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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2024
May 10
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2008
June 28
 まず、最初のやり取りからして彼女らしかった。

「もしもし? めさ?」
「うん~? ミカか~」
「ちょっとキモい! 何その声! 寝起き!?」
「ういうん? 違うよ?」
「本当に気持ち悪いからやめて!」

 なんだか、一生分「気持ち悪い」と言われたような感覚だ。

「ねえミカ。なんで俺、いきなり切なくさせられてるの?」
「その甘ったれた感じもキモいから!」
「っつーか、もー! なんなんだよ、この電話は~! どうして俺、一方的に傷つけられてるわけ!? 用件は何!」
「あんた今どうせ暇でしょ? それで、遊んであげようかと思って」

 絶妙な角度から放たれる高圧的な上から目線。
 どうせ暇だといった失礼な決めつけが、俺の涙腺をさらに緩ませる。
 俺がドMで本当によかった。
 それにしても、とてもじゃないが久々の電話とは思えない。

 ミカとの付き合いは、思えばかなり長い。
 彼女が未成年者だった頃からになる。

 コンビニで買ったシャボン玉を、ミカは何を思ったのかその場で開封し、店内で吹き始めようとした事件が懐かしい。

 そんなおてんば娘も、今は立派な母親だ。

 出産当時、俺はいそいそと産婦人科まで行き、ミカが産んだ娘をビデオカメラに収めたことも懐かしい。
 あれからもう6、7年は経っているか。

 互いに近状報告をし合いながら公園まで歩く。
 ミカの娘は補助輪のない自転車を自由自在に乗り回し、ちょっとした暴走族みたいなことになっている。

 それでもやはり、子供というのは可愛いものだ。
 友人の娘はテンション高く、澄んだ瞳を俺に向ける。

「ねえねえ、ワニって遊び、知ってる?」

 そのような怖い爬虫類で遊んではいけません。

「違うよう! あのね? 鬼だとするでしょ? で、1歩だったら、いーち! 歩いて、登ってもいいの」

 ほうほう。

「で、下に落ちたら鬼ね? 2歩だったら、いーち、にー、って進んでもいいの」

 なるほどね。

「タッチしても鬼なの。わかった?」

 おう。
 さっぱり解らねえ。

「いいからやるよ!」

 なんだか全体的に意味不明だし、ワニって名称も気になるが、まあいいだろう。
 じゃあ、俺が鬼ね?
 鬼のように追い回し、トラウマにしてくれる!

「きゃー! ははははは!」

 待ーて~!

「あ、そっちから近づいたら駄目。反則」

 何故だ。
 やって初めて解ったんだけど、鬼って1段分しか高いところに登れないんじゃないか?
 だとしたら、捕まえやすいところから手を伸ばしてタッチするしかないじゃないか。

「でも駄目!」

 そうですか。

「ってゆうか、早くー!」

 おのれ小娘が。
 俺を鬼にしたことを一生後悔させてやるぜ。

「あ、そこから手を出すのも駄目!」

 なるほど、この遊びの意味がやっと解ったぞ!
 鬼は逃げる人をそこそこ手加減して追い詰め、決してタッチしてはいけないルールなんだな!?
 逃げる側は絶対に捕まらないという安全な立場から、それなりにスリルを楽しめればいいわけだ!

 ズルいじゃないか!

「じゃあ次はドッヂボールね!」

 3人でか!
 そんなの絶対に面白くないぞ!
 なあ、ミカもそう思うだろ!?

「あ。あたしちょっとジュース買ってくる」

 おーし、めでたくさらに人数が減った!
 2人だけでドッヂボール開始だ!

「もういい。飽きた」

 そうでございますか。

「じゃあ次は、ブランコに乗ってる人にボールを当てたら勝ち!」

 無茶言うな。

「ねえねえ、あたしの自転車に乗って、漕いで」

 サイズに無理がある。

「もう1回ワニやろう!」

 むしろお前がワニだよ!
 さっきから何なんだ君、その無尽蔵なスタミナは!

 ジュースを買って帰ってきたミカに、もう大変だと告げる。

 お前たち、間違いなく親子だ。

 ったく、絶対また遊んでもらうからな!

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2008
June 27
 小料理屋のように落ち着ける雰囲気の居酒屋では、テレビがお笑い番組を流している。
 互いの雑用を1日かけて手伝い合ってから、俺と悪友は何となくその液晶モニターを眺め、食事をしていた。

 こいつとは、いい加減腐れ縁といっても構わないであろう。
 悪友であるトメ。
 彼は最近になって、自分の会社を興した。
 空調設備などを扱う企業だ。
 ズルいことに後輩に社長をやらせ、自分は平社員といった安心なポジションをキープしている。

 俺はというと劇団のようなものを立ち上げている。
 何気に色々な企画に手を出さなきゃいけないような空気になっているものだから、日々様々な方面との打ち合わせを重ねている。

 とまあ、こんな風に書いたら俺とトメがやたら凄い人のように思われそうだから正直に打ち明ける。
 俺たちは、ただのプーだ。
 カースト制度でいえば、間違いなく1番下にいる人たちである。

「なあトメ、うちの劇団とお前の会社で、なんかコラボしねえ?」
「一体何やんだよ~。何の共通点もねえじゃねえかよ~!」
「ぎゃはははは!」

 落ち着きのなさも完璧だ。

 テレビでは、お笑い芸人さんがネタを披露している。
 ちょっとした男心を詩吟に乗せて吟じるという形で、視聴者に笑いを提供しておいでだった。

 それを見て、トメが不思議なことを口走る。

「めさよ~、オメーもみんなに内緒で何か吟じろよ~」

 みんなに内緒の時点で意味が解らない。
 誰にも見られずに詩吟を唄っていろということなのだろうか。
 お隣さんに不審がられるだけである。
 ついでに個人的に、もの凄く恥ずかしい。

「トメ、俺にどうしてほしいのか、もう1回言ってくれるか?」
「だからさあ、オメーも吟じろって。みんなには内緒で」

 こいつが言う「みんな」とは、どの程度の範囲で「みんな」を差すのだろうか。
 そして、俺は具体的には何を吟じれば良いのか。

 軽くいい声を張って、「みんなに内緒で吟じている時ィ~、いいい~。家の玄関が勝手に開いたことも気づかずにィ~、友達が無言で俺を悲しい目で見つめていたらァ~、あああ~。なんだか生まれたことを後悔したくなるゥ~!」とかノリノリで吟じていれば良いのだろうか?
 一体、何のために?

「トメお前、俺がもし本当に内緒で吟じてたら、お前もう俺と遊ばないだろ」
「それにしてもよ~、ジンの奴、電話に出ねえよ~」
「聞いてた? 俺の話」
「っつーかさあ、10年後とかは、会ってどんな話しているんだろうなあ、俺たちよ~」
「聞けっつーの、人の話! 話題の流れがおかしいだろ!」
「なんかよ~、10年経ったら俺もオメーも40代だろ~? どう見ても大人なのに今と変わってなさそうでスゲー怖えよ~」
「吟じるぞテメー! 俺の目を見ろォ!」

 でもまあ、10年後も変わっていないんだろうなあ。
 なんとなくだけど、俺はそう思った。

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2008
June 15
 こないだ誰それからメールを貰った、とか。
 他の皆にはメールで知らせておくね、とか。
 誰それとメールのやり取りをしているときにね、とか。

 そのような話を、劇団「りんく」の仲間らは、よく口にする。
 なんだか楽しそうだ。

 だからこそ、いじけてしまいそうになる。
 とんでもないことに気づいてしまったのだ。

 誰も俺にはメールくれない…。
 それどころか俺、りんくメンバーのメアド、知らない…。
 一応は俺、主催者なのに。

 もうこうなったら、みんなの見てる前で崖から落ちてしまおうか。

「だって、めささんが『時間を取られるからメール嫌い』って言ったんじゃん!」

 さて、仲間からの正論を綺麗にシカトしつつ。

 先ほど、看板役者の土方威風氏から電話があった。

「もしもし、めささん? 俺な? 今京都におってん」

 なんだと!?
 ずるい!

「でな? 俺、お金ないから、みんなにお土産買っていけんのよ」

 知らんもん!
 俺も京都に行きたい!

「しょうがないから俺、京都タワーの写メ撮ってな? それをみんなにメールで送ろう思ってん」

 ああそうですかッ!
 メール、楽しそうだね!

「でも俺、めささんのメアド知らんやん? だから、めささんにだけ特別! 電話で京都タワーの素晴らしさを伝えようと思って」

 くっそう!
 むかつく発想しやがって、面白いんだよ!

「まずな? 京都タワー、めっちゃ広い!」

 どこの部分がだよ!?

「あとな? これ大事! 京都タワー見て心から思ったんやけど、もう凄いよ?」

 何が!

「すんごい高い!」

 知ってるよ!

「まあだいたい、そんなもんかなあ」

 何1つ伝わってこねェよ!
 京都タワー作った人に謝れ!

「さてと。じゃあ用も済んだことだし、もう電話を切りたいねんけど」

 うおおおお!
 俺が神なら貴様に雷を落とす!

「俺、めささんと長々と電話してもな? ほら、つまらんやろ? じゃあ、そういうことで」

 うんだらァっしゃーい、っのやらあ!
 主人公が崖から落ちるシナリオ書いてやる!
 しかもお前に渡す脚本だけ文字化け!

「じゃ、そのうち遊びに行くからー。じゃ!」

 お前の前世は猿のすね毛に決定!

 通話を終え、息切れしつつ思う。

 もう、みんなにメアド教えようかな…。

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2008
June 12
 俺クラスのチキンにとっては、あの程度の怪現象ぐらいだったら普通に泣き出す。
 いや、泣くどころでは済まない。
 下手すれば軽く幽体離脱の域に達するだろう。

 劇団「りんく」のちょっとした打ち合わせの電話はその日、午前0時にまで及んでいた。

「ああ、うん。それじゃあ段取りとしては、先にそっちをやっちゃおうか」
「めささん」
「で、今後は長い目で見てさ、基本になるシステムを今のうちに考えておこうと思うのね?」
「めささん」

 俺は1人暮らしだ。
 なのに何故、所々で「めささん」と俺を呼ぶ声が聞こえるのだろうか。
 それも電話の向こうからではなく、部屋の中から!

 俺は生まれつき、片耳が聞こえない。
 したがって通話中は聞こえる側の耳が電話に占領されてしまって、外の物音はほとんど聞き取ることができなくなる。

「めささん」

 だからしばらくは、空耳の類だと思っていた。

「めささん」

 確かに聞こえる!
 確信と同時にフスマに目を走らせる。

 閉めておいたはずのフスマは開いていて、青白い顔をした男が、こちらを覗き込んでいた。

「ぎぃやああああ!」

 悲鳴と共に魂が口から飛び出そうになる。
 電話の相手も、俺による突然の悲鳴にはさぞかし驚いたことだろう。

 覗き込んでいた男は近所の大学生、ヨッシーだった。

「驚きすぎですよう、めささ~ん」
「アポなしかよ! ノックとかしろよ! もしもし、ごめんね? いきなりヨッシーが遊びに来た」
「ノック、しましたよう、めささ~ん」
「取り合えず切るね。じゃあね。はい、おやすみー。うおいヨッシー!」
「何度も声かけたのにい~」
「片耳が電話中でアレじゃんか! 殺す気か!」

 弱い犬ほどよく吠えるとは、本当によく言ったものだと思う。
 この日で最も俺がうるさい瞬間であった。

 この時の俺はちなみに、般若の柄をしたトランクス一丁だ。
 何か履いていて、本当によかった。

「あのね、めささん? 今イージーで飲んでたんですけどお」

 うるさい!
 何か着る物を取ってください!
 そこにあるジンベエを早く!
 意外と恥ずかしいから急いで!
 ばか!

 ヨッシーは一応うちの劇団員でもあって、裏方として快く手を貸してくれている。
 これにて彼の今日の仕事は、俺にジンベエを着させることとなった。

 ジンベエの袖を通しながら、何故この青年がこの部屋にいるのか、俺は必死に冷静になろうとしている。
 まるで襲撃のような今回の襲撃には、何か理由があるに違いなかった。

 で、一体どうしたのさ、ヨッシー。

「いやあの、今イージーで飲んでて、そしたら『めささんに会いたい』って人がいるから、連れて来たんですよう」

 うん?
 どなただろ?
 その人ってのは、今どこに?

「玄関前で待たせてます」

 そうか。
 よかったよ。
 パンツ一丁のところを見られなくて。

「会ってもらっていいですか?」

 ああ、良いよ。
 入ってもらえば?

 時間が時間だったので2人の来客者は遠慮がちではあったが、俺は構わず3人分のグラスを用意し、酒を注ぐ。
 ヨッシーが連れてきたのは、以前やったオフ会で1度だけ来てくださった、「カツオブシ」という残念なハンドルネームの娘さんだ。
 ちなみに俺が命名した。
 オフ会当時の彼女が「書き込みとかしないからハンドルネームがないんです」と困っていたからだ。
 彼女は、俺のブログの読者様であった。

 カツオブシさんは焼酎をロックでごくごく飲みながら、熱く語る。

「まだ酔ってないです!」

 酔うと、みんなそう言うんだよ。

「こないだのオフ会の時は、緊張しちゃってて、本当の自分が出せなかったんです! でも、今の私も私じゃない!」

 なんか哲学的だね。

「私、宇宙人なんです!」

 あのね?
 今はそんなカミングアウト要らないからね?

「めささ~ん。天然の定義って何なんですか?」

 天然かあ。
 定義づけるのは難しいけど、特定のパターンならあるよね。

「どんなです?」

 例えば、普通は会話してると、互いに「相手はこう言いたいんだな」って自分なりに要約しながら話したり聞いたりするでしょ?

「うんうん」

 でも天然の人は、たまに前触れなく要約から直訳にチェンジするんだ。
 例えば、「ほっぺが落ちるほど美味しい」とか言うと、天然の人は慌てて「ほっぺが落下! 早く病院!」とかって騒ぎ出す。

「あはは! 他は他は~?」

 他だと、話のメインテーマが片付いていないのに、平気で話題を横道に逸らす。

「ふうん。あ、シャボン玉吹いていいですか?」

 このように、天然の人は同じテーマの話を続けられないわけ。

「そうだ! めささんにお土産あるんです! 家から要らない物をたくさん持ってきたんですよー」

 気持ちからして迷惑なお土産って珍しいね。

「ハンガーと、フォークとシャーペン。あと、お菓子と日焼け止めのサンプルと、洗剤の計量カップ!」

 ヨッシー、助けてくれ。

「ねー! めささ~ん。シャボン玉吹いていい~?」

 外で?

「ここで」

 ヨッシーッ!

 結局、彼らは3時までうちにいました。

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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

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 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
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