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夢見町の史

Let’s どんまい!

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March 29
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2010
November 25
「ここは通さん! どうしても通りたくば、この俺様をダジャレで笑わせてみせよ!」
「アルミ缶の上に、あるミカン」
「どうぞお通りください」

  皆さん、おはようございます。

  こないだね、パソコン内のデータを色々と整理してみたんですよ。
  そしたらメモファイルに、友人との会話のやり取りが記録されていました。
  チーフと実際になされた言葉の応酬、せっかくですので無許可で晒していこうと思います。

  まずは、これどっかで書いたことがあるかも知れません。
  バーベキューの下見をしに、ある町を訪れたときのことです。

めさ「チーフ、あそこにスーパーがあるよ! 当日は食料をあそこで買おう!」

チーフ「食材の確保、OK」

めさ「チーフ! あそこに酒屋がある!」

チーフ「お酒、OK」

めさ「チーフ! メガネも売っとる!」

チーフ「メガネ、OK」

めさ「チーフ! お弁当屋さんもある! これで現地では料理しなくて済むね!」

チーフ「おう、そうだな」

めさ「お! 病院もあるよ!」

チーフ「動物病院、か。まあ大丈夫だろう。おや? めさ、ドーナッツも売ってるぞ」

めさ「ドーナッツは要らない」

  俺もチーフも、バーベキューを何だと思っているのでしょうか。

  また別の日。
  俺が部屋の掃除をしているとき。

めさ「なんで俺の部屋、毎日髪の毛が落ちてるんだろ」

チーフ「なんだかんだで、毎日髪が抜けてんだよ」

めさ「俺の髪じゃないよ!」

チーフ「お前の毛じゃなかったら、そっちのほうが怖えよ」

  DNA鑑定の結果が待たれるところです。

  次は、俺とチーフとで議論ごっこを開催したときの様子です。
  テーマは、「UFOは宇宙人の乗り物であるか否か」
  ジャンケンで否定派と肯定派とに分かれ、論争スタート。

  俺は「UFOは宇宙人の乗り物だ」と論理立てて言い張り、チーフはそれを論破しようと頑張ることになりました。

チーフ「UFOを呼べる人なんかがいるわけでしょ? そういった方々がUFOを呼んで、私がそれを目撃できたら信じますよ。でも私は見たことがないわけです」

めさ「私はUFOに乗ったことがありますよ」

チーフ「え、あるの!? ウ、ウソ!」

めさ「今のはごめん。嘘ついた」

チーフ「なんで何の効果もない嘘をつくんだ、お前は」

  論理関係ねえ。

  ラストは、チーフが俺ん家に遊びに来たときの模様です。
  着替え中だったのに、チーフが急に部屋のふすまを開けました。

めさ「ひゃあ!」

チーフ「ご、ごめん!」

  お前ら昔のラブコメか。

  それにしても俺、なんで会話の応酬なんて記録していたのでしょうか。
  動画のネタか何かにするつもりだった?
  わかりゃん。

  そのうちチーフを自宅のアパート、じゃなかった。
  えっと、高級収録スタジオにお招きし、フリートークを生放送でやれたらいいなあ、なんて思っている次第。

  めさでした。

  どんなカオスな会話が展開されるのか、今から楽しみです。

拍手[29回]

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2010
November 23
 動けない。
  目が覚めているし、体勢は中腰だというのに、俺と悪友はすっかり金縛り状態だ。

「トメ、なんか喋れよ」

  俺が促すと悪友は、

「お~」

  それだけ言って再び黙り込んだ。

  俺たちの視線の先には、空のロックグラスが2つ置いてある。

  彼の母親は、実の息子でもない俺たちを本当に可愛がってくれていた。
  高校時代は特に大食漢だったというのに、ジンのおふくろさんは当たり前のように、家族以外の夕食をいつでも用意してくれる。

「うちの子よりも食べるなんて。あんたたちのせいで、また家計に大打撃だわ」

  その言葉は不思議と嫌味に聞こえない。

  放課後はだいたい、俺はトメと一緒にジンの家で遊んでいた。
  それこそ毎日のように、夜分までだ。
  団地であるにもかかわらず無遠慮にげらげらと大声で笑う俺たちは、思い返してみればうるさいと叱られたことがない。

  当時のトメは、なんというか、不良?
  いや、そんな不良を次々とぶっ飛ばしてしまうような、派手な悪ガキだった。
  俺は俺でハードにヘビーな家庭環境だったりもしたから、2人してなかなか痛快な評判を立てられていたものだ。

  だから、ジンの家にこのような電話がかかってくるのも、仕方のないことなのかも知れない。

「お宅のジン君、めさ君と仲がいいみたいだけど、大丈夫ですか?」
「あのトメ君が、ジン君と遊んでいるみたいで、心配になって電話しました」

  その告げ口に、ジンの母は堂々と胸を張ったのだそうだ。

「ジンの友達を選ぶのは、私じゃなく、ジンですから」

  高校2年の昼休み。
  弁当を平らげてのんびりしていると、校内放送が耳に入る。
  空手道部顧問、K先生の声だ。

「空手道部員、めさとトメ、中庭に集合しなさい。繰り返します――」

  なんで神妙な声色なのだと、俺はトメと一緒になっておろおろするばかりだ。

「トメ、俺たち最近、なんか怒られるようなこと、したっけ!?」
「わっかんねえよ~、どれのことだかよ~。取り合えずオメー、先に行って謝っとけよ~」
「やだよばか! テメーも一緒に来い!」

  よく解らんが怒られる。
  どの悪さがバレたのか解らんが、何かがバレた。
  そうとしか考えられなかった俺にもトメにも、K先生の言葉は意外だった。

「もうすぐ母の日でしょ」

  なんじゃそりゃ。
  と、内心首を傾げる。
  K先生は、不思議そうな顔をしている俺たちに構わず、続ける。

「あんたたち、ジンの家にいつもお世話になっているんでしょう? こないだね、個人面談でジンのお母さんと話したんだけど」

  そういえばK先生は、ジンのクラスの担任でもあった。

「ジンのお母さんね、あんたたちのこと、実の息子と同じぐらい可愛いって言ってたわよ」

  例えばケーキが1つしかなかったとする。
  そうなったらジンのおふくろさんは、そのケーキを綺麗に3等分して、ジンと、トメと、俺に与えるのだと、K先生は直接、おふくろさんから聞いたのだそうだ。

「そんぐらい想ってもらってんだから、あんたたち、次の母の日にぐらい、花かなんか買って、渡してやりなさい」

  それだけを伝えるために全校放送を使ったK先生も凄いが、ジンのおふくろさんの慈愛も凄い。
  俺たちは「はい!」と勢いよく返事をし、その場を後にした。

  俺とトメは、相も変らずジンの家でメシを喰う。

「おかわり、いいっすか」
「若いうちは遠慮しちゃいけないの」
「じゃあ俺も!」
「お前ら、なんでいつも俺より多く喰ってんだよ、このクソガキ!」

  賑やかな食卓だ。

  こうして満腹になり、満ち足りた顔をして俺とトメは家路につく。

  ジンのおふくろさんは、江戸切子というガラス細工が好きだと耳にしたことがある。
  それはそれは綺麗なグラスなのだそうだ。
  だけどそれは非常に高価で、高校生に買えるような代物じゃない。
  ではやはり花を買うべきか。
  考えてみれば初めてのプレゼントだから、形に残る品が好ましいのだが。

  悩んでいるうちに、翌月。
  ふとした疑問があって、トメに訊ねる。

「なあトメ」
「あ~ん?」
「あのさ、母の日っていつ?」
「俺が知ってるわけねえだろ~」
「だよなあ」

  重たい話だから原因は端折るが、とにかく俺にもトメにも母の日に物を贈る習慣が元々ない。
  何月何日が母の日なのか、どちらも素で知らなかったのである。
  知らなかったのだが、1つだけ間違いなく言い切れることがあって、俺は口を開いた。

「母の日、たぶんもう過ぎたぞ」
「俺もそんな気がしてたよ~」

  ここまでばかな少年たちも、年月さえ過ぎれば成人する。
  二十歳を迎える頃は、俺もトメを給料を貰うようになっていた。
  母の日がいつなのかも人から教えてもらって覚えた。
  遅れてしまったが、K先生からされた指導を実行するのは今しかなかろう。

  トメと酒を飲みながら、ふっと切り出してみる。

「今度よ、江戸切子買いに行かねえ?」
「おう、いいぜ~」

  前々からおふくろさんが欲しがっていた、江戸切子のロックグラス。
  これを渡せば、少しぐらい安心してくれるのではないか。

「俺たち、これが買えるぐらい、仕事頑張ってます」

  江戸切子は、そんなメッセージをおふくろさんに伝えてくれそうな気がした。

  お金をたくさん用意して、トメと一緒に高級百貨店へ。
  そこはきらびやかな、なんだかよく解らん商品が輝きを放っていて、俺たちを威嚇しているかのようだ。
  油断したら肉体ごと蒸発させられてしまいそうである。
  ガラス細工や食器、壷などの売り場なのに、何故かいい匂いまでするし、わけが解らん。
  店が凄いのか俺たちが駄目なのかも解らん。
  倒れる前に先を急ごう。

  やがて、目的の品がショーウインドウの中で光っているのを見つけ、足を止める。
  江戸切子のロックグラスは2種類あった。
  どちらも赤と青のペアグラスだ。

  俺とトメは無言で頷き合う。

  おふくろさん、パパ殿とお酒飲むの好きだし、これはペアグラスのほうがよろしかろう。
  パパ殿にもお世話になっているからな。

「問題は、どっちのペアグラスにするか、だけど」
「それも答え出てんだろ~」

  トメの言う通り、悩むまでもなかった。

  2種類あるペアグラス。
  片方は1万程度と安いが、色が単調である。
  もう片方は見事なまでの淡い美しさで、それぞれ優しげな桜色と空色がキラキラしている。
  金額を見ると、べらぼうに高い。
  自分用には絶対に買わない額だ。

「安いほうは、安い」

  と、トメは当たり前のことを口にする。

「なんだけどよ~、こっちのすげーやつ見ちまったら、高えほう買ってくしかねえだろ~」

  同感だった。
  安いほうは単純な柄で納得がいかない。
  俺たち2人の金を足せばどうにか手が届くこともあるし、このやたら高いほうを買おうと、心から決めることができた。

  ただ、俺たちはどちらも店員さんを呼びに行こうとしない。
  あまりにも高いので、購入するのに心の準備が必要なのだ。

「そろそろ店員さん呼ぶ?」
「いや、まだ早えだろ~」
「だよな! 俺もそう思ってた」

  俺とトメは30分ほど、店の中を見渡したり、深呼吸を繰り返したり、曲げようと念じるかのようにグラスをじっと眺めたりした。

  どうにか魂を振り絞るかのように財布から現金を振り絞ると、俺とトメはなんだか肩の力が抜けてしまっていた。
  2人して虚ろな目をし、上空を見るともなく見る。

「なあトメ」
「あ~?」
「高え買い物したついでにさ、パーっといいメシ喰って帰らねえ?」
「ああ~、いいぜ~」
「じゃあ店は俺に任せろ。こないだお客さんに連れてってもらったとこが、なんか豪華で美味かったんだ。そこ行こうぜ」
「いいぜ~」

  ところがそこは「なんか豪華」どころではなく普通に高級料亭で、メニューを見ると飛び上がりたくなるようなお高い食事ばかり。
  二十歳そこそこの小僧どもが辺りを見渡すと、客の誰もがスーツ姿で全員政治家にしか見えない。

「見ろよトメ。海原雄山がいっぱいいるぞ」
「オメーよぉ~、ちょっといいどころじゃねえじゃねえかよ、この店よ~」
「俺が連れてきてもらったときはご馳走になるって立ち位置だったから、ここまで高えって知らなかったんだよ!」
「どうすんだよ、注文よ~」
「『やっぱいいです』って帰るのは果てしなく恥ずかしいな。江戸切子返品しに行く?」
「冗談言ってる場合じゃねえよ~。どうすんだよ、マジでよ~」
「今ある金で食えるもん頼むしかねえだろ」

  こうして俺たちは2人でビール1本と枝豆を仲良くつつき、店の人に聞こえるように「あ、そろそろ社長んとこ行かねえと」などとわざとらしくほざくと、ぐーぐー鳴る腹の音を聞かれながら店を後にした。

「――なんていう苦労をして、トメと一緒にこれを買ってきましたよ」

  母の日にプレゼントを渡すと、ジンのおふくろさんはとても喜んでくれた。

「ありがと。じゃあさっそく使おうかしらね」

  ただの焼酎も、グラスがいいと美味しそうに見える。

  おふくろさんは「ありがと」ともう1度言ってくれた。

  あれから10数年。
  空色のほうのグラスは割れてしまったけれど、おふくろさんは半身不随になってしまったけれど、今でも息子たちを心配してくれている。

  トメも俺も、正月は自分の実家ではなく、ジンの実家に顔を出ようことが自然な儀式となっている。
  自分の家にはちょくちょく帰っているけれど、ジンの実家には正月という名目があったほうが伺いやすいからだ。

「お、いらっしゃい。どうぞ」
「お邪魔します~」
「明けましておめでとうっす、パパ殿。おふくろさんいます?」
「いるよ。お~い! めさとトメ来た」
「あら、いらっしゃい」
「明けましておめでとうございます~。これ、酒買ってきましたよ~」
「こっち氷! 割る用の氷!」
「じゃあ飲む用意しなきゃねえ」
「あ! 俺やりますよ! グラスどこですか?」
「そこ。その棚の上から2番目」

  示されたそこに手を伸ばすと、桜色が淡い輝きを放っていて、それはそれはとても綺麗な江戸切子だ。

「じゃあかんぱーい!」
「今年もよろしくお願いしまーす」
「ってゆうかジンはどこ行ってんだよ、あいつ~」
「だよな! 実の息子がいないでどうするって話だよなあ」

  パパ殿も、おふくろさんも、にこにこと俺たちの漫才のような会話を聞いて微笑を浮かべている。

「トメお前、もしかして今日、連絡もしないでいきなりここに来たの!?」
「おう、アポなしだよ~」
「ばかか! おふくろさんとパパ殿がどっか出かけてたらどうすんだよ!」
「勝手に入って待ってるつもりだったよ~」
「どこのピッキング犯だお前は! もうパパ殿、電話番号教えてください! 来年は俺から電話1本入れてから来ます!」

  にこにこと俺たちの漫才のような会話を聞いて微笑を浮かべている、俺たちの母さん。
  彼女の手元では桜色が淡い輝きを放っていて、それはそれはとても綺麗な江戸切子だ。

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2010
October 12
 涙の数だけ強くなれるなら、俺はとっくに超無敵。
  めさです。

  おはようございます、皆さん。

  久々の更新ですけども、たまにはだらだら綴りますか。

  こないだね、行ってきましたよ。
  野外料理大会をしに、多摩川まで。

  夏に富士登山に挑戦したかったんですけども、もの凄いレベルの金銭トラブルがあって叶わず、山小屋をキャンセル。
  普通だったら「嘘だろ!?」って思われるような奇跡的なトラブルだったんですけれど、やはりお金のことなので記事にしたって面白くないし。

  そこで、お金のかからない企画として川辺でお料理大会を開催してみたというわけです。

  俺は登山で使うような調理セットと、ダンボール箱を持参。
  色々と組み立ててスモーカーを作成します。
  ベーコンを作ると同時に、ハムやチーズ、ゆで卵を燻製にしました。

  合間にコーヒーを淹れ、具だくさんのスープを作り、誰かが用意した肉をタマネギと一緒に炒めて皆に振る舞う。

  なんて優雅なんだろうと思いませんか?

  俺は思いませんでした。
  作り手の数がやたら少なかったからです。

  俺、自分のご飯は自分で用意って書かなかったっけ!?
  お前たちの調理器具どこ!?
  仕方ねえ!
  道具ある奴だけでメシ作る!

  で、調理に夢中になってしまい、俺ときたら喋らない喋らない。
  作ってはくばり、作ってはくばり。
  俺は自分で持ってきた食材ですら口にできていません。

  さて。 
  ここでいいこと書いていいですか?

  みんなが美味しい美味しいって凄くたくさん食べてくれるから、めちゃめちゃやる気が出てました!

  俺の心の声は、

「なんで誰も何も用意してないのォ!?」

  から、

「余ってる食材ガンガン持って来い! なんか適当に作るから、お前ら全員には特別任務を命じる! 酒でも飲みながら景色や会話を楽しんでいろ! 重要な仕事だから手ェ抜くなよ!?」

  自分の空腹を忘れるぐらい、幸せでした。
  いつもは俺、自分で食べるご飯しか作ってなかったから、美味しいって言ってもらえて本当によかったです。

  ただ、1つだけ不満が。

  俺はずっと何かしらを作り続けていたわけで、それを記事にしたところで、果たして誰が喜ぶというのでしょうか。

  試しに書いてみましょう。

  俺は野菜を刻みました。
  お湯を沸かしました。
  適当に味をつけました。
  弱火で色々ぐつぐつ煮ました。

  もう我ながら、びっくりです。
  なんてつまんねえ文章でしょうか。
  ここまで地味な記事書いたの初めてです。

  俺がその場のインスピレーションで作ったスープは「めさ汁」と呼ばれ、人から食欲を失せさせます。

「でも、美味しいです! めさ汁!」

  あの、すみません。
  人聞きが最悪です。

「あっ! 服にめさ汁が着いちゃった! めさの汁が、あたしの服に~!」

  もしかしてあなた、わざと言ってませんか?

  それでも俺は笑顔のまま。
  うら若き乙女から「めさの汁があたしに」などと聞き様によってはハレンチな連想をさせてしまう響きに、まるで悪い気がしなかったのです。

「おいおい~。やめてよね~。誰の汁が、どうしたって?」

  もの凄いナチュラルなセクハラをしてしまい、すみませんでした。

  ちなみに、この日のベーコンは持ち帰り、一晩冷蔵庫で眠らせておきました。
  少し切り分けて炒めてみたら、あら不思議。
  もう最高に美味しかったです。

  次は釣りかな。

  めさでした。

  あまりに川原が癒されるので、俺だけ野宿して翌日帰ろうかと真面目に考えちゃった。

拍手[71回]

2010
September 27
 それは実際にある猫カフェとは異質なもので、本物の猫は1匹もいなかった。
  ウエイトレスの女の子たちはメイドのような服を着て、頭には猫耳のカチューシャを装着している。

「いらっしゃいませにゃん!」

  その語尾に、俺は思わず顔をしかめる。

  どいつもこいつも、どうしてこう可愛らしいんだよ!
  全っ然、いい店じゃねえか。
  ちっとも俺の心に響きやがる。

  案内されたテーブルに着く。
  メニューにあったオムライスは1200円。
  普通よりは少し高めだが、まあこれにしておこう。

  オムライスを運んできたウエイトレスが、ケチャップを両手で抱えるようにして持ち、首を傾げる。

「ハートマークを描きますかにゃん? 500円の追加でサービスしますにゃん」

  たかがハートマークだけで500円だと!?
  ふざけんな!

  俺は憤然と立ち上がる。

「お願いします!」
「名前も書きますかにゃん?」
「名前はいくら追加ですか?」
「1000円ですにゃん」
「1000円!? だったらそれもお願いします!」

  こうして目前にはケチャップで「めさ」と、そしてハートマークが描かれたオムライスが。
  これで合計2700円か。
  ケチャップが高いのか、オムライス本体が安いのか解らんが、何故か幸せな気分だ。

  気づけばウエイトレスは2人に増えている。

「2人で一緒にふーふーしますかにゃん?」
「あーんしてもいいですかにゃん?」

  金に糸目はつけません。
  と、テレビなどでよく聞く割には日常で1度も使ったことのない言葉を、俺は口にしていた。

  2人の猫耳はにこりと頷くと、スプーンでオムライスを一部すくい上げる。
  ウエイトレスは向かい合うようにして立ち、「今からキスでもするの?」ぐらいの距離まで顔を近づけさせた。
  顔と顔のわずかな間にスプーンを持ってきて、それを両サイドからふうふうと息を吹きかける。

  なんだろう。
  よくわかんないけど、なんか素晴らしい。
  この後、「あーん」が来るわけか。
  なんだろう。
  素晴らしい。

「はい、あーんにゃん」

  来た!

  ところが。
  ウエイトレスはオムライスを俺にではなく、相手の猫耳に食べさせる。

「美味しーにゃん! ありがとにゃん!」

  なにそれ。
  毒見のつもり?
「あーんしますかにゃん?」って、そういうこと?
  俺にじゃないんだ?

  その後、俺はしばらく見守るモード全開だ。
  ウエイトレスたちはオムライスを冷ましては交互に食し、全て綺麗に平らげると俺に「ご馳走様でしたにゃん」と告げ、その場を立ち去った。

  やがて、さっきの2人がまたやって来る。

「デザートは何にしますかにゃん?」

  デザートも何も、メインディッシュを食べさせてもらえてないんですけど、バニラアイスをお願いします。

「かしこまりましたにゃん! 温めますか?」

  え、はい?

「温めますかにゃん? 500円でサービスしますにゃん」

  温めちゃうの?
  アイスを?
  それでしかもお金取られるの?

「うう、ダメですか、にゃん…?」

  ダメも何も、アイスってほら、温める物じゃないし!

「うええええん。怒られたにゃん~」
「よしよし、可哀想にゃん。悪いお客さんにゃん?」

  いえいえいえいえ!
  違う違う!
  俺、昔からアイスは温かいのが大好きで!
  だから温めてください!

「かしこまりましたにゃん!」
「少々お待ちくださいにゃん」

  なんだろう。
  店の奥からチーンって音がしたけど、聞こえなかったことにしよう。

「お待たせしましたにゃん」

  白い液体がいい湯気出してますね。
  こんなアイス、初めてです。

「ふーふーしますかにゃん?」

  え!?
  冷ますの!?
  アイスに対してアメとムチみたいなことになってませんか?

「ふーふーは特別サービスにゃん!」

  マジですか。
  じゃあお願いします。

「自分でやるにゃん」

  サービスって、セルフサービスって意味かよ!?

  とまあ、そのような妄想話に、俺たちは夢中になっていたわけだ。
  実際には存在しない架空のにゃんにゃんカフェ。
  俺はそこの客で、AちゃんとYちゃんがウエイトレスといった設定になっている。

  なんでこんな流れになったのかさっぱり解らないけども、謎の楽しさを俺は感じていた。

「いらっしゃいませにゃん!」
「今日も1人ですかにゃん?」

  あ、はい、今日もよろしくお願いします。

「お客さん、いつも来てくれますにゃん?」
「どれぐらい来てますにゃん?」

  週5でお世話になってます。

「いい金ヅル、ううん! いいお客さんにゃん!」
「それで、今日はどんなサービスを受けたいにゃん?」

  あの、あの、耳かき、なんてのはダメ、ですかねえ?

「耳かきにゃん?」
「もちろんオッケーにゃん!」

  マジですか!

「せっかく2人いるから、両耳かきにするにゃん?」

  両耳かき!
  こんな感じ!?



a5b0c71c.jpg










「そうですにゃん」
「だいたい合ってますにゃん」

  じゃあそれでお願いします!
  両耳かき、最高!

「かしこまりましたにゃん!」

  え?
  あのう、その長いの、なんですか?

「いいから、じっとしてるにゃん」
「少しでも動くと、命にかかわるにゃん」

  え、え、え!?
  ちょ、あの!



22cfb241.png








  死んでる死んでる!
  俺これ絶対死んでる!
  明らかに貫通してんじゃん!
  耳どころか頭蓋骨の中身かいてるじゃん!
  脳の位置ズレる!

「もっと奥までしてほしいにゃん?」

  これ以上奥がどこにある!?
  もうお腹いっぱいです、ありがとう!
  満足しました!

「今のはさすがに高くつきましたにゃん」

  殺されかけても俺、お金払うんだ?

「だって特別サービスですにゃん」

  確かにあれだけの荒業で生還させられるってことは特別な技術が必要なんでしょうね。

「次はどうしますかにゃん?」

  え。
  うんと、じゃあですね、その、腕枕したい、なんちゃって。

「了解しましたにゃん!」
「せっかくだから、両腕枕にしますかにゃん? あたしたち2人が、めささんに腕枕してもらいますにゃん」

  マジで!?
  そんなハーレム状態、一生体験できないものと思ってました!
  いくらかかってもいいから、それでお願いします!

「かしこまりましたにゃん!」
「じゃあ、そこに横になるにゃん」

  はい!
  喜んで!

「で、万歳するにゃん」

  万歳?

「では、失礼しますにゃん」



b68883be.png








  なんでこうなる。
  横には来てくれないの?

「じゃ次は、腕膝枕なんてどうですかにゃん?」

  腕、膝枕って?

「めささんが今、想像した通りですにゃん」

  だとしたらこう?



22c8e648.png









  今までのパターンを考えると違う気がするけども、じゃあ是非!

「では、失礼いたしますにゃん」



acc45001.jpg












  これが腕膝枕か。
  まずですね、想像と全然違います。
  これ1人でやってますよね。
  で、非常に言いにくいんですけども、寝苦しいです。
  君も辛そうな顔になってるから、無理しないでください。

  「お気遣い、ありがとにゃん! 血流が止まって腕の感覚がなくなるのがこのサービスの欠点にゃん」

  欠点もっといっぱいあるからね!?
  もう凝ったことしなくっていいから、普通に膝枕してもらっていいですか?

「もちろん、いいですにゃん!」
「せっかく2人いるから、両膝枕にしますかにゃん?」

  両膝枕!?
  なにそれ。
  技?

  いや待てよ?
  たぶんだけど、こんな感じか?






  つまり俺は正座をしたまま後ろにのぞけるようにして倒れればいいのだろうか。
  どうせ違うんだろうけど、お願いします。

  「じゃあ、失礼しますにゃん」







  どうなってんだそれェ!?
  Yちゃん、それ物理的に無理!
  そこまで頑張らないでいいから!
  もっと楽な姿勢になって!

「じゃあ、こうかにゃん?」



151846d7.jpg












  ちょっと待った、一旦ストップ!

  と声を上げ、妄想は中断。

  Aちゃん、これは一体どういったアレだ!?
  今までの絵でまともなやつなんて1枚もなかったけど、これは酷すぎだ!
  見ろ!
  俺がツチノコのようだ!
  どうしてこれが人なんだ!

「めささんですにゃん」

  語尾ににゃんはもういいから!
  俺これ、どうなってんの?
  何に変身したの俺。

「めささんって、幻の生き物だったんですね」

  やっぱりツチノコだったか!
  俺、どういう体勢なのこれ。
  どっちが前?

「この場合、めささん90度以上折れてるじゃないですか~」

  鋭角に折るな俺を!

「これがまっすぐだった場合、あたしと同じ体勢になります」

  なるほど、わかんない!
  俺はどう折れてんの?
  前かがみ?

「横に折れてます」

  折れられるか!
  だってちょっともう1回見てみ?



151846d7.jpg












  つくづく人じゃないことがよく解ると思うんだ。

「また来てくださいにゃん」
「お待ちしてますにゃん」

  お前たちに勝てないってこと、最初から解ってました。
  じゃあまた来ます。

「次はいつ来てくれますかにゃん?」

  明日。

  そう迷わず答えられた俺って一体。

  真夜中のこの妄想話とお絵描きタイム、果たして意義はあったのだろうか。

拍手[48回]

2010
September 14
 とても文字では表せられない俺の悲鳴が大音量で轟く。
  視線の先には、首から上が馬で、体が人間といったミノタウロスの親戚みたいな奴が無言で立っていた。

  俺の部屋に、なんでこんな怪物が!?

  前触れなくフスマが勝手に開いたかと思うと、こいつがいた。

  友人らがうちへの襲撃を計画していたことは知っていたが、まさかウマタウロスが来るとは予想外だ。

  パソコンでの作業を中断し、俺は威圧するかのように男らしく怪物に怒鳴りつける。

「誰ぇ~?」

  馬の後ろからは小柄な女友達が現れて、クナイを構えるなどしてからスッと消える。

  いつか手裏剣で攻撃されかけたことがあったけど、あの子までそっちの人だったのか。

  ってゆうか馬の人、誰?

「お邪魔しました~」

  誰かの声がし、馬がペコリと頭を下げる。
  フスマが閉められた。

  一瞬にして帰るの!?
  もうちょっとうちで何かやってけよ!

  腰が抜けていたけれどなんとか立ち上がり、連中の後を追う。

「どうも、お疲れ様です。散らかってるけど、どうぞ」

  改めて部屋に招き入れると、うちを襲撃したのは3人と1匹であることが解る。

  友人夫婦とうら若き女友達。
  あと人と合成された馬というか、馬と合成された人みたいことになっている男子。
  その正体が誰なのかさっぱり読めない。

「あの、こちらはどなたなの?」

  しかしその質問に誰も答えない。

  ホント誰!?
  その言葉を5回ぐらい繰り返したところで、ようやく馬の被り物に手がかかる。
  彼がゆっくりとお面を外した。

「君は…!」

  馬面の下に隠されていた覆面レスラーのようなマスクに対し、俺は驚愕の声を上げる。

「結局誰だよ!?」

  青年はお面を二重に被っていた。

  覆面も脱がせる。
  男はようやく素顔になって、清々しい笑顔を俺に向けた。

「俺ですよ」

  見覚えがなくて、俺は「結局誰だよ!?」と再び叫んでいた。

  その青年の顔を、俺は写真でしか見たことがなくて、まさか彼が隣の県に住むネット仲間の1人だとは気づけなかったというわけだ。

  襲撃者の1人が俺に重たそうな箱を差し出す。

「これ、お土産です」
「わざわざどうも」

  受け取ると、俺は自分の目を疑った。

  様々な漫画の単行本が並んでいる。
  冊数を数えると、合計22冊だ。
  しかしタイトルはおろかジャンルまでバラバラで、この漫画の共通点が見当たらない。
  強いていえば、どれもこれも第7巻だ。
  1巻でも最終巻でもなく、全部7巻なのだ。

  試しに1冊手に取ってみる。
  出だしにこうあった。

「ネエ…、どーゆーコト…? どーゆーコトよコレ!? アタシぜんぜんわかんないヨ! …ネエ!?」

  俺だって全然解らない。
  一体今まで何があったのだ。

  他の漫画にも手を伸ばしてみる。

「予定外の干渉があったようですね」

  知るか。
  お前のそのセリフのほうが予定外である。

  ミステリー漫画は犯人が解らないまま終わってるし、これ全部読まなきゃいけないのだろうか。

  ただ、非常にありがたい土産もあった。
  焼き肉用の牛肉たちだ。

  俺はせかせかと食器やホットプレートを用意し、嬉しそうに固まる。

「ねえ。野菜は?」
「ないです」
「じゃあ焼き肉のタレは?」
「ないんですか?」
「ないです」
「じゃあ買ってきてください」

  今までの人生でこれ以上酷い仕打ちがあっただろうか。

  思わずツイッターでつぶやきを投稿する。

「襲撃された! 最初馬だったんだけど結局誰だよって話でレスラーが人に! 格7巻が22冊あって、肉焼きにくいかも知れません。完璧な説明だ」

  これで俺の支離滅裂さが大勢に伝わったことと思う。

  タレは結局、買い出しに行くのが面倒だったので適当に配合して作り、野菜は無しということで話をまとめる。
  お手製のタレを部屋に運ぶと、いきなりクラッカーを鳴らされて何もかもをこぼしそうになった。
  折り紙で作られたカラフルな鎖状の飾りが部屋を彩っているし、俺は今日誕生日なのだろうか。

「クラッカー選び、結構大変だったんですよ」

  襲撃者は満面の笑みだ。

「1番部屋が散らかるタイプの物を用意しました」

  客人にこんな乱暴な口を効くのは非常に心苦しいのですが、お前らばかなんですか!?

  クラッカーの炸裂音には本当に心臓を止められそうになったので、再びつぶやく。

「追記。俺の部屋に入るにはノックが必要でした。何故ならクラッカーが俺の今までの記憶を走馬灯のように。そして今も! つぶやいてただけなのに! 酷い! お米は4合炊いてます」

  自分で書いた文章に訳をつけるのは複雑な心境だが、仕方ない。

  手作りの焼き肉のタレを一生懸命作っていたら、襲撃者たちに「めささん、戻るときはノックしてください」と命じられ、その通りにしたら人に向けるなと注意書きがされているはずのクラッカーをめっちゃこっちに向けられ、パソコンに向かってキーボードを叩いていたらまたしてもクラッカーを鳴らされた。
  おかげで俺は出航するフェリーぐらいリボンまみれだ。
  ちなみにお米は4合炊いた。

「じゃあ、さっそく見ましょうか」

  なにが「じゃあ」なのか。

  とっても怖いと評判のホラー映画。
  そのDVDを手に、友人がにやりと笑った。

「ふわあ…! ああッ! もう無理ぃ! 無理ぃ! 死んじゃうよう! あああああッ!」

  その声だけを聞かれたら近所の人から誤解をされそうである。

  皆から「めささんの叫び声のほうが怖い」と怒られながら、映画を見続ける。

  映画の出来はとても良く、7巻だけではないので起承転結がまとまっていた。

  ただ、俺は要らぬ想像ばかりしているので、油断してもいいシーンでも油断をしない。
  おかげで、普通に場面が変っただけでも「ふああッ!」とか叫び、少しでも物音がしたら「ひゃあ!」と飛び上がる。
  いざというときのために模造刀を手にして見ていたけれど、それだけだと心細い。
  ペットボトルを2本抱きかかえ、事なきを得た。
  明らかに平和なシーンでは自分の周囲にそのペットボトルを配置し、猫よけみたいにしておいた。
  効果のほどは知りません。

「この映画が終わったら俺、肉焼くんだ…。牛だぜ牛。楽しみだなあ」
「それ死亡フラグです。でも、めささんって、ホントに怖がりなんですね。動画で見てるときは多少演技してるのかと思ってました」
「ばかか! 俺を怖がらせたかったら、手加減してても大丈夫だからもっと手を抜け! も~! もっと楽しい映画見ようよ~!」

  ホラー映画が終わって、肉を焼く。
  野菜がないので「肉肉野菜、肉野菜の順で食べろ」などと仕切れない。

  それにしても幸せな肉だ。
  焼き肉なんて久しぶりだし、手作りのタレも適当に混ぜただけの割には成功している。
  本当に美味しかった。

  しかし、俺はまだ知らない。
  自室にある様々な武器。
  模造刀、大小二振りの木刀、友達が持参してきたクナイ。
  その全てがこの後、俺に襲いかかることになる。

  最後にそのときの俺の音声を再現してこの日記を終えよう。

「危な、危な…! ちょっと! 俺丸腰! 俺にもなんか武器ちょうだいよ! あ、そうだ! かっちゃん! 本棚の上に木刀が2本あるから取ってきて! そうそれ! って、なんでお前らが使うんだよォ! いって! ねえ見て! 刀が刺さったとこ、血が出た! あはははは! もう無理ー! さばき切れねえよばか! お、それ使ってもいいの!? よーし、これさえあれば! ってこれ、折り紙の鶴じゃないかー! どこの達人だよ俺は! っつーか俺の声がうるさい! 近所迷惑でしょ!? やめてくれやめてくれ。ぎゃあ!」

  みんな、満ち足りた顔をして帰っていきました。

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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
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