夢見町の史
Let’s どんまい!
2009
December 18
December 18
悪友と酒を飲み交わしていて、会話の流れから俺は寝袋を彼に譲ろうかと申し出る。
「なあトメ。俺、寝袋たくさん持ってるから1つあげようか?」
「要らねえよ~。いつ使うんだよ~」
続けて彼は率直な疑問を口にする。
「だいたい寝袋って、どうやって中から開けるの?」
トメは今まで寝袋を使ったことがないらしく、内側にもファスナーのつまみが付いていることを知らないようだ。
確かに、と俺は思った。
内側につまみが付いていることを知らなければ、寝袋に入ると2度と自力で出られないような気がしても無理のないことなのかも知れない。
トメに目をやると、悪友は「気をつけ」のような体制で身を縮ませ、「んー、んー!」と苦しそうに左右にもがいている。
寝袋から脱出する際を再現しているのだ。
「トメ? お前が考えているのは暴れ出しそうな人が着させられる拘束具か何かだ。寝袋ってそこまでキツくないぞ」
「え? そうなの?」
「いやしかし、自分で開けられない寝袋、か。楽しそうだな」
例えば雪山の小屋。
眠るとき寝袋にもぐり込み、「こいつァいいや」などと喜んでいた登山者も、朝になると芋虫の姿勢のままゴロゴロと転がり回るのだ。
「誰かー! 誰かいませんか!? 誰かー!」
必死に叫ぶことになる。
助けが来たら来たで、結構恥ずかしい恰好だ。
登山者が複数いても、悲劇は止められないだろう。
「そろそろ寝ようか?」
「そうだな」
「お! この寝袋、あったけえ!」
「マジで! おお! ホントだ!」
「寝袋最高!」
出るときのことを何も考えていないで安眠するまでは幸せであろう。
ところが、朝。
「おい! これどうやって開けるんだ!?」
「むしろ俺たち、どうやってファスナーを上まで上げたんだ?」
「ちきしょう! 出られねえ! もうすぐ山頂だっていうのに!」
「おいお前! 手ェ貸せよ!」
「貸せるわけねえだろ! 俺の姿を見ろよ!」
「救助のヘリを待つしかないな」
まるで罠のようだ。
悪友に寝袋をあげるときは、内側のファスナーを取ってからにしたいと思う。
なんか、楽しみだ。
「なあトメ。俺、寝袋たくさん持ってるから1つあげようか?」
「要らねえよ~。いつ使うんだよ~」
続けて彼は率直な疑問を口にする。
「だいたい寝袋って、どうやって中から開けるの?」
トメは今まで寝袋を使ったことがないらしく、内側にもファスナーのつまみが付いていることを知らないようだ。
確かに、と俺は思った。
内側につまみが付いていることを知らなければ、寝袋に入ると2度と自力で出られないような気がしても無理のないことなのかも知れない。
トメに目をやると、悪友は「気をつけ」のような体制で身を縮ませ、「んー、んー!」と苦しそうに左右にもがいている。
寝袋から脱出する際を再現しているのだ。
「トメ? お前が考えているのは暴れ出しそうな人が着させられる拘束具か何かだ。寝袋ってそこまでキツくないぞ」
「え? そうなの?」
「いやしかし、自分で開けられない寝袋、か。楽しそうだな」
例えば雪山の小屋。
眠るとき寝袋にもぐり込み、「こいつァいいや」などと喜んでいた登山者も、朝になると芋虫の姿勢のままゴロゴロと転がり回るのだ。
「誰かー! 誰かいませんか!? 誰かー!」
必死に叫ぶことになる。
助けが来たら来たで、結構恥ずかしい恰好だ。
登山者が複数いても、悲劇は止められないだろう。
「そろそろ寝ようか?」
「そうだな」
「お! この寝袋、あったけえ!」
「マジで! おお! ホントだ!」
「寝袋最高!」
出るときのことを何も考えていないで安眠するまでは幸せであろう。
ところが、朝。
「おい! これどうやって開けるんだ!?」
「むしろ俺たち、どうやってファスナーを上まで上げたんだ?」
「ちきしょう! 出られねえ! もうすぐ山頂だっていうのに!」
「おいお前! 手ェ貸せよ!」
「貸せるわけねえだろ! 俺の姿を見ろよ!」
「救助のヘリを待つしかないな」
まるで罠のようだ。
悪友に寝袋をあげるときは、内側のファスナーを取ってからにしたいと思う。
なんか、楽しみだ。
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