんがふとした瞬間、畳んだ紙をそっと俺の胸ポケットに忍ばせてきた。
前回の手紙にはただ一言、「ばーか」とだけ書かれており、俺は心に著しい傷を負わされてしまったけれど、今回はなんだろう?
自宅で開けるのも面倒なので、俺は陰でこっそりと手紙を開く。
今回は一言ではなく、ちょっとした文が書かれていた。
まず、ひらがなで「ゆいごん」――。
字が解らなかったらしい。
続けて、以下のような文章が添えられていた。
全て、めさのせいです。
ホントにめさのせいです。
私を愛してくれた皆さん、めさを恨んでください。
最後にHちゃんの本名がフルネームで記されており、なんと拇印まで押されていた。
なんだこのこの正式な感じは。
しかも、なんで俺本人に「めさを恨め」なんて遺言を遺すんだ。
俺はその紙片を持ってHちゃんに詰め寄る。
「Hちゃん、さっきの手紙読んだけど」
次の瞬間、俺は自然と申し訳なさそうな表情になっていた。
「これは遺言じゃなくて、遺書だ」
このことも日記に書いていい?
そう訊ねて再度Hちゃんの拳を肝臓に喰らったことは言うまでもない。
うちの職場で1番の若手は、フロアレディのHちゃんだ。
俺はHちゃんの言葉を忘れぬよう毎回メモを取り、「日記に書いてもいい?」と彼女に許可を求め、めでたく殴られる。
先日Hちゃんは胸を張って「飛ぶ鳥跡を濁さず」を言い間違えた。
「飛ぶ鳥後を絶たず」と、パニック映画のキャッチコピーみたいなことを口走っていた。
文字的にはもしかしたら「飛ぶ鳥あとを発たず」なのかも知れないけれど、それならそれで、その鳥はもはや飛べてない。
「じゃあなんて言えばいいんスか!? 飛ぶ鳥あとを発つ?」
「なにその普通の現象」
このような調子で俺は毎回、Hちゃんをからかうことでスナックでの仕事を間違った方向で楽しんでしまっている。
そんなHちゃんがふとした瞬間、畳んだ紙をそっと俺の胸ポケットに忍ばせてきた。
前回の手紙にはただ一言、「ばーか」とだけ書かれており、俺は心に著しい傷を負わされてしまったけれど、今回はなんだろう?
自宅で開けるのも面倒なので、俺は陰でこっそりと手紙を開く。
今回は一言ではなく、ちょっとした文が書かれていた。
まず、ひらがなで「ゆいごん」――。
字が解らなかったらしい。
続けて、以下のような文章が添えられていた。
全て、めさのせいです。
ホントにめさのせいです。
私を愛してくれた皆さん、めさを恨んでください。
最後にHちゃんの本名がフルネームで記されており、なんと拇印まで押されていた。
なんだこのこの正式な感じは。
しかも、なんで俺本人に「めさを恨め」なんて遺言を遺すんだ。
俺はその紙片を持ってHちゃんに詰め寄る。
「Hちゃん、さっきの手紙読んだけど」
次の瞬間、俺は自然と申し訳なさそうな表情になっていた。
「これは遺言じゃなくて、遺書だ」
このことも日記に書いていい?
そう訊ねて再度Hちゃんの拳を肝臓に喰らったことは言うまでもない。
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