夢見町の史
Let’s どんまい!
2010
September 27
September 27
それは実際にある猫カフェとは異質なもので、本物の猫は1匹もいなかった。
ウエイトレスの女の子たちはメイドのような服を着て、頭には猫耳のカチューシャを装着している。
「いらっしゃいませにゃん!」
その語尾に、俺は思わず顔をしかめる。
どいつもこいつも、どうしてこう可愛らしいんだよ!
全っ然、いい店じゃねえか。
ちっとも俺の心に響きやがる。
案内されたテーブルに着く。
メニューにあったオムライスは1200円。
普通よりは少し高めだが、まあこれにしておこう。
オムライスを運んできたウエイトレスが、ケチャップを両手で抱えるようにして持ち、首を傾げる。
「ハートマークを描きますかにゃん? 500円の追加でサービスしますにゃん」
たかがハートマークだけで500円だと!?
ふざけんな!
俺は憤然と立ち上がる。
「お願いします!」
「名前も書きますかにゃん?」
「名前はいくら追加ですか?」
「1000円ですにゃん」
「1000円!? だったらそれもお願いします!」
こうして目前にはケチャップで「めさ」と、そしてハートマークが描かれたオムライスが。
これで合計2700円か。
ケチャップが高いのか、オムライス本体が安いのか解らんが、何故か幸せな気分だ。
気づけばウエイトレスは2人に増えている。
「2人で一緒にふーふーしますかにゃん?」
「あーんしてもいいですかにゃん?」
金に糸目はつけません。
と、テレビなどでよく聞く割には日常で1度も使ったことのない言葉を、俺は口にしていた。
2人の猫耳はにこりと頷くと、スプーンでオムライスを一部すくい上げる。
ウエイトレスは向かい合うようにして立ち、「今からキスでもするの?」ぐらいの距離まで顔を近づけさせた。
顔と顔のわずかな間にスプーンを持ってきて、それを両サイドからふうふうと息を吹きかける。
なんだろう。
よくわかんないけど、なんか素晴らしい。
この後、「あーん」が来るわけか。
なんだろう。
素晴らしい。
「はい、あーんにゃん」
来た!
ところが。
ウエイトレスはオムライスを俺にではなく、相手の猫耳に食べさせる。
「美味しーにゃん! ありがとにゃん!」
なにそれ。
毒見のつもり?
「あーんしますかにゃん?」って、そういうこと?
俺にじゃないんだ?
その後、俺はしばらく見守るモード全開だ。
ウエイトレスたちはオムライスを冷ましては交互に食し、全て綺麗に平らげると俺に「ご馳走様でしたにゃん」と告げ、その場を立ち去った。
やがて、さっきの2人がまたやって来る。
「デザートは何にしますかにゃん?」
デザートも何も、メインディッシュを食べさせてもらえてないんですけど、バニラアイスをお願いします。
「かしこまりましたにゃん! 温めますか?」
え、はい?
「温めますかにゃん? 500円でサービスしますにゃん」
温めちゃうの?
アイスを?
それでしかもお金取られるの?
「うう、ダメですか、にゃん…?」
ダメも何も、アイスってほら、温める物じゃないし!
「うええええん。怒られたにゃん~」
「よしよし、可哀想にゃん。悪いお客さんにゃん?」
いえいえいえいえ!
違う違う!
俺、昔からアイスは温かいのが大好きで!
だから温めてください!
「かしこまりましたにゃん!」
「少々お待ちくださいにゃん」
なんだろう。
店の奥からチーンって音がしたけど、聞こえなかったことにしよう。
「お待たせしましたにゃん」
白い液体がいい湯気出してますね。
こんなアイス、初めてです。
「ふーふーしますかにゃん?」
え!?
冷ますの!?
アイスに対してアメとムチみたいなことになってませんか?
「ふーふーは特別サービスにゃん!」
マジですか。
じゃあお願いします。
「自分でやるにゃん」
サービスって、セルフサービスって意味かよ!?
とまあ、そのような妄想話に、俺たちは夢中になっていたわけだ。
実際には存在しない架空のにゃんにゃんカフェ。
俺はそこの客で、AちゃんとYちゃんがウエイトレスといった設定になっている。
なんでこんな流れになったのかさっぱり解らないけども、謎の楽しさを俺は感じていた。
「いらっしゃいませにゃん!」
「今日も1人ですかにゃん?」
あ、はい、今日もよろしくお願いします。
「お客さん、いつも来てくれますにゃん?」
「どれぐらい来てますにゃん?」
週5でお世話になってます。
「いい金ヅル、ううん! いいお客さんにゃん!」
「それで、今日はどんなサービスを受けたいにゃん?」
あの、あの、耳かき、なんてのはダメ、ですかねえ?
「耳かきにゃん?」
「もちろんオッケーにゃん!」
マジですか!
「せっかく2人いるから、両耳かきにするにゃん?」
両耳かき!
こんな感じ!?
「そうですにゃん」
「だいたい合ってますにゃん」
じゃあそれでお願いします!
両耳かき、最高!
「かしこまりましたにゃん!」
え?
あのう、その長いの、なんですか?
「いいから、じっとしてるにゃん」
「少しでも動くと、命にかかわるにゃん」
え、え、え!?
ちょ、あの!
死んでる死んでる!
俺これ絶対死んでる!
明らかに貫通してんじゃん!
耳どころか頭蓋骨の中身かいてるじゃん!
脳の位置ズレる!
「もっと奥までしてほしいにゃん?」
これ以上奥がどこにある!?
もうお腹いっぱいです、ありがとう!
満足しました!
「今のはさすがに高くつきましたにゃん」
殺されかけても俺、お金払うんだ?
「だって特別サービスですにゃん」
確かにあれだけの荒業で生還させられるってことは特別な技術が必要なんでしょうね。
「次はどうしますかにゃん?」
え。
うんと、じゃあですね、その、腕枕したい、なんちゃって。
「了解しましたにゃん!」
「せっかくだから、両腕枕にしますかにゃん? あたしたち2人が、めささんに腕枕してもらいますにゃん」
マジで!?
そんなハーレム状態、一生体験できないものと思ってました!
いくらかかってもいいから、それでお願いします!
「かしこまりましたにゃん!」
「じゃあ、そこに横になるにゃん」
はい!
喜んで!
「で、万歳するにゃん」
万歳?
「では、失礼しますにゃん」
なんでこうなる。
横には来てくれないの?
「じゃ次は、腕膝枕なんてどうですかにゃん?」
腕、膝枕って?
「めささんが今、想像した通りですにゃん」
だとしたらこう?
今までのパターンを考えると違う気がするけども、じゃあ是非!
「では、失礼いたしますにゃん」
これが腕膝枕か。
まずですね、想像と全然違います。
これ1人でやってますよね。
で、非常に言いにくいんですけども、寝苦しいです。
君も辛そうな顔になってるから、無理しないでください。
「お気遣い、ありがとにゃん! 血流が止まって腕の感覚がなくなるのがこのサービスの欠点にゃん」
欠点もっといっぱいあるからね!?
もう凝ったことしなくっていいから、普通に膝枕してもらっていいですか?
「もちろん、いいですにゃん!」
「せっかく2人いるから、両膝枕にしますかにゃん?」
両膝枕!?
なにそれ。
技?
いや待てよ?
たぶんだけど、こんな感じか?
つまり俺は正座をしたまま後ろにのぞけるようにして倒れればいいのだろうか。
どうせ違うんだろうけど、お願いします。
「じゃあ、失礼しますにゃん」
どうなってんだそれェ!?
Yちゃん、それ物理的に無理!
そこまで頑張らないでいいから!
もっと楽な姿勢になって!
「じゃあ、こうかにゃん?」
ちょっと待った、一旦ストップ!
と声を上げ、妄想は中断。
Aちゃん、これは一体どういったアレだ!?
今までの絵でまともなやつなんて1枚もなかったけど、これは酷すぎだ!
見ろ!
俺がツチノコのようだ!
どうしてこれが人なんだ!
「めささんですにゃん」
語尾ににゃんはもういいから!
俺これ、どうなってんの?
何に変身したの俺。
「めささんって、幻の生き物だったんですね」
やっぱりツチノコだったか!
俺、どういう体勢なのこれ。
どっちが前?
「この場合、めささん90度以上折れてるじゃないですか~」
鋭角に折るな俺を!
「これがまっすぐだった場合、あたしと同じ体勢になります」
なるほど、わかんない!
俺はどう折れてんの?
前かがみ?
「横に折れてます」
折れられるか!
だってちょっともう1回見てみ?
つくづく人じゃないことがよく解ると思うんだ。
「また来てくださいにゃん」
「お待ちしてますにゃん」
お前たちに勝てないってこと、最初から解ってました。
じゃあまた来ます。
「次はいつ来てくれますかにゃん?」
明日。
そう迷わず答えられた俺って一体。
真夜中のこの妄想話とお絵描きタイム、果たして意義はあったのだろうか。
ウエイトレスの女の子たちはメイドのような服を着て、頭には猫耳のカチューシャを装着している。
「いらっしゃいませにゃん!」
その語尾に、俺は思わず顔をしかめる。
どいつもこいつも、どうしてこう可愛らしいんだよ!
全っ然、いい店じゃねえか。
ちっとも俺の心に響きやがる。
案内されたテーブルに着く。
メニューにあったオムライスは1200円。
普通よりは少し高めだが、まあこれにしておこう。
オムライスを運んできたウエイトレスが、ケチャップを両手で抱えるようにして持ち、首を傾げる。
「ハートマークを描きますかにゃん? 500円の追加でサービスしますにゃん」
たかがハートマークだけで500円だと!?
ふざけんな!
俺は憤然と立ち上がる。
「お願いします!」
「名前も書きますかにゃん?」
「名前はいくら追加ですか?」
「1000円ですにゃん」
「1000円!? だったらそれもお願いします!」
こうして目前にはケチャップで「めさ」と、そしてハートマークが描かれたオムライスが。
これで合計2700円か。
ケチャップが高いのか、オムライス本体が安いのか解らんが、何故か幸せな気分だ。
気づけばウエイトレスは2人に増えている。
「2人で一緒にふーふーしますかにゃん?」
「あーんしてもいいですかにゃん?」
金に糸目はつけません。
と、テレビなどでよく聞く割には日常で1度も使ったことのない言葉を、俺は口にしていた。
2人の猫耳はにこりと頷くと、スプーンでオムライスを一部すくい上げる。
ウエイトレスは向かい合うようにして立ち、「今からキスでもするの?」ぐらいの距離まで顔を近づけさせた。
顔と顔のわずかな間にスプーンを持ってきて、それを両サイドからふうふうと息を吹きかける。
なんだろう。
よくわかんないけど、なんか素晴らしい。
この後、「あーん」が来るわけか。
なんだろう。
素晴らしい。
「はい、あーんにゃん」
来た!
ところが。
ウエイトレスはオムライスを俺にではなく、相手の猫耳に食べさせる。
「美味しーにゃん! ありがとにゃん!」
なにそれ。
毒見のつもり?
「あーんしますかにゃん?」って、そういうこと?
俺にじゃないんだ?
その後、俺はしばらく見守るモード全開だ。
ウエイトレスたちはオムライスを冷ましては交互に食し、全て綺麗に平らげると俺に「ご馳走様でしたにゃん」と告げ、その場を立ち去った。
やがて、さっきの2人がまたやって来る。
「デザートは何にしますかにゃん?」
デザートも何も、メインディッシュを食べさせてもらえてないんですけど、バニラアイスをお願いします。
「かしこまりましたにゃん! 温めますか?」
え、はい?
「温めますかにゃん? 500円でサービスしますにゃん」
温めちゃうの?
アイスを?
それでしかもお金取られるの?
「うう、ダメですか、にゃん…?」
ダメも何も、アイスってほら、温める物じゃないし!
「うええええん。怒られたにゃん~」
「よしよし、可哀想にゃん。悪いお客さんにゃん?」
いえいえいえいえ!
違う違う!
俺、昔からアイスは温かいのが大好きで!
だから温めてください!
「かしこまりましたにゃん!」
「少々お待ちくださいにゃん」
なんだろう。
店の奥からチーンって音がしたけど、聞こえなかったことにしよう。
「お待たせしましたにゃん」
白い液体がいい湯気出してますね。
こんなアイス、初めてです。
「ふーふーしますかにゃん?」
え!?
冷ますの!?
アイスに対してアメとムチみたいなことになってませんか?
「ふーふーは特別サービスにゃん!」
マジですか。
じゃあお願いします。
「自分でやるにゃん」
サービスって、セルフサービスって意味かよ!?
とまあ、そのような妄想話に、俺たちは夢中になっていたわけだ。
実際には存在しない架空のにゃんにゃんカフェ。
俺はそこの客で、AちゃんとYちゃんがウエイトレスといった設定になっている。
なんでこんな流れになったのかさっぱり解らないけども、謎の楽しさを俺は感じていた。
「いらっしゃいませにゃん!」
「今日も1人ですかにゃん?」
あ、はい、今日もよろしくお願いします。
「お客さん、いつも来てくれますにゃん?」
「どれぐらい来てますにゃん?」
週5でお世話になってます。
「いい金ヅル、ううん! いいお客さんにゃん!」
「それで、今日はどんなサービスを受けたいにゃん?」
あの、あの、耳かき、なんてのはダメ、ですかねえ?
「耳かきにゃん?」
「もちろんオッケーにゃん!」
マジですか!
「せっかく2人いるから、両耳かきにするにゃん?」
両耳かき!
こんな感じ!?
「そうですにゃん」
「だいたい合ってますにゃん」
じゃあそれでお願いします!
両耳かき、最高!
「かしこまりましたにゃん!」
え?
あのう、その長いの、なんですか?
「いいから、じっとしてるにゃん」
「少しでも動くと、命にかかわるにゃん」
え、え、え!?
ちょ、あの!
死んでる死んでる!
俺これ絶対死んでる!
明らかに貫通してんじゃん!
耳どころか頭蓋骨の中身かいてるじゃん!
脳の位置ズレる!
「もっと奥までしてほしいにゃん?」
これ以上奥がどこにある!?
もうお腹いっぱいです、ありがとう!
満足しました!
「今のはさすがに高くつきましたにゃん」
殺されかけても俺、お金払うんだ?
「だって特別サービスですにゃん」
確かにあれだけの荒業で生還させられるってことは特別な技術が必要なんでしょうね。
「次はどうしますかにゃん?」
え。
うんと、じゃあですね、その、腕枕したい、なんちゃって。
「了解しましたにゃん!」
「せっかくだから、両腕枕にしますかにゃん? あたしたち2人が、めささんに腕枕してもらいますにゃん」
マジで!?
そんなハーレム状態、一生体験できないものと思ってました!
いくらかかってもいいから、それでお願いします!
「かしこまりましたにゃん!」
「じゃあ、そこに横になるにゃん」
はい!
喜んで!
「で、万歳するにゃん」
万歳?
「では、失礼しますにゃん」
なんでこうなる。
横には来てくれないの?
「じゃ次は、腕膝枕なんてどうですかにゃん?」
腕、膝枕って?
「めささんが今、想像した通りですにゃん」
だとしたらこう?
今までのパターンを考えると違う気がするけども、じゃあ是非!
「では、失礼いたしますにゃん」
これが腕膝枕か。
まずですね、想像と全然違います。
これ1人でやってますよね。
で、非常に言いにくいんですけども、寝苦しいです。
君も辛そうな顔になってるから、無理しないでください。
「お気遣い、ありがとにゃん! 血流が止まって腕の感覚がなくなるのがこのサービスの欠点にゃん」
欠点もっといっぱいあるからね!?
もう凝ったことしなくっていいから、普通に膝枕してもらっていいですか?
「もちろん、いいですにゃん!」
「せっかく2人いるから、両膝枕にしますかにゃん?」
両膝枕!?
なにそれ。
技?
いや待てよ?
たぶんだけど、こんな感じか?
つまり俺は正座をしたまま後ろにのぞけるようにして倒れればいいのだろうか。
どうせ違うんだろうけど、お願いします。
「じゃあ、失礼しますにゃん」
どうなってんだそれェ!?
Yちゃん、それ物理的に無理!
そこまで頑張らないでいいから!
もっと楽な姿勢になって!
「じゃあ、こうかにゃん?」
ちょっと待った、一旦ストップ!
と声を上げ、妄想は中断。
Aちゃん、これは一体どういったアレだ!?
今までの絵でまともなやつなんて1枚もなかったけど、これは酷すぎだ!
見ろ!
俺がツチノコのようだ!
どうしてこれが人なんだ!
「めささんですにゃん」
語尾ににゃんはもういいから!
俺これ、どうなってんの?
何に変身したの俺。
「めささんって、幻の生き物だったんですね」
やっぱりツチノコだったか!
俺、どういう体勢なのこれ。
どっちが前?
「この場合、めささん90度以上折れてるじゃないですか~」
鋭角に折るな俺を!
「これがまっすぐだった場合、あたしと同じ体勢になります」
なるほど、わかんない!
俺はどう折れてんの?
前かがみ?
「横に折れてます」
折れられるか!
だってちょっともう1回見てみ?
つくづく人じゃないことがよく解ると思うんだ。
「また来てくださいにゃん」
「お待ちしてますにゃん」
お前たちに勝てないってこと、最初から解ってました。
じゃあまた来ます。
「次はいつ来てくれますかにゃん?」
明日。
そう迷わず答えられた俺って一体。
真夜中のこの妄想話とお絵描きタイム、果たして意義はあったのだろうか。
PR
初コメント失礼します
ファミレスで見た事を凄く後悔してます。変人を見る様な眼差しを、客の方々から向けられてしまいました。
普通にこれは笑っちゃいます!
有り得ない格好な上に、苦しいだけでちっとも幸せな気持ちになれないですよね?
むしろめささんにとってはそれが幸せなんでしょうか?難解です。
男心…基、めさ心がさっぱり分かりません。
めささんなら横90度に曲がれそうだと思ったのは私だけでしょうか?
普通にこれは笑っちゃいます!
有り得ない格好な上に、苦しいだけでちっとも幸せな気持ちになれないですよね?
むしろめささんにとってはそれが幸せなんでしょうか?難解です。
男心…基、めさ心がさっぱり分かりません。
めささんなら横90度に曲がれそうだと思ったのは私だけでしょうか?