夢見町の史
Let’s どんまい!
2009
May 07
May 07
生まれて初めてカツアゲに遭った。
終電間際の駅で切符を購入したところ、声をかけられたのだ。
相手の表情を見た瞬間、俺は用件を悟る。
先方の顔にはこう書いてあった。
「お金くれ」
急がなきゃ終電を逃しちゃうではないか。
問答している時間はない。
お金をあげたくない貧乏な俺は、このピンチをどう凌ぐか、早くも計算を始めている。
しかし俺に声をかけてきた相手は、ことカツアゲに関しては無敵のキャラクターだった。
チンピラでも不良でもない。
所々歯の抜けた、ホームレス風のおばあさん。
気弱そうな顔つきだ。
この時点で冷たくなんてできない。
この人、自分の風貌を解ってやっているのだろうか。
なんてズルい大人なんだ。
「友達がファミレスで待ってて、すぐにお金を持っていかなくちゃいけないんです」
嘘だ。
直感でそう思った。
どう見ても彼女はファミレスで食事って感じでも、友達がいる風にも見えない。
まだ「電車賃がない」のほうが説得力あるのに。
俺はいざとなれば冷酷だ。
おばあさんの存在なんて、宇宙から見れば微生物の1匹なのだ。
そんなちっぽけな者の言うことに俺が耳を貸すと思うか?
「お金持って、すぐに行かなきゃいけないんです」
「うんうん、そうなんですかー」
耳、貸しちゃった。
ごく自然にシカト失敗。
俺には向いてなかった。
宇宙から見れば、俺だって微生物だからだ。
しかし、お金だけは絶対にあげない。
働いて稼いだ金だからだ。
「少しだけでもいいんです」
額の多い少ないの問題ではない。
お金をあげるという行為そのものを、俺は絶対にしない。
絶対にしないぞ。
あげるとしても、せいぜい500円までだ。
「お願いします。ちょっとだけでも」
ふふん、甘い!
切符を買ったばかりで財布を開いている状態で声をかけてきた点は賢いが、あんたは俺を知らなすぎる。
見ろ。
ちょうど財布に500円玉が入っているではないか。
「お願いします、お願いします」
くどい!
もうすぐ電車が出てしまうのだ!
悪いが他を当たってくれ。
これをやるから許してください。
手早く500円をあげて、俺は手を振る。
「じゃあ、気をつけてー!」
電車に間に合うためであって、俺は決して負けたわけではなくて、そもそもおばあさんが「ファミレスに友達を迎えに行く」って言うもんだから、いやそれは嘘かも知れないけれど、でも少なくとも目上の方がお金に困っているのは事実なわけで、いやもちろん俺ぐらいのレベルになれば簡単に冷徹になれるんだけど、たまには遊んでやろうと思って、つまり魔が差した的なアレなだけで、俺は決して、
もういい。
終電間際の駅で切符を購入したところ、声をかけられたのだ。
相手の表情を見た瞬間、俺は用件を悟る。
先方の顔にはこう書いてあった。
「お金くれ」
急がなきゃ終電を逃しちゃうではないか。
問答している時間はない。
お金をあげたくない貧乏な俺は、このピンチをどう凌ぐか、早くも計算を始めている。
しかし俺に声をかけてきた相手は、ことカツアゲに関しては無敵のキャラクターだった。
チンピラでも不良でもない。
所々歯の抜けた、ホームレス風のおばあさん。
気弱そうな顔つきだ。
この時点で冷たくなんてできない。
この人、自分の風貌を解ってやっているのだろうか。
なんてズルい大人なんだ。
「友達がファミレスで待ってて、すぐにお金を持っていかなくちゃいけないんです」
嘘だ。
直感でそう思った。
どう見ても彼女はファミレスで食事って感じでも、友達がいる風にも見えない。
まだ「電車賃がない」のほうが説得力あるのに。
俺はいざとなれば冷酷だ。
おばあさんの存在なんて、宇宙から見れば微生物の1匹なのだ。
そんなちっぽけな者の言うことに俺が耳を貸すと思うか?
「お金持って、すぐに行かなきゃいけないんです」
「うんうん、そうなんですかー」
耳、貸しちゃった。
ごく自然にシカト失敗。
俺には向いてなかった。
宇宙から見れば、俺だって微生物だからだ。
しかし、お金だけは絶対にあげない。
働いて稼いだ金だからだ。
「少しだけでもいいんです」
額の多い少ないの問題ではない。
お金をあげるという行為そのものを、俺は絶対にしない。
絶対にしないぞ。
あげるとしても、せいぜい500円までだ。
「お願いします。ちょっとだけでも」
ふふん、甘い!
切符を買ったばかりで財布を開いている状態で声をかけてきた点は賢いが、あんたは俺を知らなすぎる。
見ろ。
ちょうど財布に500円玉が入っているではないか。
「お願いします、お願いします」
くどい!
もうすぐ電車が出てしまうのだ!
悪いが他を当たってくれ。
これをやるから許してください。
手早く500円をあげて、俺は手を振る。
「じゃあ、気をつけてー!」
電車に間に合うためであって、俺は決して負けたわけではなくて、そもそもおばあさんが「ファミレスに友達を迎えに行く」って言うもんだから、いやそれは嘘かも知れないけれど、でも少なくとも目上の方がお金に困っているのは事実なわけで、いやもちろん俺ぐらいのレベルになれば簡単に冷徹になれるんだけど、たまには遊んでやろうと思って、つまり魔が差した的なアレなだけで、俺は決して、
もういい。
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