夢見町の史
Let’s どんまい!
2009
June 29
June 29
個人的なオフ会だったら何度かやってきたけども、コミュニティ管理人としての集いは初めてで気持ちが高ぶる。
2009年6月27日の今日は、待ちに待った「寝言本出版記念パーティ」だ。
ミクシィ内で立ち上げたお笑い投稿系のコミュニティ「変な寝言が忘れられない」が書籍化されることになって、その記念にみんなで大騒ぎしちゃおう的な企画である。
場所はお台場。
カバンにパジャマを入れて、俺は颯爽と電車に乗り込む。
ぶっちゃけ、不安だらけだ。
来る予定だったモデルさんやタレント志望の女の子たちは連絡がつかなくなったり、体調不良で来られなくなったりしていた。
がっかりしすぎて俺の具合が悪くなってしまいそうだ。
いや、実際に二日酔いが酷く、今日の俺は絶好調とはほど遠い。
皆が見ている前で今回のイベントの収益金をボランティア団体にお渡しし、ほっこりする感じで幕を閉じる予定もあった。
封筒を手渡しする際、「難病の子供たちに『いい夢見ろよ』とお伝えください」などとカッコつける気満々だ。
ボランティア団体の人からお礼を言われた際に返すコメントだって用意してあったのだ。
「いえいえ、とんでもありません。僕は色んな人からいい人だと思われるのが大好きなんです」
照れ隠しなんだか正直すぎる心の声なのか解りにくいけど、まあいいだろう。
ところがどっこい、パソコンにメールが届く。
要約すると次のような内容だ。
「うす。ボランティアの人です。例のイベントぶっちゃけ行けないっす。正直すまんかった」
つまりイベントの収益金は皆の前でお渡しするのではなく、後日銀行から振り込むことになった。
ちょっと想像してみてほしい。
日中に30代の男が銀行を訪れ、無言でATMにお金を入れている姿を。
別に変なところは何もないが、とにかく地味だ。
盛大な拍手の中、にこやかに封筒をお渡しするのと比べると涙が出そうになる。
幸先が良くない感を拭えないまま、俺はジンベエ姿のままお台場に足を踏み入れた。
「おはようございます。リハに間に合わなくてすみません」
まずはイベントハウス店長、横山氏に挨拶をお詫びを入れる。
11時からリハーサルや最終調整を行う予定だったのだが、あまりに二日酔いが酷くて電車を降り、俺はひとしきり唸ったりしていたので遅くなってしまったのだ。
こういったとき、水商売は不利である。
前日の無茶な飲まされ方は尋常ではなかった。
しかしこれは言い訳にしかならない。
俺が遅刻をした点は事実だ。
とにかく平謝りである。
「ホントすみません!」
リハーサルも最終調整も、段取りの確認という大事な作業だ。
こんなことなら昨日、店からお休みを貰っておけばよかった。
「リハとか、今から少しでもできませんかね?」
「ああいえ」
横山さんは笑顔で首を横に振る。
「あんまりやることなかったです。ですんで、開始までくつろいでてください」
なんか釈然としないが結果オーライのようだ。
俺が昨日、本職に打ち込んだのは正解だったらしい。
俺は楽屋でジンベエを脱ぎ、用意していた牛柄のパジャマに着替える。
今日のコンセプトの1つが「パジャマパーティ」でもあるからだ。
なんだけど、ここでふと思った。
既にジンベエ姿の俺が、今さらパジャマに着替える必要がどこに?
開店15分前のミーティングにしてもそうだ。
横山さんが店のスタッフを集め、盛り上げていきましょう的な扇動を行う。
「では、主催者のめさ君、一言」
ここで実際は「今日はよろしくお願いします」と無難に挨拶をしたのだが、俺はこのとき声を大にしたかった。
「なんで俺だけパジャマなんだよォー!」
スタッフの皆さんは普通にユニフォームを装備しておいでだったからだ。
空気が遊びじゃなかっただけに、恥ずかしかった。
一応小声で「こんな格好ですんません」と赤面だけしておいた。
やがて続々とお客様方が入場し始める。
1人1人に挨拶と来場のお礼を言って、席に案内をした。
相席が嫌でないお客さんには友達作りの一環として1つのテーブルを囲んでもらい、俺なりに人見知りな方とそうでない方をバランス良く一緒になってもらったつもりだ。
中には気合を入れて、ガチャピンやピンクパンサーの着ぐるみを用意して来た猛者も目立つ。
寝言本の出版社はブログハウスというのだが、しばらくするとそこの代表取締役である小田原氏も姿を現してくださった。
彼は今日、ここ東京カルチャーカルチャーでも寝言本を販売すべく、本をたくさん持ってきてくれている。
小田原氏は言った。
「持ってきた本ですけど、イベント参加者様全員に行き渡ると思うんです。それだけ大量に持ってきました。ですんでこれ全部、お土産として皆さんに配っちゃいましょう」
太っ腹!
それは皆さん大喜びしてくれるであろう。
まさかのサプライズプレゼントである。
既にネットで予約をしちゃってる人には申し訳ないけども、余った1冊はプレゼント用として活用していただこう。
「まだ発売日前なんで、ここにいる皆さんが日本で初めて寝言本を手にする人たちになりますね」
と笑顔を見せる小山田氏。
素敵すぎだ。
イベント収益金をボランティア団体に直接お渡しできなくなったけれど、これで最後は大盛り上がりに違いない。
実はさっきからイベント最後の締めをどうするか、ずっと頭を悩ませていたのである。
でもこれで支障はなかろう。
俺は瞬時に計画を立て直す。
つい先日、俺にも彼女さんができちゃったので、まずはそのことを皆さんに発表しよう。
寝言とかに全然関係ないどうでもいい報告に、みんな静まり返るに違いない。
そこで俺は「もうちょっと俺に興味持ってよ!」と返し、間を持たせる。
そうしておいて「次の報告なら皆さんも嬉しくなると思いますよ」と、お土産が書籍である旨をお知らせするわけだ。
おいおい、悪くない流れじゃないか。
ラストはこれで完璧だな。
そうこうしつつイベント開始。
横山氏と一緒にステージに立ち、コミュの歴史や書籍化での苦労話、はたまた裏話や「面白かったけど諸事情あってボツになったネタ」などを披露していく。
後半では事前に取った参加者様たちのアンケートを見ながら、面白い夢の話や寝言の話題に花を咲かせた。
さて、いよいよラストだ。
俺はマイクに口を近づける。
「ではここで2つほど、皆さんにお知らせしたいことがあります」
「あ、そうだ! 大事なこと忘れてた!」
と、横山さんが割って入る。
どうしました?
「出版社の社長さんもいらしてくれてるから、何か一言お願いしましょう」
ああ、確かに。
そうでしたね。
小山田さん、せっかくですからお願いしてもいいですか?
かくして小山田氏もステージに上がり、出版に関するお話をしていただいた。
ジンベエ姿の小山田さんは、最後にこう宣言する。
「今日ここに来てくださった皆さんに、この寝言の本を1冊ずつプレゼントします」
先に言われちゃったー!
盛大な拍手と、タイミング良く鳴る感動的な音楽。
その喧騒の中、横山さんが俺に視線を送る。
「じゃあ、めさ君からのお知らせ、2つっていうのを最後に」
特にねえよ!
なんでキレてんのか絶対に解ってもらえないだろうから、俺は誤魔化す方向に神経を集中させる。
「いやあ、あったんですけどね。今、小山田さんに言ってもらえたんで、僕からはもうありません。実は先日、彼女さんができましてね?」
とここで、「おおー!」と歓声が沸いた。
計算外だ。
みんなそこは白ける場面じゃないのか?
どうでもいいって顔をしてくれー!
俺のトークは最後の最後でめちゃめちゃもうグダグダだ。
「あ、皆さん、なんかすんません、拍手してもらっちゃって。俺ぶっちゃけ、ここでシーンってするかと思ってて、でもその後に『本をあげるよ』って加えれば空気を取り戻せるって思ってて、でももういいです」
投げた。
サイン会みたいなことも初めてやれて、申し訳ない気分ながらも新鮮だったし、全体的にはとても楽しく雰囲気も良かった。
小山田氏からのプレゼントもみんなに喜んでもらえたし、主催者としての満足感なら上々だ。
この後は、行きたい人たちとで打ち上げ兼2次会となる。
謎のパジャマ一同は近場の居酒屋を目指した。
まさかこの後、破棄される死体の気持ちになれるなんて露知らず。
後半に続く。
2009年6月27日の今日は、待ちに待った「寝言本出版記念パーティ」だ。
ミクシィ内で立ち上げたお笑い投稿系のコミュニティ「変な寝言が忘れられない」が書籍化されることになって、その記念にみんなで大騒ぎしちゃおう的な企画である。
場所はお台場。
カバンにパジャマを入れて、俺は颯爽と電車に乗り込む。
ぶっちゃけ、不安だらけだ。
来る予定だったモデルさんやタレント志望の女の子たちは連絡がつかなくなったり、体調不良で来られなくなったりしていた。
がっかりしすぎて俺の具合が悪くなってしまいそうだ。
いや、実際に二日酔いが酷く、今日の俺は絶好調とはほど遠い。
皆が見ている前で今回のイベントの収益金をボランティア団体にお渡しし、ほっこりする感じで幕を閉じる予定もあった。
封筒を手渡しする際、「難病の子供たちに『いい夢見ろよ』とお伝えください」などとカッコつける気満々だ。
ボランティア団体の人からお礼を言われた際に返すコメントだって用意してあったのだ。
「いえいえ、とんでもありません。僕は色んな人からいい人だと思われるのが大好きなんです」
照れ隠しなんだか正直すぎる心の声なのか解りにくいけど、まあいいだろう。
ところがどっこい、パソコンにメールが届く。
要約すると次のような内容だ。
「うす。ボランティアの人です。例のイベントぶっちゃけ行けないっす。正直すまんかった」
つまりイベントの収益金は皆の前でお渡しするのではなく、後日銀行から振り込むことになった。
ちょっと想像してみてほしい。
日中に30代の男が銀行を訪れ、無言でATMにお金を入れている姿を。
別に変なところは何もないが、とにかく地味だ。
盛大な拍手の中、にこやかに封筒をお渡しするのと比べると涙が出そうになる。
幸先が良くない感を拭えないまま、俺はジンベエ姿のままお台場に足を踏み入れた。
「おはようございます。リハに間に合わなくてすみません」
まずはイベントハウス店長、横山氏に挨拶をお詫びを入れる。
11時からリハーサルや最終調整を行う予定だったのだが、あまりに二日酔いが酷くて電車を降り、俺はひとしきり唸ったりしていたので遅くなってしまったのだ。
こういったとき、水商売は不利である。
前日の無茶な飲まされ方は尋常ではなかった。
しかしこれは言い訳にしかならない。
俺が遅刻をした点は事実だ。
とにかく平謝りである。
「ホントすみません!」
リハーサルも最終調整も、段取りの確認という大事な作業だ。
こんなことなら昨日、店からお休みを貰っておけばよかった。
「リハとか、今から少しでもできませんかね?」
「ああいえ」
横山さんは笑顔で首を横に振る。
「あんまりやることなかったです。ですんで、開始までくつろいでてください」
なんか釈然としないが結果オーライのようだ。
俺が昨日、本職に打ち込んだのは正解だったらしい。
俺は楽屋でジンベエを脱ぎ、用意していた牛柄のパジャマに着替える。
今日のコンセプトの1つが「パジャマパーティ」でもあるからだ。
なんだけど、ここでふと思った。
既にジンベエ姿の俺が、今さらパジャマに着替える必要がどこに?
開店15分前のミーティングにしてもそうだ。
横山さんが店のスタッフを集め、盛り上げていきましょう的な扇動を行う。
「では、主催者のめさ君、一言」
ここで実際は「今日はよろしくお願いします」と無難に挨拶をしたのだが、俺はこのとき声を大にしたかった。
「なんで俺だけパジャマなんだよォー!」
スタッフの皆さんは普通にユニフォームを装備しておいでだったからだ。
空気が遊びじゃなかっただけに、恥ずかしかった。
一応小声で「こんな格好ですんません」と赤面だけしておいた。
やがて続々とお客様方が入場し始める。
1人1人に挨拶と来場のお礼を言って、席に案内をした。
相席が嫌でないお客さんには友達作りの一環として1つのテーブルを囲んでもらい、俺なりに人見知りな方とそうでない方をバランス良く一緒になってもらったつもりだ。
中には気合を入れて、ガチャピンやピンクパンサーの着ぐるみを用意して来た猛者も目立つ。
寝言本の出版社はブログハウスというのだが、しばらくするとそこの代表取締役である小田原氏も姿を現してくださった。
彼は今日、ここ東京カルチャーカルチャーでも寝言本を販売すべく、本をたくさん持ってきてくれている。
小田原氏は言った。
「持ってきた本ですけど、イベント参加者様全員に行き渡ると思うんです。それだけ大量に持ってきました。ですんでこれ全部、お土産として皆さんに配っちゃいましょう」
太っ腹!
それは皆さん大喜びしてくれるであろう。
まさかのサプライズプレゼントである。
既にネットで予約をしちゃってる人には申し訳ないけども、余った1冊はプレゼント用として活用していただこう。
「まだ発売日前なんで、ここにいる皆さんが日本で初めて寝言本を手にする人たちになりますね」
と笑顔を見せる小山田氏。
素敵すぎだ。
イベント収益金をボランティア団体に直接お渡しできなくなったけれど、これで最後は大盛り上がりに違いない。
実はさっきからイベント最後の締めをどうするか、ずっと頭を悩ませていたのである。
でもこれで支障はなかろう。
俺は瞬時に計画を立て直す。
つい先日、俺にも彼女さんができちゃったので、まずはそのことを皆さんに発表しよう。
寝言とかに全然関係ないどうでもいい報告に、みんな静まり返るに違いない。
そこで俺は「もうちょっと俺に興味持ってよ!」と返し、間を持たせる。
そうしておいて「次の報告なら皆さんも嬉しくなると思いますよ」と、お土産が書籍である旨をお知らせするわけだ。
おいおい、悪くない流れじゃないか。
ラストはこれで完璧だな。
そうこうしつつイベント開始。
横山氏と一緒にステージに立ち、コミュの歴史や書籍化での苦労話、はたまた裏話や「面白かったけど諸事情あってボツになったネタ」などを披露していく。
後半では事前に取った参加者様たちのアンケートを見ながら、面白い夢の話や寝言の話題に花を咲かせた。
さて、いよいよラストだ。
俺はマイクに口を近づける。
「ではここで2つほど、皆さんにお知らせしたいことがあります」
「あ、そうだ! 大事なこと忘れてた!」
と、横山さんが割って入る。
どうしました?
「出版社の社長さんもいらしてくれてるから、何か一言お願いしましょう」
ああ、確かに。
そうでしたね。
小山田さん、せっかくですからお願いしてもいいですか?
かくして小山田氏もステージに上がり、出版に関するお話をしていただいた。
ジンベエ姿の小山田さんは、最後にこう宣言する。
「今日ここに来てくださった皆さんに、この寝言の本を1冊ずつプレゼントします」
先に言われちゃったー!
盛大な拍手と、タイミング良く鳴る感動的な音楽。
その喧騒の中、横山さんが俺に視線を送る。
「じゃあ、めさ君からのお知らせ、2つっていうのを最後に」
特にねえよ!
なんでキレてんのか絶対に解ってもらえないだろうから、俺は誤魔化す方向に神経を集中させる。
「いやあ、あったんですけどね。今、小山田さんに言ってもらえたんで、僕からはもうありません。実は先日、彼女さんができましてね?」
とここで、「おおー!」と歓声が沸いた。
計算外だ。
みんなそこは白ける場面じゃないのか?
どうでもいいって顔をしてくれー!
俺のトークは最後の最後でめちゃめちゃもうグダグダだ。
「あ、皆さん、なんかすんません、拍手してもらっちゃって。俺ぶっちゃけ、ここでシーンってするかと思ってて、でもその後に『本をあげるよ』って加えれば空気を取り戻せるって思ってて、でももういいです」
投げた。
サイン会みたいなことも初めてやれて、申し訳ない気分ながらも新鮮だったし、全体的にはとても楽しく雰囲気も良かった。
小山田氏からのプレゼントもみんなに喜んでもらえたし、主催者としての満足感なら上々だ。
この後は、行きたい人たちとで打ち上げ兼2次会となる。
謎のパジャマ一同は近場の居酒屋を目指した。
まさかこの後、破棄される死体の気持ちになれるなんて露知らず。
後半に続く。
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