夢見町の史
Let’s どんまい!
September 09
油断していた。
まさか温泉で重傷者が出るなんて、予想すらしなかった。
もし予め解っていたなら、俺は「山の天候と温泉はナメるな」ぐらいの忠告を残しておけたのに。
俺的に、やはり外せないのは温泉だった。
今回の宿泊先はネットで調べたのだが、条件検索でしっかり「温泉」と付け加えていたほどだ。
大好きな温泉。
そこはしかも、露天風呂だった。
サウナまである。
なんかもう、幸せすぎる。
俺はウキウキと服を脱ぎ捨て、湯船に浸かって景色を眺めたり、サウナで汗をかいたりと、夏の温泉を堪能しまくった。
その頃。
俺から離れた場所にいた、とある男子。
彼は睡眠不足でも祟ったのか、のぼせて意識を失い、前のめりに倒れる。
その際、床に顎を強打してしまった。
そんなことは露知らず、俺はサウナでかいた汗をシャワーで流そうとしていた。
「めささん!」
脱衣所からこちらに顔を出している男子は、焦りの色を隠していない。
「ん? どうしたの?」
「それが、つい今、K君が倒れたんです」
「マジで!?」
「はい。それで、顎を打ったらしくて、切っちゃってるんですよ」
「なあんだ」
俺は、何故か怪我に強い。
自分が負傷しても、他人の傷口を見ても、滅多なことでは動じない。
この時もしたがって、俺は大したことはないだろうと高をくくり、軽い気持ちで様子を見に行っていた。
怪我人である男子は脱衣所のベンチに腰を下ろしていて、タオルで顎を押さえている。
「どれ、見せてみ?」
下から顎を覗き込む。
「うわ。思ったより酷え。こりゃ病院だな」
出血はさほどないが、バンソウコウでどうにかなるレベルではなかった。
ちょっと痛々しいので細かい描写は避けるが、軽く重症だ。
温泉の係員らしき男性が、おろおろと気を遣う。
「彼、横にしたほうがいいでしょうか?」
俺はそれを制した。
「座ったままの体勢のほうがいいかも知れません。このままだと、心臓より上に患部がある格好になりますから」
「そうですよね。今、別の者が救急隊を呼んでいますから」
「そりゃ助かります。ありがとうございます」
数分後には俺も服を着て、彼の様子を見守っていた。
結果から先に書けば、彼は病院で治療を受けたものの、傷の具合は入院するほどではなかった。
でも当時はそんなこと判らないし、なんせ顎だ。
打った時に強く噛み合わせる形になったのだろう。
奥歯が痛むという。
倒れた際に生じた衝撃は脳にまで達しているであろう。
俺はお風呂上りの牛乳を我慢した。
不意に、ポケットの中で携帯電話が鳴る。
女子からだ。
「もしもし?」
「あ、めささん? あのね?」
「うん?」
「女の子たち、やっぱり遅くなると思うの」
「そうだろうねー」
「だから、もしアレだったら、先に行っててもいいから」
「大丈夫、みんなで外で待ってるよ」
悲しいお知らせがあるからな。
とは言わなかった。
ここで報告してしまったら、彼女たちのことだ。
温泉を堪能するどころではなくなってしまうだろう。
心配すれば治るというわけでもないし、あえて知らせずにおく。
やがて、救急隊が到着。
怪我した男子をストレッチャーに乗せる。
彼の足元はおぼつかなかった。
やはりダメージが脳に及んでいるのだろう。
救急隊員の方が、「お名前は?」と男子に訊ねる。
すると彼は、
「大丈夫です!」
全く関係ないことを答えた。
判りやすく錯乱していらっしゃる。
一方、女湯。
「露天風呂、いいねー」
「ホントだよねー。あ!」
「何?」
「木と木の間、今モモンガが飛んでいった!」
「ホント!? どこどこ!?」
「あっちあっち!」
「きゃー!」
楽しんでもらえたようで何よりである。
場面を男湯の脱衣所に戻す。
ストレッチャーで移動する際、彼の呂律は意外としっかりとしていた。
「余裕っす。全然余裕っすよ」
何が余裕なのか全然解らなかったが、それだけしっかり喋れれば大丈夫であろう。
わずかながら、安堵した。
付き添いの男子と共に、怪我人は救急車で運ばれていった。
さて、次だ。
風呂から出てきた女子たちに、どう報告しよう。
どう知らせれば、彼女たちの心配を少なくできるだろうか。
「いやあ、さっきね? 彼、風呂場でコケてさあ。あっはっは! ちょいと顎をぶつけたみたい。今頃、CTスキャンでも撮ってんじゃない? がはははは!」
軽すぎる。
「みんな、ちょっと円になって座ってくれ。実はさっき、彼が浴室で倒れた。その際に顎を強打して、意識はあるが間違いなく重症だ。救急車を呼ぶといった騒ぎにも発展した。顎の傷はもの凄いことになっているし、見えない箇所にも大ダメージを受けているだろう。彼が帰ってくることを、みんな祈っていてくれ。報告は以上だ。じゃあ、気持ちを切り替えて、みんなでバーベキューを楽しもうぜ!」
楽しめるか!
じゃあ、なんて伝えようかなあ。
一方、救急車内。
誰からも、何も訊かれていないのに、怪我人はずっと喋り続けていた。
「余裕っす! 超余裕っすよ! 全然余裕っす!」
何度もしつこい。
彼は、やはり錯乱していた。
「なんか、ホントすんません」
友のウザさを救急隊員に詫びる、付添い人。
「余裕っす。余裕っす。全然余裕っすよ」
尚もうるさい怪我人。
なんで救急隊員のお友達みたいな感じを出すのだ。
あと、大丈夫じゃない人ほど大丈夫って言うのは何故?
さて。
結局女子たちには、涼しい顔を意識し、ありのままを伝えることにした。
「俺も傷を見たけど、軽い重症だったよ」
「それって、例えばめささんだったら、病院に行ってます?」
「ありゃ俺でも病院に行ってるなあ」
「じゃあ、ホントに深いんだ」
納得のされ方に納得がいかなかった。
川辺では、付添い人と怪我人の分も食事を用意しておいた。
随時、付き添いの彼と連絡を取り合う。
しばらくすれば戻れるとのことだ。
やがて、
「いやあ、迷惑かけて、すみません」
「いやいや、怪我で済んで何よりだよ」
とにかく命に別状がなくてよかった。
さすがに酒は飲ませられないが、会話ぐらいは楽しめるであろう。
それにしても、今回のキャンプときたら、川に流された奴が3人、重傷者1人、キュン死に者多数。
安全度が低すぎだ。
これからは「死ぬな」以外に、もっと細かく注意事項を言っておかなくちゃ。
私は箱根の露天風呂(真っ暗)で、足を踏み外した挙げ句、予想だにしない、大人の肩までの深さで溺れ、足を切り、血まみれでしたけど…(ノ△T)
自分に何が起きたか分からないけど、取り敢えず、回りにいたお客さんに謝っておきました
仲間かなあ…?
最近読者になって、過去ログのも今頑張って読んでいます。
でも今までは心の中だけでコメントしてたので、これが初コメです(笑)
私の妹も露天風呂で転んでお尻切ってました。
私は爆笑して酸欠になって、本当危険でしたよ。
次回から気を付けてくださいねー
めささんも旅行行ってたんですね☆
全員生きてたコトが素晴らしい!!`ω´笑
私も今時分、沖縄から帰宅しましたッ´∇`
座間味ブルー最高でしたょ!!\(≧▽≦)丿
めささんもいつか愛する人と行ってみて下さいねッ☆
気を取り直して、一挙まとめてという形ではありますが、心よりお祝いさせていただきますね。
9/9 親愛なるバー「イージーバレル」、13周年おめでとうございます!
9/11 森(むー)さん、誕生日おめでとうございます!
9/13 かやきくん、誕生日おめでとう!
9/13 ユッケさん、誕生日おめでとうございます!
9/13 茨城のKちゃん、誕生日おめでとう!
9/14 五味 佑樹さん、誕生日おめでとうございます!
9/16 華さん、誕生日おめでとうございます!
9/17 はるさん、誕生日おめでとうございます!
9/18 太刀華 透さんのお兄さん、誕生日おめでとうございます!
9/18 有希さん、誕生日おめでとうございます!
9/18 幸さん、誕生日おめでとうございます!
産声を上げて、もう何年になるんでしょうね。
日々、素敵になられていることだろうと思います。
今後も、さらに素晴らしい日々を送って、ガンガン素敵になっちゃってくださいね。
お誕生日、本当におめでとうございます!