夢見町の史
Let’s どんまい!
August 05
「あの人は、なんか緑って感じがした。お前は紫、かなあ」
同僚は人を色で喩える。
その人の何を見て何色とするのかは、不明だ。
基準は彼にしか解らないことで、ただただ「なんとなく」なのだという。
「俺は俺は?」
「うーん。水色だなあ」
「じゃあ俺は何色?」
「赤」
何色だからどうだということはないのだろうけども、こういった話題は占いを彷彿させるのだろう。
なかなかに盛り上がっている。
自分が何色だと判断されるのか、ちょっぴり興味深い。
というわけで俺も皆と一緒になり、喰らいつく。
「ねえねえ、俺は何色?」
「めささんは、初めて見た時ねえ、グレーだと思ったよ」
「グレイ!?」
なんで俺だけ宇宙人なのだろうか。
子供ぐらいの身長で巨大な頭部。
すぐに牛を連れ去る。
人の記憶を勝手に消す。
1人の時でも「ワレワレハ…」と必ず複数形を使う。
裏で大国と取引をし、よく解らない乗り物で空を飛ぶ。
それがグレイだ。
所属しているサークルが、ミステリーサークル。
「俺のどこがグレイよ!?」
「どこがグレーかって訊かれても困るけど、ホントなんとなく」
俺、そんなに頭でっかち?
俺の身長、そんなもんか?
「俺以外にグレイな人って、他にもいたわけ?」
「いたよ?」
思いの他、地球は侵略されているらしい。
「そいつって、どんな奴だった?」
「そのグレーだった人とは俺、4年半つき合ったよ」
愛は大気圏すら越えていた。
「お前、スゲー人だったんですね」
「そう? ただのイメージなんだけど」
確かにイメージなのだろう。
俺もさっきから、CGみたいな画しか浮かんでこない。
そんなことより、俺は一体何色なのだ。