夢見町の史
Let’s どんまい!
April 01
自分の誕生日よりもクリスマスよりも、エイプリルフールである今日だけは必ず日記を綴るように心掛けている。
なのだが、毎年のように俺は4月1日が来るという当たり前のことを忘れてしまう。
いつも当日になって初めて気づき、どのような嘘を書くべきかと慌てふためくのだ。
今もそう。
キーボードに手を添えながら、どのような嘘をつくべきかと一生懸命に頭を働かせている。
いや、正確にいえば、実際にキーボードに手を添えているのはうちの執事で、俺が口にした言葉をそのまま文章にしてもらっている。
俺はというと執事の背後でソファに座り、片手でワイングラスを回し、残る手でペルシャ猫を撫でているのだが、今日ばかりはエイプリルフールだからそのような本当のことは書けない。
さて、今年はどのような嘘を披露するべきか。
今回は大急ぎで日記を更新せねば。
早くしないとベガスの会議に遅れてしまう。
あ、いっけね。
ベガスで会議とか、また本当のことを言ってしまった。
えっと、嘘を言わねば。
1本2000円の葉巻しか吸わないとか、そういう本当のことじゃなくって、嘘をつかなければ。
嘘といえば、そうそう。
これは昨日のことなのだが、ちょっと目についた株があったので1億で購入させていただいた。
ふはは。
もちろん嘘だ。
本当は3億で買った。
ぬう、なんか今年の嘘はグダグダだ。
高校時代にちょっとしたショートショートを卒業文集で書いて、それがノーベル文学賞に輝いたエピソードも本当のことだから書けないし、ホント困った。
ねえ、セバスチャン。
なんかいいアイデアない?
って、何やってんのセバスチャン!
今の俺の言葉は打っちゃダメでしょ!?
今のは素の言葉なのであって、文章の内容を喋ったわけじゃないよ。
しっかりしてよねー。
場合によっては、セバスチャンが俺のゴーストライターだってことがバレちゃうかも知れないでしょうが。
今書いちゃったやつ、ちゃんと消しといてね。
消した?
消したのね?
ホント?
じゃあ今回は短いけど、もうアップしちゃっていいよ。
俺もう空港に行くから。
リムジン待たせてるから先に行ってるよ?
しっかり更新しておいてね。
じゃ、あとよろしくー!
行ってきまーす!
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さて皆さん、改めてご挨拶させていただきます。
普段から、めさ様の代筆を勤めさせていただいております、執事のセバスチャンでございます。
本日は嘘をついてもいい日とのことで、わたくしは今しがた、めさ様に嘘をついてみました。
「ご安心ください、めさ様。今申されました素のお言葉の部分はきちんと削除させていただきましたよ」
めさ様はおバカさんでございますから、わたくしの嘘を信じてしまわれたようです。
実際は皆様にご覧いただいた通り、めさ様のお言葉を消してはおりません。
たまに配信させていただいている創作小説などを考案し、執筆しているのは、実はめさ様ではなく、わたくしなのでございます。
今後とも、わたくしセバスチャンの作品をご覧いただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
めさでした。
じゃなかった。
セバスチャンでした。