夢見町の史
Let’s どんまい!
December 02
この日記を書いている今、熱は下がっていて体調は万全だ。
嘘だ。
二日酔いだからやっぱり具合が悪い。
それにしても、どうして発熱中に見る夢は変なのだろう。
夢独特の変なシチュエーションであるにもかかわらず、一方俺の頭は冷静なまま働いてしまうから、起きる頃にはツッコミ疲れてくたくただ。
夢の中で、俺はドラゴンゾンビと戦っていた。
ドラゴンの時点で絶対に強いのに、それがなんとゾンビになってしまっている。
勝てる気がしない。
一方、俺は素手。
気の毒なほど丸腰だ。
聖剣エクスカリバーなんかでもいいから5本ぐらいは欲しい。
ドラゴンは肋骨とか丸見えのクセしてやる気満々な態度を見せている。
歯をガチンガチン鳴らせながら、こちらにズンズンと迫ってくる。
テンション高すぎだ。
後方に下がりながら、俺は仲間と思われる女性に問う。
「俺が何をした。どうしてこんな状況になった」
女の人はゲームでいうところの僧侶のような服装だった。
彼女は俺にバリアの魔法をかけないと、冷静に口を開く。
「ドラゴンは生前に出来ることと出来ないことがあり、ゾンビ化することによってその行動の制限が変化します」
そうですか。
俺の質問は無駄でしたか。
「あのドラゴン、火炎を吐く器官が腐敗していますね。ブレス攻撃の心配はありません」
爪とか牙による攻撃の心配はあるってことですね?
「ドラゴンの火炎の元は胃酸です」
そうですか。
また堂々と無視しますか。
「ドラゴンの胃酸はすぐに気化するので、炎上しやすいのです。通常のドラゴンは歯を噛み合わせることによって口内で火花を散らせ、それと同時に胃酸を吐くことで火炎を放射してきます」
この人、空想上の生物にやたら詳しい。
あとあなた、殺されそうな状況なので、落ち着いてないで戦おうとする姿勢を見せていただいてもよろしいでしょうか?
「あのドラゴン、胃が既に腐っていますね。したがって炎を吐くことはないでしょう」
それはもう聞いた。
知識の披露、お疲れ様です。
そんなことよりさ、君は魔法とか使えないの?
RPGだと決まって、ゾンビを1発で昇天させる都合のいい呪文とかがあるじゃないか。
そいつを是非お願いします。
「爪や牙、尾による物理攻撃にご注意ください」
丸腰の俺が頑張らなきゃいけないってわけですね?
っつーかそもそもゾンビってどういう現象だよ!
死体が動くってどういうことだよ!
逆ギレしねえと自分を保てねえ。
「何者か、おそらく魔法の使い手がドラゴンの死体にエネルギーを注いでいるようですね。ゾンビの動力は魔力です」
うっせえ!
魔力ってなんだよ!?
どういう力なのか結局あやふやじゃねえか!
だいたい死体が動くだけってことならまだしも、あのクソ竜、眼球もねえクセして明らかに俺たちを敵視してきてる!
その行動の動機はなんだっつーの!
俺が何をした!
「あのドラゴン、生きている頃は攻撃的な性格だったようですね。エネルギーを得た動く死体は、生前の残留思念によって行動パターンを変えます」
残留思念?
ああ、あれか!
首をはねたニワトリがしばらく走り回るみたいな。
「それは脊髄反射です」
最後の最後にツッコミ返されるとは思いませんでした。
ドラゴンゾンビの行動原理とかよりも、役に立ちそうな僧侶が行動しない理由が1番に気になる。