夢見町の史
Let’s どんまい!
2009
August 15
August 15
中学からの腐れ縁である、悪友のジン。
彼の結婚が決まったのは俺たちが22歳の頃でした。
めでたいことです。
「俺たちン中で、誰が1番先に結婚すんだろうな~」
以前そのような話をしたことが、なんだか懐かしく思えました。
同じく昔からの悪友であるトメを、俺は呼び出します。
友人の人生の転機を祝うべく、贈り物の相談を始めました。
せっかくだから、忘れられない品物を選んで贈りたいよなあ。
どういうのがいいかな~?
「なるべくデカいのがいいんじゃねえ?」
そうだな。
デカくて重いのがいいな。
「で、なんの役にも立たなくてよ~」
お前ホント頭いいな。
そうそう。
誰にも必要とされない、ただ邪魔なだけの物質って感じの品物がいい。
「それでいて、捨てるに捨てられねえ物だったらよ~、もう最高じゃねえ?」
あはははは!
最高!
最低です、この2人。
しかし、ジンだって酷いんですよ。
奴は俺たちの妨害を勝手に恐れ、結婚式を秘密裏に挙げていたんですから。
大親友であるはずの俺たちを式に呼ばないなんて、いい判断です。
さて。
話は戻ってプレゼントの選択なんですが、上で挙げた条件を満たした品が1つだけ、俺には思い当たりました。
俺は当時、熱帯魚屋の店員だったのですが、ここの社長が水槽内のレイアウト用にと、グランドキャニオンの岩を仕入れてきやがったんですよ。
この岩、やたら大きいので、一体何メートルの水槽を用意すればいいのか解りません。
さらに素晴らしいことに、どんな角度から眺めても、ちっとも美しくないから完璧でした。
文句無しで、これに決定です。
店長に岩の値段を尋ねると、
「ああ、アレか。社長は定価6万とか言ってたけど、あんな物に値札付けるのも恥ずかしいからな。邪魔だからタダでいいぞ」
岩はボロクソに言われました。
ってゆうか、やったー!
デカくて重く、邪魔だけど高価であるという不思議な物体を、無料で頂戴することに成功いたしました!
トメも大喜びで、いつになく幸せそうに微笑んでいます。
俺はそんな彼を見て、自分の結婚式にトメだけは呼ばない決意を固めました。
ところでこの岩、大きすぎてラッピングは無理に思えたので、せめて取り扱い説明書を作成し、付け足しておくことに。
一生懸命作った、岩の取り扱い説明書。
まさかワープロも、岩なんて物の説明を打つ羽目になるとは思わなかったことでしょう。
内容は、以下の通りです。
★あなたの結婚生活を、多大な存在感で見守ってくれます。
★奥様の帰りが遅くて寂しい夜、そっと話しかけてください。
岩は黙って聞いてくれます。
★なんと、余った部屋のスペースを埋める機能付き!
★商品には万全の注意を払っておりますが、万が一不備がありました場合、謝ります。
上出来だ!
寂しい夜に岩しか話し相手がいないジンを思い浮かべ、俺はニヤニヤしました。
問題は、プレゼントの渡し方。
俺やトメでも、死ぬ気になってやっと3メートル運べるぐらい重い岩。
こんな無駄に重たい物を、素手で渡すわけにはいきません。
どうやら無断でジンの車に積み込むしかなさそうだ。
俺は携帯電話を耳に当てました。
「もしもし、ジン? 祝ってやるから、あとで車で来いよ。プレゼントもあるぜ。トメと俺からのな。驚くぜ~? なんせ定価6万ぐらいの品だからな」
「なんだその6万『ぐらい』って」
なかなか痛いところを突いてくる男です。
しかし、その場はなんとか誤魔化し、ジンの呼び出しには成功しました。
当初の打ち合わせ通りにジンの隙を突き、トメと力を合わせて岩をトランクへ。
俺が作成した変な説明書も一緒に入れておきました。
後は3人で車に乗り込み、どっかへ遊びに行くだけです。
車が発車する際、岩の重みでウイリーしないか心配でした。
翌日。
ジンからの電話がありました。
「なんだよ、あの岩は!」
開口1番に出てきたのは、やはり文句でした。
「当店では苦情を受け付けておりません」
「ったく、捨てるのえれえ苦労したんだぞ!」
「嘘! 捨てたの!? せっかく運んだのに!」
「うるせえ! このクソガキ!」
「ちゃんと説明書読めよな!」
「読んだけど、なんなんだよアレは! 話しかけてどうしろって言うんだよ!」
「面白かった?」
「やかましい! なにがグランドキャニオンの岩だ!」
「あ、そこは本当だよ?」
「うるせえ! あんなの悪魔の岩だ!」
苦労に苦労を重ね、やっとプレゼントした岩は捨てられた挙げ句、悪魔の岩呼ばわりされました。
凄く頑張ったのに。
でもですね、それでもどこか正直に、ジンの幸せを願う俺がいるのも事実なんです。
結婚生活、楽しくやれよジン!
「次回の結婚式には出席させろよ!」
そんな冗談を言ったりもしましたが、思いもよりませんでした。
まさか2年後、本当にジンが離婚するとは。
ジンは立派なバツイチに生まれ変わりました。
次は誰が結婚するのか、非常に楽しみな今日この頃。
彼の結婚が決まったのは俺たちが22歳の頃でした。
めでたいことです。
「俺たちン中で、誰が1番先に結婚すんだろうな~」
以前そのような話をしたことが、なんだか懐かしく思えました。
同じく昔からの悪友であるトメを、俺は呼び出します。
友人の人生の転機を祝うべく、贈り物の相談を始めました。
せっかくだから、忘れられない品物を選んで贈りたいよなあ。
どういうのがいいかな~?
「なるべくデカいのがいいんじゃねえ?」
そうだな。
デカくて重いのがいいな。
「で、なんの役にも立たなくてよ~」
お前ホント頭いいな。
そうそう。
誰にも必要とされない、ただ邪魔なだけの物質って感じの品物がいい。
「それでいて、捨てるに捨てられねえ物だったらよ~、もう最高じゃねえ?」
あはははは!
最高!
最低です、この2人。
しかし、ジンだって酷いんですよ。
奴は俺たちの妨害を勝手に恐れ、結婚式を秘密裏に挙げていたんですから。
大親友であるはずの俺たちを式に呼ばないなんて、いい判断です。
さて。
話は戻ってプレゼントの選択なんですが、上で挙げた条件を満たした品が1つだけ、俺には思い当たりました。
俺は当時、熱帯魚屋の店員だったのですが、ここの社長が水槽内のレイアウト用にと、グランドキャニオンの岩を仕入れてきやがったんですよ。
この岩、やたら大きいので、一体何メートルの水槽を用意すればいいのか解りません。
さらに素晴らしいことに、どんな角度から眺めても、ちっとも美しくないから完璧でした。
文句無しで、これに決定です。
店長に岩の値段を尋ねると、
「ああ、アレか。社長は定価6万とか言ってたけど、あんな物に値札付けるのも恥ずかしいからな。邪魔だからタダでいいぞ」
岩はボロクソに言われました。
ってゆうか、やったー!
デカくて重く、邪魔だけど高価であるという不思議な物体を、無料で頂戴することに成功いたしました!
トメも大喜びで、いつになく幸せそうに微笑んでいます。
俺はそんな彼を見て、自分の結婚式にトメだけは呼ばない決意を固めました。
ところでこの岩、大きすぎてラッピングは無理に思えたので、せめて取り扱い説明書を作成し、付け足しておくことに。
一生懸命作った、岩の取り扱い説明書。
まさかワープロも、岩なんて物の説明を打つ羽目になるとは思わなかったことでしょう。
内容は、以下の通りです。
★あなたの結婚生活を、多大な存在感で見守ってくれます。
★奥様の帰りが遅くて寂しい夜、そっと話しかけてください。
岩は黙って聞いてくれます。
★なんと、余った部屋のスペースを埋める機能付き!
★商品には万全の注意を払っておりますが、万が一不備がありました場合、謝ります。
上出来だ!
寂しい夜に岩しか話し相手がいないジンを思い浮かべ、俺はニヤニヤしました。
問題は、プレゼントの渡し方。
俺やトメでも、死ぬ気になってやっと3メートル運べるぐらい重い岩。
こんな無駄に重たい物を、素手で渡すわけにはいきません。
どうやら無断でジンの車に積み込むしかなさそうだ。
俺は携帯電話を耳に当てました。
「もしもし、ジン? 祝ってやるから、あとで車で来いよ。プレゼントもあるぜ。トメと俺からのな。驚くぜ~? なんせ定価6万ぐらいの品だからな」
「なんだその6万『ぐらい』って」
なかなか痛いところを突いてくる男です。
しかし、その場はなんとか誤魔化し、ジンの呼び出しには成功しました。
当初の打ち合わせ通りにジンの隙を突き、トメと力を合わせて岩をトランクへ。
俺が作成した変な説明書も一緒に入れておきました。
後は3人で車に乗り込み、どっかへ遊びに行くだけです。
車が発車する際、岩の重みでウイリーしないか心配でした。
翌日。
ジンからの電話がありました。
「なんだよ、あの岩は!」
開口1番に出てきたのは、やはり文句でした。
「当店では苦情を受け付けておりません」
「ったく、捨てるのえれえ苦労したんだぞ!」
「嘘! 捨てたの!? せっかく運んだのに!」
「うるせえ! このクソガキ!」
「ちゃんと説明書読めよな!」
「読んだけど、なんなんだよアレは! 話しかけてどうしろって言うんだよ!」
「面白かった?」
「やかましい! なにがグランドキャニオンの岩だ!」
「あ、そこは本当だよ?」
「うるせえ! あんなの悪魔の岩だ!」
苦労に苦労を重ね、やっとプレゼントした岩は捨てられた挙げ句、悪魔の岩呼ばわりされました。
凄く頑張ったのに。
でもですね、それでもどこか正直に、ジンの幸せを願う俺がいるのも事実なんです。
結婚生活、楽しくやれよジン!
「次回の結婚式には出席させろよ!」
そんな冗談を言ったりもしましたが、思いもよりませんでした。
まさか2年後、本当にジンが離婚するとは。
ジンは立派なバツイチに生まれ変わりました。
次は誰が結婚するのか、非常に楽しみな今日この頃。
PR