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夢見町の史

Let’s どんまい!

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2024
April 25
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2010
March 01

 店のお客さんから無料でチケットを譲ってもらったことが、俺にとって良い機会となった。
 女子プロレスラーである豊田真奈美さんの試合を生で拝見させていただいた。

 試合はどれも本当に面白く、笑える演出あり、流血あり、迫力ありで、真奈美さんが時間切れで引き分けてしまったことが残念だけれども、気持ちがすこぶる充実する。

 リング上の真奈美さんは当たり前だけど恰好良い。
 よくぞこんな大物がうちのスナックを手伝ってくれているものである。

 俺は喫煙所で煙草を吸い、余韻に浸る。
 貼られているプロレスのポスターを眺めていると、ふと知らない人に声をかけられた。

「今、何時ですか?」

 俺は男性に腕時計を見せながら、今の時間を口にする。
 彼は俺よりも年上で、おそらく40代だろうか。
「まだ選手が帰らない。時間がかかるなあ」などとつぶやいている。

 喫煙所の壁は透明なアクリル板で、その向こうにはファンにサインをし、一緒に写真を撮っている真奈美さんが望める。
 もちろん、他のレスラーもファンサービスに余念がない。
 この男性は、そんな選手の誰かを好いていて、お目当てのレスラーが手隙になるのを待っているのだろうか。
 時間潰しのために話し相手が欲しかったのかも知らない。
 彼が、俺にはよく解らないことを言い出した。

 どこそこの団体はわけの解らない選手が多いとか、何とか。
 わけが解らないのはあなたですとも言えず、俺はただただ「へえ、そうなんですか」と適当に相槌を打つ。

 男性はかなりプロレスに熱を上げている方のようで、言ってることがさっぱりだ。
 一応「実は僕、女子プロ見るようになったの最近なんで、まるで知識がないんですよね」と断りを入れてはおいたけど、彼の熱弁は留まることを知らない。

 やがてはある女子プロレスラーのことを軽く見るような発言が出た。
 その選手というのが、さっき真奈美さんが対戦した相手だ。

「もしかして」

 俺は目を丸くして訊く。

「豊田選手のファンなんですか?」
「うん、そう」
「へえ。僕も今日、豊田選手を応援しに来たんですよ」
「え!?」

 今度は男性が目を見開く。

「他の美形レスラーよりも豊田真奈美を応援しに?」
「ええ、ファンなんで」
「へえ!」

 思いの他、喰らい付いていらっしゃった。
 これは下手に「真奈美さんとは直接の知人ですよ」とか「一緒に働いてますよ」とか「正月にパチンコで負けてうちに遊びに来ました」とか、余計なことは言わないほうが良さそうだ。
 俺と真奈美さんが通じていることを知られれば、きっと「今すぐ紹介してくれ」みたいな流れになってしまい、ややこしい話になってしまうだろう。

 俺は真奈美さんと無関係であるように振る舞った。
 煙草は吸い終わってしまったので、真奈美さんに挨拶をしてから帰るつもりだったが、予定変更だ。
 まずは彼からどうにかして離れなくては。
 さて、でもどうやって?

 男性は相変わらずお喋りを続けていて、終わりそうもない。
「何がきっかけで豊田真奈美のファンになったんですか?」などと訊かれたら、俺は咄嗟に適当な嘘をつけるだろうか?
 難しい。
 早く彼から離れなくては。
 俺と真奈美さんが知り合いであることがバレる前に、トイレにでも行くか?

 と思った矢先、真奈美さんがアクリル板の向こうから真っ直ぐに俺を見て、コンコンと壁をノックした。
 どうしてそのタイミングで?

 真奈美さんは手を招いて「こっちに来い」と催促をする。

 確かに俺は男性から逃れようとしていたけれど、もっとこう自然なシチュエーションで喫煙所から出たかったのに。

「試合どうだった? 楽しめた?」
「最高に面白かった!」

 実は今の状況も相当面白いことになっているけどな。

 横目で確認をすると、さっきの男性が俺の顔をめちゃめちゃ直視していらっしゃる。
 俺は忍者のように、素早く建物から出ることに決めた。

 まさか試合のあとに緊張させられるとは思わなかった。

拍手[23回]

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2010
February 08

 できれば毎日通いたいと常に思っている中華料理屋さんに、久々に足を踏み入れる。
 ここは安くて美味しいし、友人たちの溜まり場みたいにもなっているのだけれど、自宅からは少し離れているのでなかなか普段から訪れることができないでいた。

「あ、めさ君、いらっしゃーい!」
「いやあ、ご無沙汰しちゃってすみません」
「あれ? 今日、カッコイイじゃん」

 言われてみれば俺は今、スーツの上にロングコートを羽織っている。
 いつもここに来るときは私服なので、店側からすれば新鮮なのだろう。

 俺は今、夜はスナックに勤めているけれど、友人に声をかけてもらったことがきっかけで、日中は営業の仕事をしている。
 そのようなことを俺は手短に説明すると、女将さんは目を丸くした。

「営業って、何の?」

 本当はオール電化や太陽光発電の営業なんだけど、それを今言ったら「設置料や工事費がかかるって印象だけどそんなことはない」だとか「ガス代が無くなる上に電気料金まで安くなるの。なんでかというとね?」などと、仕事をしてしまいそうだ。
 やたら自分のところで扱っている商材を勧めてしまっては、煙ったがられるだけだろう。
 お客さんたちも食事をしていらっしゃることだし、ここは誤魔化すことにする。

「幸運の壷を売っています」
「あ、そういうの知ってる!」

 カウンターでご飯をたべていたおばちゃんが、何故か喰いついてきた。

「なんかまえ、幸福を招く水晶っての勧められたことがある!」
「いやあ、それは買わなくて正解ですよ」

 俺はわざとらしく、顔をしかめて見せた。

 そういう業者さんは胡散臭いですよ。
 まず効果は期待できませんね。
 それに比べてうちの壷なんですが、これから来る全ての不幸を吸収してくれますんで効果は絶大ですよ。
 通常だったら200万するんですけれど、まあ未来のことを考えれば全然安いほうですけれどね?
 せっかくの出会いなんですし、特別に180万で提供して差し上げますよ。
 よかったですね。

「あはははは!」

 よかった、冗談を冗談だと思ってもらえて。
 どっかの適当な壷を無駄に売りつけてしまうところだった。

 というか、結局何かをお勧めするのなら、最初から本当のことを言えばよかったんじゃないのか俺は。
 なんか損した気分だ。

拍手[30回]

2010
February 03
 前触れなく、俺の携帯電話が人類に反抗し始めた。

 どのボタンを押しても、何の反応もしなくなった。
 電源を落としたり入れたりはできるのだけど、それ以外は全く駄目だ。

 試しに全てのボタンを連打してみると、動かざること山の如し。
 ディスプレイは一切の反応を見せない。

 電話が鳴っても出られない。
 メールが来ても誰からなのか、どんな内容なのか解らない。
 アラームが鳴っても止められない。
 持ち主のニーズに全力で逆らっていらっしゃる。

 修理を頼むためにショップに足を踏み入れると、スタッフのお姉さんがやたら親切で、毎度のことながら「この人ぜってー俺に気があるぜ」と幸せな勘違いができるから不思議だ。
 なんでみんな美しいのだろうか。

「修理の間、代用機をお使いください」

 おっけーい。

「データを代用機に移しますね」

 お願いしまーす。

「データをコピーするために、一旦この機械にお客様の電話機を繋げます」

 うす。
 優しくしてください。

「指示が出ましたら携帯電話にお客様が設定した暗証番号をプッシュしてください」

 全てのボタンが反応しないのに、どうやって!?

「あー」

 お姉さんの困った表情から察するに、このままだとアドレスは壊れた携帯電話に永久に封印されてしまうらしい。

「この状態で修理に出しますと、データが移せないのでアドレスが全て消えてしまうということになってしまいます」

 ほーらね。

 ボタンが効かない以上、今の電話機は使えない。
 使えるように直すと、電話帳から何から何まで消えてしまうので、とっても困る。
 ということは、俺がとっても困るということだ。
 これは困った。

 どうにかしたい俺は、ふと思いついた解決策を口にする。

「修理じゃなくて、機種変更をするとしたら、データを移せますかね?」
「できます」

 商売上手なのだろうか。

※追記。
 俺の電話が故障している間、ケータイにメールを送ってくれた方へ。
 新しい電話機にはメールまで移植できなかったので、送ってくれたとしたら俺は内容を見られていません。
 誰が送ってくれたのかも解らないので、「もう1度送って」とも言えないの。
 返事がないのはそういう事情なので許してくーださい。
 ごめんよう。

拍手[24回]

2010
January 31

 夜中の1時半ぐらいに、いきなり知らない人がうちに来た。

 その日は仕事が休みで、俺は夜食を作ろうと台所で色々やっていた。

 すると突如、すぐそばの玄関からノックの音が。

 ひい。

 自分が女子だったら絶対に開けないところだけれど、俺は幸い男の人だ。
 誰なんだろうと思いつつ、ドキドキしながらドアを開ける。

 そこにはスーツ姿の青年が、申し訳なさそうに立っていた。

 ひい。

 青年はおずおずと口を開く。

「こちらの方、ご存知ですか?」

 こちらの方も何も、オメー1人じゃん!
 俺には見えない何かとご一緒だったんですか!?
 ひい。

 と、思ったけれど、俺が開けた玄関ドアの向こう側にもう1人誰かがいるらしい。

 覗き込むようにしてドアの反対側に顔を出すと、そこにはなかなか派手な扮装のおばちゃんが立っている。

 ひい。

 見知らぬおばちゃんは青年に対し、何故か俺のことを紹介した。

「うちの亭主です」

 なんだってェ!?
 どうやら俺は自分でも気づかないうちに結婚していたらしい。
 しかも、そこそこご年配の方と。

「本当ですか?」

 と、青年。

 おばちゃんは堂々と「ええ、亭主です」などと断言していらっしゃる。
 俺に目で合図までしてくる始末だ。

「ね? あなた」

 ひい。

 これは一体、どういうストーリー展開なのだろうか。
 現状から瞬時に推察をする。

 おそらく何らかのトラブルが発生し、おばちゃんが「じゃあ自宅まで一緒に来てください」みたいな言い逃れでもしたのだろう。
 そこで、明かりの点いている俺ン家に目をつけたと考えればしっくりくる。

 青年の服装と物腰から察するに、彼はおそらく飲み屋関係の仕事なのだろう。
 どうやら店と客の料金トラブルであるらしい。

 おばちゃんの手馴れたような態度を見ると、彼女はこういったことを何度もしていそうだ。
 つまり、お金を持たずに飲み屋に入り、会計時に「次回お払いします」とか言いつつ逃げてしまう、いわば食い逃げの常習犯である可能性が高い。
 初見の客にツケをするわけにはいかない店側からすれば、おばちゃんの自宅まで行って代金を支払ってもらうことは当然だ。

 さてさて、どうしよう。
 おばちゃんに話を合わせ、かばってあげたい気持ちもあるけれど、そうなれば俺が飲み代を立て替えねばならない。
 自分の財布の中身を思い出すと、なんだか悲しくなってきた。
 おばちゃんには悪いけど、俺は貧乏なのだ。

「彼、うちの亭主です」
「すみません、違います」

 なんで俺が謝っているのか。

 とにかく「この人を知りません」と青年には伝えておいた。

「夜分に本当にすみません!」

 何度も頭を下げる青年に「いえいえ」と告げ、俺は玄関を閉める。

 ちょっと気になったので、そのままドアに耳を近づけ、聞き耳を立てる。

「じゃあ、あたしを出入り禁止にしていいですから」
「いやいや、出禁にすればいいとか、そういうんじゃなくて、お代を…」

 ひい。

 びっくりするぐらい、俺の推察は当たっていたらしい。

拍手[32回]

2009
December 11
 いつか日記に書いたことだけれど、職場のスナックには週に1日、現役の女子プロレスラーでいらっしゃる豊田真奈美さんが働きに来てくれている。

 女子プロをご存知ない方は是非「豊田真奈美」で検索してみてほしい。
 テレビにも何度も出て数々の伝説を残した、本当に凄い人だ。
 めちゃイケという番組で極楽トンボとプロレスをやった人といえば思い当たる人も多いのではないだろうか。
 先日は札幌の試合でアジャコングを倒し、チャンピオンになって帰ってきた。
 普通に「勝った」って言っていた。
 この人に敬語を使っていて本当によかったと思う。

 そんな真奈美さんとは職場以外でも、酒の場に同席する機会が多い。
 先日は職場「スマイル」の閉店後、お客さんたちとで別の店で飲もうという流れになった。

 お客さんたちには先に出発してもらい、俺と真奈美さんは店の片付けをしてから皆の後を追う。
 道中、コンビニに寄って煙草を奢ってもらった。

 店員さんが金額を述べる。
 真奈美さんは財布を取り出しながら、レジ打ちの青年に対して口を開いた。

「あたしの年齢確認しなくていいの?」

 俺は即座に「絶対に大丈夫です!」と力強く店員さんの代わりを果たしておいた。

 乾杯のあと、俺はふと思い出したことがあって、真奈美さんに声をかける。

 そうだ、真奈さん。
 連絡先交換するタイミングが合わなかったから今までアレだったけど、改めて電話番号教えてくださいよ。

「やだ」

 なんでだよォ!
 仕事の連絡ができなくて困ったことが以前あったじゃん!
 それでいつか、自分から電話番号聞いてきてたクセに!

「しょうがないなー。じゃあ番号言う」

 お願いします。
 090の、と。
 じゃあ1回コールしますね。
 …アレ?
 留守電になってる!
 なんで!?

「あたしが電源切っておいたから」

 なんでだよォ!
 あんたどんだけ俺のこと嫌いなんだよ!

「あ、でも今見たら、めささんの番号ちゃんと入ってたよ」

 ああ、ならよかったです。
 ってゆうか、さっきのはホント焦った。
 何故か留守電になってるんだもん。

「くすくす。あたしが電源切っておいたから」

 だから!
「どうしてそんなことしたんですか」って訊いてんの!

「がはははは!」

 そのまま笑い死ね!

 現役女子プロレスラーのチャンピオンは色々と強かったです。

拍手[4回]

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プロフィール
HN:
めさ
年齢:
48
性別:
男性
誕生日:
1976/01/11
職業:
悪魔
趣味:
アウトドア、料理、格闘技、文章作成、旅行。
自己紹介:
 画像は、自室の天井に設置されたコタツだ。
 友人よ。
 なんで人の留守中に忍び込んで、コタツの熱くなる部分だけを天井に設置して帰るの?

 俺様は悪魔だ。
 ニコニコ動画などに色んな動画を上げてるぜ。

 基本的に、日記のコメントやメールのお返事はできぬ。
 ざまを見よ!
 本当にごめんなさい。
 それでもいいのならコチラをクリックするとメールが送れるぜい。

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 必要なものがあったら遠慮なく気軽に、どこにでも貼ってやって人類を堕落させるといい。
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