夢見町の史
Let’s どんまい!
April 01
今まで使ったことのない嘘。
ありそうでなさそう、でも有り得る嘘。
できれば人とカブらない嘘のほうがいい。
どんな嘘がいいだろうかと、そればかりを考えながら夜道を行く。
仕事を終えての帰宅途中、家に帰るまでの間に、日記のネタとして嘘を考えなくてはならない。
今日はエイプリルフールだというのに、俺はうっかりしていて、何も考えていなかったからだ。
何がいいかな、何がいいかな。
考え事に夢中になって歩き、十字路に差しかかる。
上の空だったせいで、勢い良く飛び出してきた子供と見事にぶつかってしまった。
地面にコンビニ弁当が3つ落ちた。
どうやら彼の持ち物らしい。
「あ、ごめん!」
地面に散らばった弁当を拾うと同時に、ふと思った。
こんな夜分に、どうして小学生が?
コンビニ弁当3つは、どうして袋に入っていなかったのだろう。
拾った弁当は冷たい。
温めてもらわなかったのだろうか。
もしやと思い、見ていないフリをしながら、視界の狭間で少年を観察する。
慌てて弁当を回収するせかせかとした態度、痩せ細った体、ボロボロになったトレーナー。
まさかこのご時世に?
と思ったのもつかの間、俺の想像は当たってしまったようだ。
コンビニの制服を着た青年が、遠くからこちらを目指し、走ってきている。
「坊主、そこの自販機に隠れろ」
拾った弁当を少年に渡しつつ、短く指示する。
今から逃げてももう遅いと判断したのだろう。
小学生は顔を真っ青にしながらも、俺の言う通りに、自動販売機の陰に身を潜めた。
「あの、すみません! 今!」
息を切らせながら、コンビニの店員らしき青年が声をかけてくる。
「今、小学生ぐらいの子供が走ってきませんでした!? 汚いトレーナー着た」
「ああ、それなら」
俺は背後に続く道を指差す。
「あっちに走っていきましたよ」
店員は「ありがとうございます」と言いいながら、再び走り出した。
青年の後ろ姿が見えなくなったことを確認し、自販機の陰に視線を投げる。
「もう大丈夫だぞ」
声をかけると、恐る恐るといった態度で少年が顔を出した。
うつむき加減で、彼はもじもじと口を動かす。
「あの、ありがとう、ございます」
いや、いいんだ。
君のおかげで、こっちも助かったよ。
そう告げると少年は不思議そうな顔をした。
その表情を見なかったことにして、構わず続ける。
「ありがとう。これはお礼だ」
少年に千円札を握らせる。
弁当が3つあったということは、彼には自分以外に誰か、飢えさせたくない人がいるのだろう。
「弁当だけじゃ喉が乾くだろ。ジュースでも買うといい」
少年は表情を「信じられない」と言いたげな色に変え、おろおろとした。
俺は腰を下ろすと、目線を彼の高さに合わせる。
「店のお兄さんには悪いけど、今日はエイプリルフールだからな。どんな嘘をつこうか、ずっと悩んでたんだ。でも、おかげでいい嘘がつけた」
少年はそれでもまだ戸惑っていたけれど、俺は早々にその場を立ち去る。
早く家に帰って、今のことを日記を書かなくてはならない。
「あの、ありがとう、ございます」
もう1度だけ、小さな声が聞こえた気がした。
なーんちゃって。
もちろん嘘ですよん。
ホントすんません。
渡したのは千円じゃなくて、1万円です。
3/31 パンコロさん、誕生日おめでとうございます!
4/1 みきさん、誕生日おめでとうございます!
ちなみに、このお祝いはもちろん、嘘じゃないですからね。
尚、日記については、どこからどこまでが嘘なのか、後日打ち明けます。
皆さん、予想しちゃって下さいませ。
っと、4月馬鹿でしたね~。騙しも騙されもしなかったんですが、めささんになら騙されたい気もします。
(*^.^*)
今回のお話 仕事休憩中 ご飯を買いに行きながら読んでいました
すてきなお話ですね 嘘と気づかず 涙が頬を伝いました
自分の涙で視界が悪くなっており 急に飛び出してきた 子供と見事にぶつかってしまいました 地面に三つのコンビニ弁当が… (中略)
文才のある方は羨ましいです
ほんとにハマっています ハマっていますハマってます
毎日見に来ますね
また明日
4/2 みちさん、誕生日おめでとうございます!
今日は奇しくも、オフ会にて一緒にお酒を楽しんだお二方のバースデイ。
是非また飲みましょうね。
誕生日おめでとうございます!
さて。
日記の真相発表まで、あと少々です。
もうちょっとだけ、お待ち下さいませ。
でも一万円とは!!
そらは今事実まぁ世間上はニート(すごい嫌なんですけど)なので、毎日家事を手伝って親から日給300円をもらって過ごしてる日々なので、衝撃が…Σ( ̄□ ̄;)
ここしばらくお札には出会ってません(;_;)
それでは4月1日の、本当の日記ですよ。
皆さん、ガッカリするといい。
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今まで使ったことのない嘘。
ありそうでなさそう、でも有り得る嘘。
できれば人とカブらない嘘のほうがいい。
どんな嘘がいいだろうかと、そればかりを考えながら夜道を行く。
仕事を終えての帰宅途中、家に帰るまでの間に、日記のネタとして嘘を考えなくてはならない。
今日はエイプリルフールだというのに、俺はうっかりしていて、何も考えていなかったからだ。
何がいいかな、何がいいかな。
考え事に夢中になって歩き、十字路に差しかかる。
そうだ。
こういう十字路で万引きした子供と衝突して、かばったって嘘にしよう。
ちょいとリアルに書けば、なんかこう、勘違いされて好感度が上がるに違いない。
「ふはは」
思わず幸せな気分になってしまった。
早く家に帰って、この嘘を日記を書かなくてはならない。
いい嘘が浮かんで、ホントよかった。
ギリギリ間に合った。
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というわけで、俺は誰ともぶつかっていませんでした。
お金もあげてません。
だって持ってないんだもの。
今日の格言。
「カッコイイめさは、めさじゃない」
夢と希望を持ってしまった方、本当にすみませんでした!
めさでした。
せっかくだからもっとこう、ドラマチックな構成にしたくて、さっき日記に手を加えさせて頂きました。
ええ。
そういう手間は惜しみませんとも。