夢見町の史
Let’s どんまい!
2010
May 07
May 07
最近、行き着けになったアメリカンバー。
昔から世話になっているマスターが、今はここで勤めている。
弟から着信があり、それがきっかけで俺は今夜もカウンターに腰を下ろしていた。
隣には弟が座っている他に、妹も賑やかにしている。
兄弟3人で飲むのは何年ぶりだろう。
俺は2人に微笑みながらグラスに口をつけ、飲みに来たことに心の底から後悔していた。
弟も妹も、酒癖がいい感じに悪いからだ。
しかも悪さのジャンルがそれぞれ異なっている。
弟が静の酒とするならば、妹は動だ。
光と闇みたいなコンビである。
「めさちゃん! めさちゃん!」
極めて内容の薄い話題でも妹はわざわざピンポイントで俺を呼んでくれる。
誰とも会話をさせてもらえない。
「はぁい。ええ。ええ。はぁい」
弟は誰からも話しかけられていないのに、何故か相槌を打っている。
こいつには霊でも見えているのだろうか。
久々に逢った弟と何かしらを喋っていれば、放置されたと勘違いをした妹が怒り出す。
彼女は少しでも自分が会話から外れると、内なる獣をすぐに目覚めさせるのだ。
だからといって今度は妹と喋ってみれば、それはそれでビーストみたいな女なので最初から日本語が通じない。
親兄弟の顔が見たいものである。
しかもこのバカ兄弟、酔っ払ってからが本番といわんばかりに、酒を飲むペースが半端なく上がる。
弟に至ってはオアシスを見つけた砂漠の旅人のようにごくごく飲んで、もはや「ミントビアーうめー」しか言わなくなっている。
さり気なく水を与えれば、「まるで水のようだー!」などと水を飲みそうな勢いだから、俺はさり気なく水を与えてみたりした。
このような長男殺しの2人と飲んでいて、俺が酔えるはずがない。
通算100回ぐらい「うざい」と口にしたのは今日が初めてだろう。
妹は妹で、今度は店の女性バーテンダーに絡み、マスターを苦笑させている。
「ねえねえ、どっちのお兄ちゃんがいい? どっちかと結婚してあげてー!」
妹よ。
お前がすぐそういうことを言うから、俺は告白してもいない女性からフラれるのだ。
「ねえねえ、これ飲みやすくない?」
水だからな、弟よ。
「トイレ行ってくるー!」
戻ってこなくていいぞ妹。
「行ってもいーい? 行ってもいーい? あたしがいないと寂しくなーい?」
101回目になるが、再び言おう。
うざい。
「あ~、ミントビアーうめー」
弟よ。
それ水だ。
「ねえ、めさちゃんは何飲んでんのー?」
お前はまだトイレ行ってないのか!
俺が飲んでるのはバーボンの水割りだ。
満足か?
解ったら早くトイレに行きなさい。
「じゃあお姉さん、一緒にトイレ行こうよ!」
お店の従業員に迷惑かけない!
トイレ一緒に入ってお前は何を出すつもりなんだ。
その後、俺は1時30分になったら帰ろうなと2人に約束をし、12時に「もう時間だぞ」と迷わず嘘をつく。
ところがこの兄弟、なかなか帰ろうとしない。
妹は「いいもの見つけた!」と店内の飾りであるギターなどを手にし、帰るどころかトイレにすらまだ行ってない。
弟は移動しようと腰を上げたが、背の高い椅子を迂回するのではなく、何故か直進して乗り越えようと頑張る。
こうして彼は失敗して派手に転んだ。
「お前ら! もう店を散らかすな!」
そう叫んではみたものの、妹は別の楽器を台から外そうと必死に戦い始める。
ばかばっかりだ。
親兄弟の顔が見たい。
2人を無理矢理タクシーに押し込み、「家に帰ったら電話で無事を知らせろよ」と手を振ったが、ばかたちはなかなか車を発車させない。
窓から一生懸命顔を出す2人の様は、エサを欲しがる雛鳥みたいだ。
「あのさ、めさちゃん! あたし今度さあ?」
お前はどうしてその長そうな話をさっき飲んでるときにしなかった?
「じゃあさ、じゃあさ、カラオケ行こうぜ~、あーにき~」
それはお前が歌えるコンディションのときにしよう。
さらばだ。
家に着いたら絶対電話よこせよ。
じゃあ!
走って逃げ、店に戻って飲みなおす。
あいつら、悪い方向にパワーアップしてる…。
昔から世話になっているマスターが、今はここで勤めている。
弟から着信があり、それがきっかけで俺は今夜もカウンターに腰を下ろしていた。
隣には弟が座っている他に、妹も賑やかにしている。
兄弟3人で飲むのは何年ぶりだろう。
俺は2人に微笑みながらグラスに口をつけ、飲みに来たことに心の底から後悔していた。
弟も妹も、酒癖がいい感じに悪いからだ。
しかも悪さのジャンルがそれぞれ異なっている。
弟が静の酒とするならば、妹は動だ。
光と闇みたいなコンビである。
「めさちゃん! めさちゃん!」
極めて内容の薄い話題でも妹はわざわざピンポイントで俺を呼んでくれる。
誰とも会話をさせてもらえない。
「はぁい。ええ。ええ。はぁい」
弟は誰からも話しかけられていないのに、何故か相槌を打っている。
こいつには霊でも見えているのだろうか。
久々に逢った弟と何かしらを喋っていれば、放置されたと勘違いをした妹が怒り出す。
彼女は少しでも自分が会話から外れると、内なる獣をすぐに目覚めさせるのだ。
だからといって今度は妹と喋ってみれば、それはそれでビーストみたいな女なので最初から日本語が通じない。
親兄弟の顔が見たいものである。
しかもこのバカ兄弟、酔っ払ってからが本番といわんばかりに、酒を飲むペースが半端なく上がる。
弟に至ってはオアシスを見つけた砂漠の旅人のようにごくごく飲んで、もはや「ミントビアーうめー」しか言わなくなっている。
さり気なく水を与えれば、「まるで水のようだー!」などと水を飲みそうな勢いだから、俺はさり気なく水を与えてみたりした。
このような長男殺しの2人と飲んでいて、俺が酔えるはずがない。
通算100回ぐらい「うざい」と口にしたのは今日が初めてだろう。
妹は妹で、今度は店の女性バーテンダーに絡み、マスターを苦笑させている。
「ねえねえ、どっちのお兄ちゃんがいい? どっちかと結婚してあげてー!」
妹よ。
お前がすぐそういうことを言うから、俺は告白してもいない女性からフラれるのだ。
「ねえねえ、これ飲みやすくない?」
水だからな、弟よ。
「トイレ行ってくるー!」
戻ってこなくていいぞ妹。
「行ってもいーい? 行ってもいーい? あたしがいないと寂しくなーい?」
101回目になるが、再び言おう。
うざい。
「あ~、ミントビアーうめー」
弟よ。
それ水だ。
「ねえ、めさちゃんは何飲んでんのー?」
お前はまだトイレ行ってないのか!
俺が飲んでるのはバーボンの水割りだ。
満足か?
解ったら早くトイレに行きなさい。
「じゃあお姉さん、一緒にトイレ行こうよ!」
お店の従業員に迷惑かけない!
トイレ一緒に入ってお前は何を出すつもりなんだ。
その後、俺は1時30分になったら帰ろうなと2人に約束をし、12時に「もう時間だぞ」と迷わず嘘をつく。
ところがこの兄弟、なかなか帰ろうとしない。
妹は「いいもの見つけた!」と店内の飾りであるギターなどを手にし、帰るどころかトイレにすらまだ行ってない。
弟は移動しようと腰を上げたが、背の高い椅子を迂回するのではなく、何故か直進して乗り越えようと頑張る。
こうして彼は失敗して派手に転んだ。
「お前ら! もう店を散らかすな!」
そう叫んではみたものの、妹は別の楽器を台から外そうと必死に戦い始める。
ばかばっかりだ。
親兄弟の顔が見たい。
2人を無理矢理タクシーに押し込み、「家に帰ったら電話で無事を知らせろよ」と手を振ったが、ばかたちはなかなか車を発車させない。
窓から一生懸命顔を出す2人の様は、エサを欲しがる雛鳥みたいだ。
「あのさ、めさちゃん! あたし今度さあ?」
お前はどうしてその長そうな話をさっき飲んでるときにしなかった?
「じゃあさ、じゃあさ、カラオケ行こうぜ~、あーにき~」
それはお前が歌えるコンディションのときにしよう。
さらばだ。
家に着いたら絶対電話よこせよ。
じゃあ!
走って逃げ、店に戻って飲みなおす。
あいつら、悪い方向にパワーアップしてる…。
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