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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2024
April 26
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2010
March 15
 最初に不思議だったのが、フロアレディであるAちゃんの発言だった。

 その日は週末で、ちょっとした予約もいただいていたので、職場のスナックは多少の混雑が予想されている。
 俺は開店準備を済ませると、Aちゃんに声をかけた。

「あとで来る予定のお客さんのテーブル、今のうちに確保しちゃおう」

 灰皿やコースターを配置することで、俺は先手を打っておきたかったのだ。

「Aちゃんが電話もらったお客さん、人数解る?」
「解るよー」
「ボトルも用意しておこう。今日来るのって、どなた?」
「内緒」
「ふへ?」

 思わず出る、2度と発音できないような変な声。
 俺はAちゃんが全力でふざけているのかと思った。
 いやしかし、酔ってるときならまだしも、シラフの彼女が仕事のことで冗談を言うとは思えない。

「内緒ってゆうか、どうせあとで来るんだから教えてくれたっていいじゃないか」
「うん。でも内緒なの」
「意味わかんない」

 そこで推理開始だ。
 Aちゃんには、俺に予約客の正体を明かせない理由がきっとある。
 Aちゃん個人の事情か?
 いや、それはない。
 だって、どうせあとで来る人なんだから、結果的には俺に知られてしまうじゃないか。

 ということは俺、つまり「めさ」に知られたくないということか?
 俺にとって意外な人が大勢で来てくれる?
 俺に対するサプライズということならAちゃんの言葉に不自然さはないけれど、でも誰が来るというんだ?

 そうこう考え事をしているうちに、店内にはちらほらと常連客の姿が目立ち始める。

 間もなくすると、俺の友人も1人で飲みに来てくれた。
 年下の彼は、申し訳なさそうに俺を呼ぶ。

「めささん、ホント悪いんだけどさ、俺タバコ買い忘れちゃってて」
「ああ、いいよー。俺が買ってくるよ。お前はお客さんなんだから飲んでてください」

 タバコ代を預かり、店を出る。
 このときのお客さんはまだカウンター席だけに納まっていて、テーブル席には誰も座っていない。
 しかし戻ってくると、結構な数の若者がテーブル席を占拠しているではないか。

 戻る店を間違えた!?

 このときの俺は間違いなく、見慣れたはずの職場を2度見していた。
 タバコの買出しにかかる時間なんてせいぜい3分ぐらいだ。
 その間に、この人数がすっかり席に着いて、しかも全員が既にグラスを手にしている。

 うちの店、こんな迅速な対応できましたっけ?

 事態が把握できず、心の声が敬語になる。

 俺にお遣いを頼んできた友人がテーブル席に移動しているのは何故ですか?

 ああ、こいつの仕業か!

 しかもよく見ると、湧くかのように現れた一団はほとんど俺の読者様や友達じゃないか!

 どうやら友人が考案した俺へのサプライズは、「みんなでめささんを急に訪ねて驚かせよう」といった内容らしい。

「はいよ、めさ」

 フロアレディの1人が俺の分のグラスを手渡してくれる。
 礼を言い、俺はテーブル席に向かう。

「みんな、久しぶりだね」

 しかし誰もが俺に気づかないかのように、輪になって楽しそうに喋っている。

「ねえねえ、今日は一体何の集まりなの?」

 再度声をかけると、

「いえーい! かんぱーい!」

 友人たちは俺抜きでとても綺麗な乾杯をし、満足そうに酒を飲み始める。
 どういった嫌がらせなのだろうか。

「ねえってば! ねえねえ! 誰か俺の存在に気づいて! 実は何か? 自分でも気づかぬうちに死んじゃってて、今の俺は実は幽霊なのか? ねえってばー」 

 ところが誰1人として俺に視線を合わせる者はない。

 これはあとになってから聞いた話だが、彼らはわざと俺を無視し、その反応を楽しもうと計画していたらしい。

 俺は俺で、これが一体誰に対するサプライズなのか解らなくなり、用もないのに同じ場所を行ったり来たりしていた。
 グラス片手にただおろおろするばかりだ。

 あまりにも自分の居場所がないので、俺はそそくさとカウンターに戻る。
 するとフロアレディの子が珍しく優しそうな微笑みをこちらに向けた。

「あんたへのサプライズなんだから、早く席に着いてあげな」

 その席が無いんですけど。

 テーブル席では誰からも歓迎されず、カウンターでは「あっちに行け」と言われる。
 板挟みもいいところだ。

 だいたい今日は一体何の集まりなのだ。
 誰か死んだのか?
 むしろやっぱり俺への弔い的な?
 今日は3月。
 何の記念日でもねえ。

 するとタイミングの良いメールが届く。
 ケータイを開くと、今日お休みをしているはずの、ボスのK美ちゃんだ。

「サプライズどう? 楽しんでね!」

 楽しみ方が解らない場合はどうすれば?
 ってゆうか、このサプライズはやっぱり俺がターゲットだったのか。
 そういう感じには少しも思えないんだけれども。

 結局、若者たちの輪に強引に入って改めて乾杯をさせてもらうのに、ちょっとした時間がかかった。

 それにしても、みんな元気そうで良かった。

 仲良くカラオケを唄っている友人たちを見て、そこは素直に思っておいた。

 曲が終わり、拍手を送る。
 すると彼らは何故か俺に注目しているではないか。
 どっかで聞いたことがあるフレーズを、皆から連発される。

「めっさゲーム! めっさゲーム!」

 説明しよう。
 めさゲームとは、誰が何をどう唄っても、罰ゲームである酒の一気飲みをするのは絶対に俺になってしまうという、ゲーム性の全くないゲームだ。
 これを楽しいと感じる奴はだいたいが、俺以外の人だ。

「どちきしょう!」

 俺はグラスを手に立ち上がる。

「俺の死に様を見せてやる!」

 酒をガブガブ飲んで俺は再び叫び声を上げた。

「こんな理不尽な目に遭うとは思っていませんでした!」

 ったく、お前達、俺にだって心と肝臓があるのだ。
 いい加減にしたまえ。
 ぜってーまた来いよ。
 ばかちん!

拍手[28回]

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悔しいっ!
マジで最初っからその場に居たかったですよ!(笑)おろおろするめささん見たかった!(笑)
またサプライズに行きますよ♪(笑)
hiromi: 2010.03/15(Mon) 23:55 Edit
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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
 それでもいいのならコチラをクリックするとメールが送れるぜい。

 当ブログはリンクフリーだ。
 必要なものがあったら遠慮なく気軽に、どこにでも貼ってやって人類を堕落させるといい。
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